第36回の発表者紹介

青木 大輔さん (埼玉県)

埼玉県 青木 大輔さん (埼玉県)ハンパないって!ブルーバンブーファーム!妥協なしの牛づくり・草づくり・土づくり~日本一暑い町で、日本一熱い酪農経営を目指して!~

・埼玉県熊谷市について
東京から60キロ圏に位置し、関東平野の中心でほぼ平坦。冬は低温乾燥で「赤城おろし」と呼ばれる北風が強く、夏は高温多湿で、国内史上最高となる41.1℃を今年記録した猛暑の町。荒川や利根川の水に恵まれた肥沃な土壌と全国一の晴天率から農業も盛んだ。生乳生産量は酪農家戸数17戸で県内4位を誇る。

・青木牧場の歴史
青木家は水田、畑作、養蚕を経営していたが、祖父が就農した昭和23年に雑草の有効利用のために乳牛を飼い始めた。昭和28年までに12頭まで増頭し酪農中心の経営に。昭和38年に2代目の父が就農。増設と増頭で酪農専業となった。
私が平成8年に、弟が平成15年に就農し、牛舎部門と耕種・粗飼料部門に分業化。平成28年の経営移譲を機に法人化し、青木牧場から株式会社ブルーバンブーファームを設立。名称の由来は、創立者である祖父の名前、「青」木「竹」雄を英語にしたものだ。

・牧場の労働力構成
会長の父は地元酪農協の組合長をしながら牛舎作業。社長の私は牧場全体を管理しつつ、耕種・粗飼料生産と販売、農作業請負など。専務の弟は牛舎内責任者として飼養管理、給餌、搾乳を担当している。私の妻は経理と今後展開する6次産業化の企画推進係としても動いている。弟の妻は牛舎作業と補助保育。そして母は主に牧場の美化を担当している。

・牧場の理念と飼養状況
受け継がれてきた理念が「牛づくり・草づくり・土づくりの徹底」。牛の排出物を堆肥化し圃場に還元。良質な粗飼料を作り牛に与えることで、良い牛、良質な生乳が生産される循環型酪農を確立している。 飼養頭数は経産牛約40頭、育成牛約25頭の少数精鋭。牛にとって不利な高温多湿の環境下で、10年以上前から乳量1万キロ超。乳質・繁殖成績良好な牛群を維持している。

・良好な牛群のために
搾乳時の個体乳量測定と記録は欠かさず、牛群検定成績データに基づき個体別飼料設計を行う。1日4回の配合飼料の多回数給餌と十分な粗飼料給与。バイパスサプリ、微生物製剤、ビタミン、カルシウムなどの添加剤も給与。ルーメン環境が安定し、健康維持、乳量、乳質、繁殖成績が良好になる。
徹底した衛生管理として、処理室、搾乳器具の洗浄や殺菌はもちろん、必ず装着する搾乳手袋を牛の体温と同等に温めてプレ・ポストディッピング。殺菌した搾乳タオルは1頭2布使用。 エスカリューや石灰による牛床の乾燥と消毒やこまめな敷料の交換など、当たり前のことを毎日行うことで乳房炎のリスクが大幅に減少している。 そしてカウコンフォート。年3回の定期的な削蹄と、牛床はゴムマットとたっぷりの麦ワラを敷料とし、肢蹄や関節の擦れ、乳頭損傷の防止とストレスも低減。御影石の飼槽で嗜好性もアップ。牛舎の水道の配管を太くして、全頭に十分な水を供給している。

・暑い熊谷の暑熱対策
牛舎内はインバーター式ファンを36頭牛舎に20台設置。牛舎周辺の緑化、よしずと遮光ネットでの日除けも徹底。さらに毛刈りと高圧洗浄機による牛洗いを定期的に行い、体を冷却し清潔さも保つことができる。1日4回の多回数給餌と添加剤も夏バテを防止している。

・牛群改良について
体貌、骨格、乳用強健性、長命連産を基本に、生涯乳量10万キロ牛を追い求め、これまでに4頭を輩出。さらに平成13年に埼玉県初のエクセレントを獲得してから、累計13頭を輩出してきた。牛群改良の成果と乳牛資質向上を目的に、関東、全国の共進会等に出品。数々の賞をいただいたが、目標は「日本一」。2020年に開催される第15回全日本ホルスタイン共進会に向けて、日々牛づくりに励んでいる。

・土づくり、草作りについて
良質な作物を作るには、良い土づくりから。生菌剤を給与した牛の排出物を、麦殻、もみ殻等と混ぜ、堆肥舎で約3ヶ月切り返しながら堆肥化。生菌剤のおかげで発酵が促進され、アンモニア臭の少ない良質な堆肥ができる。その堆肥は近隣の野菜農家に販売し、自給飼料圃場にも還元。作付け前の土壌分析で養分量を把握し、堆肥の投入量や施肥量を決定。堆肥を投入した圃場は耕起と整地を施して土壌の微生物を活性化させ、保水性と排水性の良好な土となる。
近くを流れる利根川河川敷と遊休地や耕作放棄地で自給飼料の生産に取り組んでいるほか、様々な形で耕畜連携し地域の環境保全にも努めている。イタリアンは普通種だが、飼料麦は「ムサシボウ」などの二条大麦や食用品種の小麦も使用。稲WCSは高糖分品種の「たちすずか」「つきすずか」を選択。いずれも嗜好性の高い品種を最優先する。播種後鎮圧を徹底し、追肥はGPSナビで蒔きムラを防ぐ。刈取適期を逃さず、予乾、ロールベール、ラッピングとスムーズな作業を心掛ける。乳酸菌でカビの防止や嗜好性アップにもつなげている。

・耕畜連携と消費者に向けた取り組み
この地域は米麦の二毛作が大部分。都市化の波で住民の苦情が絶えず、ワラを焼却できず処理に困っている農家も多い。わが牧場は地域の負託に応えワラを収集。麦ワラは牛床の敷料とし有効利用し、稲ワラは需要が高い肥育農家に提供している。
埼玉は全国に先駆け県域での酪農教育ファーム活動推進委員会を立ち上げ、昨年までの11年間に26市町村36校で、延べ18,000人を対象に実施した。わが牧場は立ち上げ当時から率先して参加。近年、牛乳の価値向上が求められており、都市近郊の埼玉では酪農理解醸成活動としてもこの活動はますます重要になっている。

・6次産業化について
地域の活性化と、もっと酪農を知ってもらいたいという思いから、牧場内に農場カフェを併設する予定。妻の実家は以前に洋菓子店を営んでおり、亡き父の自慢のケーキを復活する。牧場の新鮮な牛乳を使ったジェラートも販売する予定だ。J-GAP認証取得を目指し、家族、従業員が働きやすく、消費者が納得する環境作りで、牧場のブランド化を図りたい。

・今後の展望
代々、牛中心の生活で、子供の頃から祖父や父の酪農を見て育った。私も弟も、同じ志を持ち酪農を生業とした。2人で分業することにより、それぞれの責任で牛のために何ができるのか、様々なことに取り組んでいる。
さらに将来は酪農を柱とした6次化に取り組むことにより、地域の人たちにもっと酪農を理解してもらい、近隣の農家とも連携してこの土地で酪農を営んでいきたい。家族一丸となって改善し、新たな事業に向けしっかり計画を立て、もっと「ハンパない」と言われる、より良いブルーバンブーファームを作り上げたい。牛と草と土に感謝し、日本一暑い町で、日本一熱い酪農経営をし、妥協なしの牛づくり、草づくり、土づくりに今後も取り組んでいきたい。