第34回の発表者紹介

中村 成則(沖縄県)

優秀賞 アーミファーム株式会社 中村成則さん(沖縄県) 作品タイトル 進化しつづける酪農

・沖縄県の酪農
日本で唯一の亜熱帯地域である沖縄県南城市は、人口4万2835名、平均気温22度、平均湿度66%という1年を通して温かい地域で、歴史的・文化的遺産にも恵まれている。酪農は76戸、飼養頭数4630頭で、60%以上が本島南部地域に集中している。生乳生産量は2万6797トンでほとんどが県内で牛乳として消費されている。

・アーミファームについて
昭和40年に父が乳牛3頭から酪農業を開始。私は工業高校を卒業後、23年間建設業で働いていたが、父が酪農を引退することを聞き、平成16年に酪農業を始める決心をした。そして平成18年に父の酪農引退を機に、30頭規模の経営を譲り受けた。
牛舎を受け継いだ平成18年は、安い乳価、飼料価格の高騰、後継者不足、さらに生産量過多による出荷制限など、厳しい状況が重なっていた。時代に合わせた進化が求められていると感じ、思い切って牛舎の建て替えを決断した。周囲の猛反対を受けたが、粘り強く方法を模索しているうちに理解者も現れ、平成21年に90頭規模の牛舎に建て替えることができた。私はこの経験で、理想を諦めずに追い続け、行動し続けることが実現につながることを学んだ。そして、周囲の協力を得ることで初めて現実になることを実感し、人脈こそ無形の財産であることに気づかされた。

平成27年、南風原ファーマーズマーケットくがに市場の開設と同時に「モーモーHOUSE」を開店しソフトクリームを販売。地域の人々の憩いの場として機能している。県内の焼肉店にソフトクリームの原料を販売するなど、販路も拡大した。今後は、果実農家と連携して、特産物を用いたジェラートの開発にも取り組んでいきたい。南城市のリゾートホテルやJAの支店祭りなどで搾乳体験活動も精力的に行っている。
今後の課題は、魅力ある酪農による後継者の育成と、規模拡大のための第二牛舎稼働の2点。
従業員の入れ替わりが多い現状だが、今後は、午前と午後の二交代制シフトの導入で有給休暇が取れるようにし、作業量を減らさず、牛舎拘束時間の短縮を図る。経営理念のひとつの「酪農による文化的生活」は、仕事の効率化と経営の合理化を図り、原題に合わせた労働環境を社員に提供し、文化的な生活を送ってもらってこそ、やりがいのある仕事となり、それが酪農の発展につながると確信しているから。職場の雰囲気づくりや、作業環境のさらなる改善、酪農の魅力とやりがいを体験によって浸透させ、これまでの人材育成のノウハウを活かし、より多くの後継者を育てることを目標としている。

・今後への思い
建築中の第二牛舎完成後は、旧牛舎も合わせて130頭規模に拡大する予定だ。この第二牛舎の一角に見学コースや販売コーナーを設け、個人や団体の牛舎見学を受け入れ、本土からの修学旅行生の乳搾り体験などを通じて、酪農地域の特性、特産物、観光施設など、地域の魅力を幅広く紹介し、今後の沖縄観光のリピーターとなってくれるよう、観光農場としても機能させたいと思っている。また第二牛舎の竣工後は新たな従業員を雇用し、従業員全体の負担軽減にも努めていく。
酪農も、時代に合わせ変化していく柔軟な発想が、困難を乗り越える鍵になる。十分な所得が得られる産業として育てば、若い担い手に対して門戸を広げやすくなる。6次産業化は、雇用を生む産業の創出を促進し、地域に再生と活性化をもたらすものと信じている。