イチゴハダニ
ゼロプロジェクト
試験の結果解析〜ハダニピークを作らない
イチゴ栽培のポイント〜

『ハダニピーク』とは?

イチゴの栽培に影響を与える水準でハダニ類が発生している状態のこと。
適切な防除対策により、この状態を作らないことが重要です。

育苗期間中にハダニ類の
密度をゼロに抑える

「育苗期から本圃初期のハダニ発生状況(作期前半)」と「ミヤコバンカーを放飼した後のハダニ発生状況(作期後半)」の関係に着目しました。

ミヤコバンカーを本圃で放飼した時
  • 1

    ハダニ密度ゼロを達成していた場合、栽培期間を通じて、ハダニ防除効果が安定していました。

  • 2

    ハダニ密度ゼロ未達成の場合、栽培期間を通じて、ハダニ防除効果が不安定でした。※ミヤコバンカー設置個数が200個/10aでも不安定

参考データ
ミヤコバンカー本圃放飼時の
ハダニ密度と防除スコアの関係
  • ※防除スコア平均:2015年~2020年に実施した202試験の平均
  • ※本圃放飼区:10月中旬~11月上旬に、ミヤコバンカー100個または200個(/10a)を放飼した。
  • ※慣行天敵区:防除プログラムは試験毎に異なるが、全てを慣行天敵区としてまとめた。
  • ※化学農薬区:防除プログラムは試験毎に異なるが、全てを化学農薬区としてまとめた。
【作期を通じた防除スコアの評価方法(試験毎に評価)】
  • ・5点(◎):作期を通じてハダニ密度を低く抑えた。
  • ・3点(〇):12月迄はハダニ発生が見られたが、1月以降はハダニ密度を低く抑えた。
  • ・1点(△):2月迄はハダニ発生が見られたが、3月以降はハダニ密度を低く抑えた。
  • ・0点(×):作期を通じてハダニ発生を抑えられなかった。または、3月以降はハダニ発生が急増した。

ハダニ類の
発生状況を観察する

ハダニ類は非常に小さいので目視することは容易ではありませんが、葉を吸汁して加害することで、加害部分はカスリ状の斑点が見られます。また、ハダニ類の密度が一定以上になると、葉は糸が張った状態(クモの巣症状)になります。

カスリ状の斑点
クモの巣症状
チェック!
ハダニ類が発生しやすい場所は?

暖房機の近くや西日が長時間当たり続ける乾燥しやすい場所は、ハダニ類が発生しやすくなります。

ポイント

2〜3週間に1度はハダニ類の発生状況を観察しましょう。また、営農指導員等と連携して調査を実施しましょう。発生状況を“見える化”することで、発生しやすい場所の特定や、防除プログラムの見直しに必要な情報を得られます。

参考測定方法
圃場全体ハダニ指数
  • 1

    調査する圃場を、畝毎(列毎)に100株程度に
    区分けします。

  • 2

    株の上から達観調査を行い、ハダニ発生が1株でも
    あったら、ハダニ発生区とします。

  • 3

    ハダニ発生区から代表2~3区選び、
    その内の連続する10株についてハダニ数を測定し、
    3段階に評価します。(指数3:51頭以上/複葉、 指数2:11〜50頭/複葉、
    指数1:10頭以下/複葉)

  • 4

    評価を集計し、圃場全体のハダニ指数を算出します。(圃場全体ハダニ指数=代表区の平均ハダニ指数×ハダニ発生区画数÷全区画数)

【圃場全体ハダニ指数の測定例】
  • ①3カ所で発生
  • ②3カ所で調査、平均指数2.0
ハダニ指数0.2
  • ①9カ所で発生
  • ②3カ所で調査、平均指数2.0
ハダニ指数0.6
  • ①12カ所で発生
  • ②3カ所で調査、平均指数3.0
ハダニ指数1.2
チェック!
圃場全体ハダニ指数とは?

圃場の一部を調査した結果から、圃場全体のハダニ発生状況を指数化することで、
防除プログラムの効果を把握できます。

【ハダニ指数のイメージ図
(小葉1枚にいるハダニ数)】
ハダニ指数1
ハダニ指数2
ハダニ指数3

ハダニピークを作らない圃場全体ハダニ指数の目安

圃場全体ハダニ指数0.6以上を2ヶ月連続させない

試験結果では、圃場全体ハダニ指数0.8以下であれば、十分な果房数・着果数を確保できましたが、
防除効果安定の観点から、圃場全体ハダニ指数0.6を目安にしました。

参考データ

圃場全体ハダニ指数の目安(0.6)を超えた事例
〈グラフ1は圃場全体ハダニ指数、グラフ2はハダニ発生区の果房数・着果数〉

試験1/圃場全体ハダニ指数の目安(0.6)を超えた期間が3ヶ月連続した事例
【グラフ1】 圃場全体ハダニ指数
品種:章姫
出典:JA全農(2019年 福島県)
【グラフ2】 ハダニ発生区の果房数・着果数
未発生区を100とした場合の指数
ポイント

指数が、3か月間(12月~2月)目安以上となり、一部でクモの巣症状も見られました。3月に少発生になり、極少発生になったのは4月でした。

参考データ
試験2/圃場全体ハダニ指数の目安(0.6)を超えた期間が2ヶ月連続した事例
【グラフ1】 圃場全体ハダニ指数
品種:章姫
出典:JA全農(2019年 福島県)
【グラフ2】 ハダニ発生区の果房数・着果数
未発生区を100とした場合の指数
ポイント

圃場全体ハダニ指数が、2か月間(12月~1月)目安以上となり、2月になって少発生になりましたが、極少発生になったのは4月でした。

参考データ
試験3/圃場全体ハダニ指数の目安(0.6)を超えた期間が1ヶ月のみであった事例
【グラフ1】 圃場全体ハダニ指数
品種:ゆめのか
出典:JA全農(2019年 長崎県)
【グラフ2】 ハダニ発生区の果房数・着果数
未発生区を100とした場合の指数
ポイント

圃場全体ハダニ指数が、1か月間(12月)目安以上となり、
1月になって極少発生になりました。

ハウス内環境変化によるハダニ防除効果の事例

ハダニ類は低湿度でも急激に増加しますが、ミヤコカブリダニは、湿度低下でふ化や発育が阻害されてしまうことから、晴天日昼間の飽差管理が重要となります。

チェック!
「飽差」とは?

1㎥の空気中にあとどれだけの水蒸気を含むことができるかという指標です。ミヤコカブリダニ定着のためには、3g/㎥から6‐7g/㎥の間に飽差を管理することが必要とされていますが、例として20℃の場合には60%、25℃の場合には70%の湿度を保つことが必要となります。

参考データ

ハウス内の飽差管理と
ハダニ防除効果の関係
※試験地名の括弧表記は試験年次

ポイント
  • ミヤコバンカー放飼時のハダニ密度ゼロ達成と、その後1か月間のハウス内湿度50%以上維持の両方がハダニ防除には重要
  • ゼロ放飼未達成の時は⇨チリガブリをハダニスポット1個あたり最低10振りのスポット放飼(1ボトルで約200振り可能)
  • ハウス内環境の改善方法⇨ポイント2と3に記載
ポイント

ミヤコバンカー放飼後のハウス内環境を最適化するための湿度維持方法(一例)

土耕栽培

通路部分に有機物資材(稲わら、ケイントップ、モミガラ等)を敷設する。⇨畝マルチを株元でホチキス止めする場合、ハウス内湿度が極端に下がることがあるため、有機物資材の敷設により湿度改善につながります。

高設栽培

【灌水余剰水が架台下に垂れる場合(かけ流し)】
ビニール被覆を地面から1/3程度開けることでハウス内湿度改善につながります。(目安:ミヤコバンカー設置後、1か月ほど継続する)
【灌水余剰水が架台下に垂れない場合(循環型)】
架台下に有機物資材を敷設して、定期的に打ち水を行うことでハウス内湿度改善につながります。

ポイント

土耕栽培でピートモス等の土壌改良資材を混和している場合、ココナツヤシ繊維資材(例:スーパーベラボンなど)やモミガラを通路部分に敷設すると有機物マルチ資材としてハウス内の飽差を最適に維持する効果が期待できます。栽培終了後はそのまま混和することで、土壌改良資材としての効果も期待できます。

case-point3