新型コロナウィルスは、人、地域社会、経済などあらゆる分野に大きな影響を及ぼし続けています。
農業も食生活スタイルの変化などにより、変わることが求められています。
農業に携わる人たちが将来に向けてどんなことを考え、新たなアクションを起こそうとしているのか、訪ねてみました。
そこには、新しい風が吹こうとしています。
① JA茨城旭村
② JAなめがたしおさい
③ JA水郷つくば
新型コロナウィルスは、人、地域社会、経済などあらゆる分野に大きな影響を及ぼし続けています。
農業も食生活スタイルの変化などにより、変わることが求められています。
農業に携わる人たちが将来に向けてどんなことを考え、新たなアクションを起こそうとしているのか、訪ねてみました。
そこには、新しい風が吹こうとしています。
① JA茨城旭村
② JAなめがたしおさい
③ JA水郷つくば
インタビュー“倉谷和男さん”
鉾田市はどのような特色が
ありますか。
農業産出額は約708億円(2018年度)と、全国3位です。特に、メロン、トマト、さつまいもなどの生産が盛んです。
ここでは障害のある人たちを
雇用していますが、
なぜでしょうか。
3年前より、地元にある特定非営利活動法人「エンハートメント」からの依頼があり、障害のある人たちを受け入れています。JAとして地域貢献の意味もありますが、やはり農業労働力不足の中で、人材の確保が重要でした。
どのような仕事をしていますか。仕事ぶりはどうですか。
現在は、さつまいもの洗浄施設で、平日5日間午前中に4、5人が働いています。当初は心配な面も有りましたが、今は健常者以上の力を発揮してもらっています。一緒に働いているパートさんたちのサポートもあり、とても良い雰囲気です。
仕事をしてもらう際に、
どのようなことに
気を付けていますか。
さつまいもを洗浄するスピードを気をつけています。速すぎるとさつまいもの皮がむけてしまう可能性があるためです。JAの職員も現場を定期的に見ながら、同法人が運営する障がい者就労継続支援事業所「エンハート」の皆さんとコミュニケーションを取り、業務を進めています。
「農福連携」が注目されて
いますが、
現在の状況を踏まえ、今後はどのようなことを
考えていますか?
さつまいもの洗浄は1年を通して仕事があるため、今後もエンハートメントの皆さんのような福祉事業者と農福の連携を引き続き進めていきたいと思っています。またさつまいもに限らず、農業の労働力拡充のため、連携の機会を増やしていきたいと思います。
インタビュー“三瓶完さん”
エンハートメントとは
障がいをお持ちの方の就労支援はもちろん、引きこもりがちな方や生活保護を受けている方など、社会復帰、そして自立した生活への一歩をサポートする組織です。エンハートメントのメンバーには障がい手帳の有無に関わらず、たくさんの方が在籍しています。
エンハートは何故、農業関係に力を入れているのですか?
当事業所の所在地は鉾田市になります。全国でも有数の農業生産地であるロケーションを考え、農業が作業を提供する場として最も相応しいと考えています。
農作業に携わる事で利用者たちに変化はありましたか?
たくさんの変化を感じています。暑さや寒さを問わず、メンバー同士のチームワークを大事にし、とても生き生きとした様子が見受けられます。身体的にも体力が付いたり、コミュニケーション能力を育んで、研鑽と自信を持って就職へと進まれた方も複数人います。
農福連携についてどのように考えられますか?
慢性的な人手不足の問題は深刻であり、新しい担い手をどのように確保するかが課題です。その中で農業という仕事(作業)の懐の深さが、福祉的配慮を必要とする人たちにとってマッチしていると思います。本人にとっても、地域社会にとっても、私たちJAにとっても実り多いものがあると考えています。 WinWin の関係を大切にして、一緒に成長していきたいです。
これから事業はどのように発展させていきますか?
農福連携を更に深化させ、新しい担い手としてハンデを持った方達に多くのチャンスやきっかけを提供できる場にしていきたいと思います。
インタビュー“渡辺侑志さん”
農業を始めてどのくらいになりますか?
エンハートには去年の2月(2019年2月)に入りました。元々精神的な障害がありましたが、「もう一度就職したい」と考え、就労支援をされているエンハートにお世話になっています。
現在はどんな仕事をしていますか?
さつまいもの洗浄を担当しています。元々は野菜の袋詰めを担当していましたが、より高度な仕事にチャレンジしてみたい!とエンハートのコーチに相談し、洗浄の仕事を任せてもらっています。
農業を仕事として働いてみて、実際にどうですか?
夏は暑いですし、体を使うので大変ではないと言えば嘘になります。その後仕事を覚え、慣れてくるうちに徐々に楽しくなってきました。1人でやる仕事ではなく、数名(4~5名)とコミュニケーションを取りながら進めていくため、対話も必要になる分、やりがいも感じています。
今後の目標について教えてください。
目標はもう一度就職することです。障がい者手帳を手にしたのが今から4年前。始めは障がい者としての自分を受け入れられませんでした。しかし、その後はエンハートのコーチのおかげもあり、今では自分自身と向き合い、前に向かって進みたいと思うようになりました。まずは今の仕事を一人前にできるようになり、ゆくゆくは農業を仕事にしたいと考えています。
インタビュー“高正利夫さん”
ちんげん菜づくりは、
どこにこだわっていますか。
JAなめがたしおさいのちんげん菜は、化学肥料・農薬を通常の50%以下に抑えた栽培を行っており、全量「茨城県特別栽培農産物」の認証を受けています。さらにおいしいちんげん菜を提供するため、生で食べられる「サラダちんげん菜」も開発しています。土作りを基本とし、えぐみを少なくするための栽培など、日々研究に努めています。
GAPに取組まれているのは、
何故でしょうか。
「安全・安心な農産物を消費者に届けたい」その想いで、「第三者認証GAP の取得」にチャレンジしています。私たちのちんげん菜は、県内で初めて茨城県 GAPの承認を受けました。オリンピック・パラリンピックの食材調達基準を満たしていますので、ぜひ世界各国の方々にも食べていただきたいです。
GAPとは
GAP(Good Agricultural Practice:農業生産工程管理)とは、食品安全、環境保全、労働安全等の面から農業の持続可能性を確保する取組みです。 これを多くの農業者や産地が取り入れることにより、結果として持続可能性の確保、競争力の強化、品質の向上、農業経営の改善や効率化に資するとともに、消費者や実需者の信頼の確保が期待されます。 (農林水産省HPより)
GAPは農業経営を改善するうえで、
どのような効果がありますか。
取引先からのクレームが減り、品質が向上したと評価されています。部会では、10年以上前より、GAPに率先して取り組んできましたが、作業工程などを第三者がチェックして見直しをはかるので、「より良い農産物を作っていこう」と、生産者の意識改革にもつながっていると思います。
従業員(家族)が元気に
働くために、
どのような点に
ついて気を付けていますか。
家族経営の方、外国人農業実習生を雇用している方など、様々ですが、働きやすい環境づくりを常に皆考えているかと思います。例えば、夏場の暑さ対策として、空調服を導入したり、膝や腰の負担を軽減できる「アシストスーツ」などの最先端な機材を試してみたりしています。
これから農業で働く人に向けて
メッセージがあれば
お願いします。
農業は簡単な仕事ではないかもしれませんが、良い農作物を作ればその分、やりがいに繋がります。少しでも興味がある人、楽しいと感じる人はぜひ一度話だけでも聞いてもらいたいです。以前よりも研修制度など自立できる仕組みがあるため“やってみたい”が実現できる場所になったと思っています。JAが精力的にご支援してくれるはずです。皆さんのチャレンジをお待ちしています。
インタビュー“會田春美さん”
ちんげん菜部会がGAPに
取り組むきっかけは
何だったのですか。
取引先からのクレームが多発し、品質の格差を是正しようと GAP を取り入れたのがきっかけです。茨城県はちんげん菜の産出額が全国一位ですが、なかでも当JA は最大の産地です。大きい産地だからこそ、「全国一位」に恥じない品質のものを提供していこうと全国に先駆けてGAP 手法を導入しました。
部会員がGAPに取り組む
ことで、
働く環境の改善などは
どのように変わりましたか。
GAP は作業場の整理整頓を基本とするので、より清潔な環境で働けるようになりました。そのほかにも、農家自身がリスク評価を行ったり、作業を見直したり、ルール化をすることで、作業の効率化にもつながっています。
流通・販売先から、
ちんげん菜の評価は
どのように変わりましたか。
以前より品質が良くなったと「産地の信頼性アップ」につながりました。GAP への取り組みなど、長年の日々の努力の成果だと思います。
これからどのようなことに
チャレンジしていきたいですか。
品質やこだわりを理解していただけるお客様に、当JAのちんげん菜をぜひ食べていただきたいと考えております。GAP の取り組みをもっとアピールしていくためにも、輸出など積極的にチャレンジできたらと思っています。
インタビュー“栗原広治さん”
「ヨリアイ農場」とは
どのような組織ですか。
平成26年8月に結成し現在、7戸8名の生産者で構成しています。特徴は、単なる生産者の集まりではなく、社会的な使命を持ったプロジェクトということです。「農業にふれる」、「農業を支える」、「地域に貢献する」の3つを行動の柱に位置付けています。
具体的には、どのような活動を
行っていますか。
「農業にふれる」では、年間を通し月1回以上開催される農業体験イベント「旬な遠足」を開催しています。 「農業を支える」では、地域農業を応援するための購入型クラウドファンディング「土浦一石の大名」を展開し、毎月、地域の生産者が育てたおいしいお米と野菜を大名会員様のもとへ送っています。 「地域に貢献する」では、地元幼稚園等に食育として、さつまいもの植え付け・収穫体験を行っています。その他にも企業とコラボレーションして、耕作放棄地を開墾し、体験農場を運営したり、畑で婚活を開催したり、六次化商品を開発したりなど、新たな農業の魅力を発信しています。
農業体験に参加する消費者や
連携する企業の評価は
どうですか。
農業体験に参加された方からは、以下のようなお声をいただいています。
”れんこん掘りなどめったに経験できない作業を通じ、農業の大変さを知ることができました。食へのありがたみを実感しました。”
”身近に子供の食育の場があって良かったです。”
”農業に触れるきっかけになりました。自分で育てている野菜についてもイベント時に農家さんからアドバイスがもらえるので知識が深まりました。”
”午前中に「旬な遠足」で収穫した農作物を、その日のうちに調理することで新鮮な状態で食べることができるのも魅力に感じます。”
「ヨリアイ農場」のメンバーの
反応はどうですか。
畑を「生産」の場だけでなく、「交流」の場として捉えることができて新しい農業の可能性に気づくことができました。畑にお客様を迎えることで、消費者の目線から考えるようになり、自身の作物に関する知識などを見直すきっかけとなりました。メンバー農家の間で技術の蓄積や人材交流も行われます。
「ヨリアイ農場」のリーダー
として、
これらの活動を新しい
農業の働き方とどのように
結び付けていきたいですか。
現在はコロナ禍で、感染防止対策を徹底したうえでイベントを開催していますが、まだまだ手探り状態です。コロナが終息し人の動きが戻ったら体験イベントの種類も増やしていきたいです。作物によって、農繁期は決まっているので日頃から SNSや活動PRをして興味をもっていただいた消費者の皆様向けに、体験イベントをより一歩踏み込んだ「援農」にも挑戦していきたいです。消費者と、生産者の仲間を増やし、ヨリアイ農場活動を通じ、食卓と農場の距離をもっと近づけたいです。
インタビュー“酒井洋幸さん”
ヨリアイ農場が発足した背景に
ついて教えていただけますか。
私はJA水郷つくばの職員でヨリアイ農場事務局長を担当しています。生まれも育ちも地元土浦です。長年、JAの業務にあたる中、「10年後のこの地域、農業はどうなっていくのだろう・・・」と漠然とした不安を持つようになりました。そのテーマについて若い担い手農家と話し合いを重ねた結果、「地域を元気付けたい、生活者と地域、農業の絆をもっと深めたい」という彼らの強い想いに後押しされ、平成25年にプロジェクトを立ち上げて準備を重ね、平成26年にヨリアイ農場が生まれました。
発足にあたり、苦労したことは
どんなことですか?
何と言っても、前例のない仕事だということです。このプロジェクトの設立当初は、何から始めればよいのか、どのように進めたらよいのか、全くゼロからスタートでした。しかし、成功に導くにはJAの既成の枠組みにとらわれず、10年後の地域農業に全く新しい価値を見出し具現化することだと考え、若い担い手農家と本音の議論を重ねました。随分厳しい意見も言われましたが、それが現在のヨリアイ農場の活動の柱になったのだと思います。
ヨリアイ農場を利用した方は
どんなお声をいただいて
いますか?
一番多いお客様は、地域周辺の子育て世代の親子連れです。毎月開催している「旬な遠足」という農業体験イベントはとても人気があり、リピーターのご家族も多いです。収穫体験しながら、農家の生の声を聴けるということで、子ども達に最高の食育の場だと評価いただいています。遠方のお客様には、「土浦一石の大名」と称したクラウドファンディングで会員になっていただき、毎月、お米や季節のお野菜をお届けしていますが、ホームページやSNSを通じ作り手の顔が見えて安心感があり、地元農家の食べ方なども知ることができると、毎月とても楽しみにしていただいております。
ヨリアイ農場のこれからの
展望について教えてください。
活動を重ねる中で、企業のCSR活動の受け皿として注目いただくようになりました。今では、企業の支援で耕作放棄地を開墾し、体験型農園を運営したりしています。また、農業体験イベントから生まれた6次化商品の梅酒も大人気ですし、畑で行う婚活イベントは、成功率?が非常に高いそうです。このように、他業種との事業連携は、これからのビジネスモデルとして力を入れていきたいです。
最後にメッセージを
お願いいたします。
作物を育てることはとても大変だし難しい。しかし、それらを超える喜びや楽しみがあると思います。多くの皆さんとの交流を通して「地域や農業」の持っている幅広い可能性を強く感じています。一人でも多くの方々に「農業」の楽しさに触れてもらい、少しでも身近に感じてもらいたいです。
これからも農家のことをもっと知ってもらえるよう、この地域でもっと楽しんでもらえるよう、JAは活動を支えていきます。「皆さんとヨリアっていきたい」それが私たちの願いです。