圃場全体ハダニ指数の目安(0.6)を超えた事例
〈グラフ1は圃場全体ハダニ指数、グラフ2はハダニ発生区の果房数・着果数〉

出典:JA全農(2019年 福島県)

指数が、3か月間(12月~2月)目安以上となり、一部でクモの巣症状も見られました。3月に少発生になり、極少発生になったのは4月でした。
イチゴの栽培に影響を与える水準でハダニ類が発生している状態のこと。
適切な防除対策により、この状態を作らないことが重要です。
「育苗期から本圃初期のハダニ発生状況(作期前半)」と「ミヤコバンカーを放飼した後のハダニ発生状況(作期後半)」の関係に着目しました。
ハダニ密度ゼロを達成していた場合、栽培期間を通じて、ハダニ防除効果が安定していました。
ハダニ密度ゼロ未達成の場合、栽培期間を通じて、ハダニ防除効果が不安定でした。※ミヤコバンカー設置個数が200個/10aでも不安定
ハダニ類は非常に小さいので目視することは容易ではありませんが、葉を吸汁して加害することで、加害部分はカスリ状の斑点が見られます。また、ハダニ類の密度が一定以上になると、葉は糸が張った状態(クモの巣症状)になります。
暖房機の近くや西日が長時間当たり続ける乾燥しやすい場所は、ハダニ類が発生しやすくなります。
2〜3週間に1度はハダニ類の発生状況を観察しましょう。また、営農指導員等と連携して調査を実施しましょう。発生状況を“見える化”することで、発生しやすい場所の特定や、防除プログラムの見直しに必要な情報を得られます。
調査する圃場を、畝毎(列毎)に100株程度に
区分けします。
株の上から達観調査を行い、ハダニ発生が1株でも
あったら、ハダニ発生区とします。
ハダニ発生区から代表2~3区選び、
その内の連続する10株についてハダニ数を測定し、
3段階に評価します。(指数3:51頭以上/複葉、 指数2:11〜50頭/複葉、
指数1:10頭以下/複葉)
評価を集計し、圃場全体のハダニ指数を算出します。(圃場全体ハダニ指数=代表区の平均ハダニ指数×ハダニ発生区画数÷全区画数)
圃場の一部を調査した結果から、圃場全体のハダニ発生状況を指数化することで、
防除プログラムの効果を把握できます。
試験結果では、圃場全体ハダニ指数0.8以下であれば、十分な果房数・着果数を確保できましたが、
防除効果安定の観点から、圃場全体ハダニ指数0.6を目安にしました。
圃場全体ハダニ指数の目安(0.6)を超えた事例
〈グラフ1は圃場全体ハダニ指数、グラフ2はハダニ発生区の果房数・着果数〉
指数が、3か月間(12月~2月)目安以上となり、一部でクモの巣症状も見られました。3月に少発生になり、極少発生になったのは4月でした。
圃場全体ハダニ指数が、2か月間(12月~1月)目安以上となり、2月になって少発生になりましたが、極少発生になったのは4月でした。
圃場全体ハダニ指数が、1か月間(12月)目安以上となり、
1月になって極少発生になりました。
ハダニ類は低湿度でも急激に増加しますが、ミヤコカブリダニは、湿度低下でふ化や発育が阻害されてしまうことから、晴天日昼間の飽差管理が重要となります。
1㎥の空気中にあとどれだけの水蒸気を含むことができるかという指標です。ミヤコカブリダニ定着のためには、3g/㎥から6‐7g/㎥の間に飽差を管理することが必要とされていますが、例として20℃の場合には60%、25℃の場合には70%の湿度を保つことが必要となります。
ハウス内の飽差管理と
ハダニ防除効果の関係
※試験地名の括弧表記は試験年次
ミヤコバンカー放飼後のハウス内環境を最適化するための湿度維持方法(一例)
土耕栽培
通路部分に有機物資材(稲わら、ケイントップ、モミガラ等)を敷設する。⇨畝マルチを株元でホチキス止めする場合、ハウス内湿度が極端に下がることがあるため、有機物資材の敷設により湿度改善につながります。
高設栽培
【灌水余剰水が架台下に垂れる場合(かけ流し)】
ビニール被覆を地面から1/3程度開けることでハウス内湿度改善につながります。(目安:ミヤコバンカー設置後、1か月ほど継続する)
【灌水余剰水が架台下に垂れない場合(循環型)】
架台下に有機物資材を敷設して、定期的に打ち水を行うことでハウス内湿度改善につながります。
土耕栽培でピートモス等の土壌改良資材を混和している場合、ココナツヤシ繊維資材(例:スーパーベラボンなど)やモミガラを通路部分に敷設すると有機物マルチ資材としてハウス内の飽差を最適に維持する効果が期待できます。栽培終了後はそのまま混和することで、土壌改良資材としての効果も期待できます。