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リリース

2016年04月28日

全国農業協同組合連合会(JA全農)

黒毛和牛にホルスタインの卵子をつくらせることに成功
~異品種間で生殖細胞の置換技術を確立。牛での成功は世界初!~

JA全農(ET研究所、飼料畜産中央研究所、家畜衛生研究所の研究グループ)は、黒毛和牛の卵巣内に異品種であるホルスタインの卵子をつくらせることに成功しました。この技術は将来、高付加価値家畜の大量生産、さらに絶滅の危機に瀕している動物の精子や卵子を効率よく別の動物に作らせる技術に応用が期待されます。この研究成果は平成28年4月27日(日本時間)に英国のオンライン科学雑誌「SCIENTIFIC REPORTS」に掲載されました。

背景

近年、胚盤胞補完技術(注1)を利用してマウス体内にラットのすい臓が形成されることが報告されました。また、マウスではNANOS3遺伝子を欠損(ノックアウト、以下KO)させる(注2)と精巣や卵巣内に精子と卵子がつくられないことも報告されています。
NANOS3遺伝子をKOした動物の受精卵に、別の個体の受精卵やiPS細胞などを注入し、キメラ(注3)受精卵を作った場合、生まれた個体の精子や卵子はすべて注入された受精卵やiPS細胞の遺伝情報を受け継ぎます。このようにして作出された動物の雌と雄を交配させることで、増殖させたい動物を効率よく生産できる可能性があります。そこで本研究の基礎となる技術を構築するため、胚盤胞補完技術を用いて、黒毛和牛の卵巣内に異品種であるホルスタインの卵子形成が可能かどうかを試みました。

注1)遺伝子KOにより特定の細胞への分化を阻害した受精卵に、分化阻害を受けていない別の受精卵細胞や多能性細胞を入れると、後から入れた細胞より分化した細胞に完全に置換されること
注2)特定の遺伝子を欠損させること。遺伝子機能の解析や疾患モデル動物の作出に有効な技術
注3)同じ動物個体に別の遺伝情報をもつ2種類以上の細胞が混在している状態

研究の内容

(1)雌黒毛和牛の体細胞のNANOS3遺伝子をKOした体細胞クローン(SCNT;注4)の黒毛和牛受精卵を作り、それを仮腹牛に移植し胎仔の卵巣を観察した結果、黒毛和牛の卵子を完全に欠損させることが明らかとなりました(図1)。

注4)体細胞から未受精卵への核移植でコピー個体(クローン)を作製する方法

図1.(a)NANOS3遺伝子をKOしていない牛の卵巣には卵子がみられます(矢印)。 (b)NANOS3遺伝子KO牛の卵巣では卵子が消失しています。(スケールバーは500μm)。  

 

(2)黒毛和牛のNANOS3遺伝子をKOしたSCNT受精卵にホルスタインの受精卵割球(7~10個)を注入してキメラ受精卵をつくりました。その胎仔の卵巣を観察すると、卵子形成が確認できたことから、黒毛和牛の卵巣内にホルスタイン種の牛の卵子をつくり出すことに成功しました(図2)。

図2. 胚盤胞補完法によってNANOS3遺伝子KO牛の卵巣内に補完された卵子(矢印)。 スケールバーは50μm。

 

今後の期待

(1)本技術で遺伝能力の高い和牛精子や卵子およびその受精卵の量産が比較的容易にできる可能性があります。
(2)繁殖能力が低く量産できないため割高な医療研究用ミニブタも、本技術の応用で量産の可能性が高まり、創薬や再生医療などの分野でも貢献が期待されます。
(3)希少野生動物や絶滅の危機に瀕している動物の増殖が比較的容易にできる可能性があります。

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