歴代の発表者紹介

吉沢 鷹浩(長野県)

優秀賞・特別賞 地域と共に成長する酪農経営を目指して

長野県の東端に位置する南牧村は、標高1000〜1500メートルの広大な高原地帯。真夏でも30℃を超すことが少なく、年間平均気温約7℃の冷涼な気候で県下有数の酪農地帯。所属するJA長野八ヶ岳管内は45戸の酪農家が約3200頭の乳牛を飼養しており、村の基幹産業のひとつとして位置づけられている。

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我が家の酪農は昭和36年に祖父がジャージーの育成牛1頭を導入したことから始まった。私は高校卒業と同時に就農し、祖父や近隣酪農家の牛舎に足を運び主要管理技術を学んだ。牛群検定事業に参加し乳質改善にも努めた。現在、経産牛35頭、育成11頭、合計46頭。81歳を迎えた祖父と2人の作業だが、現在は私が中心となり、搾乳や飼料給与の全般の管理を担当し、祖父には子牛の保育・育成の管理を任せている。

平成11年に改装した搾乳牛舎と平成15年に補助金付リースで整備した堆肥舎のほかパドックを備えた育成舎がある。飼養形態は36頭の対尻式の繋ぎ牛舎。「寝牛立馬手間目をかける」。寝ている牛、立っている馬ほど手間とまめに目をかけることが、いい牛づくりになると頑張っている。堆肥は自家利用が約4割、販売が約6割。共同で行っている自給飼料生産の手伝いをしてくれる野菜農家への堆肥散布なども行っており、地域循環型酪農を目指して耕畜連携も年々強化している。

注力している自給飼料生産は近隣酪農家5戸、野菜農家5戸との共同で行っている。自給飼料生産は昭和63年の開始当初から共同でデントコーンを作付、年々面積を拡大してきた。牧草の作付の延べ面積6680アール、デントコーン1850アールで合計8530アールで、東京ドームの約18倍。仲間5人がそれぞれ機械を持ち寄って作業しており、将来的には自給飼料生産組合として整備したいと考えている。

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平成24年よりチューブバックサイレージに挑戦。1本のチューブバックで約5ヘクタール分の牧草の調整が可能で、牛の嗜好にも特に問題はなく、作業効率は格段に向上した。今後もチューブバックでの牧草サイレージ調整技術の確立に向け、仲間と研究していきたい。デントコーンは土壌改善効果が非常に高く、輪作体系での作付を行っている野菜農家も効果を実感している。

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就農した平成19年当時は1日500〜600キロの出荷乳量だったが、翌年からは牛群検定事業への参加をきっかけに年々乳量を伸ばした。23年には1頭当たりの搾乳量10636キロになり1万キロ牛群になったが、翌年からはより長命連産で管理しやすい牛群を目標に、1年中平均して30キロ搾れるよう経営方針を切り替えた。乳質は平成19年当時、体細胞数約44万だったが、牛群検定、牛群ドッグなどの結果を踏まえて搾乳方法の見直し、牛の治療・入れ替えも行って、24年度には平均体細胞数17万まで改善することができた。

今後の目標は、自給飼料生産を中心とした経営基盤強化。作付面積を拡大して3年後には1000アールまで拡大して、粗飼料はすべて賄えるよう努力する。そのために地域の野菜農家にもメリットのある輪作体系を確立し、耕畜連携の自給飼料生産基盤を強化する。さらに牛群検定を活用した能力向上で、泌乳量のピークが30キロ程度で持続する平準化した個体を目標に遺伝的改良を進める。3年後をめどに育成舎と乾入舎を建設し、整備していきたい。

酪農が厳しい情勢だからこそ、自給飼料生産による経営基盤強化を中心に、近隣の酪農農家、野菜農家との絆を深めていきたい。そして祖父たち開拓移民のフロンティア・スピリットを引き継ぎ、理想とする「地域とともに成長する酪農経営」を目指して酪農仲間と共に歩んでいきたい。

※発表内容から抜粋しています。