適正施肥に向けた考え方

適正施肥の考え方として千葉県におけるニンジンの例や岩手県における水稲の例がよく紹介されています。

一般に、作物の収量は土壌中の養分含量が高まるにつれて増加しますが、ある値を境にして頭打ちになったり、低下するようになります。

土壌の可給態リン酸含量とニンジンの収量(千葉県)

(1)ニンジンの例

収量は土壌の可給態リン酸含量(作物が吸収利用できるリン酸の量)が低いところではリン酸施肥区で高くなりますが、150mg/100g乾土まで高まると、リン酸施肥区と無施肥区の収量差がなくなる、いわゆる施肥の効果がみられなくなります。このように、施肥の効果がなくなるか、最高収量が得られる値を上限値とし、最高収量の90%の収量が得られる値を下限値として、可給態リン酸含量の適正範囲が設定されています。このニンジンの場合は 40~150mg/100g 乾土が適正範囲となります。この試験結果に基づき、千葉県では土壌の可給態リン酸含量が上限値を上回った場合はその分だけ減肥するシステムが作られています。

土壌の交換性カリ含量と水稲の収量(岩手県)

(2)水稲の例

水田土壌の交換性カリ含量(作物が吸収利用できるカリの量)と水稲収量の関係をみたものですが、土壌の交換性カリ含量が400mg/kg(=40mg/100g乾土)以上では収量増加指数はほぼ100となり、カリ施肥の効果がないことが示されています。このことから、岩手県では土壌の交換性カリ含量が40mg/100g 乾土 以上の水田ではカリ肥料は100%減肥(無施肥)が可能としています。

農耕地土壌の養分実態

(1)水田および野菜畑における土壌の養分実態

平成10~15年に全国規模で実施された土壌調査結果では、水田土壌で50%以上がリン酸過剰、30%近くがカリ過剰であることが報告されています。また、露地野菜畑においてもリン酸およびカリが適正範囲の上限値を超えている圃場が多いことが明らかになっています。

水田土壌におけるリン酸およびカリの過剰実態

露地野菜畑における土壌のリン酸および加里含量の推移

(2)土壌の養分蓄積を考慮した減肥の取り組み

平成20年(2008)夏に起こった肥料原料価格の高騰は、その後やや沈静化したとはいえ 世界の人口増加による食糧需要の増大は避けられないなかで、近年の異常気象が食糧価格の高騰に拍車をかけている現状にあり、肥料原料価格は今後とも高いレベルで推移すると予想されます。そのような中で、作物の生産基盤である土壌の養分実態を知り、過剰蓄積している場合はその分減肥するという取り組みは、身近な施肥コスト低減対策として有用です。

実際にJAグループは次のような取り組みを進めています。

リン酸、カリウム減肥の指標値および無施用とする減肥基準値のとりまとめ

各県の減肥基準を参考にして、リン酸、カリウム減肥の指標値および無施用とする減肥基準値としてをまとめ、下表を作成してみました。

現在のところ、「無施用とする減肥基準値」として設定できると考えられるのは水稲および花きのカーネーションのみです。多くの品目は減肥の範囲が広いので、「減肥指標値:減肥を考慮・検討すべき数値」として記載しています。

現在、多くの県などで減肥試験を実施していますので、減肥基準が策定され次第、本表を作り直していく必要があります。

土壌リン酸、カリウムにおける減肥の指標値と無施用とする減肥基準値のとりまとめ

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