土壌肥料用語集

2012年 全国農業協同組合連合会 肥料農薬部 発行「施肥診断技術者ハンドブック」より抜粋

あ行か行さ行た行な行は行ま行や行ら行わ行

あ行

青刈り作物
緑肥」を参照。
赤枯れ
水稲の葉先が赤褐色また下位葉に褐色の小斑点が発生し,生育が不良になる生理障害。原因・症状によりⅠ型,Ⅱ型,Ⅲ型があり,Ⅰ型はカリ欠乏,Ⅱ型は亜鉛欠乏,Ⅲ型はヨウ素過剰によるといわれている。欠乏要素の施用のほか,客土や含鉄資材の施用,堆肥など有機物施用,暗きょ排水などの総合的な対策が必要である。
秋落ち
水稲の生育が前期の栄養生長期には旺盛であるにもかかわらず,生育後期の生殖生長期になって徐々に不振になり,初期の草できにくらべて登熟不良で玄米収量がいちじるしく少なくなる現象をいう。下葉の黄化,枯れ上がり,ゴマ葉枯れ病斑の発生などが特徴である。
水田土壌が高温で,たん水状態で還元が進むときに硫酸イオンが還元されて硫化水素が発生する。通常は発生した硫化水素は土壌中の鉄,マンガンなどと結合して不溶化し無害となるが,これらが溶脱して不足している老朽化水田では硫化水素は遊離状態で存在し,根の呼吸を阻害し,養分吸収を減退させ,いちじるしい場合には根腐れをおこし,生育後期に栄養凋落を引きおこす。これが秋落ちである。
秋落ち水田(老朽化水田)では,硫黄が過剰にならないように無硫酸根肥料の施用が勧められる(ただし,硫黄は必須元素であり,まったく補給しないとやがて硫黄欠乏が引きおこされる可能性があるのに注意)。また鉄・マンガンのほか,カリ・カルシウム・マグネシウム・ケイ酸などの養分がいずれも溶脱して不足しており,これらの不足する養分の補給(ケイカル,含鉄資材など)のほか,客土,排水改良などの総合的対策が必要である。
亜硝酸ガス障害
施肥量が極端に多い場合に,施肥窒素成分の硝酸化成が順調に行かず,中間産物の亜硝酸が土壌中で集積することがある。硝酸化成の進行にともない土壌pHは低下するが,酸性条件下では亜硝酸は不安定であり分解して亜硝酸ガス(NO,NO2など)が発生する(化学的脱窒)。ハウスでは閉鎖系であるため,発生した亜硝酸ガスが充満しやすい。温度が上がるとガス発生が激しくなり,作物に被害が発生する。土壌の酸性(硝酸化成が抑制される),過乾などの条件で発生しやすい。診断には,ハウス内の露滴のpHを調べ,pH5.4以下では発生の危険があるので,まず換気を図るとともに,石灰質肥料の施用,硝酸化成抑制剤の使用などを考える。 
アミロース
アミロペクチンとともにデンプン粒を構成する主要成分である。通常,デンプン粒の20~25%を占める。グルコースがα-1,4結合のみで長鎖状に連結 しており,分子量は5万程度である。ヨウ素に反応して冷時青らん色を呈する。うるち米に多いが食味では,アミロースが少ないほうが粘りがでるために美味であるとされる。その量は品種,成熟期間などによって変わるが,肥培管理では制御が困難である。
アミロペクチン
デンプン粒から可溶性のアミロースを除いた難溶性画分をいう。デンプン粒の75~80%を占める。アミロースでは長鎖状にグルコースが連結しているのに対して,アミロペクチンでは鎖の一部がα-1,6結合により分岐し,巨大分子(分子量5万~100万)となっている。ヨウ素に対して冷時赤褐色を呈する。水で膨潤し,熱水で糊となる。もち米のデンプンは大部分がアミロペクチンであり,米の粘りと関係が深い。
アルカリ分(アルカリ度)
土壌酸性矯正に有効な成分である。肥料では可溶性石灰〔0.5 M塩酸に溶けるカルシウム(CaO)〕の量,または可溶性石灰と可溶性苦土〔0.5M塩酸に溶けるマグネシウム(MgO)〕×1.3914の値の合量で表す(苦土に掛ける係数はCaO/MgOの比)。石灰質肥料のほか,石灰窒素,ようりん,ケイカルなどでその保証が認められている。
アロフェン
主としてケイ酸,アルミニウム,水からなる非晶質の粘土鉱物。アロフェン中には陰性コロイドと結合していない遊離のアルミナが多量に存在し,その活性が強い。火山灰土壌の粘土の主体をなすもので,リン酸の固定力が強いが,アンモニウムやカリウムの保持力は比較的弱い。
アンモニア化成(作用)
土壌中で有機物,尿素,石灰窒素などは微生物によって分解され,アンモニウムが生成するが,この作用を有機態窒素の無機化という。有機態窒素の無機化には,その組成,土壌条件 (温度,Eh,微生物活性など)が関係する。
易耕性
狭義には耕うん作業を容易に行いうる土壌の性質をいうが,広義には作物生育の培地として良好な物理的環境も含む。アメリカ土壌学会では,「耕うん作業に対する応答および根の貫入に対する機械的抵抗に関係する土壌の物理的条件」と定義している。
異常還元(土壌の)
水田土壌は,栽培時期にはたん水されるため,ごく表層を除き還元状態 (酸素が欠乏した状態)になるのが通常である。有機物の多い湿田や,乾田でも易分解性有機物を多量に施用した場合には,夏にかけて温度が上昇する際に有機物が急激に分解し土壌がいちじるしい還元状態になることがあり,これを異常還元という。異常還元により硫化水素が発生したり,有機酸などの有害物質が生成して,水稲の生育を阻害し,秋落ちなどの原因となる。
易分解性有機物
土壌に施用された有機物は微生物により分解されるが,その速度は有機物の種類などによって異なり,デンプン,糖類,タンパク質などは一般に速く,リグニンなどは遅い。土壌中で分解が速い有機物を易分解性有機物という。青刈り作物などの,タンパク質が多くリグニンが少ない新鮮有機物は分解が速く,堆肥のようにいったん腐熟させた有機物は分解が遅い。易分解性有機物の多量施用は異常還元をおこして作物根に障害となることがあり,また窒素含量の低い有機物では窒素の取り込みがおこり窒素飢餓の原因となる。
A層(えいそう)
土壌の最表層で,B層の上にある土層をいう。有機物の供給が多く生物活動が活発に行われるため,腐植に富み暗褐色ないし黒色を呈する。粘土や塩類などは溶脱している。表土にほぼ相当する。
塩基飽和度
土壌中の交換性塩基(一般にはカルシウムイオン,マグネシウムイオン,カリウムイオンをいう)が,土壌の陽イオン交換容量(CEC)の中に占める割合を%で示した値をいう。塩基飽和度が小さい土壌は酸性が強く,大きくなるほど中性に近づく。水田,普通畑では70~90%(黒ボク土などでは60~90%)が改良目標となっている。
黄化現象(作物の)
クロロシス」を参照。
オゾンホール
大気成層圏にはオゾンの濃度が高い層があるが,最近このオゾンが分解されて濃度が低下し穴があいたようになる現象が観測されるようになった。このオゾン層を破壊する物質としては,フロン類などのほか,亜酸化窒素(窒素肥料からも脱窒で生成),臭化メチル(土壌くん蒸剤)なども関与するといわれている。オゾン層が破壊されると,太陽からの紫外線が大気中を透過する量が増大し,人体の健康障害 (皮膚がんなど),植物の生育障害を引きおこすと考えられている。
温室効果ガス
大気中の二酸化炭素,メタン,亜酸化窒素,フロンなどは,地球から宇宙空間への熱の放射を妨げている。ちょうど温室のガラスのような働きをすることから,温室効果ガスという。大気中に二酸化炭素がなければ,地球の温度は-20℃くらいにまで低下するので,ある程度の濃度は必要である(植物の光合成に必要なことを別にしても)。しかし,二酸化炭素濃度が化石燃料の消費増大にともなって上昇しておりまたその他の温室効果ガスについても濃度上昇が観測されており,これが地球の温度上昇になるということで国際的な問題になっている。これまでのところ,二酸化炭素の影響がもっとも大きいと考えられてきたが,メタン,亜酸化窒素は濃度としては低くても温度上昇効果が二酸化炭素よりも大きいことから,これらについても全地球的な発生抑制が必要になろうとしている。
地球温暖化」を参照。

か行

可給態
有効態」を参照。
加水酸度 (加水分解酸度)
土壌に酢酸カルシウムのような弱酸の塩溶液を加えたときに現れる酸性である。カルシウムと交換浸出された水素イオンは酢酸となるが,酢酸の解離度が低く土壌粒子に再吸着されないため,交換酸度よりも酸性は強く測定される。土壌の潜在的な酸性の程度を示す性質として重要である。交換酸度は土壌酸性化がある程度進行してから現れるのに対して,加水酸度は酸性化の初期から現れる。
下層土
表土または作土の下の層をいう。通常は表土に対して下層土といい,作土に対しては心土ということが多い。下層土の肥培管理は,生産性を高めるばかりでなく,土壌のもつ環境容量を高めるうえからも重要である。
可溶性成分
肥料の場合,一定の溶媒(水,クエン酸,希塩酸など)に溶解する成分の量で評価することになっており,これを可溶性成分という。通常は肥料の有効成分と考えてよいが,厳密な意味で可溶性成分がすべて有効とは限らず,また逆に可溶性成分でなくても条件により植物が吸収利用する可能性を否定することはできないことから,このように表現している。成分により,浸出溶媒,浸出法は厳密に規定されている。
可溶性苦土(S-MgO)
0.5M塩酸と煮沸して溶解するマグネシウム(苦土)をいい,MgO %で表示する。炭カル(苦土炭カル)など主として土壌酸性矯正のために使われる石灰質肥料の評価に用いられ,このMgOを当量のCaOの量に換算し(係数1.3914を掛ける),可溶性石灰の量に合計してアルカリ分として保証する。
可溶性ケイ酸(S-SiO2
30℃の0.5M塩酸に溶解するケイ酸をいい,SiO2%で表示する。ケイカル,ようりん,ケイ酸カリ肥料などの有効ケイ酸として保証する。シリカゲル肥料では希塩酸には溶解しないことから,0.5M水酸化ナトリウム溶液に溶解するケイ酸(SiO2)をも可溶性ケイ酸と称して評価に用いることになっている。
可溶性石灰(S-CaO)
0.5M塩酸と煮沸して溶解するカルシウム(石灰)をいい,CaO%で表示する。石灰質肥料ではアルカリ分で成分を保証するが,これらの肥料中のマグネシウムはカルシウムと同じ酸性矯正効果があるため,可溶性石灰と可溶性苦土をそれぞれ測定し,後者については石灰の量に換算してアルカリ分とする。
可溶性マンガン(S-MnO)
0.5M塩酸と煮沸して溶解するマンガンをいい,MnO%で表示する。従来,肥料中のマンガンの評価には,水溶性マンガンとク溶性マンガンを用いていたが,炭酸マンガン(菱マンガン鉱)では,いずれの方法でも溶解性が低かった。しかし,そのマンガンは植物により吸収利用され有効なことが判明したことから,炭酸マンガン肥料の公定規格を設定するに当たり,希塩酸を用いた可溶性で評価することになった。
可溶性リン酸(S-P2O5
肥料中の有効性リン酸のひとつ。過リン酸石灰,重過リン酸石灰,複合肥料 (リンアンなど)のリン酸を評価するのに用いられる。アルカリ性クエン酸アンモニウム溶液(ペーテルマン溶液)に溶けるリン酸をいい,水溶性成分は内数となる。水溶性リン酸は,過リン酸石灰では遊離リン酸,リン酸一カルシウム,複合肥料の場合にはリン酸一アンモニウム(MAP),二アンモニウム(DAP)などであるが,アルカリ性クエン酸アンモニウム液には,リン酸二カルシウム,リン酸鉄・アルミニウム塩の一部が溶解し,これらも有効と考えられている。リン酸質肥料の評価法として,ドイツ,オランダなどでも用いられているが,アメリカのAOAC法では中性クエン酸アンモニウム溶液による方法が用いられており,測定結果も同じにはならない。
カリ(加里)質肥料
肥料三要素のうちカリのみを保証する肥料をいう。塩化カリ,硫酸カリ,硫酸カリマグネシウム(苦土)が代表的な肥料である。
環境保全型農業
農業は食料の安定生産・供給という本来の役割に加えて,環境と調和した産業として水と緑を保全し,豊かな国土を形成する機能の発揮が期待されている。一方,肥料,農薬の過剰使用,不適切な使用により環境へ悪影響をしている場合もみられることから,これらの負荷を軽減し,より環境と調和した農業とすることが求められている。このような状況から農林水産省では,「農業の持つ物質循環機能を生かし,生産性との調和などに留意しつつ,土づくり等を通じて化学肥料,農薬の使用等による環境負荷の軽減に配慮した持続的な農業」を環境保全型農業と定義し,推進している。環境保全型農業にはいくつかのレベルが想定されており,有機農業もこの一つの形態として位置づけている。
還元層(水田土壌の)
たん水下の水田では,空気の供給が不十分となり,土壌のごく表層(酸化層)を除いて,土壌が酸素不足の状態(還元状態)になる。この層では,鉄,マンガン,硫黄,窒素などは還元された形態に変化する。
緩効性肥料
水溶性で速効性の肥料に対して,肥効がゆっくり現れる肥料を総称して緩効性肥料という。肥効が最初からゆっくり継続的に現れるタイプと,始めはほとんど肥効が現れないが一定期間後効果が現れるタイプ(遅効性肥料ともいう)に分けられる。また緩効的にする手段で,化学合成系の肥料と被覆肥料,さらには硝酸化成抑制剤入り肥料などに分けることができる。
緩衝作用(土壌の)
たとえば土壌に酸を加えたとき,土壌pHが下がるが,同じ量の酸を加えても土壌によってpHは異なり,砂質土壌では大きく低下し,火山灰土壌や有機物の多い土壌では低下の程度は小さい。このように変化を小さくする作用を緩衝作用という。この作用はpHばかりでなく,有害物質を与えたときの植物の反応などでもみられる。
含鉄物
褐鉄鉱(沼鉄鉱を含む),鉄粉,鉄分を 10%以上含有する鉱さいまたは岩石の風化物をいう。特殊肥料になる。秋落ち水田で発生する硫化水素の害を軽減させる目的で施用される。
乾田
稲収穫後の冬期(麦まきのころ)に,普通程度の降雨3~4日後に,水田の表面が乾いているか,湿ってはいても歩いたときに足跡が明瞭につかず,また夏期においては自由にかんがい水が調節でき,中干しをすると数日で田面が乾燥する水田をいう。排水良好田。
乾土効果
土壌を風乾すると土壌中の有機物が分解しやすくなり,また微生物の一部が死滅して有機物が分解される。このような土壌に水を加えて保温静置すると有機態窒素は無機化してアンモニウムが生成される。同じ操作を未風乾土について行い,両者のアンモニウム生成量の差を測定し,これを乾土効果という。
拮抗(きっこう)作用(養分の)
植物養分が根で吸収されるとき,共存するほかの養分が吸収を阻害する現象をいう。一価の陽イオン(カリウム,アンモニウム)と二価の陽イオン(マグネシウム,カルシウムなど)の間で顕著にみられ,特にカリウム過剰でのマグネシウム欠乏の発生が典型的である。この拮抗作用は一価の陽イオンの影響が大きく,逆に二価の陽イオンの影響,たとえばカルシウム過剰でのカリウム吸収抑制はあまり顕著ではない。
この現象と逆に窒素を施用するとリン酸の吸収が増加するような現象は相乗作用と呼ばれる。
基肥重点施肥
緩効性肥料を用いると追肥が省略できる可能性があり,このようにして基肥のみまたは基肥に1回程度の追肥で栽培する施肥法をいう。窒素の溶出(または無機化)の速度が作物による窒素吸収の速度とマッチすることが必要である。このような施肥法によると追肥作業が省力できるばかりでなく,作物根域における養分濃度を最適に長期間保つことが可能になることから肥料の利用率が向上して減肥ができ,さらに慣行施肥法の場合にくらべて増収になることも期待できる。
客土
土壌の理化学性を改良するために,ほかの優れた性質をもつ土壌を施用することをいう。老朽化水田の改良のため鉄・塩基成分などの多い山土を客土するとか,砂質土や泥炭土へ優良粘土の多い土壌を客土する,あるいは重粘土壌などへ砂客土するなどの例がある。
キレート化合物
同一分子内にある2個以上の配位基により金属原子と結合することにより,環状構造をつくるのをキレート作用といい,できた結合化合物をキレート化合物という。その構造が金属原子を蟹の鋏(ギリシャ語のキレート)ではさむような形になることから命名された。
吸収(土壌による)
溶液に固体を加えたとき,溶液中の物質(溶質)がその固体に吸われることがあるが,この場合,溶液中の濃度と固体中の濃度が変わらない場合が吸収であり,固体の表面などで濃度が高まる場合は吸着という。ただ土壌の場合には吸収と吸着が必ずしも区別されていなく,リン酸溶液に土壌を加えたときのリン酸の溶液から土壌への移行をリン酸吸収という。土壌に養分が強く結合し土壌溶液中の濃度が低下すると,植物の利用が低下する。リン酸の場合にはこのような利用率の低下がいちじるしく,しかもリン酸吸収の程度は土壌により大きく異なり,火山灰土壌では特に大きい。この性質を表すために測定するのがリン酸吸収係数である。この係数が大きいのは火山灰土壌,またはその影響を受けた土壌と考えられる。
近赤外分析
700~3000nmの波長域を近赤外領域というが,このうち1200~2500nmの波長を利用した分析法。有機物中の官能基はこの波長域で特有のスペクトルをもつことから,試料に照射した光の反射光のスペクトルを解析して多くの成分を測定できる。試料を非破壊で迅速に分析できるので,飼料,食品,家畜排泄物,土壌などの成分分析に広く利用されている。食味とか飼料の消化率など本来スペクトルをもつものでなくても,これらの性質に関連する多くの成分の測定値との重回帰解析により測定が可能になっている。ただし成分・品質分析のいずれにおいても,検量線作成に用いた試料と同じ特性をもった試料でなければ正確な結果が得られるとは限らないことに留意する必要がある。
苦土
マグネシウムのこと。肥料の成分としてはMgO%の量で表示する。植物養分として重要(マグネシウムの項参照)であるほか,石灰質肥料,ケイカルなどの塩基性苦土は土壌の酸性矯正に役立つことから,MgOを石灰(CaO)の量に換算してアルカリ分として保証の対象となる。
マグネシウム」を参照。
ク溶性成分
肥料の成分のうち,2%クエン酸に溶解する成分をいう。水溶性成分とともに植物が吸収・利用できる成分と考えられる。リン酸(C-P2O5),カリ(C-K2O),苦土(C-MgO),マンガン(C-MnO),ホウ素(C-B2O3)について有効成分として指定されており,保証の対象とすることができる。
グラステタニー
牛,羊などの反すう動物の代謝異常にもとづくけいれん麻痺症状をいい,死に至ることもある。早春の放牧中,妊娠または泌乳中の雌牛におこりやすい。血液中のマグネシウム濃度の低下に原因があり,牧草中でマグネシウム濃度が低い場合のほか,カリ濃度が高いと拮抗作用でマグネシウムの吸収が抑制されグラステタニーが発生する。このため牧草中のK/(Ca+Mg)の当量比が2.2以上,Mg濃度が0.2%以下では要注意であるといわれている。
クロロシス
植物中の葉緑素生成が抑制され植物が黄色になること(黄化現象)をいう。葉緑素を構成する要素は炭素,水素,酸素以外に窒素,マグネシウムがありこれらが不足すると葉緑素ができなくなる。また鉄,マンガンも葉緑素の生成に関係することから,不足するとやはり葉緑素の生成が抑えられる。このような要素により発生するクロロシスは,作物の種類,要素によって特徴があり,生育中の作物の栄養診断を行ううえで重要な現象である。
グライ層
土層のうち,還元状態となり鉄が二価鉄となって青灰色,淡青色,帯緑色を呈する土層をいう。鉄は酸化状態では三価の化合物となっており,褐色となるが,地下水位が高く過湿となったり,水が停滞しているところでは,通気が不十分になり,還元状態となってグライ層ができる。水田の下層にはこの層がよく現れる。
ケイ酸植物
好ケイ酸植物」を参照。
減水深(げんすいしん)
たん水した水田で,たん水深の低下の速度をいい,普通1日当たりのmmで表示する。この減水深は,田面からの蒸発量,水稲葉面からの蒸散量,土中への浸透量の合計である。蒸発量,蒸散量は季節(気温),水稲の生育時期などにより決まるが,浸透量は土壌の性質により異なる。減水深の大きな漏水田では多量の水を要し,水温が上がりにくいため水稲の生育は遅れやすく,また溶脱が多いため地力の低下も顕著となりやすい。逆に減水深の小さい湿田では,通気が不足して酸素欠乏となり,異常還元で根腐れが発生しやすい。水稲の生育にとって適正な減水深は20~30mmといわれている。
交換酸度
土壌に塩化カリウムのような塩溶液を加えたときに現れる酸性をいう。測定法を考案した大工原(だいくはら)氏にちなんで,大工原酸度ともいい,置換酸度とも呼ばれた。
交換性塩基
土壌コロイドに吸着され,かつ容易にほかの陽イオンと交換することができる塩基(陽イオンのうち水素イオンを除いたもの)をいう。置換性塩基とも呼ばれた。土壌コロイドは通常の条件ではマイナスの荷電をもっているので,プラスの荷電をもつカルシウム,マグネシウム,カリウムなどの陽イオンが吸着されており,これらを個々に交換性カルシウム(石灰),交換性マグネシウム(苦土),交換性カリウム(加里)などといい,これらを合わせたものが交換性塩基である。交換性塩基を多量に含む土壌は一般に肥よくであり,アンモニウムなどの肥料成分を交換吸着して保持する力が強い。
好カルシウム植物
好ケイ酸植物に対比して用いられる用語。ダイズなどのマメ科植物はカルシウムの吸収量が比較的多く,一方ケイ酸はほとんど吸収しないのでこれを好カルシウム植物(または石灰植物)という
高機能性肥料
肥料の本来の機能は養分の補給であるが,これ以外に,たとえば有用微生物活性を高めることなどにより,土壌病害虫の軽減にも役立つことができれば多機能性肥料といえる。農薬入り肥料,植物生長調節剤(節間伸長の伸びを抑制し倒伏軽減となるものなど)など多様なものが考えられる。肥効調節型肥料のように肥効の発現を調節した肥料も,肥料の機能を高めていることで高機能性肥料と考えられる。
好ケイ酸植物
同じ培地で生育させても植物中の無機成分量は植物の種属などによって大きく異なる。特にケイ酸とカルシウムの吸収特性は植物による特徴が明らか であり,水稲などのイネ科植物はケイ酸の濃度が高い特徴があり,これを好ケイ酸植物(または単にケイ酸植物)という。好カルシウム植物に対比して用いられる。
こう積層
堆積した層序(年代)により地層を区別することがあるが,新生代第四紀のうち,現在から約1万年~約160万年前の期間をこう積世(現在は更新世という)と呼んでおり,この時期に堆積したと考えられる地層をこう積層という。沖積層が堆積した時期より前の時代になり,火成岩や第三紀以前の堆積岩やその風化物が更新世に運積された非固結物の地層である。一般に平坦ないし波状の海成・河成段丘に分布するが,分布面積はさほど大きくはない。沖積層土壌よりは古く,また第三紀以前の母岩に由来する土壌に比較して侵食の影響が少ないので土壌の保存状態がよいため,土壌層位の分化が進んでいる。重粘で固くしまり,透水性が劣り,酸性で肥よく度の低い土壌が多い。
肥持ち(こえもち)
施用された肥料の効果の持続性をいう。水溶性で速効性の肥料では肥料の吸収は速いが,反面効果が長続きしなく肥切れが比較的速い。これに対して,有機質肥料(油かすなど)や緩効性肥料では肥効が持続するので肥持ちがよいという。水溶性の肥料であっても,土壌に腐植などが多く陽イオン交換容量が大きいと,肥料成分が吸着保持される量が多く肥効の持続性がよくなるので肥持ちがよい土ということができる。
肥焼け(こえやけ)
肥料が直接植物葉に付着した場合に茎葉部が部分的に変色,または枯れ上がることがあり,これを肥焼けという。また肥料の多量を根の近傍に施用した場合,土壌溶液中の塩類濃度が高まり,作物の吸水が阻害され,あるいはある成分が多量に吸収された結果として作物が萎縮または枯死することがあり,これも肥焼けという。あとの場合は塩類障害,あるいは濃度障害ともいう。
根圏土壌
植物根の周辺の数mmの範囲の土壌は,根から離れた部分にくらべてかなり違った性質がある。すなわち根圏土壌では,(1)根の呼吸作用にともなう二酸化炭素の生成と酸素の消費,(2)養水分の作物による吸収による養分の濃度勾配の生成とpH変化,(3)根からの分泌物による影響,(4)有機物が多くなるため微生物活性がいちじるしく高まっているなどの差を見いだすことができる。根圏土壌は根と土壌のインターフェイスの役割を果たしているともみられ,その性質に興味がもたれている。

さ行

最小(養分)律
植物が生育するとき,多くの養分や環境因子が関係する。ある必須要素が欠除した場合,ほかの養分・生育環境が十分であっても,欠除した要素が制限になって植物は生育することはできない。リービヒ(1840)は「作物の生産量はもっとも不足する無機養分によって支配される」といい,これを最小養分律といった。この考えは,光,温度,水などの条件を含めても成立することから,このような環境因子をも含めた場合には最小律という。
作土
田や畑の土壌のうち,耕される部分をいう。作土は作物根の大部分があり,養水分の主要な供給の場となっている。土壌は一般に水分の総量が多く,膨軟で通気性・透水性がよく,微生物活動も盛んである。また肥培管理の影響がもっとも現れやすい層位でもある。作土は深いほど養分の供給総量が多く,作物の生育も良好となる。機械力によって深耕し作土層を深くすることは地力増強の大きなポイントである。しかし,急激な深耕は肥よく度の低い下層土を混入することになって収量が低下したり,機械の走行性に影響することがあり,また侵食が激化することもあるので注意する。
酸化還元電位(土壌の)
Ehともいう。物質の酸化と還元に際して電子の移動をおこそうとする力をその物質系の電位として表し,酸化還元がおこりやすいか,その程度を示す尺度としている。土壌のEhがプラスで大きいほど酸化的であり,土壌中の物質は酸化状態で安定な形態となり,逆にマイナスとなると還元的となり物質も還元状態で安定な形態に変化する。普通土壌のEhは0.1~0.3V程度であるが,水田土壌で有機物の分解が盛んなときには-0.2~-0.3V程度にまで低下する。Ehは土壌pHによっても異なりpHが高くなるほどEhは低下する(pH1につい て0.05~0.06V程度)ので,通常はpH6の時のEhで表すことが多い(Eh6と表示)。
酸化層
たん水下の水田では田面水中の藻類など水生植物の炭素同化作用による酸素の放出や大気からの酸素の補給を受けて,土壌のごく表層は酸化的状態にあり,その下の還元的状態の土層とは性質が異なることからこれを酸化層という。この酸化層では鉄は酸化状態の三価鉄として存在し褐色を呈するが,還元層では二価鉄となり青系統の色となることから肉眼的にも区別することができる。酸化層では好気的微生物が生息し,窒素は硝酸成作用を受ける。
三相分布
土壌は固相,液相,気相の三相からなっており,これらのそれぞれの容積を土壌全容積に対する百分率で表したもの,あるいはそれぞれの割合を三相分布といい,土壌の物理的性質を示す基本的な指標となっている。この割合は土壌の種類,層位によって異なり,また土壌管理によっても変化し,耕起,有機物施用などによって土壌を膨軟にすると気相,液層が増加する。
C/N比(炭素-窒素比)
有機物資材あるいは土壌に含まれる全炭素と全窒素の重量比をいう。炭素率ともいう。C/N比が低い油かすなどの有機質肥料を施用した場合には,土壌中での無機化は比較的速く肥料としての効果が現れやすいが,C/N比が高くなると一般に無機化は遅くなる。さらに炭素(エネルギー源)が多いと土壌微生物が急激に増殖し,その際に無機態窒素が菌体に取り込まれ植物に利用できなくなるため窒素飢餓がおこり生育障害となることがある。わらなどを堆肥化するのはC/N比を低下させるのも一つの目的である。わらのC/N比は50~120程度であるが,堆肥化してC/N比を20以下にするのが望ましい。ただしC/N 比は低ければよいわけではなく,汚泥ではC/N比は7前後と低いが,このままでは不安定であり,副資材の使用や堆肥化過程でのアンモニア揮散によりC/N比を調整することが必要である。
湿害
畑作物では土壌水分が多すぎると根の呼吸が低下して生育不良となることがあり,これを湿害という。また通気性が低下して酸素不足になり,この際に地温が上がると有機物の分解が急激におこり還元的になり二価鉄による害もおこる。湿害に対する感受性は作物によって異なり,転換畑での作物の選択にも関係する。湿害を受けやすいところでは,排水対策を改善し,また高うねにするなどの配慮が必要である。湿害を受けないためには気相が30%以上であれば問題はない。
湿田
水稲を収穫したあとの冬期(裏作に麦をまくときはその時期)において,普通程度の降雨後3~4日に,歩けばくるぶし以上に足が入り,夏期には田面水の浸透がまったくないか,非常に少ない水田をいう。排水不良田ともいう。
収量低減の法則
植物養分の補給量(施肥量)を増やしてゆくと,養分が少ない場合には収量の増加は大きいが,養分の量が増加するにつれて収量増加分がしだいに低下し,養分が最適範囲以上存在するときには収量は頭打ちになり増加することはない。このように養分量の増加につれて収量が増加しなくなることをいう。ただしこの収量の頭打ちは絶対的なものでなく,品種,施肥法,土壌改良などで水準を上げることが可能であり,そこに土壌肥料の技術研究の目標がある。
重粘土
土壌の微細粒子,特に粘土を多量に含有し,耕起時にけん引抵抗力の大きな土をいう。水分の吸収力が強く,透水性が小さいうえに保水性も小さいので,湿害,干害のいずれをも受けやすい。湿潤時には粘性が強くスリップしやすい反面,乾燥すれば固く固結する。北海道の東北部からオホーツク沿岸地帯に広く分布する。改良対策としては,排水の改善,有機物施用がある。
硝酸化成作用(硝化作用)
土壌中でアンモニウムが酸化されて硝酸イオンを生成する反応をいう。アンモニウム塩は硫酸アンモニウム(硫アン)などとして施用され,また有機物(尿素なども含む)が無機化して生成するが,酸化状態の土壌では不安定であり,微生物の作用により硝酸化成作用を受ける。この反応は少なくとも2段階で進行し,まずニトロソモナスなどのアンモニウム酸化菌(亜硝酸菌ともいう)の働きで亜硝酸イオンが生成し,ついでニトロバクターなどの亜硝酸酸化菌(硝酸菌ともいう)の働きで硝酸イオンが生成する。この反応は好気的条件を必要とし,またその過程で水素イオンを放出するので土壌は酸性化する。 
硝酸化成抑制材
土壌中での硝酸化成作用の進行を抑制する資材。アンモニウム態窒素は畑土壌では硝酸化成作用を受け硝酸に変化する。硝酸イオンはマイナスに荷電しているから土壌に吸着されず土壌溶液に存在するので,溶脱し損失となりやすい。溶脱した硝酸は地下水の汚染の原因ともなる。そこで窒素をアンモニウムの形態で止めるため硝酸化成菌の作用を抑えるため開発されたのが硝酸化成抑制材である。硝酸化成はアンモニウム酸化と亜硝酸酸化の2段階で進行するが,このうち後者の亜硝酸酸化作用を抑制すると有害な亜硝酸が集積するので不都合である。したがって硝酸化成抑制材としてはアンモニウム酸化菌の活性を抑制し,動植物などに有害でなく,肥料に混合したときに安定な資材が選抜される。アメリカのN-サーブに刺激され,わが国でも各社が競争で開発し,ジシアンジアミド,チオ尿素,AM,STなど数種のものが認められている。
硝酸還元作用
硝酸は還元状態の土壌では不安定であり,還元される作用をいう。嫌気的条件で生息する硝酸還元菌は硝酸中の酸素を奪って利用しており,硝酸はその結果,亜硝酸または遊離窒素(N2)に還元される。亜硝酸は不安定で分解し,窒素酸化物(NOなど)になるが,生成ガスは植物が利用できず大気中に損失となる(脱窒)。水田で硝酸塩の肥効が低いのはこの作用により窒素が失われるからである。
植物ホルモン
高等植物の体内で生成し,植物の生長,開花,結実などの生理的機能を調節する有機化合物をいう。微量で活性があり,アウキシン,ジベレリン,シトキニン,アブシジン酸,エチレンなどが知られている。これらと構造が類似した人工的に合成した化合物でも同様なホルモン作用をもつものがある。植物の発芽,発根,伸長,催花を促進する効果などが知られており,実利用としてはジベレリン処理による種なしブドウの生産が顕著な成功例である。ただ場合によっては逆効果となったり,環境影響が明確でないものもあることに留意する必要がある。
受光態勢
作物が光合成をするとき,太陽の光エネルギーを受ける植物の態勢(葉の並びかた)をいう。光合成は葉の中の窒素が多いほど盛んになるが,窒素を多く吸いすぎた場合には過繁茂となり,葉が相互に重なり合って十分に日光が当たらなくなる。稲では草丈は小さすぎず,葉は細めに直立し,分げつは密生せずに横に広がった形が受光態勢がよいとされている。
深耕
作物根が養分や水分をよりよく吸収利用できるように土壌を深く耕すことをいう。水田の作土から鉄が下層に溶脱している場合や,畑あるいは施設土壌で塩類などが集積している場合には,下層土との混合が有効である。しかし一般には下層土の肥よく度は低いから,一度に深耕すると生育不良になることが多いので耕土深は計画的に時間をかけて深くするとともに,リン酸・塩基などを補給するために土づくり肥料を適正に施用することが必要である。
人工培土
苗の生産のために,土壌にピートモス・バーミキュライトなどの土壌改良資材などを用い混合・造粒するなど一定の製造管理のもとで工場生産された培養土(配合土)をいう。必要に応じて窒素,リン酸,カリなどの肥料成分が添加され,水分,pH,物理性などが適正であり,作物の出芽・生育に支障がないことが必要である。水稲田植機に適合した育苗箱の床土(覆土を含む)専用の水稲用育苗培土,野菜などの鉢育苗用などの園芸用育苗培土,セル成型苗用の育苗培土などがある。
心土(しんど)
作土の下にある層で,普通の耕起によってはかく拌されない層をいう。心土は通常有機物含量などが低く養分が不足している場合が多いが,作物根はこの層まで伸びるのでその物理性,特に透水性や通気性などの良否は作物生育に大きく影響する。
生態系活用型農業
農耕地は人為の加わった生態系であるが,そこでは物質生産とともに有機物などを分解する機能,あるいは安定な系に復元しようとする機能がある。これらの機能を利用し,さらに強化することによって,食料生産を確保しながら生態系を維持することを目指す農業形態をいう。概念的・包括的なものであり,具体的な内容については幅をもっている。
生態系調和型農業
地球は人間以外の多くの動植物が生存する場でもあり一定の生態系をつくっている。これらの系を破壊した場合,長期的には人間の生存すら困難になる事態が考えられる。農耕地は,人為が加わってはいるがやはり生態系をなしており,このバランスがくずれた場合にはたとえば連作障害が顕在化するなどの支障がおこると考えられる。農耕地生態系を正しく理解し,これと調和し維持することができる農業形態をいう。化学肥料への過度の依存は,有機物の適正な循環を絶つとして批判の対象となっている。
ぜいたく吸収
植物はその生育に必要なだけの養分を吸収するばかりでなく,培地の養分が多い場合には生理的に必要な量以上に吸収することがあり,これをぜいたく吸収という。ぜいたく吸収は幼植物段階で目立ち,養分のなかではカリウムと窒素でいちじるしい傾向がある。
生理的酸性肥料
肥料を水に溶かしたときに中性であっても,土壌に施用したあとでは酸性になる肥料をいう。硫酸アンモニウム(硫アン)や塩化アンモニウム(塩アン)ではアンモニウムイオンに比較して対イオンとなる硫酸イオンや塩化物イオンの吸収は少ないから土壌に残りこれが土壌中のカルシウムやマグネシウムとともに土壌から溶脱されるので土壌が酸性化する。またアンモニウム(尿素でも同じ)は硝酸化成作用を受ける段階で水素イオンを生成するので酸性化の程度はさらに大きい。
石灰植物
好カルシウム植物」を参照。
石灰飽和度
土壌の陽イオン交換容量(CEC)のうち,交換性カルシウム(石灰)により占められる割合を%で示したもの。
塩基飽和度」を参照。
接触施肥
通常の化学肥料では濃度障害がおこるので施肥位置は種子あるいは根から一定の距離をおく必要があるが,被覆肥料で初期溶出を完全に抑制した肥料では種子または根に接触させて施肥することができる。これを接触施肥といい,水稲の育苗箱全量基肥などの例がある。根に近接して適切な濃度で養分を常時供給できるので肥料効率を格段に高くすることが可能である。
側条施肥
水稲側条施肥移植機を使って,田植えと同時に基肥を苗の株元から2~5cm横,地表面から3~5cm下に筋状に施肥することをいう。側条施肥移植機には,ペースト肥料を使うタイプが先行して開発されたが,その後粒状肥料を使うタイプが加わり普及してきた。田植えと基肥施肥を同時に行える省力と,施肥位置を最適化し,田面水への成分の溶出を最小限にして肥料効率を高め,環境への汚染負荷を少なくする技術である。
速効性肥料
早効きの肥料。土壌に施用したとき,速やかに植物により吸収・利用されて肥効を現す肥料をいう。有効成分の大部分が水溶性の無機質化学肥料のほとんどが速効性肥料である。
速成堆肥
稲わら,麦稈などの粗大有機物に窒素源を加えて,微生物の繁殖を促進し腐熟を早めて製造した堆肥のこと。窒素源として石灰窒素を使うと,アルカリによる分解促進もあるので効果的である
粗大有機物
未熟の堆肥,稲わら,麦稈,緑肥,青刈り作物,落葉,圃場収穫残さ,山野草などの有機物をいう。これらは施用後分解されて一部の植物成分を開放するとともに残りは腐植化して効果を現す。分解の様式,程度は有機物によって異なるが,分解しにくい物が多く,その多量施用は窒素飢餓や有害有機化合物の生成などにより障害となることも多い。収穫残さについては植物病害の問題もある。これらの施用に当たっては,できるだけ堆肥化をするのがよく,また窒素飢餓にならないように,窒素質肥料を補給する。石灰窒素は窒素源となるほかに,アルカリによる分解促進,有害微生物の抑制などにも効果があり,併用が勧められている。

た行

第三紀層(土壌)
第三系堆積岩を母岩として生成した土壌で,古生層,中生層より新しく,第四系(こう積層,沖積層)よりも古い地層をいう。中生層土壌よりも傾斜のゆるい丘陵に分布している。一般に細粒質で透水性・排水性が不良で重粘な土壌である。改良のためには酸性矯正と堆きゅう肥などの有機物の施用が有効である。
脱窒(作用,現象)
還元的土壌では硝酸態窒素は主として脱窒菌の作用により酸素が奪われ,窒素酸化物(NO,NO2など)や窒素ガス(N2)となり,大気中に放出される現象をいう。水田で硝酸塩の肥効が低い原因となる。アンモニウムを施用した場合でも,水田土壌の表層の酸化層で硝酸化成がおこって硝酸が生成し,これが水の移動にともなって還元層に移り,ここで脱窒する。そのため全層施肥により還元層へ施用すると肥効が高くなる。
脱窒は畑土壌でもおこり,アンモニウムが硝酸化成を受ける中間過程で亜酸化窒素 (N2O)などが揮散する。また亜硝酸塩が集積するとこれが分解(酸性で激しい)し,窒素酸化物を揮散する。亜硝酸の分解は非微生物的に進行するので化学的脱窒といい,ハウスなどでの亜硝酸ガス(酸性ガス)障害の原因となる。
炭素-窒素比
炭素率
C/N比」を参照。
団粒構造
土壌は大きさや形がまちまちの一次粒子の集合体と考えられ,この一次粒子がさらに粒団(二次粒子)をつくっている。一次粒子が粒団を形成せずに存在している状態を単粒構造といい,二次粒子の粒団,あるいはこれがさらに立体的な構造を形成している状態を団粒構造という。団粒構造には大小さまざまな孔隙が あり,大きな孔隙は通気性に,小さな孔隙は保水性に寄与し,土壌に適度な物理性をもたらす。排水性もよくなり,雨水の浸透性もよくなることから,水侵食に対する抵抗性も高くなる。このような構造は微生物の生息にも好適であり,植物への養水分の供給が促進される。
団粒の形成には粘土粒子,鉄・マンガンなどのコロイド状酸化物,土壌生物の代謝産物である粘質性有機物などが関与するので,有機物の施用が効果的であるほか,ポリエチレンイミン系やポリビニルアルコール系の資材なども有効である。
地下水位
土壌中のある深さ以上では水が飽和以上に存在している。この土壌粒子のすき間を満たし,重力の作用に支配されて運動している水を地下水といい,大気圧と等しい圧力をもつ面を地下水位(地下水面)という。地下水位の高さは作物の生育に大きな影響があり,地下水位が高いと水田では湿田となり,また畑地では湿害や根腐れの発生に関係する。転換畑での作物の選定の場合にも地下水位を考慮する必要がある。
置換酸度
交換酸度」を参照。
置換性塩基
交換性塩基」を参照。
地球温暖化
人間活動により,二酸化炭素,メタン,フロン類,亜酸化窒素などの排出が増加しているが,大気中でこれら温室効果ガスの濃度が上昇すると気温が上昇すると考えられており,このような現象を地球温暖化という。気温上昇は人類を含む生態系に大きな影響をすると考えられる。寒帯地域では農業の生産性が高まることも予測できるが,ほかの地域では気象条件の変化,適作物・適品種が変わり生産性は低下すると予測されている。温暖化により,海水面が膨張し,また極地の氷山が融けて海水面が上昇することも予想され,低海抜地帯の水没や,かん排水施設がだめになることも考えられ,影響はきわめて大きい。
窒素固定菌
空中窒素(N2)を生物的過程で有機態または高等植物が容易に利用できる形態に変える能力をもつ菌をいう。マメ科植物と共生して窒素固定を行っているのが根粒菌であり,宿主の植物が光合成でつくる糖類などをもらってそのエネルギーで窒素を固定し,それを宿主に返して植物の生育に役立っている。また固定菌が独立で窒素固定をする場合があり,アゾトバクター,クロストリジウム,ラン藻類がある。水田土壌では,ラン藻類による固定窒素の役割は無視できず,またアナベナ属のラン藻が共生するアゾーラ(アカウキグサ属の水生シダ)の窒素固定を利用する研究が東南アジアの水稲を対象に行われている。ただし,高収量水準のわが国では,藻類の繁茂は水温を低下させ,アゾーラは雑草となるなど,窒素固定菌の利用には限界がある。
窒素質肥料
三要素のうち窒素のみを保証する肥料。三要素以外ではアルカリ分などを保証する石灰窒素もこの類別にはいる。アンモニア性窒素(アンモニウムのこと)を保証する硫アン,塩アンなど,硝酸性窒素を保証する硝酸ナトリウム,硝アン(硝酸とアンモニアの両者)などのほか,尿素,石灰窒素,緩効性窒素肥料などでは窒素全量で保証する。
ち密度(土壌の)
土壌粒子がどの程度密に詰まっているか,その度合いをいう。土壌構造をつくる三相構造(固相,液相,気相)のうち,固相率は,ち密度を表す指標となる。一般に固相率が,火山灰土壌で25%以上,非火山灰土壌で55%以上となると土壌の硬度が高く,ち密度が大きくなり,土壌の透水性や通気性がいちじるしく低下して,作物根の伸長が阻害される。地力増進基本指針では,水田のすき床層のち密度を山中式硬度で14mm以上24mm以下,主要根群域の最大ち密度は24mm以下,普通畑では主要根群域の最大ち密度は22mm以下などとしている。
沖積土(沖積層土壌)
地質的に年代がもっとも新しい第四系完新統(かつては沖積層といった)を母材として生成した土壌をいう。その大部分は現在の河川の作用でできた軟らかい堆積物である。層位の分化は弱く,土壌の性質は母材の影響が強い。一般に養分が多く,保水性も高い。河川流域や海岸平野に広く分布しており,水利条件がよいことから水田として利用されている場合が多い。ただし地下水位が高いため,排水不良水田となることもある。
地力
作物の生産に役立つ土壌の能力をいい,土壌の物理的,化学的,生物学的な性質が総合されたものである。土壌には,母材など土壌生成にかかわる因子で決まり,人為的に動かしにくい性質と,土壌管理などの人間の営農努力などにより改善される性質がある。この後者に含まれる土壌養分の持続的な補給能力を狭義の地力という場合があり,肥料から供給される養分と区別している。
いずれにしても,作物の生産を長期安定的につづけるためには,地力の低下を未然に防ぎ,さらに増強するように,作付けや肥培管理を行うことが肝要である。
土の硬さ
土の硬さとは,加えられた外力に対する土壌の抵抗力と考えられ,植物の根張りや農業機械の走行性などに影響する。その測定には,山中式土壌硬度計を用いるのがもっとも簡単である。この硬度計は先端部の円錐体を土壌に差し込むときに必要な力を,計尺の目盛り(mm単位)で読むものである。耕起時にすぐ崩れるごく粗しょうな土壌ではこの硬度計の読みは7mm以下であり,耕起が非常に困難な土壌は20mm以上となる。植物の根は25mm以上ではほとんど伸長できない。
ち密度(土壌の)」を参照
土づくり肥料
作物の養分を直接補給して生育を促進するのではなく,土壌の酸性矯正やリン酸・塩基の補給などによって土壌の化学的性質を改善し,ひいては作物の生育を改善することを主な目的とする肥料をいう。これらは肥料取締法でいう普通肥料であるが,慣習的に土壌改良材と称していた歴史があり,その後地力増進法が制定されて土壌改良資材の定義が明確になったときに,この土づくり肥料という言葉がつくられた。
低投入持続型農業
化学肥料,農薬などの化学品の使用を最小とし,耐久性に問題のある資源への依存度をなくして,生産の持続性(永続性)を高めようとする農業形態をいう。植物養分については,物質循環を重視するとともに,輪作やマメ科植物の緑肥利用により窒素を補給することに主眼がおかれている。化学集約農業に対する反省を出発点としているが,耕地面積が限定されたわが国では実施が困難な点が多い。英語の略語でLISA(リサ)と呼んでいたが,LISAは本家のアメリカ農務省でも現在は使っていない。
環境保全型農業」を参照。
テクスチュロメーター
食品の歯ごたえ,かみごたえ,歯切れ,歯ざわり,口ざわり,舌ざわりなどを食品のテクスチュアというが,この測定のために開発された装置をテクスチュロメーターという。そしゃく運動をモデル化した装置であり,これに食品をはさみ,圧縮するときの変形を測定し,得られる曲線から食品の硬さ,もろさ,粘着性などを評価する。米の食味,食肉の変性程度の判定などに用いている。
天然供給量
土壌,かんがい水,雨水などによって作物に供給される養分の量をいう。この天然供給量の多少により,肥料・有機物などとして供給する必要がある養分の量が決まる。水田が畑に比較して肥よくであり生産性が高いのは,多量のかんがい水からの天然供給量があり,また水田で土壌有機物の分解が遅いため土壌からの窒素成分などの供給量が持続的につづくからである。
電気伝導率(EC)
水に塩類が溶けると電気が伝わりやすくなり,その程度を電気伝導率で表す(EC,電気伝導度ともいう)。解離度の大きい塩類では,その濃度とECは比例するから,土壌中の塩類濃度を示す尺度としてこのECが用いられる。通常は,土に5倍量の水を加え,えられる溶液についてECメーター(電気伝導率計)で測定し,この測定値の読み(単位はミリジーメンス毎センチメートル,mS/cm)を指標としている。なお最近はSI単位を用いてdS/m(デシジーメンス毎メートル)で表すことも多くなっているが,数字は同じである。
田面水
たん水した水田の表面にある水をいう。田面水の温度や深さは水稲の生育,収量と関係が深い。水稲生育の初期には田面水を深くすることにより温度の低下を防止できるし,昼間落水,夜間たん水によって保温効果を高くすることもできる。また,養分の天然供給や流亡とも関係し,適切な水管理は収量確保あるいは環境負荷との関係で重要である。
透水係数(土壌の)
土壌の透水性(浸透性)を表す尺度である。通常,飽和透水係数(cm s-1)をいい,土壌カラムに水を満たして下部から水を抜いたとき,1秒間に低下する水層の高さ(cm)を意味している。

土壌の透水性の良否と透水係数の関係はつぎのとおりである。
透水係数(cm s-1 透水性
>10-1 高い
10-1~10-3 中くらい
10-3~10-5 低い
10-5~10-7 非常に低い
<10-7 実質的に不透水
なお緑地造成などでは,透水速度,または透水距離といい,透水係数から換算したmm h-1,またはcm d-1の値を用いている。また育苗培土での透水速度は,透水係数の測定に用いる定水位試験法に準じた方法で,一定量の水が透水する時間で評価している。
倒伏
風や雨により作物が倒れることをいう。稲,麦,トウモロコシなどは出穂以後に,またダイズなどでは開花期以後の,地上部の重くなる時期に倒伏しやすい。機械収穫が困難になり,減収となるばかりでなく,収穫物の品質にも大きく影響する。倒伏を防ぐためには,倒伏抵抗性の高い品種を選び,窒素施用量に注意して過剰にならないようにすることが必要である。カリの施用は稈の強化や根の発達を促進して倒伏の軽減になり,またイネ科植物ではケイ酸の補給も稈の強化を図るうえで有効である。
土壌改良資材
土壌の性質のうち,物理性および生物的な性質を改良して,土壌の肥よく性を高め,作物生産力を上げる目的で土壌に施用される資材をいう。これに対して土壌の化学性を改良するのは肥料と定義されている。
地力増進法にもとづいて適正な表示を義務づけるように政令で指定される土壌改良資材と,指定の対象になっていない土壌改良資材がある。
土壌コロイド
土壌中にあって,粒径が0.001mm以下の微細な画分はコロイド(膠質物)としての性質をもっている。この土壌コロイドは単一の化合物ではなく,鉄・アルミニウムなどの水酸化物,ケイ酸塩,リン酸塩,粘土鉱物に有機物が複雑に結合したものである。両性コロイドであり,pHにより荷電の性質は変わるが,通常の条件ではマイナス荷電が優勢であり,そのコロイド粒子の表面には各種の陽イオン(塩基成分など)を吸着しており,土壌の保肥力のもととなっている。
土壌水
土壌にはいろいろの形態の水が含まれている。その存在形態,機能などによって,重力水,毛管水(懸垂水),結合水,結晶水,吸湿水,膨潤水,過剰水などと呼ばれるが,農業的には土壌に一定の圧力をかけたときに取り出せる水で分類している。多雨のあとなどで水が飽和以上に存在すると,過剰の水は重力の作用で移動できる(重力水)が,水が減少すると重力では移動できなくなり土壌の孔隙に毛管力で保持された形の水となる(毛管水,懸垂水)。この毛管水は孔隙の大きさにより保持される力が違い,その力に見合う圧力を外からかけると取り出すことができる。この圧力を水柱の高さ(cm)に換算し,その対数をとったものがpFであり,土壌水の状態を表すのに用いられる。最近ではSI単位(Pa)を用いるため,pFは国際的には廃語になっている。
土壌微生物
土壌中には多くの微生物が生息している。原生動物(アメーバなど),無脊椎動物(センチュウなど),藻類,カビ類,放線菌類,細菌類など多種多様であり,その数は細菌だけみても土壌1g中に100万~1億個がみいだされる。中にはまだ分離・同定されていないものも多い。土壌微生物は土壌中における物質変化に関与しており,動植物遺体の分解と腐植化,窒素の形態変化(アンモニア化成,硝酸化成,脱窒,遊離窒素の固定など)はすべて微生物のはたらきによるものである。また土壌病害微生物など有害な微生物も存在する。これらの微生物は個々に生存しているのでなく,相互に作用しあっており,そのためある菌を接種してもその増殖は土着の菌により影響されることが多い。肥よくで生産性の高い土壌では有用微生物の活性が高いばかりでなく,一般微生物をも含めた多様性が保たれていると考えられている。
土壌溶液
土壌水中には種々の養分などが溶解しておりこれを土壌溶液という。植物養分の大部分は,この溶液を経て吸収されており,土壌溶液の組成はその生育時期における養分の供給性を直接表している。土壌溶液は圃場で採取した土壌から遠心分離法,加圧膜法などで採取する方法と,圃場に埋設したポーラスカップ内を減圧にし採取する方法などがある。なお土壌を溶媒(水,酢酸緩衝液,塩化カリウム溶液など)で処理してえられる溶液は浸出液であり,土壌溶液とはいわないことに注意する。
土壌溶液診断
土壌溶液の養分,たとえば硝酸態窒素を測定して作物の肥培管理に必要な処方をつくることをいう。ポーラスカップで土壌溶液を随時採取し,養分濃度を測定して養分の過不足を診断する方法があり,土壌構造を破壊することなく継続的に養分状態を測定できる。
土地利用型農業
農業は基本的には,植物の光合成機能を利用して,太陽エネルギーを食糧などに変換するものである。光の利用のためには受光面積,ひいては土地面積が制限となる。このような基本的に土地の広がりをベースにして行う農業を土地利用型といい,通常,稲,麦類などの普通作物を対象とする。一方,ハウスで石油による加熱などの補助エネルギーを多く使う野菜栽培は施設型であり,その典型が植物工場である。畜産においても草地を利用する酪農などは土地利用型であり,舎飼いをする養豚,養鶏などは施設型である。
ドレンベッド
施設における野菜栽培での連作障害を回避するため,土壌消毒と集積塩類の洗浄用に,地面と離した栽培床(隔離床,ベッド)に,排水と殺菌用蒸気の導入のための溝(ドレン)と蒸気口をもつ成型品をいう。果菜類,葉菜類,花卉(カーネーション,キクなど)の連続栽培に利用されている。培地の水分調節が容易にできるので,低水分状態で栽培して糖度の高い高品質果菜(トマト,メロンなど)が生産できる。また蒸気消毒が容易にできるので土壌病害虫防除のための農薬を使わないですむ利点もある。

な行

中干し
土用干しともいう。水稲の生育期間中1~3回程度水田の水を落とし田面にわずかに亀裂が入る程度まで乾燥させることをいう。最高分げつ期から分げつ減退期にかけて行う(土用のころに行うので土用干し)。有機物の多い水田や老朽化水田などで土壌が強還元状態になるのを防ぎ,根圏に酸素を補給して根の呼吸を助け健全にするので生育が改善される。ただし中干しをあまり長期間行うと,アンモニウム態窒素の硝酸化成が進行し,つぎに入水したとき窒素の損失がおきやすくなる。この中干しで意識的に窒素の供給を一時切り,稲を倒伏しにくい姿にしたうえ,その後登熟に必要な窒素を穂肥で補給する稲の栽培法は V字型栽培法などと呼ばれている。
二段施肥
専用の施肥移植機を使って,水稲側条施肥田植えに合わせて,地表面から8~15cm下の位置に深層施肥をする施肥法をいう。側条施肥の欠点である生育後半の肥切れを回避しようとするものである。ただ精度よく深層まで施肥するためには,機械が複雑になり高価になるのが弱点である。
乳苗移植
稚苗より葉齢の小さい乳苗を本田に機械移植することをいう。乳苗とは,育苗期間が7~10日(稚苗の1/2以下)で,2.0葉期以下の苗をいう。稚苗移植にくらべて苗の環境耐性が高く,育苗箱数が少なくてすむので機械移植に有利であり,さらに育苗期間が短いので施設の回転率が高まり,省力・低コスト化の利点がある。一方,苗マットの根張りが弱く,移植機でのトラブルがおきやすく,草丈が小さいので,埋没・水没しやすいなどの欠点がある。
根腐れ
健全な水稲根は白いつやのある根か,あるいは周囲に酸化鉄の被膜をつけて赤褐色であるが,老朽化水田などで生育した水稲根は黒変し弾力がなく腐った状態となっていることがあり,この症状を根腐れという。還元状態の水田土壌では硫化水素や有害な有機酸などが生成して根に障害を与え,また根の呼吸が阻害されるのが原因となる。老朽化水田での秋落ちの根の症状である。土壌の強還元を防ぐため,排水などを改良するとともに,鉄・マンガンなどを含む資材を施用して硫化水素の害を抑制するのがよい。
粘土鉱物
粘土は,母材に由来した一次鉱物が変成して新たな鉱物が生成してできるが,この二次鉱物を粘土鉱物という。結晶質のものと非結晶質のものがある。前者はアルミニウム,鉄,マグネシウム,アルカリ金属のケイ酸塩であり,モンモリロナイト,カオリナイト,ハロイサイトなどがあり,後者の代表は火山灰土壌に多いアロフェン(アルミニウムのケイ酸塩)である。粘土鉱物は,水と養分の吸着保持に密接に関係しており,土壌の肥よく度を大きく左右している。
濃度障害
土壌溶液,あるいは培地の塩類濃度が高いためにおこる作物の生育障害をいう。塩類濃度が上がると溶液の浸透圧が高くなり,根の吸水が阻害され,また養分吸収にも影響して,障害がおこる。野菜栽培では施肥量が多く,また1年間に多回栽培されるため肥料塩類が集積しやすい。さらにハウス栽培では,降雨の影響がなく,高温で蒸発散が多いため,水の動きが上向きとなり塩類が土壌の表層に集積しやすく,濃度障害がおきやすい。
このような障害の対策としては,まず施肥管理を見直して発生を未然に防ぐことが重要であり,土壌診断,作物栄養診断の活用が有効である。いったん,塩類が集積した場合には,多量のかん水により塩類を洗い流す(ハウスではビニールをはずして雨ざらしにする),あるいは吸肥力の大きい飼料作物などを栽培して養分を吸収させる(クリーニングクロップ)などの対策をとる。また深耕・混層ロータリーなどを活用して養分の少ない下層土と混合する方法もある。なお,洗浄による除塩は,溶脱水などによる環境汚染の可能性があるので注意する。

は行

pH(ピーエッチ)
水溶液中の水素イオン濃度を示す指標であり,水素イオン濃度の逆数の対数。pH7が中性,7未満が酸性で数字が小さいほど酸性が強い。pH7以上がアルカリ性であり,数字が大きいほどアルカリ性が強い。純粋な水はpH7であるが,通常は二酸化炭素を含んで弱酸性(pH5.3)となっている。pHは酸性の強さを示す(強度因子)が,土壌の酸性矯正の場合に必要なアルカリの量は土壌の緩衝能で変わるので交換酸度などの測定(容量因子)も必要である。
植物の生育には一般に弱酸性から中性付近がよいが,最適なpH範囲は植物の種類,品種などで変わる。
pF(ピーエフ)
土壌中の水は,土壌孔隙に保持されているが,この保持に必要な圧力を示す指標。水を保持する力は毛管力などによるもので,大きな孔隙に存在する水の保持力は小さいので植物が吸収したり外部に取り出すのは容易である。しかし微細な孔隙に保持された水は大きな圧力をかけなければ移動せず植物による吸収も困難である。土壌から水を取り出すときに必要な圧力を水柱の高さ(cm)に換算し,その対数をとったのがpFである。pF0は水で飽和した状態(容水量,正確には厚さ1cmの土層に飽和状態で保持されている水,pF1.5が圃場容水量に相当する。pF1.8までが重力で移動する水(重力水),pF1.8 ~3.0の間が植物に利用される水(易有効水分,または正常生育有効水分),pF3.0~4.2が植物は吸収するが生育が劣る範囲(難有効水分),易有効水分と難有効水分の合計が全有効水分(pF1.8~4.2)であり,pF4.2が萎凋点である。
最近は圧力をSI単位で表現するためPa(パスカル)単位で表現することが勧められており,pFは国際的には用いられない。
B/F値(細菌/糸状菌比)
根圏土壌などで,細菌(bacteria)と糸状菌(fungus,カビ類) の生息数の比をいう。連作障害がみられる畑土壌では細菌数が少なく,糸状菌の数が多い場合がみられ,B/F値が小さくなっていることから,この値が1,000以上でなければ健全な土壌ではないといわれている。
肥効調節型肥料
肥料成分の溶出や可給化速度を調節することによって肥効の向上を図った肥料をいう。IB,CDUなどのように難溶性あるいは微生物による分解や加水分解を受けにくい化合物を利用した化学合成系緩効性窒素肥料のほか,速効性肥料を被覆(コーティング)した肥料(被覆肥料)またはほかの材料に混合して成型した成型肥料(マトリクス肥料)など物理的な方法により緩効性にした肥料がある。また硝酸化成抑制材を添加した肥料も肥効の発現が変わるのでこれらも広い意味で肥効調節型肥料といえる。ただ場合によっては,従来型の化学合成系の肥料に対して被覆肥料を肥効調節型と狭義に使う場合もある。
肥よく(沃)度
作物が生育するうえで必要な土壌の化学的,物理的,生物的な諸性質を総合的に評価するものであるが,一つの尺度では明確に定義されない。作物が必要とする養分を有効な形で,あるいは有効になりうる状態で十分にもっている土壌を肥よく度が高いといい,一般に腐植含量が高い土壌となっている。ただ養分があっても物理的な性質が劣ると作物は養分が吸えず生育が劣り,また生物的な条件が悪いと養分の有効化が遅れたり病害により生産があがらないことになる。肥よく度は土壌の母材,地形,気象,植生条件によって変わり,また長年の土壌管理の結果とみることもできる。広義には地力とほぼ同意で使われている。
微量要素
植物が正常に生育し結実していくうえで必要不可欠な元素は通常の植物では16種類あるが,このうち植物の要求量が少ない元素を微量要素という。マンガン,ホウ素,鉄,銅,亜鉛,モリブデン,塩素がある。このうち肥料の主成分として含有することを保証できるのはマンガンとホウ素である。鉄,銅,亜鉛,モリブデンについては欠乏する地域,作物が比較的限定されていることから肥料の主成分とはしないが,肥料の効果発現促進材として添加することが認められている。塩素は塩化物の形で肥料に存在することが多いので主成分,あるいは効果発現促進材として認めていない。なおコバルトは植物の必須要素ではないが,マメ科植物の窒素固定の際に必要であり,また家畜に欠乏する場合があることから効果発現促進材として認められるようになった。
微量要素は欠乏すると特有の症状が現れ,生育・収量に大きく影響する。しかし必要量が少ないので天然供給,堆肥の施用などで間に合うことが多く,また土壌pHの改良で欠乏がでなくなることもある。過剰になると障害が発生する(ホウ素でいちじるしい)ので土壌診断などを活用するのがよい。
フェーン現象
風が山を越えて吹いた場合,気温が急に上昇し湿度が低下することをいう。台風が山脈を越えて日本海側の平地に吹いたときなどにみられ,出穂期に当たると水稲体内の水分バランスがくずれ白穂となって被害が発生する。水稲体内のケイ酸濃度を高くすると葉の気孔の開度が小さくなり水分の発散が少なくなることから,ケイカルを施用するとフェーン現象による被害を軽減することができるという報告がある。
複合肥料
肥料三要素(窒素,リン酸,カリ)のうち2成分以上を保証する肥料。化成肥料,配合肥料,成型複合肥料,被覆複合肥料,液状複合肥料などがある。有機質肥料のなかにも三要素のうち2成分(窒素とリン酸など)を保証するものがあるが,動植物質のものは有機質肥料となり複合肥料とはいわない。
腐植
土壌中に存在する暗(褐)色の有機物をいう。有機物が微生物の作用で分解・再合成されてできると考えられるが,微生物ばかりでなく化学的過程も関与している。堆肥を施用したときにはその中の炭素の11%が,またダイズ油かすでは約3%が腐植になったといわれている。腐植の組成は複雑な高分子で構造は明確となっていないが,炭素含量は平均して58%なので,土壌中の有機炭素を定量し係数1.724をかけて腐植含量とする。腐植は土壌構造を維持するなど物理的条件の改善に効果があり,またその分解で放出される窒素の緩効的効果,成分の保持,有効化(キレート作用)など広範な効果をもち,地力のかなりの部分が腐植の量と質によっている。
ホウ素質肥料
ホウ素(B)を保証した肥料であり,ホウ酸とホウ酸塩〔ホウ砂(ホウ酸ナトリウム)とホウ酸カルシウム(コールマナイト)〕がある。アブラナ科(ナタネ,ダイコン,ハクサイ),ブドウ,リンゴ,ミカン,テンサイ(シュガービート)などで欠乏する事例が多い。欠乏した場合の施用効果は大きいものがあるが,施用量はごく少なく,反面過剰障害も大きいので注意する。ホウ素質肥料を単独で施用することは少なく,多くは複合肥料に混合して使っている。また微量要素複合肥料(FTEなど)は溶解性が遅いので過剰害がでにくく使いやすい。
圃場試験
圃場をくぎって試験区をつくり,施肥などの条件を変えて作物を栽培し,処理の効果をみる試験をいう。実際の作物栽培と同じ条件で行うため,もっとも確実に肥料などの効果を知ることができるが,経費,労力を多く必要とする。通常の肥料試験では,1区10~30m2とし,反復して同じ処理区を2ないし3か所設ける(2連または3連という)
ポット試験(植木鉢試験)
適当な大きさのポット(鉢)に土壌を詰め,肥料などの処理を変えて作物を生育させ,作物の反応をみる試験。土壌の種類,環境条件などをコントロールしやすく,多くの要因を組み合わせて試験することができる。しかしポットの大きさによって根の生育可能スペース,日射,温度などの条件が,圃場とは違うため面積当たり収量などの比較には限界があることに注意が必要である。

ま行

マグネシウム
肥料の関連では苦土と呼ばれることが多い。元素記号Mg。マグネシウムは葉緑素の構成元素であり光合成で重要な役割を果たす。また炭水化物やリン酸の代謝に関係し,リン酸の吸収や体内移動にも関係する。欠乏した植物では特有の欠乏症状がみられる。マグネシウムの欠乏は,土壌中で可給態マグネシウムの絶対量が不足する場合と,カリウムなどが多いため拮抗作用で吸えなくなって欠乏となる場合がある。酸性土壌では雨水で流亡して欠乏となることが多く,特にカコウ岩,石英粗面岩を母材とする土壌や古い火山灰土壌,泥炭土壌で欠乏となりやすい。一方,カリウムが集積してマグネシウム欠乏がおこる事例は家畜ふん尿を多量に連用した場合にみられている。拮抗作用はアンモニウムでもおこるから,ふん尿を施用した場合春先にムギなどでマグネシウム欠乏となる事例もある。マグネシウムのみを保証する肥料は苦土肥料であり,硫酸苦土(硫酸マグネシウム)などがある。苦土肥料以外にもマグネシウムを保証する肥料は多く,石灰質肥料(苦土炭カルなど),ようりん,苦土重焼りん,ケイ酸カリ肥料,ケイカルなどのほか,苦土入り複合肥料も多い。
マンガン
元素記号Mn。葉緑素の形成,光合成過程,酸化還元などの酵素の賦活剤,ビタミンCの合成などに関与する。マンガンの可給性は土壌のpH,Ehに関係して大きく変わり,pHが低い場合や還元土壌では吸収されやすい形態になっている。反面,老朽化水田では溶脱を受けてマンガン欠乏になる。畑では砂質強酸性土壌で溶脱してマンガンが少なくなった土壌や石灰過剰でpHが高い場合にマンガン欠乏が発生しやすい。
マンガン質肥料には,硫酸マンガンなどの水溶性マンガンを保証する肥料,鉱さいマンガン肥料などのク溶性マンガンを保証する肥料のほか,炭酸マンガン肥料(菱マンガン鉱)では可溶性(0.5M塩酸可溶性)マンガンを保証している。そのほかマンガンを保証する肥料に,BMようりん,ケイカルやマンガン入り複合肥料がある。
ミリグラム当量(meqまたはme)
ある元素(または元素団)の原子量(または式量)を原子価(荷電の数)で割った値にミリグラムをつけたもの。土壌中の塩基の量,陽イオン交換容量などを表すのに用いる。1meqはつぎの重さに相当し,それぞれ水素1mgに化学的に対応する量である。
元素(団) 重さ(㎎)
カルシウム(Ca) 20.04
同酸化物(CaO) 28.04
マグネシウム(Mg) 12.15
同酸化物(MgO) 20.15
カリウム(K) 39.10
同酸化物(K2O) 47.10
ナトリウム(Na) 22.99
アンモニウム(NH4 18.04
無機化
土壌中の有機物が主として微生物の作用で分解し,無機物に変化する反応をいう。窒素化合物について使われることが多い。有機質窒素肥料あるいは動植物遺体などを土壌に施用すると,土壌中の微生物はこれを分解して自分に必要なエネルギー,養分を獲得し増殖する。窒素を含む化合物(タンパク質,核酸,アミノ酸,アミドなど)はいずれもアンモニウムを生成する(アンモニア化成)。リン酸の場合も核酸などが分解して無機リン酸になる反応がある。ただフィチンがフィターゼの作用で分解する場合のように反応が特定される場合は,無機化には違いはないが,加水分解と的確に表現されるほうが多い。
アンモニア化成」を参照。
無硫酸根肥料
硫酸イオンを含まない肥料。窒素質肥料では尿素,塩アン,硝アンなど,リン酸質肥料ではようりん,重焼りんなど,カリ肥料では塩化カリなどがある。老朽化水田などで硫酸が多いと還元の進行にともない硫化水素が生成され根腐れが生じ秋落ちの原因となるので,無硫酸根肥料の施用が勧められている。
モンモリロナイト
2:1型で膨潤型に属する結晶性粘土鉱物。ケイ素-アルミニウム-ケイ素の3層があり,この層がさらに積み重なった構造となっている。この層間が水で膨潤する性質がある。この粘土鉱物はCECが比較的大きいので塩基類の吸着保持能力が大きく,また保水性に富むなど優良な性質があり,その含有量の多い土壌は生産が高くなりやすい。

や行

有機農業
化学肥料と農薬を用いない農業形態。化学肥料は化石燃料・リン鉱石・カリ鉱石など有限な資源に依存するため持続性がないと主張している。また農薬については化学品に対する危惧と食品への残留が主たる根拠になっている。植物養分の供給には,マメ科植物を導入した輪作,緑肥,堆きゅう肥の利用など,地域で供給できる養分を使うのが原則であり,それで供給ができない微量要素などの特定の許容された物質(リストが作られている)を使うことができる。病害虫防除については天敵利用,限定された天然産農薬などの利用による。
有機農産物は分析的にも外観からも化学肥料を使った農産物と区別することはできないから,生産・流通の段階でのチェックが必要であり,認証団体による生産農家の認証,ラベルの添付,検査などがともなう。ただし土地面積が狭く,地代の高い日本で成立するのには一定の限界がある。また化学肥料の使用に対する安全上の危惧には必ずしも根拠がない。
日本においても環境保全型農業の一つの形態として認められており,有機農産物の日本農林規格が定められている。
有機物(土壌改良資材の)
地力増進法にもとづく土壌改良資材品質表示基準に係わる試験法では,550~600℃で4時間の強熱減量で測定し,泥炭および腐植酸質資材に適用されている。
有効態成分
作物によって直接吸収利用できる形態,あるいは施用後比較的短期間(1作中など)に土壌中で変化して吸収利用できる形態になる成分を可給態,または有効態という。基本的には概念的なものであるが,実際には特定の溶媒を用い一定の条件で抽出でき,植物による吸収などと相関の高い成分をいう。
肥料および土壌中の有効態成分の抽出方法をつぎに示す。
成分 肥料 土壌
リン酸 ○アルカリ性クエン酸塩液(ペーテルマン液)に溶解(可溶性)
○2%クエン酸に溶解(ク溶性)
○水溶性
○1mmol/L硫酸に溶解(トルオグ法)
○NH4F-HCl液に溶解(ブレイ法)
○NaHCO3液に溶解(オルセン法)
カリウム ○2%クエン酸に溶解(ク溶性)
○水溶性
○1M酢酸アンモニウム液で浸出(交換性)
○熱硝酸に溶解(可給態)
カルシウム
マグネシウム
○0.5M塩酸に溶解(可溶性)
○2%クエン酸に溶解(ク溶性Mg)
○水溶性(水溶性Mg)
○1M酢酸アンモニウム液で浸出(交換性)
マンガン ○2%クエン酸に溶解(ク溶性)
○0.5M塩酸に溶解(可溶性)
○水溶性
○同上+0.2%ヒドロキノン液で浸出
(易還元性)
ホウ素 ○2%クエン酸に溶解(ク溶性)
○水溶性
○熱水可溶性
ケイ酸 ○0.5M塩酸に溶解(可溶性)
○0.5MNaOH液に溶解(可溶性)
○pH4酢酸緩衝液で浸出(有効態)
○たん水保温静置で水溶性
○リン酸緩衝液で浸出
有効土層
作物の根が容易に伸展することができる物理状態にある土層をいい,その深さは通常,地表から基岩,盤層,ち密層,あるいは極端なれき層までをいう。有効土層が100cm以上あると「深い」,100~50cmを「やや深い」,50~25cmを「浅い」,25cm以下を「きわめて浅い」と表現する。
陽イオン交換 容量(CEC)
土壌が吸着できる塩基の最大量をいい,通常乾土100g当たり陽イオンのミリグラム当量(meq)で表す(1meq= 原子量(mg)/荷電数)。なお最近はSI単位系を使うことが勧められており,それによるとcmol(+)kg-1と表現した場合,meq/100gと同じ数字になる。cation exchange capacityを略してCECといわれる。土壌のCECは土壌粘土と有機物の量と種類によって異なる。粘土鉱物100 g当たりでは,カオリナイト5~12meq,ハロイサイト5~40meq,イライト10~40meqであるが,モンモリロナイトでは80~150meqと大きなCECをもつ。火山灰土壌に多いアロフェンでは25meq前後である。わが 国の土壌ではCECは一般に低く,数~40meq程度のことが多い。堆肥類,腐植酸質資材,ゼオライト,ベントナイトなどを施用することによってCECを増加させることができる。
容水量
土壌が重力に抗して保持しうる全水分含量をいい,これはさらに最大容水量と圃場容水量とに区別される。前者は最大に保持しうる容量(pF0のときの水分)で土壌の全孔隙が水分で満たされた状態をいう。圃場容水量は,かんがいや降雨により大量の水が加えられたあと,重力水の下方移動が少なくなったときの水分量をいう。水の下降移動の停止時期を明確にきめにくいので,通常は飽和後24時間経過したときの水分を測定してこれを圃場容水量としている(pF1.5~2.0の水分に相当)。土壌の容水量は土性,土壌構造,腐植の含有量などによって異なる。
溶脱
土壌中に含まれる成分が土壌水に溶けて下層へ流れ根の到達する範囲から失われる現象をいう。土壌中に存在する可給態の塩基類は,大部分土壌コロイドに吸着保持されているが,土壌溶液中の水素イオンや他の塩基によって交換し,あるいは有機物があると有機キレート化合物などとなって溶解し土壌溶液に移行する。土壌溶液中の養分は植物根から吸収されるが,多量の雨などがあって水が下方に移動すると土壌溶液中の養分も一緒に下方に移動する。老朽化水田では鉄・マンガンをはじめとして多量の塩基類が失われている。硫酸塩や塩化物を多量に施用すると陰イオンが過剰になり土壌に保持されている塩基類を解離させて溶脱を多くする(生理的酸性肥料)。
養分吸収率
施肥した養分はすべて作物によって吸収・利用されるのではなく,一部は,溶脱,土壌による固定,揮散(窒素の場合)などにより系外に失われたりして吸収されない。施用した養分量に対して実際に植物が吸収した量の比率を養分の吸収率という。利用率ともいう。
         (吸収された養分の量-天然供給量)
吸収率(%)=-------------------×100
                 施用養分量 

天然供給量を正確に測定するのはむずかしいが,通常は対象とする養分を施用しない試験区での吸収量を使って推定する。この式を変形すると,施用養分量は,(吸収された養分の量-天然供給量)を吸収率 (利用率)で割った値であることがわかる。
養分の供給量が少ない段階では養分の量に応じて植物の生育量は多くなるが,養分が多くなるとしだいに植物の反応は小さくなり吸収率は低下する(収量低減の法則)。過剰に肥料を施用した場合には,ある程度以上生育の増加は望めないから吸収率は低下することになる。吸収率はさらに土壌の性質,施用方法 (時期,位置,分施法など),作物の種類・品種,肥料の種類などによって異なる。
肥料成分の吸収率は成分の種類によっても異なり,窒素では30~50%,リン酸では5~20%,カリでは40~60%程度が目安である。
環境保全型農業では肥料の利用率を高めて環境へ無駄に放出される量を最小にすることが求められている。
葉面散布
植物が養分を吸収するのは根からが多いが,葉からも一部は吸収されることを利用して,必要な養分を葉面に散布する方法をいう。微量要素は必要量が少ないので古くから行われ効果が顕著な事例があるが,多量要素の場合には濃度障害 (葉焼け)を避ける必要があり,あまり多量の養分を葉から吸収させるのは実用的でない。ただ根に障害があり養分が吸収されにくい場合 (たとえば秋落ち水田で根腐れになった場合や病害虫の害を受けている場合)には緊急対策として葉面散布が有効になることがある。また果樹などで土壌施用では吸収が間に合わない場合や,花卉のように色などの外観を重んずる場合にも効果がある場合がある。葉面散布には,窒素(主として尿素),リン酸,カリ,マンガン,ホウ素などを保証する肥料 (液肥または溶解して液肥とする肥料),鉄,銅,亜鉛,モリブデンなどを効果発現促進材として添加したものがある。葉面散布専用の液肥では展着剤を添加してもよい。
葉緑素(クロロフィル)
葉にある緑色の色素。ここで光合成を行っている。葉緑素にはaとbの2種類があるが,いずれも窒素,マグネシウムを含む有機化合物であり,その生成には鉄,マンガンなどが関与する。したがってこれらのいずれが 不足しても葉緑素の生成が抑制され,クロロシス(黄化)がおこる。その発生する部位,形態などは要素により特徴があることから,不足する養分の推測ができる。

ら行

硫化水素
硫黄化合物が還元されたときに発生する無色の気体(H2S)である。卵の腐ったときの悪臭物質。たん水した水田では夏季に土壌が還元的になるが,その還元程度が強いと発生する。湿田や有機物を多量に施用した場合に強還元になりやすく,土壌中に存在したあるいは肥料に由来した硫酸イオンが還元されて硫化水素が発生する。硫化水素は呼吸毒であり,その結果,養分吸収が阻害され根腐れの原因となる。土壌中に鉄やマンガンがあると,硫化水素はこれらと結合して不溶性の硫化鉄,硫化マンガンとなって沈殿するので,その害作用は抑制される。
流亡
水によって耕地から土壌成分や施肥養分が失われることをいう。下層土への溶脱,地表面での流去あるいは侵食にともなう損失がある。降水量の多い地域,特に降雨強度(時間当たりに降る雨量)が大きい地域では流亡による養分の損失は大きい。尿素や硝酸塩のように土壌に吸着保持されない養分や,塩基のように吸着されても火山灰土壌のように保持力の小さい場合,あるいは砂質土などの吸着容量の小さい場合には流亡の程度が大きい。
緑肥
植物体を堆肥化することなく,切断した程度でそのまま土壌にすき込み,土壌中で分解させて次作物に養分を供給し,あるいは土壌に有機物を補給し物理性の改善を図るレンゲなどの作物をいう(緑肥作物あるいは青刈り作物)。緑肥作物としてマメ科植物を利用すると根粒菌が固定する窒素の補給が期待できる。有機物の補給の目的ではトウモロコシ・ソルゴーなど生育量の大きな作物を利用する場合がある。そのほか,クロタラリアは深根性なので土壌物理性が改善される効果と茎粒で固定される窒素の補給が期待できる。マリーゴールドをすき込むのはセンチュウ対策を考えている。いずれも環境保全型農業で有効な技術であるが,緑肥を栽培した1作期間の現金収入がなくなるので,景観植物としての効果とあわせて実施する事例がある(トウモロコシ畑で迷路をつくったりヒマワリを栽培して観光客を呼ぶなど)。
リン酸吸収係数
土壌が吸収して固定するリン酸の量を評価する指標。乾土100gに吸収されるP2O5の量(mg)で表す。この値は火山灰土壌で大きく1500以上に達することから,火山灰土と非火山灰土の区別に用いることもある。リン酸吸収係数の大きな土壌では,水溶性のリン酸を施用し土壌と混合すると,すぐに固定される(アルミニウムなどと結合して沈殿するため)ので,肥料の効果が持続しない。このような土壌に対しては有機物を施用するか,あるいは多量のリン酸肥料を施用して土壌のリン酸固定能力を弱めることが有効である。また施用する肥料としては粒状化して固定されるのを少なくする,あるいはようりんなどク溶性リン酸を保証する肥料を使うのがよい。
リン酸質肥料
三要素のうちリン酸だけを保証する肥料。三要素以外のマグネシウム(苦土),アルカリ分なども保証することができる。リン鉱石を原料とし,酸処理,または熱処理により,リン酸を植物に吸収できる形態にしている。過リン酸石灰,ようりん,焼成りん肥(重焼りん)などが代表的な肥料である。
リン酸の戻り
水溶性のリン酸が非水溶性になることをいう。過リン酸石灰では難溶性のリン鉱石を硫酸と反応させて水溶性のリン酸一カルシウムを主体とした肥料としている。これにアンモニアを反応(アンモニア化)させたり,石灰類と混合するとリン酸一カルシウムは非水溶性の二カルシウム塩または三カルシウム塩(あるいはアパタイトなど)に変化し,リン酸の溶解性が低下する。これを「戻り」という。(還元という場合もあるが,この場合は酸化還元の反応でないので正しくない。)
連作障害
同一作物,または近縁の作物を連続して栽培したときにみられる生育障害をいう。土壌病害虫による障害の場合が多いが,土壌の理化学性が悪化した場合もあり,それによって対策も当然異なる。
老朽化水田
漏水の多い水田では粘土や土壌成分の多くが下層に流れ失われている。砂質で排水のよい水田でよくみられ,土壌断面をみると作土では鉄が少ないため灰色となり,溶脱した鉄などはすき床から下に移行し,そこで集積している。粘土が少なくなっているので養分の保持力も乏しく,肥切れしやすい。また鉄,マンガンなどが溶脱して少なくなっているので,還元状態で硫化水素が発生しやすく,根腐れが生じて水稲は秋落ちとなる。老朽化水田の改良法としては,山土の客土,天地返しのほか,含鉄資材,ケイカル,完熟堆肥,アヅミンなどの施用が効果的である。
漏水過多田
俗に「ざる田」と呼ばれる。砂れき,あるいは火山灰に富み,水持ちの悪い水田をいう。このような水田は土壌では陽イオン交換容量が小さく,施肥成分が溶脱しやすい。また,たん水の温度が上昇しないうちに漏水してしまい,たえず冷水でかんがいすることになりやすく,生育が遅れて収量が上がらない場合が多い。漏水過多というほどではないが,透水性が大きく,減水深が大きすぎる水田は漏水田という。

わ行

y1(わいわん)
交換酸度の測定結果を表示する方法の一種。この値が大きい場合には土壌の酸性が強い。この値から酸性矯正に必要な資材の量を求めることができる。
交換酸度」を参照。