
X分離精子を利用したホルスタイン種凍結受精卵の実証試験
青柳敬人・岩佐昇司・出田篤司・波山功・浦川真実
協力分担:ジェネテイックス北海道、十勝農協連
試験期間:平成19年4月〜平成20年3月
ホルスタイン種未経産牛のX分離精液を用いて採卵を実施し、かつ、そこから得られた胚を全農ダイレクト法により凍結保存し、十勝管内において実証供給を行い、野外および全農ETセンター(ET研究所)内における受胎率を検証して現場普及の可能性を検討する。
供卵牛は十勝管内の酪農家にて所有されている、遺伝的にトップクラスのホルスタイン種未経産牛を選抜し、全農ETセンター(ET研究所)にて採卵を実施した。X精子はジェネテイックス北海道の所有牛の中で、遺伝的に改良効果の高いと期待される種雄牛、ブルーブラッド号より採精した精液をフローサイトメーターにて分離したX精子を使用した。またストローの精子数は500万から600万濃度とし、1供卵牛あたり2本の精液で人工授精を行った。過剰排卵処置および胚回収方法は全農ETセンター(ET研究所)の定法に従って行い、得られた凍結グレードの受精卵は定法の全農ダイレクト法により凍結した。X精子由来凍結受精卵は十勝管内で繋養中の受卵牛に移植し、受胎率の調査を行った。
採卵頭数 | 回収卵数 (平均) |
Aランク | Bランク | Cランク | 変性 | 未授精 |
12 | 156(13.0) | 56(4.7) | 20(1.7) | 16(1.3) | 47(3.9) | 14(1.2) |
カッコ内の数字は1頭あたりの平均を示す
使用可能な胚(A+Bランク)が1頭あたり、6.4個回収できたことより、X精子利用による乳牛胚の事業展開が可能であることが証明された。
(1)新鮮卵移植(野外を中心に実証)
移植頭数 | D60受胎頭数 | 受胎率 |
32 | 10 | 31.3% |
(2)凍結卵移植(全農ETセンター(ET研究所)を中心に実証)
移植頭数 | D30受胎頭数 | 受胎率 | D60受胎頭数 | 受胎率 | 超音波性判別 |
27 | 19 | 70.4% | 19 | 70.4% | 100%雌 |
野外を中心に移植した新鮮卵の受胎率が極端に低く、野外応用するにはBランクの選抜を通常の胚より、より厳しく選定する必要性があることが示唆された。また、1農家での受卵牛の準備も今回4頭の同期化を行なったが、発情等明瞭でない受卵牛に無理に移植した例も見受けられた。発情が明瞭で黄体形成が問題ない受卵牛に凍結胚を移植した場合、非分離精子を用いた受精卵と比べ何ら遜色ない受胎率が得られていることから、受卵牛の選抜が新鮮卵移植の受胎率を下げた原因の一因と推察された。
X分離精子を利用したホルスタイン種凍結受精卵は非分離精子を利用した場合と同等の受胎率が期待でき、現場応用が可能なことが示唆された。