営農情報

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麦の生育と当面の管理 (2023年1月23日作成)

 今年の麦は、11月23日の大雨により播種時期が2つに分断し、この雨の前と後の12月播きでは生育が大きく違います。それぞれに応じた適切な管理を行いましょう。

(1)気象概況とこれまでの生育状況

① 気象概況

 11月は気温が高く、23日に大雨が降りました。12月は中旬まで平年並みの気温でしたが下旬は寒波により低温となりました。1月は上旬が平年並で中旬から高温に経過しています。また12月下旬から1月中旬まで雨が無く、乾燥した状態が続きました。

② 生育状況

 11月播きの麦は、気温が高かったことから出芽が順調で早く、その後の生育も進んでいます。小麦は4枚目の葉、大麦は5枚目の葉が展開中です。分げつも2~3本発生していて、有効茎の数(穂として必要な茎の数)はすでに確保できています。ほ場がよく乾き各地で1回目の麦踏みが終了しており、過繁茂になっているほ場は少なく、順調な生育です。
 12月播きの麦は、1月に入ってからの出芽となりましたが、出芽そのものは概ね良好です。小麦、大麦ともに2枚目の葉が展開中で、分げつはまだ発生していません。

(2)今後の生育予想と管理のポイント

 1月19日発表の季節予報では、今後1か月の気温は低く、特に1月下旬から2月上旬はかなり低温になるようです。なお、降水量と日照時間は、ほぼ平年並みの予報です。

① 今後の生育

 低温により麦の生育は一時的には抑制されるでしょう。11月播きの麦はこれまでやや生育が進んでいたので多少停滞しても特に問題なく、むしろ過剰分げつの発生が抑制されるので良いでしょう。
12月播きの麦は草丈の伸びや、分げつの発生がやや遅れがちとなる見込みです。

② 管理のポイント

麦踏み
 11月播きでは、無駄になる分げつを抑えるために実施しましょう。12月播きでは、分げつの発生を促すために、3枚目の葉が確認できたら急いで実施しましょう。2月に入ると雨の降る日も徐々に増えてきます。一度まとまった雨が降ると作業は1週遅れます。ほ場が乾いている時にどんどん麦踏みを行いましょう。

雑草防除
 11月播きのほ場は播種後に処理した除草剤の効果が切れ、雑草が発生する時期です。
 冬場の雑草は伸びが遅いものの生育は着実に進みます。除草剤は雑草が小さいうちほど高い効果が得られますのでほ場を注意深く観察して、早めに処理を行いましょう。

排水路の整備
 2月になると徐々に雨が降る日が多くなってきます。麦も大きくなるので作業をし易い今のうちに排水路を整備しておきましょう。

最強雑草「ナガエツルノゲイトウ」の侵入に注意 (2023年1月23日作成)

 繁殖力が非常に旺盛で、特定外来生物に指定されている雑草「ナガエツルノゲイトウ」は、今水田で最も注意すべき雑草です。

(1)発生原因

 南アメリカ原産のヒユ科の多年生植物ですが、アクアリウムなどの観賞用として導入されたものが野外逸出したと考えられています。

(2)繁殖能力

 茎は容易にちぎれ、小さいな断片からも発根するので再生力が強く、水に浮くので拡散能力も高いうえ、水生植物(抽水植物)でありながら乾燥にも強いので水田でも畑でも繁殖します。なお、国内では種を付けないので、種子での拡散、繁殖はありません。

(3)被害

 水路で繁殖すると取水口や排水口を塞いでしまいます。水田に入り込むと稲の生育を阻害し、また倒伏の原因になります。

(4)見分け方

 水田で良く見かける「タカサブロウ」に似ていますが葉に鋸歯がなく、茎は空洞。葉のわきから長い花柄が伸び、シロツメクサのような球状の花を付けます。

(5)県内の発生状況

 2017年に坂戸市内の越辺川で県内初確認され、その後川口市内の芝川、熊谷市の和田吉野川でも確認されていますが、県全体での発生状況や水田への侵入については把握できていません。

(6)駆除方法

 温暖化の影響で、最近は冬場にも大雨が降る頻度が高まっているため、排水対策は必須の作業です。
 ほ場の外周には額縁明渠を掘り、ほ場の中には10m間隔で排水用の明渠を掘って、大雨が降っても素早く排水できるよう準備をしましょう。播種前に掘った溝は、播種作業によって塞がれることが多いので、播種後に改めて点検を行いましょう。

①水田畦畔に発生した場合

 グリホサート等の非選択性で浸透移行性のある除草剤で枯らします。刈り払いは、ちぎれた茎が水田や用水に入って拡散する原因になるのでできれば控えましょう。機械作業を行う場合は、機械に付着した茎が他地域に伝播しないよう充分な除去、清掃をお願いします。

②水田内に入り込んだ場合

 ピラクロニルを含有する初期または初中期剤と、フロルピラウキシフェンベンジルを含有する後期剤を組み合わせる体系処理が有効です。但し、定着してしまうと本田防除だけでは駆除しきれないので水稲の収穫後にグリホサート等の除草剤を霜が降るまでに散布します。
 畦畔からの侵入に対しては早めに手取り除草を行い完全に除去しましょう。その際、ちぎれた茎が水田内に残らないよう注意が必要です。 

水田畦畔を覆いつくす
ナガエツルノゲイトウ

(参考)冬期の様子

<駆除したものの処分方法にも注意して下さい>
 特定外来生物に指定されているナガエツルノゲイトウは、生のままの移動は禁止されています(外来生物法)。生のままで焼却場等へ運ぶためには、インターネットや広報誌、回覧板などで事前に告知し、運搬中にこぼれないよう袋を密閉して下さい。一方、枯れたものはこの規制の対象外なので、完全に乾燥枯死させれば一般ごみとして処分できます。詳しくは自治体のごみ処理方法に従って下さい。