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気象経過と水稲の生育状況と今後の管理の注意点について(2023年6月12日作成)

エルニーニョ現象と正のダイポールモード現象の同時発生で
今年の夏は気象変動が激しい?

 6月8日、関東地域の梅雨入りが発表されましたが、その翌日、気象庁はエルニーニョ現象が発生している模様で、秋にかけて現象が続く可能性が高いという速報を出しました。
 また、今年は熱帯インド洋の西部で海面水温が平年より高く、東部で低くなる正のダイポールモード現象も同時発生すると予想されています。
 一般的にエルニーニョ現象が発生すると日本は冷夏になる傾向ですが、正のダイポールモード現象が発生すると逆に猛暑になる傾向があります。 この現象が同時発生した2015年夏の埼玉県の気象は、7月中旬~8月上旬が高温、8月中旬~9月上旬が低温・日照不足の不順な天候になりました。その結果、早期栽培では高温障害による白未熟粒の増加、普通栽培は登熟不良による乳白粒や青未熟粒の増加で玄米品質は低下し、作況も東部、西部とも97とやや不良になりました。

今年は盛夏期が猛暑、その後低温・日照不足になるような激しい気象変動を予想して稲の管理に取り組む必要があります。

これまでの水稲の生育状況

 早期・早植栽培の育苗期間に当たる3月下旬から5月上旬まで気温は高く経過し、苗の生育は促進されました。田植後の5月は寒暖の変動がやや大きく、強い北西の風も吹き、苗の植え痛みも見られましたが、現在は回復しています。
 早期栽培(4月下旬~5月初旬植え)の稲は、草丈、茎数ともに概ね平年並みに推移しています。早植栽培(5月中下旬植え)については、順調に活着し分げつも始まっています。また、麦の成熟が早まったことで、麦後地帯でも田植作業が例年よりもやや早く進んでいます。

気象変動に左右されない強い稲づくり

① 早めの中干し

 中干しは、無駄な茎を増やさないため、また田んぼに酸素を送り込んで根張りを良くするための作業です。中干しが遅れると無駄な茎を増やす効率の悪い生育をして穂数が減少します。中干し開始を長年の慣行で行うのでなく、生育が進んでいる時は早めに実施しましょう。中干しが遅れたり強く干し過ぎたりすると、稲の根を傷め高温等による被害をより受けやすくなるので注意して下さい。

② 還元障害への対策(ガスの発生抑制)

 気温が高い時、すき込んだ麦わらや雑草などの分解で土壌が酸欠状態(還元化)になって有機酸やガスが発生することが多くあります。これによって根の伸長阻害や分げつの発生抑制などの障害が出ます。田んぼに入ると泡が出る、植えたままで稲に色が出ない、株が大きくならないなどの症状が見られたら一旦水を抜きましょう。田面を軽く乾かし、ガス抜きを行うと生育は回復します。なお、落水により除草剤の効果は失われるので、中期剤などで防除して下さい。

③ 生育に応じた適期の穂肥

 穂肥の適期は品種で違いがあり、気温によっても前後します。気温が高いと穂の分化は早くなるので、適期を判断するには茎を剥いて穂の発育を見るのが最も正確です。
 彩のかがやき、彩のきずな、キヌヒカリ等は穂が2mmくらいになった時、コシヒカリは穂が8~15mmになった時が穂肥の適期です。観察して適期に追肥を行いましょう。