営農情報

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猛暑に備える今年の稲作対策 (2024年2月9日作成)

年平均気温は上昇し続けています

 埼玉県(熊谷市)の年平均気温は、この120年間で約3℃(13℃から16℃)上昇しています。特筆すべきは、1900年から1990年まではおよそ90年で1℃の上昇でしたが、1990年以降現在までのおよそ30年間で2℃程度上昇し、温暖化が加速していると見られます(図1)。

 そして昨年(2023年)は、3月と7、8,9月の月平均気温が観測史上最も高くなるとともに、全ての月平均気温が平年よりも高くなり、年平均気温は17.2℃で平年(15.4℃)よりも1.8℃も高温でした。この気温は、九州の福岡市(17.3℃)、熊本市(17.2℃)の平年気温と同じで、埼玉県は「温暖地」から「暖地」に移行したような気候でした。

埼玉は、水稲の出穂以降の気温が国内最高水準です

 稲の登熟期間となる7月~9月の平均気温もここ30年で2℃程度上昇し、最高気温は3℃近く上昇しています。特に2023年は、この期間の日平均気温の平均が28.5℃、日最高気温の平均が34.1℃になり、宮崎市や熊本市よりも暑くなりました。日平均気温が27℃を越える日が続くと白未熟粒(乳白粒や背白・基白粒)が多発し米の品質が低下することが知られていますが、稲の収量低下にも影響を及ぼしており(図2)、高温への備えは必須条件になっています。

高温対策に鉄の利用と有機物の施用を見直しましょう

鉄の効果

 鉄は、高温で還元状態になったほ場で発生する「ワキ」(硫化水素)の発生を防ぎ、健全な根の発育を保ち、根腐れ防止に有効です。根量が増加し、活力が維持されることで高温被害の軽減につながります。

 また、水田へ鉄を施用することで、土壌中の鉄還元菌の窒素固定能力が高まり、土壌の窒素供給力が増して、水稲の生育収量が向上することが報告されています。鉄の施用量の目安は、純鉄粉(鉄92%)なら10a当たり100kgで、散布した鉄が十分に酸化(錆びる)してから入水するほうが効果が高まるようです。また、この効果は2年間継続するようです。

 鉄補給資材としては「農力アップ」、「ミネカル」等の資材が有効です。酸化鉄を使用しているので錆を待つ必要がありません。また、鉄分と一緒にケイ酸の補給もできます。

有機物(堆肥)の効果

 家畜糞堆肥(主に牛糞堆肥)は土づくりに必要ですが、高温による収量低下を防ぐことも分かってきました。
 図5は、農研機構が稲作期間中の気温と収量の関係を秋田、新潟、佐賀で同じ品種(ひとめぼれ)で調べたもので、平均気温が高いほど収量が減少することが分かります。つまり高温になると同じ条件で栽培していると収量は低下することになります。しかし、堆肥を施用(ここでは1t~3t)すると温度上昇で減収する分を上回る増収効果が得られます(図中の緑の線)。昨年の埼玉県の稲作期間(5月~9月)平均気温は26.5℃で平年よりも2℃も高く、収量低下の原因にもなっていると考えられることから、有機物を積極的に投入することが重要です。

麦の生育状況と2月の管理 (2024年2月9日作成)

播種以降、気温の高い状態が続き、麦の生育は進んでいます。
2月の管理で生育を改善しましょう。
特にビール麦は最後の麦踏みと、追肥を確実に実施しましょう。

1.気象経過と生育状況

 寒暖の変動はあるものの、12月以降気温は平年よりも2℃程度高く推移しています。降水量は1月中旬まで少なく乾燥していましたが、1月21日の雨と2月5日の雪でこの時期としては多くなっています。このため、各麦類の生育は平年よりも進んでおり、11月下旬播きで草丈は長く、分げつも多く、葉齢も1枚以上進んでいます。なお、5日の降雪は麦の生育にほとんど影響ないと予想されます。

2.今後の生育予想

 2月8日に発表された1か月予報では、今後1か月は晴れの日が多く、気温の高い状態が続き、降水量は平年並みの見込みです。
 現在、土壌水分が高い状態であり、気温が高く経過すると各麦類ともに生育はさらに進み、分げつが過剰気味になる「効率の悪い生育」が予想されます。特にビール麦は11月25日播きで2月末~3月初旬に茎立ちすると予想されますので、管理作業を急ぐ必要があります。

3.今後の管理

(1)麦踏み

 各麦類ともに、生育が進んでいるため1月中に必要な茎数は確保できています。今後は、気温の上昇による無駄な分げつの増加を防ぐために、積極的な麦踏みを行いましょう。雪による湿った状態が解消されたら、実施しましょう。特にビール麦は出来るだけ早く行い、また11月播きでは2月末の茎立ち前までに終了しましょう。

(2)排水対策(湿害対策)

 2月の降水量は平年並みの予報ですが、近年の雨はまとまって降る傾向があります。排水の悪いほ場は根が酸素不足になり、根の活性が低下してひどい場合枯死してしまいます。排水対策が未実施のほ場は急いで排水路を設置しましょう。また、すでに設置してあるほ場でも排水路が埋まっていないか、時々点検を行いましょう。

(3)ビール麦への追肥

 今年も高温で生育が旺盛なこと、雨・雪がまとまって降ったことから、追肥をしないと収量、品質ともに悪くなってしまうと予想されます。また、追肥が遅れると草丈が伸びすぎ、倒伏の原因になります。茎立ちする前に追肥を実施しましょう。11月25日播きでは2月下旬までに、それよりも播種が早いものはほ場に入れるようになったら、急いで実施して下さい。