営農情報

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麦類全般:麦の安定生産は、年内出芽と苗立ち数確保がポイントです
     (2024年11月5日作成)

1.播種時期の気象予報

 気象庁の季節予報によると、11月は気温が高く、雨も多いようです。しかし、12月~1月はラニーニャ現象の影響もあって平年並みになる模様です。昨年はこの期間高温が続いたので、それと比較すると気温は低いと考えられます。また、雨も平年並~少ない予報で、土壌は乾燥すると予想されます。

2.年内出芽のための播種適期

 大麦、小麦ともに安定した多収を目指す上で重要なのは「年内出芽」です。
 早く播種しすぎて年内に生育が進み過ぎると冬期に生育過剰となってしまいます。
 一方、播種が遅すぎると穂数が減って収量低下の原因になります。また、気温が低くなると播種から出芽まで日数が長くなり雨による出芽不良や、ヤギシロトビムシ等による食害などのリスクが高まります。
 12月の気温は、平年並みと予報されていることから、播種時期別の出芽期予想は表1のようになります。年内出芽のための播種期の晩限は12月10日と予想されるので、それまでに播種作業を完了できるよう作業を進めましょう。
 なお、12月播きの場合、11月播きよりも苗立ち数を多くしないと穂数が減るので、播種量を1割程度増やして下さい。

3.苗立ちを安定させるポイント

(1)稲刈り跡の1回目の耕耘は「粗く深く」、播種のための整地耕は「浅く細かく」が基本です。全層を細かくし過ぎると降雨の後の乾きが悪くなり作業の遅れや湿害を受けやすくなります。
(2)播種後に軽く鎮圧を行いましょう。種子と土の隙間を小さくして種回りの温度と水分状態を安定させることで揃って早く出芽するので、苗立ちも安定します。

4.まだ間に合う 播種までに土づくり・土壌改良に取り組もう

(1)稲わらの分解を早め、来年の田んぼの「ワキ」も抑えましょう

 稲わら、稲株は大切な有機物です。積極的に水田にすき込んで利用しましょう。ただし11月になると気温(地温)が下がるため耕耘するだけでは分解が進みません。そこで、すき込み前に石灰窒素やワラ分解キングを散布して分解を早めましょう。
 また、完熟した牛糞堆肥やバーク堆肥を積極的に投入しましょう。牛糞堆肥の散布が難しいときはレオグリーン特号のようなペレット状の濃縮堆肥が有効です。1反100kg施用で牛糞堆肥1t分に相当する効果が期待できます。
 なお、酪農家から牛糞堆肥を購入する場合、必ず完熟したものを選んでください。未熟な堆肥はイタリアンライグラス(ネズミムギ)等の牧草の種子が生き残っている場合があり、それが麦の強害雑草になるので注意して下さい。

(2)土壌の酸度を調整しましょう

 麦の最適な土壌の酸度(pH(H2O))は6.0~6.5の範囲です。水田の土壌は、これよりもやや酸性に傾いている(5.5~6.0)傾向があるので、苦土石灰等の石灰質肥料を散布しましょう。ビール大麦や六条大麦は小麦よりも酸性に弱いので積極的に施用しましょう。なお、麦の発芽障害を避けるため、石灰質資材は播種の2週間前までに散布しておきましょう。

ビール大麦:ビール大麦が「ニューサチホゴールデン」に替わります
      (2024年11月5日作成)

 埼玉県のビール大麦は「彩の星」から「ニューサチホゴールデン」に全面転換となります。
 新しい品種の特性を把握して、良質安定生産を目指しましょう。

1.「ニューサチホゴールデン」の特性(「彩の星」との比較)

① 大粒で整粒歩合が高く、収量が多い
② 茎立ちがやや早いが、出穂と成熟は同じか1日程度遅い
③ 多肥、早播きでは過繁茂になりやすく、過繁茂になると穂数減少につながる
④ 側面裂皮や剥皮が発生しやすい
⑤ 大麦縞萎縮病Ⅰ~Ⅲ型に抵抗性があり、うどんこ病、赤かび病にも強く
⑥ 穂発芽性は中なので刈り遅れや倒伏には注意が必要

2.「ニューサチホゴールデン」の栽培の目安

 上記の特性を踏まえた栽培方法は以下のとおりです。

(1) 播種適期 11月20日~12月5日
    できるだけ11月中に完了させましょう
(2) 播種量 5~6kg/10a
    苗立ち数100本~120本/10aが目標です
(3) 施肥量 基肥 窒素成分で7kg/10a
    「オール14」なら50kg/10a、「彩の国エコバード」なら58kg/10aです
        追肥 窒素成分で2kg/10a
    なお、昨年たんぱく分析結果で「高たんぱく」の指導があったほ場では追肥は見合わせましょう
    また、追肥は必ず茎立ち前に完了させましょう