広島の酒米

広島が酒どころとして名を馳せるようになったのは、明治時代から。酒造りには不利な水質を逆に生かし、芳醇な酒を生み出す醸造法が開発され、広島の酒は一気に全国に知られるようになった。この技術を受け継いだ広島杜氏がさらに磨きをかけ、全国各地の酒蔵で活躍している。高い醸造技術が、広島の酒を一級品にした。
広島には精米機のトップメーカーが存在する。酒造りにおいて、精米は重要なポイント。直径数ミリの米を半分以下に削るという、高度な技術が要求される。よりうまい酒を造るために欠かせない精米技術も、広島の地で生まれた。
酒造りが盛んになると、当然、原料品質の高さも要求される。よい酒米は一定の条件下でなければできない。また、普通に食べる米よりも栽培が難しい。そのため、広島では独自に酒米の品種改良が進められ、生産者が行政・JAグループと一体となって栽培技術を向上させてきた。

現在、広島で栽培されている酒米には、栽培に苦労した生産者と研究者の歴史がある。一粒の酒米に込められたさまざまな想いが、うまい酒となって私たちにも伝わってくる。

酒米とは…酒づくりに使われる米を総称して「酒米」という。その中でも特に、酒造りに適した品種を酒造好適米という。

広島酒米生産振興方針

広島県の酒造好適米をご利用いただく酒造会社様のさらなる期待に応えるため、
酒米生産団地では生産振興方針に基づき、より高品質な酒造好適米を安定的に供給いたします。

1.需要に基づく計画生産を実施

毎年、酒造関係者の需要を予め把握し、確実に応えられるよう生産計画を策定。品種ごとに、計画的に生産を行っている。このことは、全体の収量を事前に把握でき、生産者の生産意欲にもつながる。

2.土作りの励行と適期田植の徹底

土壌診断に基づく適切な土づくりと施肥設計、粗堆肥の投入などにより地力を土台とした酒米づくりを行うことで、低タンパクで高品質な酒米の安定確保を図っている。また、各酒米産地で品種別に適切と考える時期に適期田植を行うことで、異常気象による品質障害や減収を回避する。

3.品質を均一化する刈り取りと乾燥調製、篩い目の徹底

酒米は最適な時期を逃して刈り取ると品質の低下につながるため、適正時期の刈り取りを励行。また、酒米の最適水分量である14.5%から15%を目標に、急激な乾燥調製による品質劣化を防ぐため、二段階調製により時間をかけて丁寧に乾燥調製を行う。さらに、均一な酒米を供給するために、品種ごとに網目を設定しバラつきの少ない高品質米へと仕上げる。

銘  柄 網  目
八反錦1号、山田錦 2.1mm
八反35号、千本錦、改良雄町、こいおまち 2.0mm

確かな品質と安定供給を支える、広島県内のJAの取り組み

酒米生産に優れた地域のみを酒米団地に指定。

良質酒米産地の条件は、稲作期間(5月~10月)の平均気温が20度前後で、酒米が熟す時期には昼夜の気温差が大きく、豊富な水がある日当たりの良い地域であることだ。JAグループ広島では、酒米生産について、高い品質を維持するため、優れた地域のみを酒米団地として指定し、その土地に合った品種の栽培を行い、生産振興に努めている。

生産を団地化し、人づくり・土づくりを中心にした高品位米の安定生産を振興。

酒造会社の要望に応える質と量を確実に提供するのが産地の使命である。現在、酒米団地を核とした良質・高品位な酒米の安定生産を行っている。酒米団地として今後も安定的に酒米生産を行っていくには、人づくりを基盤として、生産組織を育てていかなければならない。生産者個々の技術向上はもちろん、産地として高度な技術を共有し、全体のレベルアップを図っている。

多彩なオリジナル品種で、多様な要望に対応。

広島県で古くから栽培されている酒造好適米は、「八反1号」である。良質心白米としての評価が高く、現在では「八反錦1号」「八反35号」の2品種を栽培。広島酒米の代表的品種となっている。また、全国的に人気が高い「山田錦」、「改良雄町」。さらに、広島県のオリジナル品種である「千本錦」、「こいおまち」の計6品種が栽培されている。

東広島市酒米栽培推進協議会

設  立:1992年4月(平成4年)
標  高:300m前後
地  形:起伏平原。周囲を300〜500mの山に囲まれた高原盆地。
作付品種:山田錦

三次酒米連絡協議会

設  立:2003年8月(平成15年)

三和地区酒米部会

設  立:1994年2月(平成6年)
標  高:350m前後
気  候:夏季には昼夜の寒暖差大きい。
地  形:江の川水系に属する板木川(地区の西部を流れる)、 美波羅川(地区の東部を流れる)流域。土質は砂壌 土~植壌土で下層部は礫を多く含み水はけが良い。
作付品種:八反錦1号、八反35号、千本錦

三次地区酒米部会

高宮酒米部会

設  立:1986年2月(昭和61年)
標  高:300m前後
気  候:夏季には昼夜の寒暖差大、冬季には積雪が多い。
地  形:団地北部には江の川が流れ、水量も豊富。
作付品種:八反錦1号、八反35号、千本錦、改良雄町、こいおまち

比和町酒米生産組合

設  立:1981年6月(昭和56年)
標  高:400m前後
気  候:冷涼で多雨、豪雪地帯。
地  形:周囲を吾妻山等の高峰が連なり、県内酒米団地の中では最も急峻な地形。比和川の流域で、水量にも恵まれる。
作付品種:八反錦1号、八反35号

広島県産酒造好適米の取り組みについて

広島の酒米品種  広島県では6品種の酒造好適米を4地域を中心に生産しています。

広島県産酒造好適米の品種

品種 主な作付地域 田植期 刈取期 広島県 採用年 来歴 千粒重 備考
八反錦1号 高宮町、三次市、比和町 5月中下旬
9月下旬
昭和59年 八反35号
アキツホ
約26g 広島県オリジナル品種
早生 耐倒伏性 多収
八反35号 高宮町、三次市、比和町 5月中下旬
9月下旬
昭和37年 八反10号
秀峰
約24g 広島県オリジナル品種
早生 高度精白向き
改良雄町 高宮町 5月中下旬
10月上旬
昭和37年 比婆雄町
近畿33号
約26g 軟質性
こいおまち 高宮町 5月中下旬
10月上旬
平成6年 改良雄町
ニホンマサリ
約25g 広島県オリジナル品種
雄町より短稈
千本錦 高宮町、三次市 5月中下旬
10月上中旬
平成12年 山田錦
中生新千本
約26g 広島県オリジナル品種
高度精白向き
山田錦 東広島市 5月中下旬
10月中旬
山田穂
短稈渡船
約27g 高度精白向き
軟質性