春を告げる桃の花

部会長 石川 幸太郎さん
「桃の節句」に向けて出荷準備に追われるJA茨城みどり 枝物生産部会の部会長をされている石川さんを訪ねました。暦の上では春といってもまだまだ寒い日が続くこの日も、たくさんの桃の花が室(ムロ)から出され、出荷されていきました。
この室(ムロ)は室温・湿度が調整できる部屋になっており、切り出された桃の枝をこの部屋で出荷まで管理しています。
花の必要な時期に必要なだけ生産するためには、このような室(ムロ)はなくてはならない設備で、温度管理や湿度、促成管理をすることにより3月3日の「桃の節句」にお客さんが購入されて丁度花が満開になるようにと、1日何度もこの室(ムロ)に足を運び、育成具合を確認した後に出荷されるのです。
出荷するタイミングが非常に重要になるため、「何箇所にも分かれた室(ムロ)をチェックし管理することが一番大変だ」と石川さんはおっしゃっていました。

ここJA茨城みどりの枝物生産部会では、部会員が生産した桃の花を持ち寄り一元管理を行なっています。
元々は旧暦の3月3日が桃の花が咲く頃ということから、女の子の成長と無病息災を祈念してひな祭りに桃の花を飾るようになったと言われています。
現在の暦ではまだ桃が咲くには早い時期でもあるので、このように温度管理や促成管理をして出荷されているということはあまり知られていませんが、そのような目に見えない努力の積み重ねで、歴史ある伝統文化を守っていくという側面も担っておられます。
仕事が楽しい
石川さんは開口一番「仕事が楽しくて仕方がないんだよ」と笑顔で答えてくれました。
その理由を尋ねると、「部会の仲間達と仕事ができる事が何より楽しいんだよ」「部会にははっきりした目標があるからね」とおっしゃっていました。
茨城県の県北地区に位置するこの地域は山間部である土地柄のため、大規模な野菜の栽培には適さず、多くの人が兼業農家で細々と農業を続けていました。しかし今から8年前に山間部という土地柄を利用した花桃や柳類、桜などの枝物を栽培するようになり、JA茨城みどり 枝物生産部会を設立しました。
部会設立当時9名だった部会員も現在では55名にまでなりました。石川さんはさらに熱く「目標は部会員100名、100ヘクタール」と楽しそうに言います。実際にこの日も多くの部会員が一緒になって桃の花の出荷作業に携わり、平均年齢50代後半とは思えないほど和気あいあい楽しそうに仕事をしているのを垣間見ることができました。

苦労が多いから喜びも大きい
ただし最初から順調だったわけではありません。元々はサラリーマンだった石川さん。
耕作放棄地や遊休地が80%を占めていたこの地域を有効活用しようと始めた枝物栽培も思うように評価が上がらず苦労の連続だったとか。
それでも部会員と一緒になって共同で様々な取組を行い、ここ数年は「部会員からも感謝されるようになり、それが一番嬉しい」とおっしゃっていました。
行政もこの取組に注目し、国や県、市の補助事業を取り入れた共同促成室の設置を進めているとのことで、ますます今後の取組が楽しみです。
今年は雛人形の横に桃の生花を飾ってみてはいかがでしょうか。

取材協力
※文中のJA名および部会名等は取材当初の名称が使用されています。