友人に勧められて始めた栽培

長芋部 部長 岩間 学さん
JAほこたがある鉾田市では温暖な気候を活かし、メロンをはじめ国内または県内1位の生産を誇る作物が多く栽培されています。今回ご紹介する長芋は県内1位の産出額を誇り、鉾田市の代表的な農作物のひとつです。
岩間さんは長芋栽培歴35年。会社勤めをしながらも農家の両親の跡を継ぎ、兼業農家としてさつまいも栽培に取り組まれていたそうです。その後本格的に農業の道に進み、今では長芋のほかにさつまいも・じゃがいも・人参と一年を通して4つの作物を栽培しています。
「最初はさつまいもだけを作っていたのだけれど、長芋栽培をしている友人に育ててみないか?と誘われて始めました。当時は長芋の収入が非常に良かったということも理由のひとつですね。」と岩間さんは笑っていました。
市内3か所合計0.5ヘクタールの圃場では昔ながらの「長芋」と「ネバリスター」という2品種を栽培し、多いときには年間20トンもの収穫量になります。「ネバリスター」は従来の長芋に比べ約2倍の粘りがあり、繊細で滑らかな食感が楽しめます。部会内では岩間さんを含め2名しか生産していない珍しい品種です。
栽培からパック包装までを、5名の従業員で行います。気心の知れたメンバーにより、手際よく行っています。
長芋ならではの手間と労力
長芋の栽培期間は約半年です。5月に種芋を定植し、早いところだと10月末から収穫が始まります。
長芋は深い地中で1m程に生長する地下茎植物です。そのため定植にも収穫にも大きな手間がかかります。
定植時にはトレンチャー(溝堀機)と呼ばれる土を掘る大型の機械で1m40cmほど空堀りして表面の赤土と心土の黒い土を混ざり合わせ、粒子が細かい水はけの良い土壌にします。その後エンジン付きの苗植え台車にカゴ一杯の種芋を乗せ、栽培に適した23cmの株間で横向きに一本ずつ植えていきます。早いときには1日で一つの圃場の植え付けが終わるそうです。盛り土の上から保温のためのマルチを張り、等間隔で3mの支柱を地中まで埋めて完成です。
秋にもみじのように葉が黄色く紅葉してきたら収穫の目安となります。収穫時にはパイプやマルチ、地上の蔓を外したのち、ユンボで畝の側面を1m以上掘り、土の中の芋を一本ずつ手作業で収穫します。その後、収穫された長芋は土が乾かぬようシートで覆い2日かけて洗浄・カット・真空パック詰めがおこなわれます。
掘りあげた当初は1m近い長さの芋も最近ではご家庭での調理の手間を考え、約20cmごとに切り分けられます。「一本につき太さと長さが申し分ないものが、3から4パックほどとれれば上出来。」とのことです。
少人数だが出荷数では負けない
岩間さんが部長を務める長芋部の歴史は長く、JAほこたに合併する以前から40年以上にも及びます。会員は現在14名。以前は50人以上所属していたそうですが、高齢化等で年々減ってしまったと言います。現在でも年間の出荷量は2万ケース程あり、10月末から半年間が一番多い時期で、京浜地区や東北地方の市場に出荷しています。またJAほこたが運営するファーマーズマーケット「なだろう」でも販売されています。鉾田市へ行った際にはぜひお立ち寄りください。
手間をかけた分だけ無垢な芋ができあがる
長芋は太さ・長さが適度にあり、ツルツルの綺麗な肌のものが需要が高く、部会では品質向上のために独自の取り組みを行っています。
まずは部会員全員が環境にやさしく、土づくりに取り組んでいる農業者の証、エコファーマーの認定を取得しました。また定植前に、種苗メーカーを呼んだ栽培講習会を実施し栽培のコツや注意点を学ぶほか、部員全員で意見交換を行い、品質の向上に力を入れています。土づくりでは連作障害対策として一つの畑に複数の作物を育てる輪作体系を推奨し、畑が空いている時期に緑肥作物のソルゴーで地力回復を図ります。ほかにも作付け年ごとに畝の向きを縦横斜めとその都度作り直すそうです。かたい土の場所をわざと残し根を柔らかい土の方へ誘導した結果、肌が美しいまっすぐの長芋が育つそうです。
長芋栽培の魅力をアピールするには
今後の部会全体の目標として、さらなる売り上げアップと後継者の育成に力をそそいでいくつもりとのことです。現在部会員は70歳に近い高齢の方がほとんど。常に新しい担い手が求められていますが、なかなか難しいとのことです。「長芋栽培では種芋や資材費用や作付け、収穫の手間がほかの作物よりも多くかかるため、新しく始めるには抵抗があるのかもしれません。手間がかかった分収入もすごい作物だと魅力をアピールできれば継いでくれる人が増えるかもしれない。そのためには部会全体で長芋栽培の良さを積極的に紹介していきたい。」と意欲を語ってくれました。
一年一年が勉強
「収穫の際に自分が思っている大きさの通りになっていた時が一番うれしいんだよ。今年は病気にもかからなく綺麗な肌に育っているといいなあ。」と岩間さんは語ります。
栽培の過程では、欠株がなくきれいにそろって芽が出たとき、次に、9月頃に草が青々育って生育状況が良好なとき。そして、収穫された長芋の大きさが申し分ないときにやりがいを感じるのだそうです。
毎年栽培日誌を書き、次の栽培時の参考にしているそうですが、その都度気候や生育状況が変わりなかなか満足した商品をつくれないといいます。「毎年が勉強だよ。一年に一回ずつしか試せないんだもの。」長芋栽培は奥が深くなかなか思い通りにならないそうですが、毎年試行錯誤するところに面白さがあるようです。
JAほこたの長芋は甘みがあり、ほどよい加減の粘りです。そして安心安全にこだわっています。おすすめの調理方法をお聞きしたところ、長芋を薄く輪切りにしバターをひいたフライパンで焼くと、長芋ならではの食感が味わえて美味しいそうです。
またこれからの季節にはうってつけの煮っころがしでは、ほくほくした食感になり、出汁との相性が抜群とのことです。
すってよし、煮てよし、焼いてよし、生でよしと食べ方は無限大。ぜひお好みの食べ方を見つけてみてください。
取材協力
JAほこた 営農情報センター
〒311-1503 茨城県鉾田市徳宿2325-2
- TEL :
- 0291-36-2515
- FAX :
- 0291-36-2518