茨城県有数の大産地

春菊部会連絡会 会長 大川 茂衛さん
これからの季節料理の主役、春菊。ここJAなめがたは茨城県有数の大産地です。
JAなめがたがある茨城県南東部は、霞ヶ浦と北浦という大きな湖に挟まれた温暖な地域で、水田地帯と大規模な畑作地帯が広がっています。水はけのとても良い赤土のため、管内では60品目以上もの多彩な農作物が栽培されています。
春菊部会の歴史は古く、30年以上前より各地域で個別に部会が結成されていたそうです。
平成元年にJAなめがたとなり合併すると、部会員は一気に396人まで増えました。
多くの方が春菊と稲作両方の栽培に携わることから、圃場は2月から5月までは稲の苗を育てるのに使われ、6月から12月には春菊栽培に使用されます。主に栽培されている品種は中葉種の「菊蔵」で収量が多いのはもちろんのこと、葉肉が厚くて軸に甘みがあり食味がよいのが特徴です。作付け面積は全体で60ヘクタール、年間出荷量はなんと500トン以上にもおよび、京浜市場への出荷がほとんどを占めます。
定年退職後に始まった第二の人生
大川さんのお宅では両親の代から30年以上、JAなめがた管内の潮来市釜谷地区で春菊栽培に取り組んできました。大川さんは64歳まで会社勤めをしていましたが、定年退職を機に跡を継ぎ、本格的な春菊栽培に着手しました。 就農4年目の現在は、父親直伝の栽培ノウハウをもとに奥様と二人、露地とハウスで春菊栽培に取り組まれています。
栽培は露地栽培の直まき方法とハウス栽培の移植方法の2通りがあります。
ハウスでは9月上旬から種まきが始まり、約一か月後に定植します。収穫の目安は季節にもよりますが、だいたい30日ほど経過したものが「葉の大きさや茎の長さが均一にそろっている最高の状態」とのことです。11月から出荷がはじまり、なかでも鍋料理に活躍する年末年始が一年で最も忙しい時期です。そのため一日を通して収穫と袋詰めの作業をフル回転で行っています。
「お客様あっての私たちです。高品質で安定した出荷を維持するために、大変だけれどひと時も休んではいられないんです。」と大川さんは笑って教えてくださいました。
機械に頼らず、手作業で丁寧に包装
近年機械化が進む農業ですが、春菊は収穫・調整・梱包がすべて手作業で行われています。
「ここが一袋ずつに目をかけられる良いところでもあり、大変なところでもある」と大川さんは言います。
毎朝収穫してきた春菊を、やわらかなシートの上で整え、丸めたシートのまま袋の中へ入れます。袋をトントンと軽く揺らして春菊の足を揃え、シートを抜くと包装の完成です。長さが揃っていないと、輸送時の振動で葉先が傷んでしまう恐れがあるため、厳しい選別を行います。JAなめがたでは一箱に20袋詰めで出荷されます。
大川さんは「簡単だよ」と言いながら、手際よく袋に詰めていましたが、日々の経験で培った技術の賜物と思える瞬間でした。
親子二代にわたる
安全安心・高品質への工夫
茨城県銘柄産地の広域指定(行方市、潮来市)は、大川さんの父親が会長を務めた平成12年に交付を受け、そして息子の大川さんが会長を務める、今年10月に更新が行われました。
銘柄産地指定は交付を受けられる基準が非常に厳しく、該当品目の売り上げが年1億円以上、高品質で東京卸売市場の平均単価を概ね上回っていることなど細かな条件を満たすことが必要です。
そのため、JAなめがたでは様々な取組みを行っています。目揃え会で意識の共有をはかるとともに、土壌分析に取り組んだり、有機質を利用した「土づくり」に力を入れています。また平成22年からはGAP(農業生産工程管理)にも取り組んでいます。
流通の場では消費者まで一貫して鮮度を保ったまま届けるコールドチェーン、多様なニーズに対応するための直接販売店の集配センターへ輸送する直送依頼対応、市場用の特別注文への細かな対応をおこない、市場での信頼を得ています。
大川さんは「安心安全なものを消費者の皆さんに届けて、たくさんの人に食べてもらうことが一番の望みです。そのためには、新しい技術を積極的に取り入れ、品種の栽培試験の実施など常に「今のままではダメなんだ」と向上心を持つことが必要です。今後の春菊部会の取り組みにも注目していただけると嬉しいです。」と今後の決意を語ってくださいました。
年間を通して楽しめる春菊料理
春菊を使った料理では、すき焼きや鍋物が有名かと思いますが、JAなめがたではほかにもさまざまな調理方法を紹介しています。その一例として春菊のパッケージ裏には、「和え物」や「とり肉巻き」のレシピが紹介されています。
また販促活動として「卵焼き」「春菊の生春巻き」など、バリエーション豊かな料理の提案を消費者にむけて行っています。合わせてレシピカードも配布しているため、実際に商品を手に取り購入される方も多いのだとか。レシピはJAなめがたの職員や葉物部会女性部の方々が、「一年を通して春菊をおいしく味わってもらえるように」と作り上げたものです。12月には春菊がサラダとして食べられることに着目した「キユーピードレッシング」とのコラボレーションCMが放送される予定です。
ちなみに大川さんのお宅では、春菊をさっと油にくぐらせた「素揚げ」が好評とのことです。パリッとした触感と、春菊本来の味わいが楽しめるそうです。春菊は、βカロチンを多く含んでいるため、「食べる風邪薬」とも呼ばれています。生でもおいしいJAなめがたの春菊を食べて、寒い冬を乗り切っていきましょう。
取材協力
JAなめがたしおさい 潮来営農経済センター
〒311-2421 茨城県潮来市辻929
- TEL :
- 0299-80-1230
- FAX :
- 0299-80-1310
- WEB :
- https://ja-ns.or.jp/
※文中のJA名および部会名等は取材当初の名称が使用されています。