JA北つくば こだま西瓜部会は、農業経営や技術改善に取り組み、地域社会の発展にも貢献していることが評価され第48回日本農業賞集団組織の部で特別賞を受賞しました。
部会一丸となってこだま西瓜安定生産の推進とブランド強化に力をいれています。 産地だより

大久保さんのこだま西瓜

JA北つくば こだま西瓜部会は、農業経営や技術改善に取り組み、地域社会の発展にも貢献していることが評価され第48回日本農業賞集団組織の部で特別賞を受賞しました。 部会一丸となってこだま西瓜安定生産の推進とブランド強化に力をいれています。

部会一丸となって受賞

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紫峰筑波山を南東に臨み、関東平野のほぼ中央に位置するJA北つくばは、茨城県筑西市、桜川市、結城市の3市にまたがる広大な田園地帯と、管内を流れる一級河川により豊富な水量を誇っています。また、農業の担い手を応援する農業政策転換へ積極的に取り組む地域でもあります。

JA北つくば こだま西瓜部会 大久保さん
JA北つくば こだま西瓜部会
部会長 大久保さん

今回は、JA北つくば こだま西瓜部会部会長を務める大久保さんのハウスへお伺いしました。JA北つくば こだま西瓜部会は、156名の生産者が所属しており、部会一丸となり生産量の安定、品質向上によるブランド強化に取り組んでいます。平成31年3月には、これまでの努力と実績が評価され、第48回日本農業賞集団組織の部で特別賞を受賞しました。また、二十四節気の立夏を「こだますいかの日」として制定し、平成29年2月13日には一般社団法人日本記念日協会に正式記録されました。管内で栽培されるこだま西瓜は、出荷前にJA職員による試し割りと食味・糖度検査を圃場ごとにおこない、一定の基準をクリアしたものだけが産地オリジナルブランドの「紅の誘惑」として市場に出荷されることが許されています。産地としては約50年以上の歴史を誇り、夜間と日中の寒暖差がこだま西瓜栽培に適していることが後押しとなり、今では全国有数のこだま西瓜の産地となっている、と大久保さんは話します。

「うまいもの作らなきゃ駄目だ」の一心で

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大久保さんは、20歳のときに両親からこだま西瓜の畑を引き継ぎ就農しました。「両親が農家だったから、ごく自然に両親の跡を継いだよ。僕の仕事は、こだま西瓜の認知を広めて、味で勝負できるこだま西瓜を栽培することだと考えていた。数じゃなくてうまいもの作らなきゃ駄目だと思って一生懸命やったよ。」
大久保さんが所属するこだま西瓜部会では、部会内に生産技術委員会を設け、繰り返し試験を行い、成功事例を情報共有することで、部会全体の品質向上に繋げられていると話します。
そして、成功事例のある新品種の栽培については、部会全体で一丸となって取り組んだことで「紅の誘惑」の産地ブランド強化に繋がったと大久保さんは話します。

美味しさの秘密はトマト!?

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大久保さんのこだま西瓜栽培は秋口のトマトの栽培から始まります。こだま西瓜の収穫が終わったハウス内では、連続して同じ作物を育てることで土中の養分が偏ることを防ぐため、まずトマトの栽培がおこなわれます。西瓜とトマトはそれぞれウリ科とナス科で分類が異なるため、交互に栽培することで土中の環境を整えることができると教えてくれました。また、このタイミングで一度、JA北つくばに依頼して土壌診断をおこない土中のどんな養分が過不足しているのかを調べて、その診断に合わせて土づくりをおこなっていきます。栽培を終えたあとのトマトの株を堆肥として土に混ぜることで、その後に栽培するこだま西瓜が元気に育つと話します。この有機肥料による土づくりも、栽培条件を統一するため部会内で共有されているというので驚きます。

無加温で育てるということ

12月下旬頃、ハウス内の土中の温度を測り、地温が17度を超えるタイミングでこだま西瓜の定植をおこないます。部会では無加温栽培を進めており、自然の寒暖差を利用することでこだま西瓜の甘さを高められるとしているため、外気やハウス内の室温、地温には細心の注意を払うと話します。「無加温で栽培するということは、手間もかかるし気が抜けないんだ。雨が降ると気温が下がるからハウスのサイドを開けられないし、いつ雨が止んで陽が差して暑くなるかわからない。もし暑くなりすぎてしまうと、雌花の咲くタイミングが狂ってしまうこともあるし、雄花の花粉がでないこともあり、授粉のタイミングが狂ってしまうこともある。常に天候や気温を気に留めておく必要があるんだ。」と教えてくれました。それでも無加温による栽培を進めるのは、人間の手を加えすぎないことによって、自然の寒暖差から生まれる「糖度の高さ」がこだま西瓜の美味しさのヒミツでもあると教えてくれました。「こだま西瓜は大玉すいかとは別の品種なんだよ。こだま西瓜には、美味しさがギュっと濃縮されていて大玉すいかと比べて糖度が高いのが特徴なんだ。「小さなすいか」ではなく「こだま西瓜」という果物としてその味を知ってほしいから、手間がかかったとしても頑張って育てるし、美味しいものを作って届けたいと思っている。」と大久保さんは話します。

授粉作業は1日1,500株

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大久保さんは75aにも広がるハウスで「スウィートキッズ」「愛娘」の2品種を栽培しており、2月に入るとこだま西瓜の授粉作業をおこないます。気温が暖かくなってくるとハウス内に蜜蜂を放して授粉させる方法もありますが、この頃の授粉は手作業でおこなうのだと教えてくれました。作業は晴れている午前中におこなわなければ着果率が下がるといわれており、大久保さんは家族と協力して1日1,500株の人工授粉をおこないます。こだま西瓜の雌花は7節に1つしか咲かないうえに、早朝に咲いた花は午後に授粉しても着果しにくいという寿命の短さだと大久保さんは教えてくれました。「タイミングも難しいし寿命も短いのに授粉したからといって必ず着果してくれるとは限らない。だからこそ着果してくれたときの喜びは大きいよね。」

我が子のようにベッドを用意

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授粉後、3月の収穫時期まで着果したこだま西瓜の実には一つひとつベッドを敷きます。水焼けの防止と自重で変形しないようプラスチックや発泡スチロールでできたベッドを敷き、定期的に色ムラなどにならないよう天地返しをおこないます。また、成長して覆い茂ったツルでこだま西瓜が日陰に入ってしまわないよう、隠れているものがないか探してはツルをどかせてやります。「自分の娘だと思って大切に愛情をかけて育てているよ。これだけ手間をかけて育ててきて美味しくないわけがない。娘を嫁に出すつもりでこだま西瓜を出荷しているのでぜひ食べてほしいし、この美味しさを知ってほしい。」

95%正解じゃ駄目なんだ

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大久保さんは36年間こだま西瓜の栽培に携わっており、収穫の頃合いは長年の経験から自分の目だけでもある程度の収穫時期を判断できるそうです。それでも自分の勘だけに頼らず、授粉作業時に雌花につけた毛糸の目印を目安に収穫作業を進めると話します。「確かに経験と勘だけで収穫することはできるけれど人は絶対じゃない。95%正解でも5%はハズレかもしれない。その5%を引く消費者がいちゃいけない。だから勘だけには頼らず目印をつけるんだよ。」と話してくれました。丁寧に収穫されたこだま西瓜は自宅に持ち帰り、綺麗にタオルでふき取ってからヘタを短く切って規格ごとに箱詰めして翌朝JAへ持ち込みます。

甘さを楽しむなら冷やさず食べて

大久保さんは、奥さんと息子さんと一緒に3人でこだま西瓜の栽培に取り組み、現在もJA北つくばのこだま西瓜の認知拡大、ブランド強化に尽力しています。「市場からの要望は年々増えています。だけど農家の後継者は年々減ってきているから、農作業の効率化や、ブランド強化による売上UPを図って、こだま西瓜の生産農家を盛り上げていきたいと思っています。」そして、間もなく出荷を迎えるこだま西瓜について「こだま西瓜の甘さを楽しむなら冷やしすぎないのがおすすめだよ。この季節なら冷蔵庫にいれて冷やさないで常温で食べてみて。箱入りで育てた大切な娘のようなこだま西瓜ひとつひとつを、一番美味しいと思うときに出荷しているから、ぜひこの美味しさを知ってほしいし、食べてほしい。」と話してくださいました。

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もうすぐ出荷ピークを迎えるJA北つくば こだま西瓜部会のこだま西瓜を、ぜひ皆様でご賞味ください。

取材協力

JA北つくば 東部営農経済センター

〒309-1111 茨城県筑西市上星谷94-2

TEL :
0296-21-8055
FAX :
0296-57-5877
WEB :
http://www.ja-kitatsukuba.or.jp/

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