手しおにかける

~和牛を育てる高校生に密着!!【中央農業高校】②~

2023年09月11日

和牛の繁殖から肥育までを一貫して実習する県内唯一の農業高校である「富山県立中央農業高校」。

今年度より、JA全農とやまの新たな取り組みとして、同校生徒たちのスキルアップや畜産農家の後継者育成を図ることを目的に、県内の高い肉牛生産技術を有する生産者の協力のもと、生育ステージに合わせた生産技術講習を継続的に実施します。

本ブログでは、生徒たちが講習に励む様子に密着していきます。



8月、この講習の一環として、同校生徒を対象とした就業体験を実施しました。

今回の就業体験は5日間。入善町にある、JA全農とやまのあさひ農場で、牛舎での基本的な給餌・清掃作業をはじめ、牛の出荷・除角作業を体験するほか、株式会社富山食肉総合センターでは、実際のセリ会場の見学などをおこないます。

今回参加する生徒は、2年生の舟田君。

昔から動物が好きで畜産コースを専攻し、将来は畜産に携わる仕事がしたいと思っているとのこと。

今回の就業体験のスタートにあたり、意気込みを聞いたところ、「実際の作業を体験したり、セリを見られる中々無い機会なので、しっかりと勉強したい」とのこと。

ここでは、就業体験の様子を一部ピックアップしてご紹介します。

就業体験2日目。
出荷月齢を迎えた牛を屠畜するための「出荷作業」をおこないます。

初めに、牛に「頭絡」と言われるロープをかけて捕獲し、牛舎の中にいる牛を外へと誘導していきます。

踏ん張り抵抗する牛に、同じく踏ん張って対抗する舟田君。
500kg以上もの体重がある牛を、力いっぱい引っ張って誘導します。

その後も牛は右へ左へと抵抗しながらも前へ引っ張られ、少しずつ前進。


時間をかけてトラックまで行きつきますが、ここでも牛は負けじと抵抗し、後ろからも一生懸命牛を押し上げます。


この日はこの作業を5、6頭分繰り返し、無事全ての牛をトラックの荷台に乗せ終わると、トラックが発進し、出荷作業の完了です。

こうして1つ目の大仕事である「出荷作業」を終え、ほっと安心するも束の間。

続いて牛の角を切る、「除角作業」へ。
「除角」とは、牛がまだ幼いうちに牛の角を切除することを言います。
牛の角には、神経や血管が存在するため、大きな痛みの伴う作業ですが、牛同士の突き合いによる牛のけがの防止や農家の安全性確保といった観点から必要な、重要な作業となっています。

除角にあたり、まずはロープを使い牛を捕獲します。


危険を察知するのか、ぐるぐると逃げ回る牛をうまく捕獲し、ロープで柵に固定します。


次に、少しでも出血量を抑えるため、止血用のバンドを装着。


こうして準備が完了し、いよいよ緊張の切断作業へ。

除角作業を今回初めて経験するという舟田君。
本会職員のお手本を見た後、緊張しながらもしっかりとハサミをもち、角をはさんで力を込めます。


牛はその痛みから鳴き声を上げ、全身で力いっぱい抵抗しますが、負けないようにしっかりとハサミをもつ手により一層力を込め、切断します。断面からは、血が勢いよく飛び出します。

苦戦しながらも、左右の角の切断作業が終わると、次は角から流れ出る血を止めるため、焼きゴテを使用し傷口を焼いていきます。

使うのはこちらの機械


先程の痛みによる興奮状態も相まって、より一層、頭を振りかざし暴れる牛を一生懸命に抑えてなだめつつ、血が止まるまで焼き続けます。中々止まりきらない血に苦戦しますが、何度もコテを当て直し、、


ようやく血が止まると、最後に消毒液で切除した角の断面を消毒し、一連の作業は終了です。

この除角作業後はしばらく、「人間に近づかなくなる牛もいる」と言われる程、牛にとって大きな苦痛の伴うとても痛々しい作業ですが、この牛の痛みや農家の苦労を経て消費者のもとへお肉が届いているんだと、この「徐角作業」を通じて、取材者も改めて食の“ありがたみ”といったものを痛感させられました。

作業を終えた舟田君は、
「思ったより角がとても硬く、血も中々止まらず大変だった。ちゃんと出来るか不安だったけど、しっかりと除角出来て良かった」と初めての除角作業にあたった感想を聞かせてくれました。

動物好きな舟田君。可哀想といった気持ちや抵抗があったかもしれませんが、しっかりと最後までやり遂げてくれました。

そして、就業体験最終日には、枝ぜりの様子を見学。


せりにかけられる前の枝肉がたくさん上から吊るされている大きな冷蔵庫内へと入り、インパクトのある景色に圧巻される舟田君。
この中には、数日前に舟田君自身が出荷作業にあたり、送り出した牛の枝肉も。


職員から枝肉や、格付けの基準などについての説明を受け、興味深そうに、熱心に話を聞いていました。

その後、その枝肉が実際にせりにかけられる会場の見学へ。


次々と落札されていく様子を、興味深そうに見学していました。

「枝肉を見て、農家で育てられ出荷された後の牛は、こんなふうに加工されるんだということが分かったし、せりでは、肉質や条件によって、値段がこんなに変わるんだと思った」と率直な感想を聞かせてくれました。

その後は、畜産担当者による座学研修を実施し、県内における畜産の現状について学び、今回の就業体験は終了しました。

就業体験を終え、全体を通じた感想を聞いたところ、
「牛舎や外での作業は、暑い中で、想像以上にとても大変なものだったけど、畜産農家さんが普段されていることを体験できて楽しかった。やりがいがすごくあり、就業体験に参加する前より、畜産の道へ行きたい気持ちが強まった」との想いを聞かせてくれました。

昔から、動物が好きで同校の畜産コースを専攻したという舟田君。その言葉のとおり、取材中も優しく牛に触れる場面が見られましたが、その姿や今回実習に取り組む様子から、将来の畜産の担い手としての姿を想像させられ、頼もしさを感じました。今後も、今回の就業体験で得た経験を糧として、より一層飛躍して行ってくれることでしょう。5日間、本当にお疲れ様でした!


今後は、「哺育・育成」「肥育」などをテーマとした講習会の開催を予定しています。

引き続き、本ブログでは生徒たちの頑張る様子をお届けしていきます!