手しおにかける

令和5年度「NEW農チャレンジ研究報告会」で研究成果を発表!【入善高校】

2024年03月29日

JA全農とやまでは、富山県内の頑張る農業高校生の姿をブログにて紹介しています。

今回は1月19日(金)に、入善町民会館コスモホールで開催された「NEW農チャレンジ研究報告会」の様子をお伝えします。
この報告会では、今年度取材をさせていただいた富山県立入善高等学校 農業科の「入善ジャンボ西瓜班」、「チューリップ班」の生徒が、これまでの研究成果を生産者、地域の方々に報告しました。

今回は、生徒たちが報告会で奮闘する様子をご紹介します。


まずは、「入善ジャンボ西瓜班」の発表から!


生徒たちは今年、入善ジャンボ西瓜の「慣行区(自根苗)」と、土壌病害全般に耐性が強いと言われている、かぼちゃの「新土佐(しんとさ)」を台木とした「接ぎ木区」の2試験区に分け、西瓜の生育度合や食味について研究してきたほか、入善ジャンボ西瓜の知名度UPに向けた取り組みをおこなってきました。

この課題研究に取り組んだ理由として、「入善ジャンボ西瓜は、見た目のインパクトはもちろん、食味についても高い評価を得ているものの、“存在は知っているが食べたことがない”といった声があり、もっとたくさんの人に知ってもらえる活動をしようと思った」と説明。
続いて、研究結果について報告しました。


生徒たちの発表を一部抜粋してご紹介します!


〇「慣行区(自根苗)」と「接ぎ木区」研究結果
育成に関する研究結果

 慣行区と接ぎ木区での栽培の結果、あまり大きな差は出ませんでした。しかし、四角い西瓜は、縦、横、重量ともに接ぎ木区が慣行区よりも大きくなりました。
 昨年度と比べると全体的にサイズが小さくなりましたが、糖度は昨年よりも高く、甘くて美味しい西瓜を作ることができました。
 小さくなった原因は、品質の良い果実を収穫するために、果実が小さい段階で総数を人為的に減らす“摘果”の時期が少し遅れたことで、栄養が分散してしまったと考えられます。

食味に関する研究結果

 保護者会と入善七夕まつりにて実施した、慣行区と接ぎ木区の食べ比べアンケートの結果では、甘さは慣行区、シャリ感は接ぎ木区でより強く出たという結果となり、トータル的には慣行区の方が好みだという意見が多かったです。


〇その他の入善ジャンボ西瓜の知名度UPに向けた取り組み
 世界初の四角い入善ジャンボ西瓜の完成
 入善親子フェスタでの発表に向けたチラシやクイズの作成
 オープンハイスクールで中学生に西瓜のふるまい、糖度調査の体験の実施
 摘果した西瓜の漬物、西瓜の冷製パスタの調理

 四角い入善ジャンボ西瓜の研究・食味調査・イベントを通して、たくさんのメディアにも取り上げていただき、地元の方々をはじめ、多くの人に入善ジャンボ西瓜の魅力を伝えることができました。


〇今後の取り組み
 PR活動を継続し、さらに知名度高めることをはじめ、西瓜を使った新たな加工品の開発、四角いジャンボ西瓜の角を鋭くし、より四角に近づけ完成度を高めること、20kg以上の大きな西瓜づくりなどを進めていきます。



発表後、入善町ジャンボ西瓜生産組合 高見組合長からは、
「今年も興味深く楽しく研究の成果を聞かせてもらいました。皆さんの活動は、私たちに『考える』・『行動を起こす』きっかけとなっています。今後、社会に出られる際には、ここまでやってきたことに自信を持って取り組んでいってほしいと思います。」

入善町 笹島町長からは、
「四角いジャンボ西瓜づくり等、町の特産品PRに大きく貢献していただき、感謝を申しあげます。今年度、四角いジャンボ西瓜は観賞用のみでしたが、来年度は、食べてみてどうだったかという感想もいただけると、より興味深いものになると思いました。来年も楽しみにしています。」
と激励の言葉が贈られました。


続いて、「チューリップ班」の発表です!


生徒たちは今年、チューリップのピントレイにおける栽培技術の確立に向けて、「レッドラベル」「ホワイトマーベル」等の品種を用いて、肥料濃度や栽植密度の違いによる生育差について試験区を設け研究をおこないました。

試験区は肥料濃度200倍区(慣行区)・4割減区の2つに分け、さらに栽植密度を慣行区・2割増区・2割減区の3つに分け、6つの試験区で生育状況を比較しました。また、クリスマスやバレンタイン、卒業式に向けた出荷ができるよう、植え込み日の調整等もおこないました。

この課題研究に取り組んだ理由として、「入善町は、富山県の県花であるチューリップの栽培が盛んで、春には『にゅうぜんフラワーロード』などのイベントが開催されています。近年、チューリップ栽培において、オランダより導入された水耕栽培技術を用いた生産が注目されるようになりましたが、不明瞭な点が多くあったため、本校でも水耕栽培の研究をおこなうことになりました。」と説明。
続いて、研究結果について報告しました。

生徒たちの発表を一部抜粋してご紹介します!


〇研究結果
ホワイトマーベル
 開花数が非常に少ないうえ、開花期が遅く、どの区においても茎長が規格に満たないため、水耕栽培には不向きな品種であると考えられました。

レッドラベル
 6つの試験区で合計298本が開花し、そのうち出荷規格の30cmを超えたものは、85%と、開花数も多く、茎長も十分なものがほとんどでした。
 また、試験区別の比較では、草丈の伸びは肥料濃度減と栽植密度慣行の組み合わせ、開花数は肥料濃度減と栽植密度増の組み合わせが1番良い結果となり、肥料濃度と生育は比例しないことが分かりました。


〇今後の取り組み
 ホワイトマーベルは水耕栽培に不向きだということが分かったため、その他の品種での水耕栽培の研究をしていきます。
 レッドラベルは今年度も開花数が安定していますが、茎長が出荷規格に満たないものもあるため、全てが規格に適合するように今後も栽培方法を見直したいです。
 今年度の研究では出荷予定日までに出荷できなかったため、来年度は植え込みをおこなう日を早めるか、加温期間や温度について検討していきたいです。
 加えて、開花後の花弁の活用方法についての検討や、チューリップと町の行事を関連付けたイベントの企画などを通して地域活性化へ繋げられるような活動に取り組んでいきたいです。



発表後、県 新川農林振興センター 園芸班花き担当者からは、
「チューリップの品種はとてもたくさんあり、その中で水耕栽培に向く品種を選んでいくのはとても大変なことだと思います。皆さんのこのような研究が、今後、水耕栽培に向く品種の選定の参考となり、未来に繋がる有意義な研究であると感じました。」
と生徒たちの研究を評価されました。


生徒たちにとっては、この報告会が今年度取り組んできたことの集大成。
どの発表も熱意がこもっていて、たくさんの時間と労力をかけて地道に研究・挑戦してきたことが伝わってきました。それぞれの課題について、自分で考え、自分の言葉で相手に伝わるように資料を作ったり、発表したりなど、大変なことも多かったのではないかと思います。生徒の皆さん、先生方、関係者の皆さん、本当にお疲れ様でした!