行方市は、霞ヶ浦・北浦や傾斜や起伏の多い地形を利用した様々な青果物の作付けが盛んです。飯島さんのそら豆は、5月半ば頃からわずか2週間程度の期間で出荷されます。現在、多くの野菜が周年出荷されている中で、そら豆は出荷が"旬"が限られる貴重な品目です。

初夏を知らせる野菜"そら豆"

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JAなめがた そら豆部会
委員 飯島 𠮷信さん

茨城県の東南部に位置する行方市は、霞ヶ浦・北浦や傾斜や起伏の多い地形を利用した様々な青果物の作付けが盛んです。
今回取材させていただいた飯島さんは、水稲やエシャレット・切みつば、そしてそら豆を栽培しています。飯島さんのそら豆は、5月半ば頃からわずか2週間程度の期間で出荷されます。ハウス栽培で若干早く出荷をする生産者もいるようですが、大きく収穫期間は変わりません。現在、多くの野菜が周年出荷されている中で、そら豆は出荷が"旬"に限られる貴重な品目です。

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十年単位での栽培計画

飯島さんは、30年程前からそら豆を栽培しているそうです。何よりも、ご自身がそら豆好きだったことから栽培を始めたそうです。
短い収穫期間ですが、栽培は数か月がかかります。10月から種まきを始め、収穫が5月となります。そら豆は、冬の寒さに当てることが大切なのだそうです。

栽培するうえで気を付けなければならないのが、風の被害です。そのため、丘陵地に囲まれ風が防げる場所で栽培しますが、自然の風害をすべて防ぐことは不可能です。風で倒れたり花が落ちてしまうと実がならなくなってしまいます。もう一つは霜です。暖冬の場合、花の生育期間に霜が出てしまうことがあるため問題となるそうです。

また、連作障害を嫌うそら豆は、4年もの期間を空けてやっと同じ圃場で栽培できるそうです。飯島さんは、いくつかの圃場を確保し、風などの害が少ないエリアを選んでローテーションさせるそうです。そのため10年単位で栽培計画を立てて行く必要があります。

空に向かって伸びるエネルギッシュな姿

「空豆(そらまめ)」という呼び名は、豆のさやが空に向かって伸びる姿から由来していると言われています。他には「蚕豆(そらまめ)」などとも呼ばれていました。さやの形が蚕に似ているから、あるいは蚕が繭を作る時期に美味しくなるからと言われています。

さやが空に向かって伸びる姿からは強いエネルギーを感じます。その実は炭水化物とタンパク質が豊富でエネルギーの源にもなります。古来より世界中で食べられてきたそら豆は、日本でも飢饉を救う作物だったのだそうです。
しかし、実は大変デリケートな作物なのだそうです。
Diamond online 食の研究所より一部抜粋

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"美味しいのは三日間だけ"と言われるそら豆

そらまめは鮮度が大変重要です。豆類の中でも昔から「美味しいのは三日間だけ」と言われていました。生育段階の若い芽を収穫するため、収穫後も呼吸し続けます。その生育のためには糖分を使うので、時間が立つと味が落ちてしまうのです。そのため、そら豆は輸出入ができず、地元産が重宝されます。
旬になると、茨城のスーパーなどで並ぶそら豆は、JAなめがた産の割合が多くを占めます。

長い栽培の歴史、求められる後継者

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この地域ではもう50年近いそら豆栽培の歴史があるそうです。平成元年にJAなめがたが発足し、それと同時にそら豆部会も誕生しました。部会では、現地検討会や講習会、目揃え会を実施しています。輸入物がなく産地も限定されることから、そら豆は価格が安定しているそうです。現在118名の部会員がいますが、後継者不足が叫ばれており、若い生産者への栽培普及が課題となっています。

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東京までの距離も短いJAなめがたは貴重な産地の一つです。また、茨城県内に於いても出荷量はJAなめがたがトップで、なくてはならない重要な産地です。

1年のうち初夏の短い期間限定で出荷される「そらまめ」。そらまめ本来の風味をぜひ楽しんでほしいと思います。飯島さんも「茹でる、さやごと焼くのが美味しい」と、お勧めの食べ方を教えてくださいました。ぜひ旬の味覚を、時期を逃さずご賞味ください。

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取材協力

JAなめがたしおさい 玉造営農経済センター

〒311-3512 茨城県行方市玉造甲2571

TEL :
0299-55-2161
FAX :
0299-55-3157
WEB :
https://ja-ns.or.jp/

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※文中のJA名および部会名等は取材当初の名称が使用されています。