JAしおさいは鹿島灘に面した地域で、気温と海風が秋蒔きの春キャベツに大変適しています。
今回おじゃました大川さんの圃場からも海が見えます。
この地域で、海水を噴霧するという独特の方法で栽培されているのが「汐菜キャベツ」です。 産地だより

大川さんと平沼さんの汐菜キャベツ

JAしおさいは鹿島灘に面した地域で、気温と海風が秋蒔きの春キャベツに大変適しています。 今回おじゃました大川さんの圃場からも海が見えます。 この地域で、海水を噴霧するという独特の方法で栽培されているのが「汐菜キャベツ」です。

海の恵みを受けたブランドキャベツ
"汐菜しおさいキャベツ"

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JAしおさい  汐菜キャベツ部会
部会長 大川 寿治さん
元部会長 平沼 寿修さん

キャベツの原産地は日本より涼しい気候の地中海沿岸・ヨーロッパの海岸地域です。高原野菜としても知られるように、涼しい気候を好みます。JAしおさいは鹿島灘に面した地域で、気温と海風が秋蒔きの春キャベツに大変適しています。今回おじゃました大川さんの圃場からも海が見えます。
この地域で、海水を噴霧するという独特の方法で栽培されているのが「汐菜キャベツ」です。
「汐菜キャベツ」は、約10年前に商標登録されました。苦みが少なく豊かな甘みが特徴のブランドキャベツで、主に東京中央卸売市場に出荷されます。
キャベツの生産量が最も多いのは千葉県で、特に「灯台キャベツ」という春キャベツが知られています。そのような中で「汐菜キャベツ」は希少ですが、市場で大変高く評価されています。

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産地、生産者一丸となって作り上げた
"汐菜キャベツ"

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JAしおさいでは、三浦、銚子産を超えるキャベツを作ることが目標でした。三浦、銚子産に対抗できる特徴あるキャベツを作りたいと考えていた時、ある人に甘みを出す肥料について助言してもらったそうです。その方は市場のOBだったそうで、開発に成功すれば市場への出荷も約束されていました。

地域の特徴である海に着眼し、塩を加えて甘みを強くするという発想から、海水を利用するアイデアを基に開発に乗り出しました。海水により、ミネラル豊富で甘みのある春キャベツが完成したのが約15年前のことです。部会も立ち上げ、海の恵みを表す「汐菜キャベツ」と命名されました。
大川さん、平沼さんは「後継者がいればまだまだ伸びる。生産者が増えないことが大きな問題」と言います。

海水利用で健全な生育に近づく

汐菜キャベツは海水を利用して栽培しています。海水は、通常の水よりもミネラルが多く、作物の成長に良いという点があります。汐菜キャベツは秋蒔きで冬の間に生育するため、害虫や雑草の被害も少ないそうです。また、ミネラル豊富な海水を利用することで甘みのあるキャベツができるのです。
もちろん、海水をそのまま使うことはできません。雑菌などの問題もありますし、塩分やミネラルの濃度も調整しなければなりません。そのため、海水を適した濃度にして散布します。恩恵が多い海水を利用した農法ですが、その手間が大きいのも事実です。さらにブランドキャベツである以上、選果も厳しくなります。そのために生産者が増えないという悩みもあるそうです。

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地域に汐菜キャベツの技術を継承する

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汐菜キャベツ部会は現在約16名です。元部会長の平沼さんは開発当時から関わり、汐菜キャベツの地位を市場で確立させました。現部会長の大川さんは、約10年前に自営業から農家に転身しました。その当時から汐菜キャベツを生産しているそうです。お二人にとって強い思い入れがある汐菜キャベツですが、生産者の高齢化と後継者不足が大きな悩みです。

大川さんは、特に飲食店から求められている、将来性のある汐菜キャベツの灯を消さないよう、地域の農家に技術を継承しようと考えています。積極的に声をかけた結果、「自分の圃場に5~6人で視察に来てくれた。」と嬉しそうに話してくれました。「生産者にこの農法を取り入れてほしい。」と、普及に努める決意も強く、その美味しさを知ってもらうためにも、技術を残すためにも「多くの方にぜひ汐菜キャベツを知ってもらいたい』と言います。

鹿嶋の特別なお土産として

汐菜キャベツの出荷は、例年4月がメインで5月いっぱい出回りますが、その年の気温によっては早まることもあります。2016年は暖冬が影響し大きく出荷の時期がずれて、3月~4月の出荷となりました。その年の気候を見定めて種を蒔く時期を決めることが重要なのですが、大変難しいのだそうです。

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ほとんどは市場に出荷されますが、鹿島サッカースタジアムのすぐ側にある「JAしおさい鹿嶋農産物直売所」でも入手可能です。サッカー観戦帰り、鹿嶋市周辺への観光においでの時にはぜひお立ち寄りください。汐菜キャベツをお求めの際には、出回る時期をご確認のうえ、お越しください。

取材協力

JAなめがたしおさい 鹿島営農経済センター

〒311-2203 茨城県鹿嶋市浜津賀871-1

TEL :
0299-69-0080
FAX :
0299-69-2107
WEB :
https://ja-ns.or.jp/

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※文中のJA名および部会名等は取材当初の名称が使用されています。