火山灰土と穏やかな気候

荻谷 信孝さん
「エシャレット」と「らっきょう」、どちらも同じ種らっきょうから育てられていることをご存知ですか? 地中深くに植え白い球根部分の横幅が短く、縦にほっそりと育てたものを「エシャレット」、地下10cmほどの浅植えで育て、球根部分を丸々と太らせたものを「らっきょう」と呼びます。
鹿児島県や鳥取県など九州や四国、中国地方で盛んに栽培されていますが、実は関東では茨城県が生産量1位です。(農林水産省より)
県のほぼ中央に位置する茨城町は、水はけの良い火山灰土と穏やかな気候のため、らっきょう栽培に適した土地として30年以上栽培がおこなわれてきました。
純白のらっきょうを作る努力
茨城町でらっきょうを栽培する荻谷さんは、20代で米農家のご両親の後を継ぎ就農しました。現在は米とともに、らっきょう、みつば、里芋、ショウガなど数種類の作物栽培に取り組んでいます。らっきょう栽培は、ベテラン農家の叔父叔母から勧められたことをきっかけに荻谷さんの代から栽培を始められました。
市場価値が最も高い真っ白ならっきょうを作るためには、土寄せ・施肥の回数・防虫が特に大切と荻谷さんは言います。
葉の隙間から日光が土中のらっきょうに当たり、表面が青く変色しやすいため、収穫まで2~3回期間を開けて土寄せをして日光から守ります。
また、肥料を多く吸収する性質があるため、土寄せのたびに化成肥料をしっかりと施します。生産者の中には、土づくりに牛糞・鶏糞など有機たい肥を入れる方もおりますが、場合によっては実が小さく葉ばかり伸びる「つるぼけ」が発生する可能性があるため、成分の安定した化成肥料を使用している方が多いそうです。
特に雪の降る2月頃に肥料を与える「寒肥(かんごえ)」は、生育に大きな影響を与える大切な追肥です。雪の上からまいた肥料は、ゆっくりと土にしみこみ、春先に効果を発揮します。
「常に作物の顔色をうかがう必要があるんです。」と荻谷さん。順調に育っているかは、葉の艶、色を常日頃から観察していなければわかりません。鋭い観察力が求められます。
新鮮さは切り口で確認
野菜は新鮮さが命。それはらっきょうも例外ではありません。収穫後に葉と根を切る処理をおこなっても数日経つと切り口から再び鮮やかな緑色の芽が生えてきます。そうなると辛みも増し、市場価値も下がってしまうそうです。そのため、芽の出ていない白くてきれいならっきょうをできるだけ早く消費者へ届けるように細心の注意を払っています。
期間限定でしか食べられない
希少ならっきょう
5月下旬から始まった出荷は7月まで続きます。JA水戸管内でらっきょうを栽培している組合員は30名。生産者が少ないからこそなかなか食べることのできない希少ならっきょう。シャキシャキの歯ごたえ、身が締まった辛みの少ない掘りたてのらっきょうが食べられるのは今の季節だけです。荻谷さんおすすめの食べ方は、らっきょうの甘辛煮。「煮ると佃煮みたいにねっとりとして、うんめぇんですよ。大きい方が食べごたえがあります。消費者の皆さんも食べてみてほしいですね。」とのこと。
JA水戸のらっきょうは、小売店のほか、JAの農産物直売所でも販売しています。生産者がおすすめする味、ぜひお試しください。
取材協力
JA水戸 南部営農資材ひぬまセンター
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