茨城県南西部の八千代町は、大正時代から白菜の栽培が盛んな県内最大の生産量を誇る白菜の名産地です。3月から6月にかけて出荷される春白菜は、瑞々しく葉が柔らかでほのかな甘みが楽しめます。
産地だより

北野さんの春白菜

茨城県南西部の八千代町は、大正時代から白菜の栽培が盛んな県内最大の生産量を誇る白菜の名産地です。3月から6月にかけて出荷される春白菜は、瑞々しく葉が柔らかでほのかな甘みが楽しめます。

長い歴史がある日本一の春はくさいの大産地

JA常総ひかり 八千代地区春白菜部会 北野 志喜男さんご家族とJA・JA全農いばらき職員
JA常総ひかり 八千代地区春白菜部会 北野 志喜男さんご家族とJA・JA全農いばらき職員

茨城県南西部にある八千代町は、どこまでも広がる平坦な畑が特徴的な県内最大の白菜の産地です。
この地域では大正時代より白菜の栽培がおこなわれていました。昭和に移り、園芸組合の設立にともなう東京への出荷開始と新たな栽培技術の導入による労力の省力化が規模拡大の契機となりました。
その後、昭和41年に指定産地となり、計画的な出荷、防除機具に対する補助などが実施されるようになり、生産量の増加にはずみをつけ、今日の日本一の産地を築くまでとなりました。

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JA常総ひかり八千代地区 春白菜部会の出荷量は3月~6月初旬にかけて8~9千トンにものぼります。平成21年には県の定めた、茨城県青果物銘柄産地に指定されました。
野菜価格の低迷や食の多様化で農家戸数は以前よりやや減少しているものの、1戸当たりの栽培面積は拡大し、総面積およそ100haの圃場で栽培がおこなわれています。
八千代町の春白菜はほのかな甘味があり、葉が柔らかで瑞々しいのが特徴です。部会の試食宣伝ではサラダとして提供しています。

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田んぼを使った白菜栽培

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八千代町で農家を営む北野さんは白菜栽培に取り組んで40年以上。以前はメロンやスイカを作っていましたが、現在は3haの圃場で白菜をメインに栽培しています。
出荷のピークは4月~5月にかけて。葉がよく締まった一玉約2.5kgの春白菜を手際よく収穫しトラックに積むと、とれたてのまま、すぐに集荷場へ向かいます。

北野さんは田んぼを白菜畑として活用しています。白菜の出荷が終わると、田植えの準備が始まるそうです。田んぼでの白菜栽培についてメリットを伺うと、「周りに建物が少ないので強い風がそのまま圃場に吹いてくることが多いのですが、土が水分を含んでいるためか、通常の畑に比べ砂埃が舞い上がりにくいので、葉の間に土が入りこまないのがありがたいです」とのこと。白菜は一玉60枚~70枚ほどの葉がぎゅっとまきついた野菜のため、一度土が中に入ると取り出すのは難しく、時には品質にも影響がでてしまうといいます。

土壌検査では、土中に含まれる成分のバランスが非常に良いと褒められることが多いそうです。

自然相手の難しさ

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一日に最大で1,500ケースもの量を出荷する北野さんのお宅では、約2か月の出荷期間をまかなうため3品種の定植時期をずらして栽培するよう工夫しています。
「成長速度が遅い冬場に定植し、定植日を1日ずらす事で収穫時期を1週間遅くするといった作型を行っていましたが、最近の異常気象の影響で時期をずらしてもだんだんと成長が揃ってきてしまうのが栽培の難しいところですね。」
また、特に気を使うのが換気だといいます。「冬場はビニールトンネル内で栽培していますが、雨や雪が降った後に日がさしてくるとトンネル内は一気に水蒸気で蒸れはじめます。こうなったら大慌てで圃場中のトンネルを開けて換気をおこなうのですが、時にはトンネルを開けた瞬間に中から湯気がでてくることもあるほどです。」と北野さん。
換気をしても時にはビニールトンネルを通して太陽光の熱が葉にあたりすぎてしまい、葉先が白く焼ける葉焼けが起きてしまうこともあるそうです。
「天気がいいのはありがたいですが、自然を相手にする仕事なので、なかなか対策をたてるのが難しいですね。」

若い世代への技術継承

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昨今、農業の深刻な課題として後継者不足が騒がれていますが、この地域ではサラリーマンとして企業に就職し、後に家業の農業を継ぐために戻ってくる方が多いそうです。

「就職してコミュニケーションや社会のしくみについて学ぶことも必要」
北野さんのご家庭でも、娘婿の由紀夫さんが長年勤めていた企業を退職後就農し、今では心強い右腕となっています。「就農後本格的に技術を学びはじめました。農業に関することは先輩である義両親や妻に指導を受けて技を磨いています。仕事では専門技術の他にも社会の仕組みやコミュニケーションスキルといった社会人としての技術も学べますので、農業以外の仕事についてみるのもいい経験になると思います。」

町をあげて特産品をPR

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八千代町では、行政、JA、地元の店舗がタッグを組み、ご当地グルメの開発をおこなっています。特産の白菜が入った白菜メンチカツは、しっとりとしてやさしい味わいとお客さんに好評です。白菜をモチーフにした町の公式キャラクターも誕生し、県内最大の白菜産地として生産者とともに町外でも宣伝活動に励んでいます。

また、北野さんのお宅では、春白菜を塩や塩こんぶで和えた漬物が食卓によく並びます。シンプルな味付けのみでいただく料理は、春白菜ならではの柔らかな食感とほのかな甘味をまるごと楽しめます。
肥沃な土壌に育まれた大きな春白菜は、JA常総ひかり直営の直売所「旬彩・やちよ」でもお買い求めいただけます。
生産地から消費者へ届けられる八千代町の春の便りをぜひお召し上がりください。

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取材協力

JA常総ひかり
八千代地区青果センター

〒300-3534 茨城県結城郡八千代町太田841

TEL :
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