専業農家という選択肢

部会長 高萩さん
茨城県指定史跡「水戸城」を南に臨むJA水戸 常北地区は御前山に隣接した自然豊かな環境が特徴です。今回はJA水戸アスパラガス生産部会部会長 高萩さんのハウスにお伺いして、太陽光をたっぷり浴びて育ったみずみずしいアスパラガスを取材しました。
高萩さんが就農したきっかけは「自ら考えて仕事をしたい」と自営業に興味を持ち、数ある選択肢の中から「農業」を選択したことだったそうです。城里町にある母方の実家が専業農家を営んでいたこともきっかけのひとつだったと話します。高萩さんは当時勤めていた会社を退職して農業のノウハウを学びに県内の農家で2年程研修を受けました。研修先では農業のノウハウのほかにも、有機肥料栽培などに関する知識も培うことができたと話します。
ゼロからのスタート
高萩さんは耕作放棄地といわれる、農業の高齢化などのさまざまな要因で耕作がおこなわれなくなった農地を借りて、長年手入れのされていなかった土地を一から作り直すため、3日かけて圃場全体の草を刈り上げ、堆肥を撒いて土をかき混ぜ土づくりをおこないました。「土づくりはハウスを建てる前におこないました。ハウスが建っていない状態であればトラクターを使って堆肥を撒き、土をかき混ぜることができます。これを人の手でおこなうと1か月以上かかります。1人で始めた農業だったからこそ栽培までの工程をしっかり考えて効率化を図る必要がありました。」と教えてくれました。
就農して知った自然の偉大さ
高萩さんは圃場の土づくりが終わると5棟のハウスを敷地内に建てました。ところが平成26年に降った大雪で、建てたばかりのハウスが倒壊してしまったそうです。「初めて自然の怖さを知りました。つぶれたハウスを見て色々な不安が頭をよぎりました。」
しかし、倒壊したハウスを片付けるとハウスの下敷きになったはずのアスパラガスが育っていることにとても驚いたそうです。高萩さんは「冬の間に冬眠するアスパラガスだったからこそ、自然災害に負けず土の中でしっかりと根を張っていました。」と話し、災害の怖さと、アスパラガスの生命力の強さに自然の偉大さを感じたと教えてくれました。
栄養を蓄えるために
高萩さんのハウスでは「ウェルカム」というアスパラガスの品種を栽培しています。この品種をメインに栽培を開始した理由はJAの職員からの後押しでした。「農業を始めた1年目に不安はなかったです。ウェルカムは栽培方法が確立している品種でもあるので安心して栽培に取り組むことができました。きちんと管理すれば定植して20年は収穫をすることができます。」と高萩さんは話します。それでも最初の1年~2年は、アスパラガスに栄養を蓄えてもらうために収穫を控えたそうです。しっかりと生育させることによって10年~20年の長い間収穫をすることができるのだと教えてくれました。
高萩さんは収穫を迎えた太めのアスパラガスを畑から一本抜くと、「どうぞ食べてみてください。生でも食べられますから。」と味見をさせてくれました。新鮮な収穫したばかりのアスパラガスはシャキシャキとした食感と甘さが特徴で、キュウリ!?と思ってしまうほどみずみずしく、アスパラガス特有の豊かな香りが口いっぱいに広がりました。「ここのアスパラガスはみずみずしくて甘みもあるので、生でも美味しく食べられます。」と誇らしげに高萩さんは話してくれます。
届けたい美味しさは自然本来のもの
高萩さんに今後の目標をお伺いすると「今より2~3割程度出荷量を増やしたいですね。美味しいと言ってもらえるけれど、少ない人数で栽培しているので出荷量が追いついていません。それに自然のあるべき姿の中で、土壌本来の養分を活かして栽培したアスパラガスの美味しさを消費者にもっと届けていきたいです。私のハウスでは必要以上に手を加えないよう心がけています。消費者の口に入るものだから、自然の恵みそのままの美味しさを知って欲しいと思っています。」と素敵な笑顔で教えてくれました。また、部会としても「今後は部会の活性化を図り、アスパラガスの産地としての認知をもっと広めていきたいです。」と話してくれました。
最後に高萩さんにおすすめレシピをお伺いすると「アスパラガスは水分を逃がさないことで美味しく食べてもらうことができるから、天ぷらで食べてもらうのが一番おすすめです。牛肉などで肉巻きにしても美味しいですよ。」と教えてくれました。
今が旬のみずみずしいJA水戸アスパラガス生産部会のアスパラガスを、どうぞご家庭でもご賞味ください。
取材協力
JA水戸 北部営農資材センター かつらセンター
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