鉾田の火山灰土壌が育てるさつまいも
JAほこたのある鉾田市は茨城県南東部に位置し、水はけのいい火山灰でできた土と暖かな気候のもとでさつまいもの栽培が盛んにおこなわれています。鉾田市ではさつまいもの産出額が平成29年度で全国1位を誇り(※鉾田市観光協会公式ホームページより)、JAほこたのさつまいもは関東地方だけでなく東北地方や中部地方にも出荷をしています。
今回はJA根菜部会甘藷部部長を務める粕尾さんのさつまいもを紹介します。
品質を保つための他品目の栽培
粕尾さんは代々続く畑を22歳の時、父から継ぎ現在はさつまいもとお米、じゃがいもの3品目を栽培し今年で農業歴23年目になります。約3.3ヘクタールの畑を両親と3人で農作業をおこない昨年は約120トンの"紅はるか"を出荷しました。畑では連作障害での生育不良を防ぎ品質の良いさつまいものを作るため、さつまいもとじゃがいもを代わる代わる栽培しています。
粕尾さんが部長を務めるJAほこた根菜部会甘藷部は平成18年に発足しました。根菜部会は甘藷部の他、人参部、長芋部で構成されています。甘藷部では安定した品質で収穫がおこなえる"紅はるか"を中心に"紅あずま""紅まさり""シルクスイート"の4品種を取り扱い、昨年は約3,000トンを出荷しました。
品質の高いさつまいもは良い種芋から
さつまいもは前年に種芋を育てるところから始まります。「最初の種芋の品質が悪ければどんなにいい環境でも良いさつまいもは育ちません。特に苗づくりには気を遣っています。」と粕尾さん。
苗が育ったら4月下旬から6月中旬まで時期をずらしながら定植をおこないます。苗の植え付けは手作業で気候に合わせながら植え方を変えていきます。さつまいもは寒いと腐敗しやすくなるため作付け始めは霜や寒さからさつまいもを守るため「もぐら植え」で土に潜らせ植え、暖かくなるにつれ「斜め植え」に切り替えます。
自然から学ぶさつまいも栽培
露地でのさつまいも栽培では天候が大きく影響し、日照時間や気温、雨量によっては生育不良が起きることがあります。「毎年同じ天候ではないので昨年上手くいったことが今年も同じ成果とは限らないところがさつまいも栽培の難しいところです。部会員全員が天候と成果をみて毎年勉強になるといっています。これからも安定して美味しいさつまいもが栽培できるように努力していきます。」と粕尾さんは話します。
収穫はさつまいものつるを刈った後、マルチを取り除き掘り起こします。栽培面積が多いため機械で効率的に収穫をしますが、それでも収穫作業は朝から日没までおこなわれます。「収穫時期が早すぎず遅すぎないように時期を見極めて収穫をします。一番美味しい状態を消費者へ届けたいんです。」とさつまいも栽培への熱い想いを教えてくれました。
周年さつまいもを届けるために
収穫を終えたさつまいもはJAほこた甘藷キュアリング貯蔵施設にコンテナで届けられ出荷量の5分の1のさつまいもにキュアリング処理を施します。キュアリング処理は泥つきのまま多湿の約30度で72時間保ち蒸気を放出した後、再び多湿の約13度で貯蔵します。キュアリング処理を施すとコルク層でさつまいも全体がコーティングされ傷から菌の侵入を防ぎ、長期にわたり貯蔵が可能になります。さらに、長期貯蔵によりさつまいもがねっとりとし甘みが強くなるといいます。
JAほこた甘藷キュアリング貯蔵施設は平成29年に稼働し、3つの倉庫で1万コンテナを同時にキュアリング処理がおこなえます。長期貯蔵が可能になることで次年のさつまいもの収穫が始まるまで甘藷部のさつまいもを周年出荷できるようにしています。
安全なさつまいもを多くの消費者へ
粕尾さんは「年々甘藷部での収穫量も増えてきているので、これからもさつまいも栽培の講習会などをおこない部会員全員で今後も美味しいさつまいもを作り続けていきたいです。そして、消費者が安心できる安全な鉾田のさつまいもを一人でも多くの消費者へ届けていきたいです。」と甘藷部部長としての目標を話してくれました。
しっとりとした冷やし焼き芋
粕尾さんにおすすめのレシピを伺うと「定番の天ぷらなども美味しいけれど冷やし焼き芋は特に美味しいです。焼き芋を冷やすと甘みを感じやすくなり"紅はるか"や"シルクスイート"はしっとりとした品種で舌触りがなめらかです。」と教えてくれました。
JAほこた根菜部会甘藷部のさつまいもはJAほこたファーマーズマーケットなだろうでも購入ができます。今が旬のさつまいもをぜひご賞味ください。
取材協力
JAほこた 営農情報センター
〒311-1503 茨城県鉾田市徳宿2325-2
- TEL :
- 0291-36-2515
- FAX :
- 0291-36-2518