日本で消費されるパプリカの約9割は輸入品を占めています。日本へは1993年に初めてオランダから輸入されました。日本では当時、パプリカは目新しい野菜で生産者も数名しかいないなか、林さんはパプリカの可能性に着目し2000年から日本で先駆的にパプリカの温室栽培をはじめました。

林さんは農学部を卒業後、農業組織に15年勤めていました。林さんは「農業をやりたいという想いが長年ありましたが両親は農家ではなかったので、一から始めるからには世の中にないものを作ってみたいと思いました。勤めていた頃にオランダの施設園芸を視察する機会があり、カラフルで宝石みたいなパプリカを見て心打たれました。そんななか中古のバラ園があると声がかかったので"パプリカを作ろう"と決心して、退職後すぐにオランダの施設農業の専門学校で特別カリキュラムを組んでもらいました。帰国後すぐに栽培に取り組み今日まできましたが、その道のりは一筋縄ではなかったですね。」と就農のきっかけについて教えてくれました。当初、林さんは1人で80アールの温室で栽培を始めましたが、現在は株式会社Tedyとなり3.3ヘクタールの広大な温室で年間500トン以上ものパプリカを出荷しています。

日光がふりそそぐハウス内には、ずっしりとした色鮮やかなパプリカがたくさん実っています。
林さんは「ツヤツヤな見た目に仕上げなくてはいけないことが、パプリカ栽培の難しいところです。夜に冷え朝日が出始めるとぐんと気温があがるので表面は結露します。デリケートな野菜なので繰り返し濡れると表皮が荒れてしまいます。急激に温度が変化しないように細かな管理が必要不可欠です。」と話します。Tedyでは温度や湿度をはじめとしたさまざまな管理を、なんと"自動制御"でおこなっています。

Tedyは従来フィルム温室で栽培をおこなっていましたが2023年に採光性・保温性・耐久性に優れたガラス温室である「統合環境制御型グリーンハウス」を導入しました。このグリーンハウスには効率的な暖房・灌水設備、室内の自動制御を可能とするセンサーなどが備わっています。(BUSINESS NETWORKより引用)
また、毎週スタッフが生育調査をおこない、生育状況をアプリで記録・データ化しています。経験や勘だけに頼る農業から脱却し、できるだけマニュアル化・数値化することで正確かつ効率的に高品質なパプリカを育てています。さらに蓄熱タンクを用いたボイラー稼働時間の削減、灌水した水を圃場外へ排出せず再利用するなど、環境への負荷を減らしながら土耕栽培の約4倍もの生産量を実現しています。

約4mまで成長したパプリカの間を通る通路にはレールが敷かれています。レール上を電動の高所作業台車で移動することで、登ったりしゃがんだりすることなく作業がおこなえます。収穫後には目視検査のあとセンサーを通って映像で瞬時に品質を判別、重量器のついたレーンで重量別に分けられます。「排除できる負担はなくし働きやすい環境を作りたい」と林さんは話します。

パプリカにとっても、スタッフにとっても良質な環境が揃ったTedyですが、林さんの飽くなき探究心は止まりません。林さんは今後の目標について「昨年2023年から稼働し始めた新しい温室を100％に使いこなし、生産量を最大化していきたいです。また、培ってきた技術と創り上げた環境を次の若者へと受け継いでいきたいです。」と話してくれました。

林さんは「輸入のパプリカは早採りして輸送過程で追熟・着色させています。届くまでに日数がかかるためどうしても鮮度が落ちやすく風味や食感がそこなわれてしまいます。Tedyでは早ければ収穫の翌日には出荷できるため、樹上でしっかりと完熟させ甘みを最大限に引き出すことができます。ぜひ一度ドレッシングをかけずに、味わい深さやシャキシャキっとした食感を感じてもらいたいです。これが本来のパプリカなんだと驚いてもらえると思います。」とTedyのパプリカの魅力を教えてくれました。

今回ご紹介したパプリカはTedy内の直売所「Tedy's Table」や各オンラインストアの他、各地の量販店などでもお買い求めいただけます。
国産ならではの新鮮なパプリカをぜひご賞味ください。