牛乳好きなら知って得する!酪農に関するQ&A
私たちが普段何気なく飲んでいる冷たい牛乳。牛からしぼったばかりのお乳は温かいのですが、パックに入ったおいしい牛乳が出来るまで、どのような工程や苦労があるのでしょうか?Q&Aにまとめてみました。
Q1.酪農家さんのお仕事は、乳しぼりだけだよね?
その答えは・・・A.酪農家さんは、乳しぼり以外にも、とっても多くの仕事があるんです。牛にとってやさしい環境を整えるためにあらゆる作業を行います。
酪農家の仕事は、乳しぼりだけではありません。良質でおいしい牛乳は、健康な牛から生み出されるもの。つまり牛を健康に飼育するための作業が、酪農家の仕事なのです。牛の健康を保つために過ごしやすい環境を整えて、日頃の体調管理を行うこと。酪農家は細心の注意を払って、心地良い環境を作り出すために様々な作業を行っています。
1日のタイムスケジュールはこんな具合。とっても忙しいことが分かります。
例えばお乳とは関係ないようですが、夏の暑熱対策も大事な仕事のひとつです。ホルスタイン(乳牛の代表的な品種)はとても暑さに弱いので、快適な環境を昼夜を問わず整えてあげる必要があるのです。暑い日は牛舎にスプリンクラーで散水して牛舎を冷やしたり、扇風機を使って牛に送風して体温を下げたりと、暑熱対策がひときわ重要です。
いつでも快適な状態を維持するために、酪農家は牛から目を離すことができません(※)。毎日2~3回の搾乳は、牛の健康管理のためにも重要です。また、牛の体調に合わせたエサの給与や、牧草のための土づくり、エサづくり、掃除など他にも欠かせない作業が沢山あります。
生産コストの高騰や牛乳消費の低迷など厳しい現状に直面しつつも、酪農家は愛情を持って牛と向き合い、子牛の時から妊娠・出産を経てお乳が出る状態になるまで長い年月をかけて、大事に育てているのです。
- 365日休みのない酪農家に代わって乳牛の面倒を見てくれる「酪農ヘルパー制度」もあります。
Q2.牛さんは、み~んな、お乳が出るんですか?
その答えは・・・A.出産したお母さん牛だけが、お乳を出してくれます。私たち人間は、酪農家が愛情をかけて育てた母牛から、大事なお乳を「おすそわけ」してもらっています。
いつスーパーマーケットに行っても、沢山並んでいる牛乳。
牧場にいる牛は、どんな牛でも毎日お乳がでる。そう思っている方はいませんか?人間のお母さんのことを考えてみましょう。お乳が出るのは、赤ちゃんを産んでしばらくの間だけ。牛も実は同じなんです。妊娠して、子牛を産んで、はじめてお乳が出ます。つまりお乳を出してくれるのは、子どもを産んだ後の雌牛だけなのです。
牛は誕生してから約14ヵ月後種付けされ、その後約10ヶ月の妊娠期間を得て出産します。母牛としてようやくお乳が出るまでに、産まれてから約2年もかかります。出産後2~3ヶ月をピークに約10ヶ月搾乳をしている間に、種付けをして妊娠したあと、出産前の約2ヶ月搾乳をやめ次の出産に備える――こうした流れを繰り返しながら、乳牛としての役目を果たしていくのです。
産まれてからお乳が出る状態になるまで約2年もかかるという計算になりますが、妊娠に出産、そして子牛を育て上げる作業など、お乳を出さない時期の牛の世話も酪農家にとっては大事な仕事です。妊娠時の牛のケアは細心の注意が必要となりますし、牛のお産も人間同様いつ生まれるかわからないので、出産の時は24時間見守ります。
牛は生き物です。愛情をかけて育てれば、その気持ちは牛たちにも伝わる――酪農家たちは、そう考えています。美味しい牛乳を生み出すために、産まれてから長い間、可能な限りの手間をかけて、1頭1頭大切に育てて生乳を生産しているのです。
Q3.牛さんのお乳は、なにから出来ているの?
その答えは・・・A.お母さん牛の血液からできています。
牛の乳搾りで、出てくるミルクの温かさに驚いた経験をお持ちの方もいらっしゃるかと思いますが、その乳房に筋やこぶが浮き出ていたことにお気づきでしたか? 実はこれが牛乳と大いに関係があるのです。
牛の乳房に浮き出た筋やこぶ――これは牛の血管なのですが、実はこの血管を流れている血液こそが、私たちが普段何気なく飲んでいる牛乳の源なのです。
胃や腸を経て消化吸収された栄養素は、血液によって全身へ運ばれます。その中でも乳房へ運ばれた血液は、血管を通じて乳房の中にある乳腺細胞というところに栄養を運びます。その乳腺細胞が、血液中の栄養素を取り込んでお乳の成分を作り出すのです。
牛乳1パック分のお乳をつくるのに必要な血液はなんと400~500リットル。母牛は一日に20~30リットル分のお乳を作り出す事から、単純計算すると、毎日約1万リットルもの血液を乳房に送り込んでいることになります。母牛はお乳をつくるために、こんなに頑張っているのです。
搾りたての牛乳の温かさは、母牛の体を流れる血液の温かさ――牛乳を飲むということは、子牛に対する命のいとなみの結果をいただくことだといえるのではないでしょうか。また、えさが血液になり、血液が牛乳になるということは、母牛の食べた物や健康状態が、お乳の味や質に直接影響を与える事を意味します。そのため酪農家はえさの与え方や種類、体調管理や環境について、まるでわが子のように1頭ごとに細心の注意を払って世話をしているのです。
搾乳の方法
ミルカーという機械を使い、1日2~3回行います。その際、細菌汚染を防ぐため機械の殺菌・洗浄の管理は勿論、牛自体についても、搾乳前には乳頭をきれいにして保ち、搾乳後にも消毒剤などを使って乳頭の殺菌を行い、細菌による炎症を防いでいます。酪農家は、牛の健康を保つため、そして安全な牛乳のために、このような沢山の細やかな作業を日々行っているのです。
作成協力 (一般社団法人)Jミルク