手しおにかける

~和牛を育てる高校生に密着!!【中央農業高校】③~

2024年01月16日

牛の繁殖から肥育までを一貫して実習する県内唯一の農業高校である富山県立中央農業高等学校。


JA全農とやまでは、昨年3月には同校へ繁殖用和牛素牛を寄贈したほか、今年度より県内肉牛生産者と連携した生産技術講習を実施するなど、同校生徒のスキルアップや畜産農家の後継者育成を図ることを目的とした取り組みをおこなっており、本ブログにて生徒たちの頑張る姿を紹介しています。


昨年11月28日、同校肉用牛舎が、食品安全や労働安全、環境保全などに取り組む農場であることを示す「JGAP(畜産)」認証を取得し、富山県内のみならず、北陸の畜産農家“初”となる快挙を成し遂げました。
北陸の畜産農場初の快挙!!富山県立中央農業高校牛舎が畜産JGAP認証を取得! | トピックス一覧 | JA全農とやま (zennoh.or.jp)


生徒たちは、この認証取得にかかる取り組みについて、1月18・19日に東京都にて開催される「第7回 和牛甲子園(※)」にて、全国の和牛飼育に取り組む高校生たちへ向け紹介します。
※JA全農が「将来の担い手候補である高校生の就農意欲向上」と「日本各地で同じ志を持つ高校生同士のネットワークを創出し、意欲と技術の向上を図る」ことを目的に開催している、全国の和牛を育てる高校生が、日頃の取り組みと出品牛の肉質を競い合う大会。


今回は、和牛甲子園出場を前に、生徒たちが「JGAP認証」に向け奮闘してきた模様の一部をご紹介します!


認証取得にあたり、昨年9月に同校生物生産科動物科学コース畜産専攻の2年生の生徒4人による「JGAP構築チーム」が結成されました。


▲「JGAP構築チーム」の4人の生徒たち


JGAPとは、Japan Good Agricultural Practicesの略で、直訳すると「良い農業の取り組み」。
国では、「農業生産工程管理」と呼んでいます。


畜産部門におけるJGAPの審査では、食品安全をはじめ、家畜の健康、快適な飼育環境への配慮、労働者の安全対策、環境保全など、全部で113にもおよぶ項目において各適合基準が設けられており、認証を得ることにより、農場の信頼性向上や、畜産経営のリスク低減、農場管理の効率化といったメリットがあります。


認証にあたり、労働安全管理や作業工程の見直し、牛舎環境や備品の整備、膨大な書類の作成等たくさんの作業が必要となりますが、生徒たちがまず苦戦したのが、この認証に必要な書類の準備。


牛の出生から出荷までの生産履歴が全て記載されている「牛個体管理カード」や、農場の基本情報、飼料の農薬の使用状況等にいたるまで、詳細かつ膨大な資料が必要となるうえ、認証にかかる手順書には、専門用語や難しい法律の名前がびっしり。


生徒たちは、その膨大な情報量に圧倒され、分からないことだらけで何度も挫折しそうになったそうで、時には校内の寮で夜遅くまで、睡魔と闘いながら作業をしていたことも。



▲書類作りに悪戦苦闘する生徒と先生


それでも、GAP指導員の資格を持つ先生のサポートのもと、チーム全員で協力し、文章をかみ砕きながら作業を進めるうちに少しずつ理解が出来るようになったといいます。


そのほか、各項目の適合基準を満たすため、牛舎での日々の飼養管理や備品の整備など、メンバーは試行錯誤しながら着々と準備を進めていきました。


▲牛舎で牛の体調を確認しながら、牧草を給与する生徒


▲動物用医薬品の棚を整理する様子


こうして苦労して揃えた必要書類を審査機関へ提出し、万全の準備をして迎えた10月30日の現地審査。


獣医師である審査員が学校を訪れ、県の関係者なども立会いのもと、審査は実施されました。



まずは審査員より審査内容について説明があり、緊張した面持ちで真剣に話を聞く生徒たち。


審査では、先生・生徒への聞き取りや書類確認の後、実際に牛舎の視察がおこなわれ、最後に結果講評がおこなわれます。


生徒の1人は、
「これまで、先生と一緒に5人で一生懸命頑張ってきたので、無事JGAPを取得できるようがんばりたい」と、審査に向けた意気込みを聞かせてくれました。


まずは適合基準に関する聞き取りと、事前に生徒たちが提出した書類確認の審査。

審査員が各項目の適合基準を満たしているか、ひとつひとつ丁寧に先生・生徒へ聞き取りしていきます。
合わせて、記録書類等が必要とされる項目については、提出した書類も合わせて、チェックをしていきます。

机の上には生徒たちが苦労して準備した提出書類がずらり。


時折投げかけられる質問にも、生徒たちはしっかりと対応していました。


こうして、半日以上にも及ぶ聞き取り・書類審査を終え、次は農場の現地視察の審査。


ここでも、審査員より先ほどの聞き取り内容に即した内容で管理が徹底されているかなど、生徒・先生に対し詳細に確認がおこなわれました。


こうして、丸1日をかけて審査を終え、審査員より当日の結果報告と講評がおこなわれ、
気になる審査結果は、、、、


この日、同校では計5点の是正項目が挙げられました。


審査員の講評は、
「全体的に良く出来ており、他校に比べても優秀。5点の不適合はあったものの、4週間以内に改善いただければ認証は取得できると思う」とのこと。
また、同校の取り組みについて、「GAP=“良い農業の実践“に学生のうちから携わり、学んでもらえるのは嬉しい。将来、周囲の人たちにも広めていって欲しい」との思いを話してくださいました。


生徒にも感想を聞いたところ、「想像以上に時間がかかり、とても大変だった。審査は厳しいものだなと思ったけど、自分たちの意見もしっかりと伝えることが出来良かった」と話してくれました。


この結果を受け、メンバーは指摘事項を改善し、再度書類を審査機関へ提出。


令和5年11月28日、晴れて認証取得となりました。

▲認証書を掲げ笑顔の生徒と先生 ▲認証書

生徒は、「認証取得の連絡が来たときは、準備で苦労した分、嬉しくて涙が出た。メンバーみんなで喜びを分かち合った」と認証取得にあたった思いを聞かせてくれました。


また、今回の認証の有効期限は2年となっており、「取得して終わりではなく、どう維持していくかを後輩たちに伝えていきたい。今後はJGAPの普及に向け、校内のみならず、地域の人々や生産者の皆さんに向けたアンバサダー活動などにも力を入れていきたい」と話していました。



認証取得を経て、より団結力が高まった「JGAP構築チーム」のメンバーたち。



1月18・19日には、東京都にて開催される和牛甲子園にて、今回の取り組みについて全国の高校生に向け発表します。
次回は、生徒たちが和牛甲子園にて奮闘する模様をお届けします!