こだま西瓜は、手頃なサイズ感から、家族向けに栽培されるようになりました。
黒こだま西瓜については、高温期の栽培が可能になることで出荷期間を延ばすことができ、生産者の生活を助けるという目的もあります。

7月、夏の風物詩

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JA北つくば こだま西瓜部会
副部会長 大和田 美佐夫さん

JA北つくばのこだま西瓜部会には、現在177名の部会員がいます。その中の25名が黒こだま西瓜「誘惑のひとみ」を栽培しています。大和田さんは、3年程前にもAmoreに登場していただきました。現在副部会長でいらっしゃいます。

こだま西瓜は、この地域で50年以上も前から栽培されています。手頃なサイズ感から、家族向けに栽培されるようになりました。黒こだま西瓜については、高温期の栽培が可能になることで出荷期間を延ばすことができ、生産者の生活を助けるという目的もあったのです。

JA北つくばでは、黒こだま西瓜「誘惑のひとみ」の出荷時期を毎年7月1日以降に部会で決めており、2016年の初出荷は取材当日、7月6日でした。

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地域の人との繋がりを大切にする

大和田さんの所有する圃場の中には、60年にもなる圃場があると言います。連作障害対策として、稲わらを使うそうです。連作障害を防ぐだけでなく、保水力を高めて余分な残肥を吸い取る効果もあるなど、こだま西瓜にとって稲わらの効果は大変高いそうです。

大和田さんは、地元の農家さんたちに稲わらを分けてもらいます。替わりに農作業を手伝ったりと、地域の方々との繋がりを大切にしているようです。そのようにして、60年もの圃場が保たれてきたのです。

大和田さんの黒こだま西瓜は誰もが認める良いものだと言います。その背景に、"すいか"という垣根を超えた地域の人との繋がりがあることに感動しました。大和田さんは、地元の農業高校に苗を持って行ったりと、次世代の育成も考えているようです。

シャリ感が決め手

こだま西瓜は、種を蒔いた約20日後に接ぎ木をします。大和田さんは台木にはカンピョウを使うそうですが、トウガンも使われるそうです。接ぎ木の20日後に定植し、さらに約45日後に交配します。ミツバチを使う生産者もいるようですが、大和田さんは交配作業をすべて、自らの手で行います。

いくつもの圃場すべてを交配する労力は並大抵のことではありません。しかし、「花粉は午前中日が昇るにつれて死んでしまいます。ミツバチは生きているから交配も安定しない。自分の手が一番」だと大和田さんは話します。

その他にも、ハウスに"レディソル"という塗料を塗って日光を遮るなどの工夫をします。西瓜は高温にさらされると木が痛み、花粉が出なくなってしまうからです。

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本来、西瓜は昼夜の寒暖差が大きいほど美味しくなります。7月頃になると昼夜の寒暖差もなくなり糖度がのりにくいのだそうです。その糖度をカバーするのが"シャリ感"です。その"シャリ感"こそ、こだま西瓜の美味しさの決め手です。

"毎年実りを迎える"ことの難しさ

大和田さんは、西瓜はプロでさえ、実らないことがあると言います。中でも交配のタイミングが難しく、「葉25枚前の花で交配すれば木が枯れてしまうし、30枚あると実は大きくなるが、逆に木に力が付きすぎているために病気が発生してしまう」そうです。

さらに、交配前後20日頃の天候にも左右されます。日頃の管理だけでなく、天候を先読みをすることが重要です。少ない人は一つの苗に2つ程の実がなる程度ですが、長年の経験や技術があれば、3~4つの実をならすことができます。

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こだま西瓜部会では、勉強会や講習会を積極的に行います。大和田さんは8年間当部会の検査委員長を務めました。基準を満たさず出荷できない生産者の姿を見てきたからこそ、部会をまとめることの重要性を感じているようです。技術を共有していくことが、生産者と部会を守り、地域にも貢献することになるのです。

こだますいかの魅力を伝える

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黒こだま西瓜は、8月のお盆頃まで出荷されます。大変短い期間ですが、毎年楽しみにしている消費者が大勢います。JA北つくばでは、小学校や高校に苗を持って行ったり、積極的にこだま西瓜を地域の子供達に紹介するなどの取り組みを行っています。

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市場に安定して出荷することも大切ですが、地域の人がこだま西瓜に親しむことは、結果として産地の発展につながることになっています。こだま西瓜部会には、少数ながら20~30代の若手もいます。大和田さんの息子さんも農業高校に通い、こだま西瓜の栽培を志しているそうです。

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初代となる大和田さんの祖父は、黄こだますいか"おおとり"を栽培していたそうです。そこから代々、さまざまな品種を栽培してきました。3代目の大和田さんは黒こだますいか、それに続く4代目の息子さん。60年続いた圃場は、これから先もこだま西瓜を育んでいくことでしょう。

取材協力

JA北つくば 東部営農経済センター

〒309-1111 茨城県筑西市上星谷94-2

TEL :
0296-21-8055
FAX :
0296-57-5877
WEB :
http://www.ja-kitatsukuba.or.jp/

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