手しおにかける

~和牛を育てる高校生に密着!!【中央農業高校】④~

2024年03月21日

牛の繁殖から肥育までを一貫して実習する県内唯一の農業高校である富山県立中央農業高等学校。


JA全農とやまでは、同校へ繁殖用和牛素牛を寄贈したほか、県内肉牛生産者と連携した生産技術講習を実施するなど、同校生徒のスキルアップや畜産農家の後継者育成を図ることを目的とした取り組みをおこなっており、本ブログにて生徒たちの頑張る姿を紹介しています。

過去の記事はこちら!
和牛を育てる高校生に密着!!【中央農業高校】 生産技術講習
和牛を育てる高校生に密着!!【中央農業高校】 就業体験
和牛を育てる高校生に密着!!【中央農業高校】「JGAP(畜産)」認証取得への取り組み


今回は、今年度の生徒たちの取り組みの集大成!
今年1月に東京・品川グランドホールにて開催された第7回「和牛甲子園(※)」に出場した生徒たちの様子をご紹介します!

(※)「和牛甲子園」・・・JA全農が「将来の担い手候補である高校生の就農意欲の向上」と「日本各地で同じ志を持つ高校生同士のネットワークを創出し、意欲と技術の向上を図る」ことを目的に開催している、全国の和牛を育てる高校生、その名も「高校牛児」たちが、和牛の肉質と日頃の取り組みを競い合う大会。


第7回となる今大会へは、過去最多となる全国25道府県41校が参加し、同校は7年連続で出場しました。


大会当日の朝。まだ外が薄暗い中、富山駅に集合した生徒たち。
今回甲子園へ出場するのは、2年生の生徒4人。

▲会場へ向け、気合十分で出発!


新幹線に乗り約2時間弱。一同は東京駅へ。
電車を乗り換え、無事、会場の東京・品川グランドホールへ到着。


続々と会場へ集まってくる全国の“高校牛児”たち。


いよいよ、和牛甲子園の開幕です!

▲開会の様子


大会は2日間に渡り開催され、1日目は和牛飼育体験発表会のほか、先輩“高校牛児”による講話、2日目は枝肉共励会や枝肉勉強会などがおこなわれます。

開会式で、開会の挨拶や昨年度優勝校の優勝旗返還などがおこなわれた後、さっそく1日目の目玉となる「和牛飼育体験発表会」に。

本大会では、日頃の取り組み内容を評価する「取組評価部門」と、枝肉の肉質を評価する「枝肉評価部門」の各部門でそれぞれ審査をおこない、2部門の合計点数で「総合評価部門」の最優秀賞1校を決定します。

生徒たちは事前に、今年度の取組内容を7分程度の動画にまとめて大会側へ提出しており、その動画に対する審査結果が発表されます。
(各参加校の体験発表会動画は、和牛甲子園ホームページからご覧いただけます。
和牛甲子園HP【取組評価部門】体験発表会 動画 – 和牛甲子園 (wagyukoushien.com)

今年度、同校肉用牛舎は、食品安全や労働安全、環境保全などに取り組む農場であることを示す「JGAP(畜産)」認証を北陸の畜産農家で初めて取得し、生徒たちは【JGAP認証のその先】と題し、認証取得後の変化や今後の活動などについて動画にまとめました。


以下で内容を一部要約してご紹介します。

【「GAPっていったい何?」という気持ちを抱えたままGAPチームが発足されました。
手順書の膨大な情報量と専門用語に圧倒され、知らない単語に難しい法律の名前、わからないことばかりで何度も挫折しそうになりました。
それでも、先生を含めた5人で睡魔と闘いながら夜遅くまで書類整備をしていたこともあり、自己点検をして何が取り組めていないのか、どの書類が紐付けされていないかなど、少しずつですがGAPのシステムが理解できるようになりました。そして日報の記入や発情観察など、当たり前におこなっていた日々の一般管理そのものがGAPだと気づくことができたのです。

GAPでは食べる人への配慮、生産基盤への配慮、働く人への配慮について適切な農場管理の実践を目指しており、GAP認証に取り組むことは自動的にSDGsに取り組むことになり、結果的に私たちひとりひとりが「良い農業とは」や「持続可能な開発目標」について考えるようになりました。そして、何よりも感じていることは仲間との絆が深まったことです。GAPに取り組むようになってからというもの、朝も放課後も毎日牛舎へ通い、帰寮時間ギリギリまで話し合いをし、書類整備や牛舎環境の整備を行いました。GAPの資料が一つずつ完成していく喜び、仲間と協力して1つのことに取り組む充実感、これらはGAPに取り組んでいなかったら感じることができなかったものです。

晴れて令和5年11月28日付で北陸初の畜産農場でのJGAP認証となりました。しかし認証はゴールではなく、スタートにすぎません。認証を継続し、後輩にこの取り組みを引き継いでもらうためには、誰が見てもわかりやすい様式に作り直し続ける必要があります。また、私たちの取り組みを皮切りに、中央農業高校のすべてのコースで各種のGAP・HACCP・ISOなどが取得できるような体制作りを行っていきます。

農業関係者のみぞ知りうるGAPではなく、より幅広い年代にGAPを浸透させるためにはマスコミや情報誌、学校ホームページなどを駆使して発信し続ける必要があります。そして県内の小中学生を対象とした、楽しい農業や分かりやすいGAPについての出前授業を行うことで農業高校に対しての興味・関心を抱いてもらい、未来の富山県の農業従事者を確保するための活動を実行し、ひいては広く県民にGAPという言葉を浸透させていくことを目標としています。】

▲発表動画

生徒たちが認証取得に向け苦労を重ねてきたこと、またその取り組みを通じて、どう変化していき、今後その経験をどう生かしていくのかまで、しっかりと伝わってくる内容となっていました。

その後、過去の和牛甲子園優勝校のOB、OGによる先輩“高校牛児”の講話があり、生徒たちは自分たちの進学・就職など将来の参考にしようと、熱心に話を聞いていました。



こうして、1日目は無事終了、、、と思いきや、ここでまさかのスペシャルゲストが!!

「和牛応援団長」として活動中のお笑いタレント“なかやまきんに君“が登場し、突然のサプライズに、生徒たちは大喜び!
和牛についてのトークのほか、生徒が参加するミニゲームも開催し、会場は大盛り上がり。

最後には、なかやまきんに君から高校牛児たちへ「“和牛“は、日本はもちろん、世界からも評価されている。そのようなすごいものを育てていることに誇りをもって、これからも頑張って欲しい」とのメッセージが贈られました。
これまで日々努力を重ね、緊張の初日を終えた生徒たちに、嬉しいサプライズプレゼントでした!

こうして初日を終え、少し安心したような表情で「明日も頑張ります!」と話してくれた生徒たち。
生徒の皆さん、1日目、お疲れ様でした!



翌日、和牛甲子園2日目。
まずは、東京都中央卸売市場食肉市場にて枝肉勉強会と共励会がおこなわれました。

▲初めて訪れるセリ会場で記念撮影


4人の生徒たちは、全員、この日初めて本物の枝肉やセリを見るとのことで、「楽しみ」「自分たちの育てた枝肉がどう評価されるんだろう」「A5ランクをとれるかな」と、期待と不安が混ざった様子。

セリを前に、まずは極寒の冷蔵庫の中に入り、食肉の格付け審査員より自分たちの育てた枝肉の講評を聞きます。
こちらが同校出品牛の枝肉。今回は月齢28か月の去勢牛を出品しました。



目の前につるされた、初めて見る枝肉を前に「すごい、、」「圧倒された」と驚きの様子を見せる生徒たち。

耳標ナンバーが91番だった同校の出品牛に対し「91、よく頑張ったな」とつぶやく生徒や、「中農牛は他校の牛と比べると小さい方だと思うけど、それでもこんなに大きな枝肉になるんだ」など、肥育から出荷までを自分たちの手でおこなった彼らだからこそ感じられる、率直な想いを聞かせてくれました。

▲自分たちの出品牛の枝肉を見る生徒 ▲甲子園開催 数日前の出荷作業の様子



その後、冷蔵庫から移動し、いよいよセリのスタートです。

セリ人が出品番号を読み上げ、出品牛ごとに個体の情報や販売価格がモニターに表示されます。
販売価格が高値となる枝肉は、落札ボタンが中々押されず、とまらない数字に大きな盛り上がりを見せる生徒たち。落札された枝肉が次々と目の前を流れていき、会場は熱気に包まれていました。

そして、いよいよ同校の番。

まずは枝肉の評価が表示され、『枝肉重量405kg、歩留等級A、肉質等級5、BMSNo.11』との結果に。
最高ランクの格付けである『A-5』『BMSNo.12』に近い評価を得て、喜びの表情を見せる生徒と先生。

続いて、この評価を受けて販売価格が付けられます。

願いを込め、モニターを見つめる生徒と先生。
ここでも、どんどん大きくなる販売価格に会場が盛り上がりを見せます。

モニターにくぎ付けになり、息をのむ一同。



気になる販売価格は、、、
1kgあたり4,000円を超える過去最高の高値となり、大喜びする生徒と先生。

想像以上の価格に、「足の震えが止まらない」という生徒や、感極まり涙を浮かべる生徒も。

何度もみんなで力強い握手をし、喜びを分かち合っていました。

その後、グランドホールへと移動し、世界で和牛の文化を伝えている渡邊麻莉夏さんによる特別講演や、枝肉の評価基準についての勉強会、枝肉評価部門の入賞牛の発表、褒賞式、記念撮影などがおこなわれ、全2日間にわたる和牛甲子園は終了しました。

今回、惜しくも入賞は逃したものの、想像以上の枝肉の評価を受けた生徒たち。
甲子園を終え、話を聞くと、

「愛情を込めて育てた牛が良い評価を受けて本当に嬉しい。次はもっと重量を出せるように頑張りたい」

「他校のレベルが高くすごいと思った。自分たちも今回の審査員からのアドバイスを取り入れ、来年は入賞できるよう頑張りたい」
など、各々の想いを聞かせてくれました。


今回甲子園へ出場した生徒は、全員が2年生。
生徒たちの言葉からは、すでに次の甲子園を見据えていることが伝わり、とても頼もしさを感じました。

年々、牛の肉質も取組み内容も着実にレベルアップしている生徒たち。
これまでの認証取得にかかる取り組みや今回の甲子園で得た経験は、生徒たちにとってまたひとつ、大きな糧となったのではないでしょうか。

来年も、さらにパワーアップした皆さんにお会いできるのを楽しみにしています!

生徒の皆さん、先生、本当にお疲れ様でした!

▲ガッツポーズで記念撮影!