「全農広域土壌診断システム」の開発について ~緻密・柔軟な施肥設計可能に~

(「全農広域土壌診断システム」のイメージ図)

JA全農は、富士通株式会社と共同で「全農広域土壌診断システム」を開発し、2019年4月からサービスを開始します。
土壌診断にもとづく土づくりは、作物の収量や品質を向上させるだけではなく、適正な施肥の実施により肥料コストを低減できるなど農家所得向上の点でも重要です。しかし、現状の土壌分析では、数段階の組織を経て依頼されるため、分析に着手するまでに時間を要することや、処方箋(しょほうせん)や施肥設計を作成可能な人材が不足しているなどの課題があります。
今回開発したシステムは、依頼者が分析値をWEB上でリアルタイムに確認出来るため、生産現場へ迅速にデータを届けることが可能となります。また、過去の土壌分析値との比較や、使用する肥料の成分などのデータベースを利用した処方箋の作成が可能で、より緻密な施肥設計が行えます。さらに、タブレットなどの活用により、生産者との面談による柔軟な施肥設計も対応できます。
今後はシステム利用者の拡大を図り、JAグループの最重点課題である農家手取り最大化へ貢献していきます。

JA全農の土壌診断の取り組み

JA全農では、「健康な土づくりと適正施肥による施肥コスト抑制運動」に取り組み、JAグループ全体の土壌診断事業の強化に努めてきました。平成20年度の肥料価格高騰を受けて、平成21年、全国9ヶ所に広域土壌分析センターを設置し、県域を越えた土壌分析業務を行っています。また、県域でも分析組織を構えており、全国23か所の土壌分析拠点にて年間約14万点の土壌分析を実施しています。

「全農広域土壌診断システム」の特長

1.業務効率化および精度管理向上
2.土壌分析・施肥設計データをWEB上で一元管理
3.グラフ表示による分かりやすい診断結果
4.ベテラン指導員における処方箋・施肥設計ノウハウの共有化
5.現地での迅速な営農支援
6.地理情報システム「Z-GIS(※)」へ分析値データを反映可能
(※)Z-GIS:本会が開発した、地理情報を利用して、多様な営農情報を管理するシステム

今後の展開

現在は、JA全農の広域土壌分析センターと同センターを利用する県間の稼働ですが、今後システム利用者拡大を図ります。今回の土壌診断システムは、現時点では土壌の化学性(pH、EC、可給態リン酸など)に特化したものです。今後は、これに加え、物理性(土の硬さ、排水性、透水性など)・生物性(線虫および微生物(青枯病菌、ネコブ病菌、糸状菌、放線菌、細菌など))を用いた総合土壌診断を組み込み、より有効な施肥改善の提案や作物の収量、品質の底上げや生育障害の改善に結びつくシステムを構築していきます。