畜産生産事業

全農は、家畜(牛・豚・鶏)の飼料を、原料の輸入から生産者への配送まで一貫して担っています。家畜飼養の効率化に向けた新技術の普及など、生産面の支援にも取り組んでいます。

全農は、家畜(牛・豚・鶏)の飼料を、原料の輸入から生産者への配送まで一貫して担っています。家畜飼養の効率化に向けた新技術の普及など、生産面の支援にも取り組んでいます。

飼料の安定供給で畜産物の生産を支える

牛や豚、鶏といった家畜の飼料には、とうもろこしをはじめとした穀物等を混合・加工した配合飼料が使われます。全農では、海外の穀物産地や国内原料メーカーから飼料原料を調達し、グループ会社の飼料工場で製造した配合飼料を、経済連・JAを通じて生産者(畜産農家)に供給しています。原料調達から生産者への供給まで一貫した事業展開で、肉や牛乳、卵などの畜産物の生産を支えています。
畜産物を消費者のみなさまに安定してお届けするため、生産者の戸数や家畜の頭数など「生産基盤」をいかに維持するかも、全農の重要な役割です。具体的には、生産者の牛舎の設置を支援したり、ICTを活用して牛の出産を管理する機器を普及したりするなど、生産者の労力軽減、経営の維持・拡大につながる取り組みをすすめています。

JAグループにおける配合飼料の主な流通経路

事業紹介

飼料原料の安定確保

海外原料の安定確保

配合飼料の原料となるとうもろこし等の穀物は、海外の生産農家から現地のカントリーエレベーターやリバーエレベーター、ターミナルエレベーター等の大型のサイロに集荷・保管されます。その後、河川輸送や鉄道輸送により輸出港に運ばれ、船積みされて日本へ輸出されます。
全農では、穀物の主要原産国における穀物の集荷や輸送、輸出等の業務を担う関連会社を現地に設立し、飼料原料を安定的に確保しています。

飼料原料・配合飼料の物流図

船積能力を増強した全農グレイン(株)

米国では1979年に米国ルイジアナ州ニューオーリンズに穀物保管・船積施設を運営する全農グレイン(株)を設立。さらに穀物産地での集荷のため、伊藤忠商事(株)と合弁でCGBエンタープライズ(株)を立ち上げ、川上からのサプライチェーンを整えました。全農グレイン(株)は拡張工事をした輸出用エレベーターを2018年4月から本格稼働させています。
さらに近年も、ブラジル、カナダでも現地穀物取扱業者などとの共同出資で集荷販売会社を立ち上げるなど、飼料原料の安定確保の取り組みを強化しています。

飼料原料の輸入元多元化と海外拠点等の状況

グループ飼料会社での配合飼料製造・販売

国内各地にあるグループ飼料会社で、飼料を製造・販売しています。養牛・養豚・養鶏用の配合飼料をはじめ、幼畜(子牛・子豚)用の飼料など、畜産農家のみなさまのニーズに応じた飼料の製造・販売によって、安全で高品質な畜産物の生産に貢献しています。

ホクレンくみあい飼料(株) 南日本くみあい飼料(株) ジェイエイ北九州くみあい飼料(株) JA西日本くみあい飼料(株) JA東日本くみあい飼料(株) JA全農北日本くみあい飼料(株) (株)科学飼料研究所

各グループ飼料会社の管轄エリアと拠点

グループ飼料会社等

畜産生産基盤の支援・補完、革新的な商品・技術の開発と普及

国産畜産物の安定供給のため、生産者の戸数や家畜の頭数など「生産基盤」を維持・拡大する取り組みを支援・補完することは全農の重要な役割です。
また、革新的な商品・技術の開発と普及によって、生産者の生産性向上・労務軽減のための各種支援にも取り組んでいます。
具体的には、和牛の頭数を増やすため、子牛を育てるための簡易牛舎・施設の賃貸事業や、生まれた子牛を生産者から預かり育成する拠点(キャトルステーション)の設置をはじめ、ET技術を活用した子牛の増産支援および分娩事故を低減する「モバイル牛温恵」や分娩間隔を短縮する「ファームノートカラー」などICT機器の普及促進に取り組んでいます。
養豚では、生産性の向上や豚肉の付加価値を高めるため、ハイコープ種豚の育種改良をすすめています。
養鶏では鶏糞量を低減する新たな飼料や飼料用米を活用した環境保全型飼料の開発に取り組んでいます。
また、3つの畜産関連の研究所を有しており、そこで革新的な商品・技術の研究と開発に取り組むとともに、畜産総合情報サイト「JACCネット」や畜産情報誌「ちくさんクラブ21」をWEB公開して、生産現場の活性化や新しい発想につながる情報の発信にも取り組んでいます。

畜産関係の研究所

畜産関連の研究拠点の一つ、飼料畜産中央研究所

概況・データ

配合飼料の流通量と全農グループの取扱数量の推移

近年の配合飼料の国内流通量は年間約2,400万トンで推移しており、全農グループの取扱数量はそのうちの約3割を占めています。

全農グループの配合飼料の取扱数量

取り組み

遺伝子組換えでないものを分別したとうもろこしの供給

飼料の主原料であるとうもろこしの主産地米国では、遺伝子組換え(GMO)化が93%(2022年)まですすんでいます。
全農グループでは生協等、消費者のみなさまのニーズに応え、収穫後に農薬を使わず、産地から日本の畜産生産者まで遺伝子組換えの混入を防ぐため分別生産流通管理をおこなったPHFとうもろこし(IP)を供給しています。

  • PHF(Post Harvest Free):収穫後に品質保持のための農薬を使用しないこと
  • 分別生産流通管理(IPハンドリング):遺伝子組換え農産物と遺伝子組換えでない農産物を、生産、流通及び加工の各段階で混入が起こらないよう分別管理し、それが書類などにより証明されていること

CGB社が組織する穀物生産者等のメンバーがIPハンドリングプログラムを実践

全農グレインの船積能力拡大

アメリカ・ニューオリンズにある全農グレイン(株)では2015年から着手した拡張工事が2017年12月に完工、2018年4月に本格稼動しました。これにより船積能力は、最大年間1350万トンから1800万トンに増えました。

  • 1)拡張の内容
    本船接岸桟橋を延長し、内陸側に2機目のはしけ揚げ設備を設置。河川側は本船待機用バースとして整備しました。
  • 2)拡張後の能力
    はしけの搬入能力は5,500トン/時に倍増。船積能力は約1.5倍の4,500トン/時となりました。

新設した設備 既存の設備

ニューオーリンズにおける機能拡張

シンクロETの普及拡大

生産者の和牛繁殖牛から集中的に採卵し、あらかじめ発情を同期化した乳牛や高齢の和牛繁殖牛へ同日に移植するシンクロETは、特に都府県で拡大しています。
シンクロETは、和牛素牛の増産に加え、和牛繁殖農家にとってはET卵の販売や最新血統の和牛子牛生産・販売による所得向上、酪農家にとっては新鮮卵利用による受胎率の向上や和子牛販売による所得向上が期待できます。
全農は、地域のJA、酪農家、獣医師、ET師などの協力のもと、シンクロETの普及拡大に取り組んでいます。