肥料事業

農作物の生産や、品質向上に欠かすことのできない資材である肥料。海外から肥料原料を輸入し、安定供給と価格の抑制に努めています。

農作物の生産や、品質向上に欠かすことのできない資材である肥料。海外から肥料原料を輸入し、安定供給と価格の抑制に努めています。

良質な肥料を安定供給するために

肥料の主要成分は窒素・リン酸・加里ですが、そのもととなる原料のほとんどを海外からの輸入に頼っています。全農は、自ら肥料原料を海外や国内から調達し、JAグループのBB肥料工場または肥料メーカーに供給しています。BB肥料工場および肥料メーカーで製造された肥料を、経済連・JAを通じて生産者(農家)に安定供給しています。また、農業生産者が減少する中、安全・安心、美味しい農作物の生産には農作業の省力化、低コスト資材の供給、健康な土づくりが欠かせません。全農では新技術・資材の開発普及と土壌診断にもとづく健康的で効率的な施肥を進めています。

JAグループにおける肥料の主な流通経路

事業紹介

海外から肥料原料を安定調達

世界的な人口増加や新興国の経済発展による食糧需要の増加から、世界の肥料需要も長期的に増加することが予想されています。一方、肥料の原料であるリン鉱石や加里は世界的に偏在しており、その生産、輸出は山元と呼ばれる一部の鉱山会社による寡占状態となっています。そのため、国際市況の高騰や資源争奪となるリスクが高い状況にあります。
日本は、肥料の主原料であるリン酸・加里原料について、ほぼ全量を海外からの輸入に依存しています。全農はリン鉱石、リン安、塩化加里といった主要原料について、日本の全輸入量の約半分を自ら輸入しています。長年にわたる取引を通じて、海外山元との関係を強化しており、その関係を最大限生かしながら長期契約の締結などをすすめ、海外肥料原料の安定確保に取り組んでいます。

肥料原料の輸出元の多元化の状況

品質の高い肥料を生産者に提供

全農の取り扱う肥料(くみあい肥料)の考え方

肥料は作物の品質や収量の向上のために土壌や作物自体に施す資材です。そのため肥料の品質の確保等に関する法律(肥料法)では作物生産上有効な成分を定義づけ、肥料の種類ごとに守るべき有効成分の割合や有害成分の最大量などを決めています。
肥料が化学性に問題がなかったとしても、散布しにくかったり、固まって散布できなかったりすれば、肥料散布の作業効率が落ちますし、生産者の収入にも影響してきます。そのため、全農では肥料の商品としての評価を、有効な成分設計となっているかなど化学性のみならず、生産者が使いやすいかどうかという物理性を含めて、厳しく品質をチェックする体制を整えています。
さらに、取り扱い肥料がメーカーによって正しく製造されているかどうかをチェックする体制も整備しながら、安心・安全な肥料を生産者のみなさまへご提供する取組みを展開しています。

BB肥料

化成肥料は肥料原料を混合し、熱を加えるなどして反応させて粒にしたもので、1粒の中に窒素、リン酸、加里などの肥料成分が含まれています。BB肥料は粒状の原料を単純に混ぜたものです。そのため、さまざまな成分の肥料を簡単につくることができます。BB肥料の特性を踏まえ、全農では土壌や作物、地域性、省力化などの担い手のニーズに応じた、オーダーメード型のBB肥料の普及拡大を進めています。

有機質肥料

全農では、キャノーラ油を搾った粕であるなたね油粕や、魚粕などの有機質肥料を原料とした肥料を取り扱っています。有機質肥料は土壌中の微生物に有機物が分解された後、肥料成分が作物に供給されます。そのため化成肥料に比べて肥料の効き方が緩やかという特長があります。さらに、微生物に分解される過程で土壌の微生物の種類と量を増やし、土壌の環境改善も期待できます。有機質肥料は副産物が使われる場合が多く、穀物・飼料などの価格相場の影響を受け、価格が変化しやすい傾向があります。そこで、全農では、穀物・飼料の価格相場の影響を受けづらい有機質肥料として、「ひまし油粕」を海外から調達しています。

国内肥料資源を活用した肥料

肥料原料は、国際市況の影響を受け、価格の大幅な変動や資源争奪となるリスクが高い状況にあります。そこで、全農では日本国内の鶏糞燃焼灰や堆肥などの肥料資源を原料とした肥料を販売しています。国内の肥料資源を活用しているため、海外原料への依存度を下げることができます。また、これらの原料には石灰や微量要素が含まれているほか、堆肥には有機物が豊富であるため、土づくりの効果も期待できます。
全農では朝日アグリアと共同開発した混合堆肥複合肥料(商品名:エコレット、エコペレット)をはじめ、各地域において肥料メーカーと連携して、堆肥入り肥料の開発・普及をすすめています。

省力施肥肥料

緩効性肥料(被覆肥料や化学合成緩効性肥料)を配合し、追肥に係る労力を削減できる肥料です。
一般的に肥料の散布は、栽培前に元肥を散布し、その後生育に応じて追肥を行います。水稲では追肥は夏の暑い中、重たい肥料を2~3回散布するため農家にとって大きな負担となっています。緩効性肥料による基肥全量施肥(一発施肥)によって、肥料の散布労力軽減、肥料の効率的な利用が可能となります。
一方で、被覆肥料は原料としてプラスチック(樹脂)が使用されており、被膜殻が水田外に流出する可能性が示唆されています。本会では肥料業界団体とともに被膜殻の流出抑制を呼びかけるとともに、流出防止ネットの設置や浅水代掻きの実施、流出しにくい被覆肥料の活用などを進めています。
中長期的には、代替となる省力・施肥法の普及にも取り組んでいます。具体的には化学合成によって肥効を調節した緩効性肥料やペースト肥料による全量基肥施肥、水口から施肥をする流し込みの肥料の普及を進めています。また、プラスチック使用量を削減した被覆肥料や生分解性樹脂など環境に優しい素材を使用した被覆肥料の開発・普及も目指しています。

従来施肥と一発施肥

被覆肥料のプラスチック殻の流出防止に効果がある流出防止ネット(左)と浅水代かき(左)
浅水代かきの動画マニュアルを公開しています。
https://youtu.be/3oIoQe0edpg

ペースト肥料(片倉コープアグリ)と2段施肥田植機(ヤンマー)

流し込み肥料(片倉コープアグリ)

肥料価格の引き下げにむけて

国内肥料需要が減少していくなか、化成肥料の生産効率を高め、より安価に肥料を製造できるよう、地域の施肥基準を勘案しつつ、作物の生育に影響を及ぼさない範囲で、化成肥料の銘柄を集約し、取扱銘柄を大幅に減らす取り組みを行っています。

取り組み

大幅な銘柄集約でコスト低減(新たな共同購入の取り組み)

全農では、肥料の銘柄集約をすすめています。これまで一般化成肥料は約550銘柄ありましたが、2022年度時点で24銘柄に集約しました。全農では、生産者の予約数量を、できる限り有利な価格でメーカーから仕入れる「共同購入」に取り組んでいます。
新たな共同購入の取り組みでは供給範囲を全国一律からブロック単位とし、さらに価格条件をトラック満車単位とすることで、配送コストの圧縮を行っています。さらに事前に予約数量を月別とすることで計画的な生産、配送につなげています。
共同購入した銘柄の予約数量は2018年秋用肥料では3万トンだったものが、2022年度には12.7万トンを積み上げました。積み上げた予約数量をもとに入札を実施し、最も安価なメーカーから購入しています。

海外・国内で積極投資

全農は、長年にわたる取引を通じて海外の山元(鉱山会社)と関係を構築し、肥料原料の安定確保に取り組んでいます。2012年に中国・福建省に新設された、リン安製造会社「瓮福紫金化工股份有限公司」へ出資し、高品質のリン安を安定的に調達しています。
また、主要な窒素質肥料の一つである大粒硫安は、工場閉鎖等により需給の逼迫が続いてきました。全農は2018年に宇部興産(株)(現UBE(株))との共同出資により、大粒硫安の貯蔵・出荷をおこなう「日本硫安サービス合同会社」を山口県宇部市に設立し、高品質な大粒硫安の安定供給に取り組んでいます。

瓮福紫金化工股份有限公司
リン酸肥料工場/中国・上杭

省力低コスト施肥技術の普及

生産者の収益改善には、生産コストの削減が必要です。肥料や施肥法に関わる施肥コスト抑制につながる技術を集めました。
ペースト肥料や流し込み肥料など特長ある肥料の使用、緩効性肥料による効率的な施肥や労力の削減、センシング技術やドローンなどのICTを駆使した新しいスマート施肥などの技術を、メリットや注意点だけでなく、導入事例も併せて解説しています。

省力低コスト施肥技術ガイド2021 [PDF:3,877KB]

土壌診断にもとづく効率的な施肥の推進

安全・安心、美味しい作物づくりには健康な土が欠かせません。全農では、土壌の不足する養分と過剰な養分を把握する「土壌診断」にもとづく無駄のない肥料散布を広げる取り組みに力を入れています。
土壌分析機の開発や土壌分析センターの運営、土壌診断結果を説明できる人材育成、施肥コスト抑制銘柄の開発などです。
合わせて、省力化やコストの低減に資する技術や資材の開発・普及もすすめ、施肥に関するコストを総体的に削減していく方針です。

土壌診断に基づく土づくりと適正施肥について詳しくはこちらをご覧ください

土壌診断に基づく土づくりと適正施肥の取り組み

土壌を見る目を養い、生産者の営農に役立てる

農作物をうまく育てるには、土壌の化学性、物理性、生物性を正しく見る必要があります。活き活きとした農作物を継続的に育てるためには、現場の土づくりをおこなって、土壌の物理性や生物性を良好にすることが重要です。
全農ではこの一助として、現場圃場の土壌断面を見ながら解説、相互検討する機会を設定し、生産者が正しく土壌を見る目を養う取り組みをおこなっています。
生産者とJA職員が土壌管理に対する考え方を共有し、生産者の営農に役立つ土壌管理・施肥改善につながるよう取り組みをすすめていきます。

現場圃場での講習会の様子

土づくり肥料推進協議会の取り組みについて

土づくり肥料推進協議会とは国・農業関係団体が推進する土づくり運動に協力し、土壌改良に関する調査研究や、研修会の開催、普及宣伝活動などを行い、土づくりを通じて農業生産の安定に寄与することを目的とした協議会です。土改肥料メーカーや各種関連団体、全農で構成されております。

令和3年度 土づくり大会

<土づくり肥料 参考資料>

パンフレット・事例集

土づくり肥料優良事例集 [PDF:19MB] 明日をつくる土づくり肥料 [PDF:15MB]

土づくり肥料別 Q&A

石灰窒素 [PDF:382KB] ようりん [PDF:599KB] 苦土重焼燐 [PDF:307KB] リンスター [PDF:321KB] ケイカル [PDF:497KB] アヅミン [PDF:296KB] けい酸加里肥料 [PDF:481KB]

<土づくり 動画集>

〇「土づくり」ってなぜ必要なの??
~基礎から学ぶ土づくり~

〇「土づくり肥料」ってどんなものがあるの?
 

〇専門家に聞いてみた!「土づくり」のギモン(前編)
~ [土から備える] 農業 vs 異常気象 ~

〇専門家に聞いてみた!「土づくり」のギモン(後編)
~「土づくり肥料の活用」~