JA全農は、令和2肥料年度秋肥の単肥価格について以下の内容で決定しました。
1.決定内容
令和2肥料年度秋肥の単肥価格は、下表のとおり決定しました。
肥料原料の国際市況は、尿素やりん安では、新型コロナウイルスの影響により中国の輸出が減少したことから上昇に転じているものの、前期比では値下がりしています。また、加里についても下落が続いています。今後の市況は不透明な部分が多いものの、直近の市況水準を反映し、尿素・りん安・りん鉱石・加里ともに値下げとしました。
窒素質のうち、国産尿素は、内外格差縮小を求め、値下げで決定しました。硫安は、国内の物流や設備費等の安定供給に係るコストアップ、硝安は、原料となるアンモニアや硝酸価格の上昇から、それぞれ値上げとなりました。
窒素質の石灰窒素、りん酸質の過石・重焼りん、加里質のけい酸加里では、労務費・物流費が上昇する一方、主原料の値下げに加え、製造時に重油を使用する品目では、原油市況の急落から今後の重油の値下がりを一定折り込み、値下げで決定しました。
適用開始:令和2年6月から(地域・作物により異なる場合があります)
分 類 |
品 目 |
成 分 (%) |
前期比(%) (春肥対比) |
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単 肥 |
窒素質 |
尿素(輸入) |
46 |
▲4.5 |
尿素(国産) |
46 |
▲5.7 |
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硫安(粉) |
21 |
0.5 |
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硝安 |
34.4 |
6.9 |
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石灰窒素 |
21 |
▲1.0 |
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りん酸質 |
過石 |
17 |
▲0.2 |
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重焼りん |
35 |
▲0.6 |
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加里質 |
塩化加里 |
60 |
▲4.4 |
|
けい酸加里 |
20 |
▲1.3 |
注.価格変動率は本会の県JA・経済連向け供給価格ベースであり、JA・農家向け供給価格の変動率とは一致しません。
2.今次価格交渉をめぐる情勢
(1)海外原料市況
尿素の国際市況は、昨年秋以降軟化しています。世界最大の輸入国であるインドの入札開始や新型コロナウイルスの感染拡大による中国からの輸出減少などから、年明け以降は反転上昇しているものの、前期比では値下がりしています。
りん安の国際市況は、北米における悪天候の影響による需要減少やモロッコ・サウジアラビアの生産能力拡大による世界的な需給緩和から下落しています。山元による生産調整や新型コロナウイルスの感染拡大による中国からの輸出減少などから上昇に転じているものの、前期比では値下がりしています。
塩化加里の国際市況は、北米や東南アジアにおける悪天候の影響やパーム油相場の低迷などから需要が減少したことに加え、インドと山元との価格交渉が値下げで決着したことなどから下落しています。
(2)国産原料
硫安は、ナイロン樹脂の原料となるカプロラクタムや鉄鋼高炉に使用されるコークスの副生品です。主製品のカプロラクタム、鉄鋼とも事業採算が急速に悪化しており、特に国内高炉メーカーは、製鉄所の閉鎖や高炉の休止等を相次いで発表しています。こうした状況下で、老朽化した硫安設備の維持コストに加え、内航船輸送の割合が高く輸送距離も長いことから、他の品目よりも物流費が増嵩しています。
国産アンモニアや硝酸は、中継基地の廃止や事業撤退にともなう国内物流費の増嵩、専用船や製造設備の維持更新コスト等の価格反映を求め、国内メーカーは大幅な値上げを打ち出しています。
(3)海上運賃
昨年夏以降、好調な荷動きに加え、燃料油の硫黄酸化物排出規制(SOx規制)強化に対する前倒し需要により市況は堅調に推移してきました。新型コロナウイルス感染拡大による世界景気の落ち込みが見込まれるものの、肥料を輸送する小型船は船腹供給が限られることなどから、市況は横ばいで推移しています。
(4)外国為替
米中貿易摩擦の長期化による世界景気の減速懸念等から110円前後で推移してきましたが、3月に入り、新型コロナウイルス感染拡大による世界的な株価の急落から一時101円台まで円高がすすみました。その後、米国政府の経済対策発表等を受け、現在は108~110円で推移しています。
(5)国内物流費
トラック運送業界において、労働環境や高齢化により深刻な人手不足が続いているため、トラック運賃は2017年以降上昇を続け、上昇率は約10%に達しています。
同様に船員不足が続く内航船の運賃も上昇傾向にあります。今年1月から始まったSOx規制強化により、高価な低硫黄油種の燃料油への切り替えを迫られたことで、さらに輸送コストが上昇しています。