令和3肥料年度秋肥の肥料価格について

JA全農は、令和3肥料年度秋肥の単肥価格について以下の内容で決定しました。

1.決定内容

肥料原料の国際市況は、穀物相場の上昇とこれを背景とする世界的に旺盛な肥料需要を受けて昨年末以降急激に値上がりしており、特に尿素・りん安(*) は、2008年の資源価格高騰時以来の急な上昇(春肥価格設定時の1.5~1.7倍)となっています。加里も、好調な需要を背景に山元は値上げを打ち出しており、肥料の価格構成の6割以上を占める肥料原料の国際市況の上昇が大きく影響しました。

窒素質肥料の基準となる国産尿素では、内外価格差の縮小を求め、輸入尿素よりも値上げ幅を圧縮して決定しました。

この結果、令和3肥料年度秋肥の単肥価格は、下表のとおり石灰窒素を除いて、窒素質、りん酸質、加里質肥料、いずれも値上げとなりました。
なお、国際市況が急騰したりん安を原料に使用している品目(複合肥料等)は、概ね10%を超える値上げとなります。

(*)りん安:リン酸一アンモニウム[NH4H2PO4]MAP)、りん酸二アンモニウム[(NH4)2HPO4]DAP)などの総称

分 類

品 目

成 分

(%)

前期比(%

(春肥対比)

窒素質

尿素(輸入)

46

24.0

尿素(国産)

46

12.1

硫安(粉)

21

10.4

石灰窒素

21

0.0

りん酸質

過石

17

5.3

重焼りん

35

5.3

加里質

塩化加里

60

8.4

けい酸加里

20

2.7

注.価格変動率は本会の県JA・経済連向け供給価格ベースであり、JA・農家向け供給価格の変動率とは一致しません。
適用開始:令和3年6月から(地域・作物により異なる場合があります)

2.今次価格交渉をめぐる情勢

(1)海外原料市況

ア.窒素質肥料の原料であるアンモニアの国際市況は、中東での供給停止やアンモニア生産向け天然ガスの供給が制限された一方で、経済活動の再開等から需要が拡大しているため、市況が上昇しています。

イ.尿素の国際市況は、インド向けの需要増加や穀物価格上昇による米国国内の肥料価格の急騰、原油価格の回復により年明け以降急激に上昇しました。春肥需要が一巡したことにより一時的に市況の下落が見られるものの、インドを始めとする旺盛な需要により今後も堅調に推移すると見られています。

ウ.りん安の国際市況は、米国・インド・ブラジルの旺盛な需要や中国の国内優先の政策の影響による需給ひっ迫感の急激な高まりと穀物価格の高騰により昨年末以降急激に上昇しました。さらに、米国が中国に加えモロッコ・ロシアに対しても輸入関税を適用し国内供給が制限されたことや、世界的には引き続き旺盛な需要が予想されることから、今後も堅調に推移すると見込まれます。

エ.塩化加里の国際市況は、ブラジルやインドにおける好調な需要や、中国の食糧安定生産に向けた政府在庫の買い入れを受けて上昇しました。また、パーム油の価格が10年来の高値となっていることから、東南アジア向け価格は更に上昇すると見られており、山元側は好調な需要を背景に値上げを打ち出しています。

(2)海上運賃

海上運賃は、旺盛な鉄鉱石需要や穀物輸送が堅調であること、さらに原油市況の上昇にともなう燃料油の値上がりから運賃市況が上昇しています。また、コンテナについても、アジア・北米間の輸送需要が増加していること、コロナ対策の検疫によるコンテナ船の稼働率低下から、運賃が大幅に上昇するとともに、輸送に遅れが発生しています。今後も輸送量の増加が見込まれており、海上運賃は堅調に推移すると見られています。

(3)外国為替

米国においてゼロ金利政策が継続される中で、ドル円相場は105106円前後で推移してきましたが、3月以降米国の良好な経済指標を受けて米長期金利が上昇したため、ドルが買い戻されて円安基調に転じており、現在は108110円前後で推移しています。