全国農業協同組合連合会(代表理事理事長:桑田義文、本所:東京都千代田区、以下「JA全農」)と太平洋セメント株式会社(代表取締役社長:田浦良文、本社:東京都文京区、以下「太平洋セメント」)は、セメント工場の排ガスから分離・回収した二酸化炭素(以下、CO2)の施設園芸用途における利用に向けた取り組みを開始しました。
施設園芸におけるCO2の施用は、温室内のCO2の濃度を高めることで植物の光合成を促進させ、農作物の収穫量を増加させることを目的に実施されます。日本の施設栽培の多くは灯油や液化石油ガス(LPG等)等の化石燃料を燃焼させることで発生するCO2を使用しています。今回の取り組みは、セメント製造で発生する排ガスより分離・回収した高濃度のCO2を利用することにより、化石燃焼由来のCO2の発生を削減することが可能となります。
JA全農と太平洋セメントは、NEDO(国立研究開発法人・新エネルギー産業技術総合開発機構)助成事業により太平洋セメント熊谷工場(埼玉県熊谷市)に設置した化学吸収法(アミン法)によるCO2 分離・回収実証試験装置で、セメント工場の排ガスから回収した高濃度のCO2を、JA全農の営農・技術センター(神奈川県平塚市)内の温室において試験利用を実施しました。その結果、市販のCO2を使用した場合と同等の野菜の生育状況であることを確認できました。
JA全農では、施設園芸における大規模多収栽培技術の確立・普及のため、高軒高施設の導入や昼間時の光合成補助のための温室内へのCO2の施用などについて実証を進めています。
太平洋セメントでは、セメント製造時に発生するCO2の排出削減について、2050 年までにサプライチェーン全体でカーボンニュートラル実現を目指すことを明記した「カーボンニュートラル戦略2050」を公表し、CO2の削減に向けた取り組みを進めるとともに、廃棄物・副産物のセメント原燃料化を通じた循環型経済の形成を推進しています。
今後、JA全農と太平洋セメントは、CO2の提供と温室での利用に関する本格的な研究にとどまらず、施設園芸で発生する農業系廃棄物のセメント資源化も含めて、農業とセメント産業とをつなぐ資源循環サイクルの構築に向けた検討を進めます。

・2022 年2月4日 「セメントキルン排ガスからの CO2分離・回収、有効利用実証試験設備完成」
https://www.taiheiyo-cement.co.jp/news/news/pdf/220204.pdf
・2024 年7月15日(vol.1078) JA全農ウィークリー「営農・技術センターに研究温室を新築」
https://www.zennoh-weekly.jp/wp/article/26235