TACパワーアップ大会 2019年大会レポート

全農では、全国各地で日々、地域農業の担い手に出向く活動を実践している「TAC」のレベルアップを目的に、全国大会「TACパワーアップ大会」を全国統一名称で活動を開始した2008年より開催しています。
2019年度、第12回となる「TACパワーアップ大会2019」のテーマは次の3点です。

  • (1)「労働力支援の実践や農業ICTなど先進営農技術の導入等による農業生産の維持拡大」
  • (2)「JAグループの総合力を発揮した担い手への総合事業提案」
  • (3)「出向く態勢の拡充によるTAC活動の強化」

これらのテーマのもとで優秀な活動をしているJA及びTACの表彰や事例発表を行うとともに、農業者団体の協力を得て、担い手の経営課題に応えるための実践的な分科会を行いました。
また開催報告は、日本農業新聞(2019年12月16日付)に掲載しています。

TACパワーアップ大会2019の活動表彰では、全国でも優れた取り組みを行ったJA表彰・4JA、TAC表彰・8名、担い手向けTAC通信表彰・4JAが表彰されました。
具体的な取組内容は、以下のとおりです。

TACパワーアップ大会 2019活動表彰

JA表彰

岩手県 新岩手農業協同組合【全農会長賞】

水稲中心の6経営体を「農家手取り最大化プロジェクト」のモデルとして、担い手個々の営農、経営課題に応じたコスト低減・省力化・生産性向上等のトータルコスト低減実践メニューを提案し、実証した結果、目標を大きく上回る所得向上と面積拡大を実現した。県内初となるドローンによる水稲直播作業の試験では、播種・育苗・移植作業時間の大幅な削減につながった。担い手とJAグループが一体となった農家所得向上の取組みとして、今後TACによる管内生産者への水平展開が期待される。
ブロッコリー産地のさらなる振興に向けて、夏場の品質保持対策やブランド力を高めるためにGLOBALG.A.P.を提案し、認証取得に向けた支援を実施した。取組みの結果、産地としての評価が高まり、作付面積、販売額が順調に伸び、若い後継者が育成されている。
またJAが積極的に若手・女性農業者と関わる企画を実施し、共同で調査・研究に取組むことで、参加者のスキルアップだけでなくメンバー同士のネットワーク構築につなげた。

担い手への土地の集積、集落営農の組織化や法人化に伴う圃場管理の課題に対して「Z-GIS」を提案し、圃場情報や栽培管理の効率化につなげ、担い手の経営改善に寄与した。GLOBALG.A.P.や有機JAS認証圃場の情報管理においても活用を図っている。
産地維持に向けた集落営農の組織化・法人化を求める声には、法人化や営農組織の設立支援に加え、設立後の支援として販売支援、決算書作成、補助事業や長期・短期的資金の活用等による幅広い経営支援を行った。
また農地集積による経営面積の拡大が進むなか、水稲経営体に対して多収穫米をはじめ、小豆の省力化栽培を提案することで、作期分散による作業効率化と年間を通じた販売収入の確保を図った。さらに、集落内の高齢者や女性が参画できる品目として、主力特産品であるピーマンの作業時間や必要な労働力の分析を踏まえた栽培モデルを作成し、作付け拡大に向けた栽培実証を開始した。村づくりにもつながる活動として期待されている。

九州北部豪雨災害からの地域農業再生に向け、被害を受けた柿農家にアスパラガスの新規導入による複合経営を提案し、営農の継続を支援した。アスパラガス生産者不在の地区では、JAが「杷木久喜宮JAファームプロジェクト」を立ち上げ、生産支援体制を構築している。またTACを中心に災害土砂での水稲栽培試験を開始するなど、豪雨被害農家の営農再開の糸口となる活動を行った。
新規就農者に対して、関係機関と連携した「新規就農支援センター」の設立と研修受け入れ農家の組織化を図ることにより、募集から研修、就農に至るまでの一貫した支援体制を整備し、就農後の安定した農業経営に寄与した。
また水稲生産者からの労力軽減や省力化対策、規模拡大の要望に対して、高密度播種の試験により労力軽減とコスト削減の実証につなげた。今後TACによる取組みの水平展開が期待されている。

JAが独自で策定した「農業生産基盤強化支援事業」を活用し、市場との連携によって地域に応じた野菜の導入提案を行い、TACが総合的な支援を実施したことで、新規作物の作付面積が増え、地域の生産基盤拡大および担い手の所得向上に貢献した。
土地利用型経営体に対しては、関係機関と連携し「農家手取り最大化」の取組みとして、密苗移植栽培技術、流し込み施肥、ドローンによる農薬散布、地力向上対策等、複数の営農技術メニューを提案し、生産コストおよび労力の削減により所得増大につなげた。
さらに、経営の安定化を図るため、施設園芸(イチゴ)の導入による複合経営を提案し、野菜振興事業の活用による育苗施設の導入や労働力の周年雇用、後継者への事業承継支援等を行うことで、法人での中核的な人材確保、育成を図った。経営の安定化に加え、組織の活性化にもつながった。

TAC表彰

埼玉県 埼玉中央農業協同組合 
宮澤 直樹 氏

『有機栽培農家との関係構築~地域農業の維持を目的としたTAC活動~』

JAとの関係が希薄だった有機栽培農家に対し、訪問活動によるJAとの接点づくりからパイプハウス補強技術の個別提案、有機農法生産者グループを対象とした講習会の開催につなげた。さらには全農青果ステーションを活用した物流ルートを提案し、合理的な物流を実現した。共同出荷生産者組織「小川ゆうき」の立ち上げにもつながり、物流コスト低減による所得向上とリスク回避策による経営安定に寄与した。
深刻化する中山間地の鳥獣被害に対しては、安価で設置可能な電気柵の効果検証から鳥獣害防止指導員の資格を有するTACによる電気柵の設置、管理指導等により、地域ぐるみの対策を実現し、被害軽減に貢献した。

石川県 石川かほく農業協同組合 
松井 博暉 氏

『JAグループの総合力を発揮した担い手への総合事業提案』

経営の安定化を求める大規模小松菜生産者の経営実態を踏まえ、袋詰め機械の導入検討から作業方法や人の配置等にいたるまで全面的に支援し、効率的な作業体系の確立につなげた。また土壌分析データ値や生育状況にもとづき複数のオーダーメイド肥料を提案し、試験を経てひとつの専用銘柄として集約した結果、生育障害回避による安定生産だけでなく施肥コスト削減を実現した。
水稲生産者に対しては、農繁期における労働力不足と近隣福祉施設の求職要請とのマッチング、高密度播種育苗技術導入や水稲刈り跡後のブロッコリーの作付提案、事業承継における親子の話し合いの場づくり等、作付面積拡大と生産コスト削減および持続可能な経営に貢献した。

滋賀県 グリーン近江農業協同組合 
和田 洋 氏

『担い手の安定経営に向けた総合支援』

規模拡大にあたり持続可能な経営に悩む担い手の課題解決に向け、各従業員の意識改善と栽培技術レベルの向上を図るツールとして、ASIAGAP認証取得の取組みを提案した。全従業員での先進地視察や現場におけるGAP基準項目の確認により、従業員のGAPに関する理解を深め、認証取得を明確な目標と位置付けて取組んだ。
取組みの結果、ASIAGAP認証取得を実現し、従業員の働きやすさと自主的な運営参画にもつながった。
さらに、防除におけるドローンの活用を提案し、金融渉外担当者との事業間連携によって機体の購入や操縦にかかる技能認定講習費用の資金を支援し、効率的な防除作業に寄与した。

滋賀県 グリーン近江農業協同組合 
井口 太輔 氏

『准組合員がつなぐ地域農業活性化への道!!~野菜生産部会再生と准組合員が農家労働支援!?~』

活動休止状態の野菜生産部会を再編し活動を再開することで、若手生産者や集落営農法人の要望であった担い手同士が自主的・自発的に研修や意見交換ができる「学びの場」づくりを実施した。研修を通じ、関西の消費者ニーズをもとに現行の栽培作物である水稲・麦・大豆の作業体系を考慮のうえ地域特産品としての黒枝豆の作付けを提案し、「能登川黒ダイヤ」という商品名にてファーマーズ・マーケットや県内大手量販店での販売につなげた。さらに作付面積拡大のうえで課題となっていた選別から袋詰めまでの作業の負担軽減策として、准組合員の農業参画による作業支援により課題解決を図った。
今後、地域を代表する特産品としての定着とブランド化が期待される。

島根県 島根県農業協同組合 
片寄 俊一 氏

『有害鳥獣対策は俺に聞け!!』

担い手からの有害鳥獣による農作物被害の相談に対し、TAC自らが狩猟免許、鉄砲所持許可を取得し、猟友会に加入することで有害鳥獣駆除員として活動を開始した。行政主催研修会への参加、ベテラン猟師を講師としたわな作り講習会の開催、FA担当者と連携した集落営農法人へのワイヤーメッシュの効果的な設置提案を実施し、担い手の有害鳥獣対策のレベルの底上げを図った。また、コスト低減に向け電気ヤリ、捕獲檻を自作し、作成方法を情報提供すると同時に、捕獲を実践した。
さらに、JA職員や集落営農法人構成員、若手農業者への狩猟免許取得を提案し、地域の有害鳥獣対策の「担い手」づくりに寄与し、被害額の軽減に貢献した。

島根県 島根県農業協同組合 
山田 光俊 氏

『水稲多収穫米栽培による営農法人の所得の安定化』

機械化による合理化や肥料農薬のコスト低減に取組んできた水稲生産農業法人からのさらなる所得増大の相談に対して、既存の設備と労働力を活用でき、収益安定化につながる多収穫米栽培を提案した。
提案にあたり県普及部、全農、JA本店、地区本部営農経済センター、肥料メーカー等の関係機関と連携のうえ指導体制の確立を図り、定期圃場巡回、生育調査、刈り取り適期判定等による支援を実施した。また、生産者に対して生産から販売までの一連の流れを説明し、最終消費者の見える化により、生産者の生産意欲、責任意識向上を図った。
取組みの結果、多収穫米栽培圃場の反あたりの販売金額が従来の作付けによる販売金額を上回り、担い手の経営安定化と多収穫米の産地拡大につなげた。

佐賀県 佐賀県農業協同組合 
川内 辰彦 氏

『次世代へ繋ぐ事業承継支援と農家手取り最大化に向けた生産資材コスト削減対策の提案』

経営移譲、承継に悩む親子に対して、事業承継ブックを活用した話し合いのきっかけづくりに取組み、経営状況の把握、事業承継計画の作成と実践を支援した。また、構成員の高齢化が進んだ集落営農組織において、アンケートをきっかけとした世代間の話し合いの場を創出したことで、現役世代に対して後継者世代の想いが伝わり、オペレーターの育成や営農技術の承継など取組むべきことの明確化につなげた。今後、集落営農組織の事業の円滑な承継が期待される。
さらに、大規模農家等からの生産コスト低減に関する要望に対して、農薬担い手直送規格、茎葉処理除草剤200L規格、肥料の事前大口予約購買、肥料満車直送等の提案により、所得増大に大きく貢献した。

熊本県 本渡五和農業協同組合 
山下 清弥 氏

『地域の水田農業を守る営農組合との関係強化』

「JA本渡五和集落営農組織連絡協議会」を設立し、TACが事務局となって集落営農組織間連携による地域活性化に取組んだ。
新規作物(高菜・広島菜、抑制カボチャ、非結球レタス)の導入にあたっては、機械の共同利用、共同出荷を提案することで新たな収益確保につなげた。また、肥料農薬共同購入によるコスト削減や労災加入団体設立による労災への加入を促進した。
Z-GISを導入提案することで農地管理および作業の効率化につなげ、地域の農地保全に貢献した。また営農組合の労働力支援にかかる要望と新規就農者の農地確保や技術習得にかかる要望のマッチングを支援し、就農支援体制の確立に取組んでいる。今後、営農組合による新規就農者の受入体制の構築が期待される。

担い手向けTAC通信表彰

「営農かわら版」として、月ごとに助成金、税務、営農に関する情報を1枚にわかりやすく掲載し、TAC活動を通じて担い手に有益な情報をタイムリーに届けている。またベテラン担い手を毎回紹介し、取組みのノウハウを発信することで担い手同士の関係を構築し、農家が抱える不安や悩みの解消につなげた。
JAから様々な情報提供を行うことでTACの認知度を高め、担い手とTACが一体となって地域活性化に取組んでいる。

「記憶にも記録にも残るTAC活動」を心掛け、TAC通信を担い手とのコミュニケーションツールとして位置づけ、特に伝えたい内容をTAC全員で検討し作成している。JAからの情報発信に加え、担い手からの要望や質問の回答を担い手に周知することで、担い手とのコミュニケーション向上につながっている。
また、JA内部の各部署にTAC通信を配布することで、部門間連携や情報共有にもつながっている。

これまで営農指導員が個々に発信していた情報を、「農家が知りたい情報」や「JAとして伝えたい情報」、「JAが組合員に提案したい共同の取組み」として内容を統一し、毎月1、2回タイムリーに発信している。組合員からの関心が非常に高いJAの「農家組合員の所得増大プロジェクト」に関する情報は、専用コーナーを設けて掲載し、実践結果や進捗状況、参加者募集を毎号にて継続的に発信している。
TAC通信を通じた組合員との情報共有の結果、プロジェクトメニューの水平展開につながっている。

TACが訪問時に伝えたいことを中心に毎月1回発行している。
「経営改善に寄与するための情報提供」として、TAC活動を通じて特に要望がある情報や品目提案を追加し、誌面を2ページから4ページに拡大して充実を図った。担い手訪問時の説明資料としての役割だけではなく、担い手が不在時でも訪問目的を明確にすることで、次回訪問のきっかけをつくっている。
さらに、TACが中心となって認証取得したGLOBALG.A.Pの改善活動に関するノウハウを連載することで、訪問先の経営改善活動に貢献している。

分科会

TACの体制と人材育成

担い手に出向く活動は着実に定着している一方、JAの機構改革や人事異動により、体制が縮小し、活動が停滞するなどの課題を抱えるJAも多く、体制整備や人材育成、訪問活動時のPDCA管理が課題となっている。
今後のTAC活動の拡充やTACの設置普及につなげるため、表彰JAの取り組みの目的、体制や活動内容、担い手の評価などについて紹介。また外部講師による、部下の主体性を促す組織マネジメントに関する講演を受けて、参加者同士で、現場での課題抽出や対応策の検討、今後の実践について意見交換を実施した。

農業後継者の育成支援

農業者の減少や高齢化により農業生産の基盤維持が懸念されている中、今後の農業界を担う若手農業者の育成支援が求められている。
若手農業者が農業後継者の育成に関する現状と課題について講演を行い、「生産者が事業承継の意識を高め、早い段階で考えることが重要」と共有した。
JAとしての農業後継者の支援策について若手農業者を交え、グループ討議を行った。全農が作成した「事業承継ブック」を活用し、事業承継の実践につなげたい、就農者と離農者のマッチングが重要、経営に関する研修が必要である、などの意見が挙げられた。

6次産業化

農業振興や地域活性化を進める上で、農業の新たな価値の創造が求められている。
日ごろの訪問活動でTACが聴き取った担い手の要望や課題を踏まえ、①農産物加工②販売流通③商品開発④直売所運営⑤観光農園の5つのテーマに分かれ、地域の特産品、特徴を生かした具体的な企画立案に向けて、6次産業化プランナーを交え議論した。
品ぞろえの充実やマーケティング調査に基づく商品開発が基本といった意見から、全国のJAの力を結集したブランド力強化戦略の構築、観光資源としての農業生産現場の魅力発信、規格外きゅうりの肥大化による食器利用といった斬新なアイデアが出された。

担い手が求めるスマート農業

担い手農業ICTに対するニーズが高まる中、効率的な作付けや作業計画等のほ場管理ができる営農管理システム(Z-GIS)を中心にスマート農業による担い手への営農・経営支援について議論した。
Z-GISの操作方法や全国での取り組み事例を共有し、普及にあたっての課題やTAC活動の中でどのように応用できるかグループワークを行った。
参加者からは、農業祭でデモを実施するなど展示機会を増やして認知拡大を図るといった普及方策や、ほ場日誌等新たな機能を追加する、さまざまなシステムとの互換性を向上させ、現場で活用しやすくするといったアイデアが出された。

農業労働力支援

後継者不足や基幹的農業従事者の減少、高齢化により地域農業の存続が課題となっています。そのため、地域農業の維持発展には、担い手による規模拡大や新規就農者の確保・育成とあわせて雇用労働力の確保が求められている。
全農大分県本部などの労働力支援の取り組みを紹介した後、TACとして取り組む労働力支援についてグループ討議を行った。参加者は、労働力の効果的な募集方法、長期的な雇用対策、作業の体系化や機械化による労力軽減などについて活発に議論した。

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