果樹・野菜における気候変動への対応
果樹 りんご

1.栽培に適する気象条件と気候変動による影響

栽培に適する条件 平均気温 植物生理に係る低温条件
年平均気温 4月1日~10月31日 開花~次開花 開花~収穫
りんご 6~14℃ 13~21℃ -25℃以上 1,400時間以上

 

現状(りんごへの高温による影響)

  • 「地球温暖化影響調査レポート(農林水産省)」によると、りんごへの高温による影響として日焼け果、着色不良、着色遅延のほか、虫害の多発、凍霜害、発芽・開花期の前進などが報告されています。

写真 りんごの高温による影響

日焼け果

着色不良・着色遅延

将来予測

  • りんご栽培に適する温度帯は、年平均気温が6℃~14℃とされています。
  • 中程度の温室効果ガス排出シナリオに基づく将来予測では、2060年代には、1971~2000年と比べて、関東地方の内陸部や本州日本海側を中心に、りんご栽培の適温帯を上回る地域が拡大する一方、北海道の道北および道東では新たに適温となる地域が広がると見込まれています。

りんごの栽培適温の分布の推定。中程度の温室効果ガス排出シナリオ(IS92a)に基づく予測。
図 りんごの栽培適地予測 出典:杉浦俊彦氏

2.気候変動への対策技術の分類

  • 高温の被害としては、日焼け、着色不良、日持ち性の低下があります。適応策には、予防型と治療型があり、予防型には高温自体を避けるタイプの対策(高温回避型)と、高温被害を軽減するタイプでの対策(高温耐性型)があります。
  • 高温回避型の一つは灌水です。これは土壌が乾燥すると、樹体からの蒸散量が低下しますが、蒸散は気化熱を奪うことで、樹体温度を下げる重要な機能を有しています。そのため、灌水は日焼けを避けるだけでなく、光合成を維持し、果実肥大や貯蔵養分蓄積の低下を避けるためにも重要です。
  • 着色対策のほとんどは、慣行の栽培技術となりますが、高温年はより徹底する必要があります。

遮光資材(樹体) 遮光資材(果実) 灌水 施肥 着色優良品種 1‐MCP 低温と光処理

りんごの高温障害の適応策例

*農業生産における気候変動適応ガイド りんご編(農林水産省)P16 りんごの高温障害の適応策例(杉浦 裕義氏提供)より作成

3.主な適応策

対応策

方法

時期

効果事例

遮光資材
(樹体)

樹体に遮光資材(遮光率10~20%程度)を設置。

日焼け発生の可能性がある最高気温30℃以上が予想される前日までに被覆。

果面温度上昇を抑制。日焼け果の発生の軽減。着色が遅れることがある点に注意する。

遮光資材
(果実)

果実に遮光資材を被覆。果面温度の上昇を抑える。

取り付け:7月上旬ごろ
取り外し:8月下旬~9月上旬ごろ
*病害虫やサビの発生リスクを避けるため。

果面温度上昇を抑制。日焼け果発生率軽減。

細霧冷房

樹冠上部から細霧散布し、樹体周囲の気温と果面温度の上昇を抑える。

日焼け発生の可能性がある期間。
最高気温30℃が目安(7月~9月)。

果面温度が、果面温度上昇を抑制。日焼け発生率、日焼け程度軽減。

灌水

高温乾燥が続く場合は灌水を行う。

乾燥時20~30㎜を目安に灌水。
気温が35℃を超える日が続く場合は通常より多めに灌水。

樹体表面温度の低下。日焼け果の発生軽減(土壌水分の急激な変化による水分ストレスが日焼け発生が助長。)

*インフォグラフィックで見る「気候変動の影響と適応策」 国立環境研究所 気候変動適応センター編 他を参考に作成

同じ樹種で高温耐性品種を利用

対応策 方法 時期 効果事例
改植(同樹種) 高温下で着色のよい品種や、緑黄色で着色の問題が発生しない品種に改植。 休眠期間中の秋植え。積雪・凍結・害獣被害が大きい場合は春植え。 同じ樹種であるため栽培しやすい。

樹種転換・園地移動

対応策 方法 時期 効果事例
改植(同樹種) 将来適地予想マップや産地ブランド戦略等を考慮し、採用する樹種を決定。 樹種転換は最後の手段。長期的な検討が必要になる。  

4.適応策の技術情報(外部リンク)

  手法 効果 具体的な技術・品種
※参考サイト、PDFへリンク
出典
遮光資材
(樹体)
日焼け防止 寒冷紗被覆によるりんごの日焼け果発生軽減 気候変動適応情報プラットフォーム

被覆資材を用いたりんご果実の日焼け軽減技術

長野県 農業技術課

遮光資材
(果実)

日焼け防止 りんご果実への資材被覆による日焼け軽減対策技術マニュアル 石川県、富山県、農研機構
着脱容易で耐久性のある果実被覆資材によるりんご日焼け軽減技術 農研機構 果樹茶業研究部門
潅水 日焼け防止
着色促進
茨城県果樹園における栽培期間の連続干天の状況と干ばつ対策 茨城県 農業総合センター
地表面に潅水(水やり)することにより日焼けが少ない傾向 長野 果樹試験場
施肥 着色促進 わい化栽培りんご「ふじ」における着色向上のための窒素施肥標準作業手順書 農研機構
1-MCP 日持性・貯蔵性の維持 りんご果実のエチレン生成量が1-MCPによる鮮度保持効果を左右する 農研機構 果樹研
低温と光処理 収穫後の着色促進 収穫後のブドウ、りんご果実の着色改善 農研機構 他

その他の技術

  目的 技術の概要 具体的な技術・品種
※参考サイト、PDFへリンク
出典
01 ハダニの防除 新果樹のハダニ防除マニュアル 枝幹用白塗剤の種類とその処理方法 農研機構
生研支援センター
02 凍霜害防止 岩手県果樹凍霜害対策マニュアル

温暖化に起因するりんご果実の日焼け軽減技術の開発(グリーンレポート)

岩手県
農業普及技術課
  手法 品種 品種詳細
※参考サイト、PDFへリンク
出典
着色優良品種 紅みのり https://www.naro.go.jp/collab/breed/0400/0413/078141.html 農研機構 
錦秋 https://www.naro.go.jp/collab/breed/0400/0413/078142.html 農研機構
シナノリップ https://www.agries-nagano.jp/original_breed/481.html 長野県

5.産地での対策事例(外部リンク)

  地域 対策事例
※参考サイト、PDFへリンク
出典
01 東北地域 りんごの温暖化対応について 農研機構 杉浦俊彦氏
02 青森県 JA津軽みらい モモへの転換事例(津軽地方中南地域) 青森県観光交流
03 群馬県 群馬県のりんご産地における気象変動適応策の取り組み 国立環境研究所
04 群馬県 群馬県のりんご産地における気象変動適応策の取り組み 群馬県農業技術センター 中山間地園芸研究センター
05 富山県魚津市 ICT技術を利用した細霧冷房によるりんご日焼け果対策(富山県魚津市) 富山県果樹研究センター
06 栃木県 栃木県農作物生産における気候変動適応ガイド(第1版) ― 概要版 果樹(なし、ぶどう、りんご)編 ―常緑果樹等への品目転換の検討 栃木県農政部 経営技術課
07 栃木県 栃木県農作物生産における気候変動適応ガイド(第1版) ― 概要版 果樹(なし、ぶどう、りんご)編 ― 栃木県農政部 経営技術課