TAC・出向く活動パワーアップ大会2024開催レポート

全農は、全国各地で日々、地域農業の担い手に出向く活動を実践している「TAC」のレベルアップを目的に、TACの活動を全国統一名称で開始した2008年より全国のTACを対象として「TAC・出向く活動パワーアップ大会」を開催しています。
2024年度、第17回となる「TAC・出向く活動パワーアップ大会2024」のテーマは次の3点です。

  • (1)地域農業の負託に応える出向く活動基盤の強化
  • (2)生産・経営支援を通じた担い手の所得増大と生産基盤の維持・発展
  • (3)食料安全保障の強化に資する「食」と「農」への貢献

今大会は、昨年度に引き続き新横浜プリンスホテルでの実開催とWebでのリモート開催を並行し、合わせて約550名が参加しました。また、大会中には「県域サテライト企画」と題して、Webで視聴している参加者と本会場を中継し、各県域に設置したサテライト会場から日ごろのTAC活動や全国のTACに向けたメッセージを発信していただきました。

また開催報告は、日本農業新聞(2024年12月13日付)にも掲載しています。

TAC・出向く活動パワーアップ大会2024の活動表彰では、TACトップランナーズJA・1JA、JA部門(全農会長賞)・1JA、JA部門(優秀賞)・2JA、TAC部門(全農会長賞)・2名、TAC部門(優秀賞)・1名、TAC部門(地区別優秀賞)・7名が表彰されました。

TAC・出向く活動パワーアップ大会 2024活動表彰

JA部門

山口県 JA山口県【全農会長賞】

令和元年に県下全てのJAが合併し、JA山口県が誕生した。
この合併を機に、支所や営農センター機能を見直し、統廃合を行ってきたが、その結果、組合員から「職員との関係が薄れてきた」といった声が増えてきた。
そのため、組合員との関係性の再構築を目指し、組合員への「出向く」行動量の拡大と、併せて大規模化・多様化が進む担い手経営体に対する相談・提案機能の充実化を目的に専門部署の設置と専任担当者(TAC)の配置を行った。
当部署は、他事業部や各連合会等との調整機能も有しており、単独での対応が困難な案件に関しても、円滑な連携を図り、JAならではの総合支援を実施し、担い手の満足度向上に努めている。

栃木県 JAうつのみや【優秀賞】

当JAでは営農相談員の組合員対応力の強化と活動内容の高位平準化、業務に対する意識・意欲の向上と自信を持ち、やりがいを感じられる環境整備などが課題であった。
課題に対して「活動実施要領の改正」、「日報管理システムの導入」、「内部研修会、活動審査会の実施」などを行い相談員が任務を遂行できるよう体制を整備するとともに活動の進捗管理を行っている。
取り組みの結果、職員の意識・意欲の向上も一因となり組合員の販売高の増加やJA事業利用に繋がる成果も出ている。また、相談員活動の優良事例が他地区にも拡大している。
なお、相談員がライン長に昇進するケースも増えておりJA全体としての組合員対応力強化も期待できる。

滋賀県 JAレーク滋賀【優秀賞】

JAレーク滋賀は令和3 年4 月に8JAの合併により発足し、TAC推進課には現在10 名の専任TACが配属されている。
しかし、広域合併による管内の広さからTACを各営農経済センターに配置する形となっており、個々での活動が多くTAC間のコミュニケーションや連携不足、資質向上が課題であった。
また、合併当初から「合併したスケールメリットを感じない」「合併しても地区を越えた取組みができていない」などの意見があり、さらに管内では担い手農家の高齢化や後継者問題、米価の不安定化による収支悪化などの課題があった。
これら課題の解決による担い手農家の所得増大を目指し、TAC間のコミュニケーションや連携を強化し、JA一丸となってTAC活動に取組んでいる。

TACトップランナーズJA

北海道 JAあさひかわ

これまでJAあさひかわでは、農産物の付加価値追及と六次化新商品開発(2015 年・2017 年)、異業種連携によるブランド牛の開発とIT技術の導入(2016 年)、生産者部会の発展と地域農業の課題解決(2017 年・2018 年)、労働力不足解消に向けたサポート体制強化とTAC訪問活動の充実(2022 年)、などに取り組んできた。
担い手の農業経営の課題は労働力不足や賃金の高騰、米価下落、生産費高騰など著しく変化しており、要望や課題のハードルも高くなってきている。
これらの課題に対し、訪問活動の質を高め担い手の声に応え続けていくため、「TAC職員のスキルアップ」「TAC職員の意識改革」「部門間連携の強化」を実践し、TACが起点となった担い手の経営課題解決への取組みを進めている。
担い手の要望は幅広く、農業情勢の変化に沿った質の高い対応を実現するため、営農部門と金融部門が連携し幅広い知識共有のもと担い手の課題解決にあたっている。
スキルアップや意識改革に向けて、部門間連携による意見交換会や研修会、机の上で得る知識の他に、稲作部会の協力により農作業の実体験研修を行い、体で得る知識習得の場を提供し、引き続きTACの育成強化に取り組み、担い手の幅広い課題解決に向けた取組みを展開していく。

TAC部門

山梨県 JAフルーツ山梨 
竹川 要 氏 【全農会長賞】
『山本『甘助』が担い手の負担を軽減!』

担い手から「桃の共選出荷時の負担を軽減してほしい」「共選所の出荷基準を統一し有利販売につなげてほしい」という要望を受けた。これに対し、担い手と市場双方から聞き取りをおこない、新たな規格『甘助』を設定。負担となっていた担い手の作業の効率化・省力化を実現。出荷基準の統一は新たに運営委員会を設置し、各共選所での選果のずれを解消。これにより、共選所ごとの販売金額の差の解消、有利販売における手取りが向上。目合わせ会で使用するサンプル桃が増加し職員の負担が増える問題を、Z-GIS と過去の写真データの活用をおこなうことで労力を削減し、解決。
担い手から取り組みの効果を実感する声が上がり、JA求心力の向上につながった。

京都府 JA京都中央 
佐藤 聖也 氏 【全農会長賞】
『「京おくら」新たな産地化へ~ゼロからのスタート~』

JAでは、既存品目の産地規模縮小が問題で、担い手から、収益性の高い品目への転換を望む声があった。
そこで、暑さに強く、かつ栽培がしやすい「オクラ」に注目し、「京おくら」と名付け、産地化へ取り組んだ。
担い手の労働力軽減のため、袋詰め作業を福祉事業所へ委託する「農福連携」、早期出荷や単価底上げに向けた市場分荷による「単価向上」、規格外品の販路開拓のため「新たな出荷規格の設定」を3 つの重点課題とし、TAC主導で担い手・行政・販売先と連携し、課題解決に取り組んだ。
企業や大学との連携など「京おくら」が中心となり、JA全体のイメージアップにつながった。

島根県 JAしまね 
大國 満瑠 氏 【優秀賞】
『一流の経営者に俺はなる ~若手農業者の意識のコンサル~』

若手農業者の経営を改善するために、県や市、JAの関係部署でチームを編成し、「個」ではなく「チーム」で経営コンサルを実施した。特に「農業者の気持ちを如何にして奮い立たせるか」をチームの真の目的として取り組んだ。
現場でのヒアリングや経営分析の結果を踏まえ、チームで課題に対する改善案を策定、それを提案し、一緒になって課題解決に向けて取り組んだ。
結果、収量・販売高等を大幅に増やすことができ、農業者の経営に対する意識・自信を大きく高めることができた。また若手農業者が懸命になって取り組む姿を示すことで、他の部会員にも良い刺激になり、部会および産地としての発展にも繋がった。

北海道 JAあさひかわ 
佐藤 航紀 氏 【地区別優秀賞】
『農業の未来を守る北海道初の独自銘柄水稲肥料開発~省力化・低コストによる所得向上の実現~』

昨今の米価下落や資材費高騰は生産現場に大きな影響をもたらしており、中でも肥料高騰の影響が大きく、コストカットが担い手にとっての最重要項目であった。
これに対し、1,000 点を超える土壌分析データを集約・分析しリン酸・カリが過剰という結果を踏まえ当JA管轄内の圃場に適したL型肥料の開発を関係機関と連携を図り、北海道初の独自肥料「稲の匠」の製品化を実現した。
販売3 年目を迎えたが右肩上がりで推移し、販売前より10,000 袋以上増加している。担い手からは収量も安定し高評価を得ており、肥料高騰における救世主的な存在となった。
訪問活動を通してJAと担い手の距離感が縮まりJAとしての強みでもある総合力を生かす場面が増えている。

神奈川県 JA湘南 
濱端 興樹 氏 【地区別優秀賞】
『世界初 ピーマン革命』

管内主幹品目である春トマトの市場出荷価格が低迷し担い手から相談を受けていたところ、全農神奈川県本部からの紹介もあり春トマトの代替作物として種なしピーマンの栽培を提案した。栽培は初挑戦だったが、関係機関と連携し栽培は順調に進んだ。
さらに栽培規模も増え、世界初の種なしピーマン出荷組合を設立した。
また、後作として胡瓜を栽培していた期間も種なしピーマンを栽培したいという担い手の要望が強くあり、春に植えた苗を生かし、主枝を切り再度出てくる脇芽を主枝として伸ばす切戻し栽培を確立させ、1年を通して収穫することに成功した。
今後も新規出荷者を増やし知名度を上げ生産規模拡大と所得向上を目指す。

神奈川県 JAよこすか葉山 
安藤 秋徒 氏 【地区別優秀賞】
『牛糞堆肥の高付加価値化による地域循環型農業の実現に向けて』

耕種農家の牛糞堆肥施用量の減少や、酪農・肥育農家の牛糞堆肥処理に苦慮しているという担い手の声から、堆肥利用増加および堆肥発酵期間短縮を狙い、腐熟促進剤Dから資材Kへの切替え提案を行った。
結果、発酵期間が約1/3 に短縮、資材費78%削減、農協経由の堆肥購入は36%増加した。堆肥は嵩や臭いが低減し質が向上したため、既存の利用者から好評を得ただけでなく、新規利用者の獲得につながった。本事例を畜産部会にて紹介し、畜産農家で資材Kの活用が広がっている。
また、地域循環型農業の実現のため、本堆肥を利用した大豆を栽培し、地元豆腐屋への原材料提供、精製されたおからを肥育農家に還元する地域循環型サイクルの取組を開始した。

石川県 JA金沢市 
山口 朝史 氏 【地区別優秀賞】
『農家と産地の新たな出発に向けて~福幸(復興)を目指した取組み支援~』

管内果樹産地の中でも若手で地域を牽引する担い手が、作業中の事故で下半身が不自由となった。営農活動の継続が難しいと予想された中、新たな形で農業に携わりたいという担い手の強い意志があったため、そのビジョン達成に向けて事業提案や申請支援を行い、取組みをサポートした。また、担い手と話をする中で管内担い手が持つ事業承継や農地管理等の課題も出てきたため、関係部署とともに解決に向けた取組みを進め、スムーズに後継者への承継と果樹園の引継ぎができる体制を整えた。
意欲ある担い手へ寄り添い、福や幸せが舞い込むよう支援した結果、当人だけではなく地域農業全体の復活にも繋がった。

静岡県 JAハイナン 
岩堀 真也 氏 【地区別優秀賞】
『「さつまいも産地化プロジェクト」~干し芋発祥の地からのリスタート~』

管内の主幹作物である茶は静岡県内一の生産量を誇るが、慢性的な価格低迷が続き、担い手の農業経営を圧迫しており、茶転換の品目や複合品目が求められる課題に対し、さつまいもを推奨しプロジェクトを立ち上げた。
生産から販売に必要な設備や農業機械は、行政や連合会等と連携し導入した。また、農業機械は生産者へレンタル事業をおこない、生産コストの低減と省力化に取り組んだ。
販売面では、さつまいもの専用貯蔵施設を建設して長期貯蔵を可能とし、出荷期間を延長した有利販売を実施した。また、JAへの出荷規格を簡素化し全量買取販売を構築した。更に、付加価値を上げるためブランディングをおこない、組合員の農業所得向上に繋げた。

島根県 JAしまね 
菊地 雅也 氏 【地区別優秀賞】
『あなたは一人じゃない ~チームで支えた担い手支援~』

新規就農してからの2 年間、自然災害の影響もあり農業収入が伸びず不安定な経営状況にあった担い手に対し、問題や課題について共感(本人への自覚)を図りながらTAC が中心となり関係機関に声掛けしチームを結成し支えた取り組みとなります。
課題解決に向け、栽培面と販売面の2 つの側面から検討し、栽培技術確立に向けた試験の実施や学校給食事業の活用の提案を行った。また、課題解決とともに持続可能な農業の確立を目指すこととした。取組みを支援していく中で新たな課題が発生するなど課題が途切れることはなかったが、都度チームで考え協議し目標を達成した。
今後、管内農業の中核を担うであろう新規就農者の「今」を支援し救うことは当然その担い手の「未来(将来)」を救うこととなり曳いては地域農業の将来を救う取組みとなった。

岡山県 JA岡山 
池内 伸治 氏 【地区別優秀賞】
『苦境に立たされたブランド産地の農業者を守るために』

高齢化と部会員数減少が進む施設茄子部会に対し、新規品種とスマート農業、新たなIPM技術の導入提案を行い、部会生産者の要望であった労力削減と収量・品質向上を実現した。TAC指導員として部会の将来を見据えた提案により生産者の信頼を得られ、更なる収量向上に繋がる取組を開始できている。
さらに、千両なす栽培を断念した方に対して、長時間労働にならず収入が見込める品目を関係各社と協議し、将来性も考えてピノ・ガールの作付提案をした。営農センター全職員を巻き込んで生産指導から販売対策まで一体的に取り組んだ結果、新規作付者は約80 件増加した。引退者の農業継続に加え、生産・販売量は増加、計画通り産地化を目指す。

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