TAC・出向く活動パワーアップ大会2025開催レポート

全農は、全国各地で日々、地域農業の担い手に出向く活動を実践している「TAC」のレベルアップを目的に、TACの活動を全国統一名称で開始した2008年より全国のTACを対象として「TAC・出向く活動パワーアップ大会」を開催しています。
2025年度、第18回となる「TAC・出向く活動パワーアップ大会2025」のテーマは次の3点です。

  • (1)地域農業の課題解決に向けた出向く活動の実践
  • (2)JAグループの総合力を発揮した担い手支援
  • (3)持続可能な農業の実現に向けた生産基盤の確立

今大会は、昨年度に引き続き新横浜プリンスホテルでの実開催とWebでのリモート開催を並行し、合わせて約600名が参加しました。

また開催報告は、日本農業新聞(2025年12月19日付)にも掲載しています。

TAC・出向く活動パワーアップ大会2025の活動表彰では、TACトップランナーズJA・4JA、JA部門(全農会長賞)・1JA、JA部門(優秀賞)・2JA、TAC部門(全農会長賞)・1名、TAC部門(優秀賞)・2名、TAC部門(地区別優秀賞)・6名が表彰されました。さらに、米穀部署と連携した米の集荷に成果を上げた3JAが、JA部門 米集荷特別表彰として表彰されました。

TAC・出向く活動パワーアップ大会 2025活動表彰

JA部門

秋田県 JA秋田なまはげ【全農会長賞】
『少数精鋭で挑む、持続可能な農業のための担い手支援~TAC体制の活用による取り組み~』

近年、基盤整備事業を背景に法人化が進んだことで、担い手の課題や要望が高度化しており、経営支援・金融相談・栽培技術を含めた総合的な支援体制の構築が急務となっていた。
そこで当JAでは、法人の登記・設立支援、担い手コンサルなどで担い手との接点強化を目指した。また、スマート農業技術や土壌分析の活用を推進し、圃場管理や栽培改善の具体策を担い手と共に検討・実践した。少数職員でも担い手の要望に迅速に対応するため、担い手支援室・金融部門をワンフロアとし、担い手に寄り添いながらJAの総合力を強みとした支援を実現している。
こうした取り組みは、担い手の信頼を高めるとともに、地域農業の持続的発展に大きく貢献できている。

静岡県 JAハイナン【優秀賞】
『総合営農アドバイザー(Foad:フォアド)による担い手への出向く活動~JAの総合力を発揮した担い手支援~』

JAハイナンでは、主幹作物である茶は近年の価格低迷等により、生産基盤が脆弱化しており、他の品目についても同様の状況である。これまでも担い手へ出向く活動に取り組んできたが、高度化・多様化する担い手の課題や要望に対して、JAの対応が充分に発揮されず、JA離れが進んでいるという課題があった。
課題に対して、新たにフォアド(総合営農アドバイザー)を設置し、3つ(購買、営農指導、販売)の役割と機能を持たせた。さらに6つの品目別チームを結成し、関係機関・部門間連携により、担い手の課題解決に向け、JAの総合力を発揮した総合的な寄り添った支援に取り組んでいる。
その結果、先進的な取り組みである農地集積や基盤整備による果樹団地化、営農経済事業DX化により、産地振興の拡大とJA利用率の向上を実現した。

福岡県 JA筑前あさくら【優秀賞】
『JAによる新たな労働力支援への挑戦!』

当JAでは、農業従事者の高齢化や後継者不足による深刻な労働力不足に対応するため、「援農検討プロジェクト」を設置し、組合員・職員へのアンケート調査や試行運用を実施。特に果樹やネギの作業で人手不足が顕在化する一方、職員の6割が労働力支援に意欲を示した。これを受け、副業制度を導入し、JA推奨の農業バイトアプリ「daywork」を活用。労災保険加入や副業日数制限などのルールを整備し、令和5年度より本格運用を開始した。制度導入後は職員参加者が増加し、マッチング件数も大幅に伸長。
担い手の労働力確保や農業所得の増大に貢献するとともに、職員の農業理解や組合員との信頼関係構築にもつながった。

TACトップランナーズJA

滋賀県 JAレーク滋賀
『合併JAのスケールメリットを活かした取組みと農家組合員との接点活動の強化』

JAレーク滋賀は令和3年4月に県内8JAの合併により発足し、滋賀県最大規模のJAとして広域にわたる営農支援を展開している。合併後、組合員との接点の希薄化や担い手農家への支援不足が課題となり、「スケールメリットの実感がない」との声も多く寄せられた。
これを受け、TACを中心にドローンによる防除・施肥作業の受託、園芸品目の他地区展開等、地区を越えた連携による支援活動を実施。特にドローン活用では、操縦資格を持つ職員が中心となり、作業面積の拡大と効率化を推進した。
さらに、TACとエリア推進担当者による定期訪問活動を通じて農家との信頼関係を再構築し、スマート農業の提案やアクアポート導入支援も行った。購買・販売事業ではシェア率向上を目指し、土壌診断や多収品種の推進などを展開。職員育成にも力を入れ、研修会の開催や若手TACの活躍を通じて組織力を強化した。
各地区の強みやノウハウを共有し、選果場や資材の活用なども含めた広域連携を進めた結果、JAの一体感や農家満足度が向上。今後はTACのコンサル力強化と地域農業の持続的発展、JAの安定経営を両立させるWIN‐WINな関係構築を目指し、全職員が一丸となって取り組んでいくことで、地域農業の未来を支える体制づくりが期待されている。地域の声を反映した柔軟な支援と継続的な改善が今後の鍵となり、JAの存在価値をさらに高めていく。

TAC部門

和歌山県 JAわかやま 
土谷 賢太郎 氏 【全農会長賞】
『すべての農家を防除名人へ! ~個別防除処方箋作成による農家所得向上~』

和歌山県下津地域の農家は昔ながらの栽培手法に頼る傾向があり、農薬の最新知識の不足から病害虫被害が農業所得向上の妨げとなっていた。
これに対し“JAの最大の商品は知識ある職員”をモットーに、地域の実情に合せた独自の薬剤試験に加え、地域の篤農家のもとへ通い、産地独自の栽培技術を学んだ。
また、得た試験データや技術は、園地ごとの個別防除処方箋の作成に活用するとともに、講習会や営農情報誌「からたち」など、地域のネットワークを活用して地域全体に周知しており、秀品率や収穫量の向上により農業所得向上の成果として表れている。
自身の取組が、更なるJAの信頼向上、ひいてはJA事業利用拡大につながることを期待している。

福島県 JAふくしま未来 
蒔田 和也 氏 【優秀賞】
『自己資金ゼロでも、「ここで農業を始めたい」実現に向けた生産者とJAとの歩み』

新規就農者との面談により栽培技術の習得・資金調達・農地の確保の3点を重点的に支援した。
栽培技術習得については、園芸ギガ団地での実践的な研修と並行し定期的な訪問による意向確認・今後のスケジュール確認を行った。
資金調達については、各資金制度を活用すべく行政と連携し資金を確保できた。
農地の確保については、農業委員会より斡旋された農地の適正評価、土壌分析に基づく土壌改良や施肥の提案を行った。
また、JAの部会組織加入による生産者間での交流により栽培知識の底上げにも繋がった。
就農に至るまでのプロセスを指導・支援というより「伴走者」という形で生産者と接したことで信頼関係を築け、就農に導くことができた。

熊本県 JA本渡五和 
山下 清弥 氏 【優秀賞】
『めざせ「夏場の草刈り作業ゼロ!」~除草剤の活用がつなぐ畜産生産者と集落営農組合~』

WCS生産を行う管内の集落営農組合にとって、近年の異常気象により、夏場の刈払機での除草は熱中症にもつながる大きな負担であり、作業の遅れが品質低下・規模縮小につながっていた。一方、管内の養牛生産者にとって、家畜への健康被害の懸念から除草剤利用への抵抗感が大きかったが、双方に出向くTACとして、双方が理解しあえる除草のあり方として「真夏の刈払機による除草作業ゼロ」を目標に、除草剤活用試験や養牛生産者向け説明・キャンペーン、集落営農組合向け防除体系を提案・実施した。
その結果、除草の省力化・コスト削減と畦畔の雑草抑制・畜舎周辺のサシバエ減少に成功。畜産生産者と耕種生産者に共通の課題に対し、関係機関との連携を通じて成果を上げることができた。

岩手県 JAいわて中央 
米田 菜摘 氏 【地区別優秀賞】
『スマート農業技術でつなぐ持続可能な地域営農』

今回の取組みは水稲農家から、異常気象による収量減少や品質低下について相談をいただいたことから始まった。AIと衛星画像を活用するスマート農業技術「ザルビオ」の導入を提案し、管内初となる田植同時側条可変施肥の実証とデータに基づいた施肥設計や防除判断ができる体制を整えた結果、収量向上と全量一等米の確保に成功した。
また、当該農家が今後の地域を牽引する姿を見据えた伴走支援によって、自らデータを収集・分析する習慣が根付き、担い手の主体的な成長に繋がったことで、これまでの経験と勘だけに頼らない新しい営農スタイルへ変化し、「TACに相談して本当に良かった」と、改めてTACとしての存在意義を認めていただけた。

秋田県 JA秋田しんせい 
佐々木 敬太 氏 【地区別優秀賞】
『スマート農業が切り開く次世代農業のカタチ ~ザルビオは最大の武器~』

管内の担い手は、労働力不足や、耕作面積増による作業の煩雑化などを課題として挙げることが多く、対応策として生産性向上に寄与するスマート農業への関心が高かった。
そこでスマート農業に高い関心を持つ3経営体に対してザルビオを提案し、各種実証を重ねた。その結果、ザルビオ活用の定着に加え、アクアポートや追肥、田植機などの付帯取引を生み出すことができた。
JAと関係機関が連携した結果、データ利活用農業の重要性が担い手に浸透してきており、ザルビオ会員数の増加へとつながった。
ザルビオは、これまでつながりの弱かった経営体も含め、担い手とJAを結ぶ最大の武器となり、スマート農業分野での連携した活動につながった。

石川県 JA金沢市 
山本 智広 氏 【地区別優秀賞】
『岐路に立つ担い手への総合的な事業支援』

私が所属する管内では高齢化や後継者不足で大口農家への農地集約が徐々に進んでいるが、地域計画に位置付けられた農家から突然離農の話があり、これを地域の担い手が引継ぐ事となった。健全経営ではあったが、突然の規模拡大により経営収支の悪化や作業労力の不安等の懸念があったため、地域を担当するTACとして対応の必要を感じ、関連部署や県農林総合事務所、JAバンク、全農等と連携、協力してコンサルティングを行って対応にあたった。
これを通じて5年後の経営見通しや営農についての課題洗い出し、「見える化」ができ、営農の改善策、労働力不足への対応策等の提案を行い、担い手の不安の払しょく、経営分析、安定化のお役に立つことができた。同時に将来の地域の農地維持にも貢献できたと考えている。

滋賀県 JAレーク滋賀 
中辻 秀章 氏 【地区別優秀賞】
『TACを軸としたフリーグループ形式での生産振興 ~ With TAC ~』

私が取り組んだ内容は特産品目の生産振興である。ただし、部会単位での生産振興ではなく、部会の枠にとらわれないフリーグループでの生産振興である。
このグループでは作付け面積、栽培歴、栽培地域等については問わず、広い範囲の方に参加頂けるグループとして構築し、TACが生産者、関係機関、JA内部署間の連携の軸となり、生産者をサポートした。生産振興とあわせて連携強化を毎年取り組み、技術継承、若手栽培者の確保などができ、特産品生産を微力ながら盛り上げることができた。

島根県 JAしまね 
原田 裕幸 氏 【地区別優秀賞】
『出向く活動から始まる信頼関係の構築 ~JA低利用担い手農家へのアプローチ~』

当該農業法人は、生産から販売まで自社で行っており、出荷や購買品についてJA低利用法人である。この状況を打破するためにJA役員によるトップセールスを行う中で、「経営規模拡大をしており、密苗等による低コスト化を図っているが、春先の天候不順などで育苗の失敗が多く大幅な収量減を招いている。営農指導やリスク回避のためにJAでも密苗を供給できないか」と要望を受けた。
TACが中心となり、育苗指導や育苗センターで新たな取組みとして密苗供給を行い、除草剤等の提案も行った結果、収量及び品質が向上し担い手の所得向上に繋がった。
また、継続訪問によりJA利用が最低限であったが、購買品等の大幅なJA利用向上にも繋がった。

愛媛県 JAおちいまばり 
合田 光 氏 【地区別優秀賞】
『めざせ3億円!~伝統あるキュウリ産地を守るために~』

越智今治農協きゅうり部会では高齢化や新型コロナウイルス感染症に伴う単価安によって生産者・栽培面積の減少が進み、部会員から部会存続に対する不安の声が多く寄せられていた。
そこで、現状を打開すべく新規栽培者獲得の新たなターゲットとして兼業農家に着目し、兼業農家を育成するための栽培団地の設立を行い、栽培開始~独立までのサポートを実施した。同時に販売先の要望にマッチングするために、選果基準の最適化を行うことで等級比率の大幅な改善を実現し、有利販売に繋げた。
2つの取組を通じて、新規栽培者の獲得・担い手所得の向上を実現したことで、様々な相乗効果が発生し、産地の活性化に向けた雰囲気が醸成されている。

JA部門 米集荷特別表彰

北海道 JAあさひかわ
『JAは生産者の経営パートナー「選ばれるJA」を目指して』

民間流通の拡大により生産者の販路選択が多様化する中、JAの販売力強化と組合員との信頼関係の構築が課題であった。
この課題に対し、販売方針の明確化や取引先との交流等を通じた関係性強化、品種特性を活かした販売戦略、行政連携による販路拡大、加算金制度の充実等を通じてJA出荷の魅力を高めた。さらに、担い手の状況に応じた個別対応として、TACによるきめ細やかな対応、労働力支援、オリジナル肥料の開発等を実施し、信頼関係の強化に努めた。
その結果、令和6年産米では出荷契約比100%超を達成。また、JA離れ傾向にあった生産者の全量契約獲得や有機栽培面積の拡大など、集荷実績と組合員との関係深化に繋がっている。

石川県 JA小松市
『JA小松市役職員一体化による全農家への集荷向上推進』

令和6年産米の集荷を目前に控えた時期、農家から「業者との価格の差が開きすぎているためJAには出荷しない。業者に出荷する。」などの報告が相次ぎ、連絡もなく契約不履行となる農家も続出した。その背景により、米穀部署とTAC部署が主体となって、“役職員一丸での全農家577名への集荷推進”を企画し、JAの集荷取り組みに対する不満や業者との比較など様々な意見を聞きとり、令和7年産米の集荷より、紙袋の無償配布による「ふるい下米」の集荷など一つ一つの要望や課題に対して対応できることを順に実施した。
結果として、微増ではあるが前年の出荷契約数量を上回り、進行中の集荷数量についても前年比を上回っている。

滋賀県 JA北びわこ
『「丁寧に応えて積み重ねる」~組合員がJA出荷を選択する理由は様々~』

担い手への農地集積が進む中で、担い手からの米集荷率向上と職員減少への対応が課題であった。
担い手の経営規模や課題が多様であることを踏まえ、複数の加算金制度を組み合わせた契約提案や、庭先集荷・持込奨励金の導入、免税事業者に配慮した委託販売方式への移行など、個別の状況に応じた複数の手当てを講じた。
職員減少には、フレコン・パレチゼーションの導入、WEB出荷契約システム・WEB検査システムの導入、倉庫の遠隔管理などで業務効率化を推進した。
その結果、令和6年産米では出荷契約比99.8%の高集荷率を達成し、職員数も5名から2名で対応可能となるなど、組合員の満足度とJA業務効率の両面で成果を上げた。

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