生産振興

農業資材のコスト低減の取り組み

トラクターの共同購入

生産コスト低減に向け大型トラクター(60馬力)の共同購入に続き、2020年から中型トラクター(33馬力)に取り組んでいます。2023年3月末で受注は5,800台を超え、そのうち、3,929台を出荷しました。
1万人を超える生産者へのアンケート等を実施し、生産者の需要を取りまとめ、一括発注・仕入れを行うことで、生産者の購入価格の引き下げを実現しました。

農薬の担い手直送規格の取り扱い拡大

大型規格(1ha用)を超える「担い手直送規格」(4ha用等)の販売を拡大しています。
スケールメリットに加え、受注生産、メーカー直送等の工夫により低コスト化を進め、供給量を伸ばしています。2022年度では30万6,000ha分の普及となりました。

肥料の銘柄集約とBB肥料の供給拡大

生産者の生産コスト削減に向け、一般化成肥料において、取り組み当初の550銘柄から24銘柄まで集約することで、10~30%のコスト圧縮につなげました。
また、低コストでの製造や担い手のニーズに応じた開発が行いやすいBB肥料の普及拡大を進めています。

堆肥入り複合肥料など国内肥料資源活用銘柄の普及・拡大

肥料メーカーとの連携のもと、国内肥料資源を活用した広域銘柄を設定し、ブロック域での取り組みを行うとともに、肥料コストを抑制する施肥体系への転換を推進しています。2022年度の堆肥入り複合肥料の実績は10,500トンまで増加しました。

園芸作物の高収量栽培技術や施設パッケージの普及

全農は施設園芸作物の高収益を実現できる経営モデルの実証・普及に取り組んでいます。全農の実証農場である「ゆめファーム全農」で確立した高収量の栽培技術や施設パッケージの普及に取り組んでいます。

ゆめファーム全農こうち(高知県安芸市)

2017年に設置した、ナス圃場としては国内最大規模(1ha)の施設。新技術であるナスつるおろし栽培を行い、作業の簡略化・標準化をはかることで35トン/10aを達成。2021年には、地域農業・施設園芸の振興を目的に、全農と高知県、JA 高知県が連携協定を締結しました。2022年には圃場全体をロックウール養液栽培に切り替え、さらなる高収量を目指しています。

ゆめファーム全農SAGA(佐賀県佐賀市)

2019年に設置した国内最大規模のキュウリ多収栽培実証施設(1ha)では、隣接する清掃工場からの余剰排熱とCO2を活用しています。稼働1年目の収量は全国平均の約4倍となる55.6トン/10aを達成しました。

ゆめファーム全農とちぎ(栃木県栃木市)

2014年から運営している高軒高ハウスで、篤農家の指導により、土耕栽培で40トン/10aの高収量を達成しました。2022年には圃場全体をロックウール養液栽培に切り替え、さらなる高収量を目指しています。

生産拡大・品質向上に資する革新的な技術・商品開発と実証・普及

子実とうもろこしなど国産飼料原料の栽培実証と普及

主食用米の需要量は約10万トン/ 年ずつ減少しており、生産者の経営安定につながる新たな転作作物が求められています。一方、畜産の飼料原料は、国際的な穀物価格高騰により国産増産が求められています。
子実とうもろこしは、労働生産性の高さや、大豆や小麦など輪作作物の生産性向上に寄与すること、耕種農家の所有機械を中心に作業が可能であることなど、生産上の有利な点がある他、堆肥の利活用による耕種農家と畜産農家が連携した循環型農業の実現にもつながります。こうした背景から、全農は、子実とうもろこしに着目し、2022年度から生産・流通・飼料原料使用に係る実証を開始しました。今後、収益モデルの構築と普及拡大を目指します。

子実とうもろこしの圃場

子実とうもろこしを使用した飼料の給餌

果樹の省力生産のモデル実証

果樹の省力生産を実現するため、高密植栽培やジョイント栽培などのモデル実証や、省力生産方式に適した資材の取り扱い拡大に取り組んでいます。
青森県本部では、りんごの高密植わい化栽培の普及に取り組んでいます。この新しい栽培様式は、樹を密植することで、早期多収、果実の均質化、省力低コスト生産を可能にします。普及に必要な苗木の安定供給や本県に適応した管理方法の確立などの課題克服に向けて検討を進めています。

りんご高密植わい化栽培実証をしている園地

畜舎賃貸による家族経営生産者の事業開始・規模拡大を支援

畜産経営を新たに開始または規模拡大するためには、初期投資が多額となってしまうことが課題となっています。そこで、県域を主体とした本会が畜舎・付帯施設の新規取得、既存施設の改修を行い、生産者に賃貸することで、初期投資負担を軽減し、事業開始および規模拡大を支援しています。
また、賃貸期間終了後は残存簿価で生産者へ譲渡し、継続して経営してもらうことで、地域の生産基盤の維持・拡大に取り組んでいきます。

生産者のニーズに対応した和牛繁殖牛舎を継続的に設置

2022年度に新たにパイプハウス型簡易牛舎設置

酪農における事業活用(乾乳牛舎)

労働力の確保による担い手支援

労働力支援・91農業ページ

次世代育成

今後の農業現場を担う人材を支援するため、次世代育成に向けたさまざまな取り組みを進めています。新規就農者に知識や技術を教えるだけではなく、JAや行政と協力して就農までの支援や学生に切磋琢磨する機会を提供するなど意欲を高めるとともに実効性のある育成をしています。

やまもとファームみらい野

宮城県本部は「仙台いちご」の生産基盤を拡大するため、山元町、JAみやぎ亘理、(株)やまもとファームみらい野、宮城県など関係機関と連携し、2021年に「いちごトレーニングセンター」を設置しました。「仙台いちご」の生産者を育成し、生産拡大をはかります。
研修は山元町にある(株)やまもとファームみらい野のハウスで行い、県産品種「にこにこベリー」などの栽培技術や、生産・経営の基礎知識を学びます。研修修了後の就農、経営継続に係る支援体制を関係機関とともに構築し、支援します。

いちごトレーニングセンターでの作業風景

全農チャレンジファーム広島

広島県本部は2018年から、JAや行政と連携し、新規就農希望者に対して実践的な研修を行う「チャレンジファーム広島」を運営しています。三原農場、上下農場、北広島農場の3農場があり、それぞれ主にトマト、アスパラガス、ミニトマトを栽培しています。あわせて模擬経営を含む2年間の実践型研修を実施し、栽培技術や農業経営の基礎を教えています。実践的な研修により、新規就農者の早期の経営安定につなげることが狙いです。本研修所での新規就農者支援を通じて、産地の生産振興と地域活性化を目指しています。

三原農場でトマトの栽培実習に励む研修生