TACパワーアップ大会2020開催レポート

全農では、全国各地で日々、地域農業の担い手に出向く活動を実践している「TAC」のレベルアップを目的に、TACの活動を全国統一名称で開始した2008年より全国のTACを対象として「TACパワーアップ大会」を開催しています。
2020年度、第13回となる「TACパワーアップ大会2020」のテーマは次の3点です。

  • (1)出向く態勢の強化とJAの総合力の発揮
  • (2)環境変化に柔軟に対応するTAC活動の実践
  • (3)TACのネットワーク強化

今大会は新型コロナウィルス感染拡大防止の観点からリモート開催とし、来賓および表彰関係者にはWebでご参加いただきました。さらに、開催の様子をYouTubeLiveにて配信し、全国各地で述べ600名が参加いたしました。
大会では表彰式のほか、TACトップランナーズJA表彰ならびにJA表彰受賞JAからの事例発表や受賞者全員から全国のTACに向けたメッセージ動画を放映しました。

また開催報告は、日本農業新聞(2021年2月2日付)に掲載しています。

TACパワーアップ大会2020の活動表彰では、TACトップランナーズJA表彰・2JA、JA表彰・4JA、TAC表彰・9名、担い手向けTAC通信表彰・2JAが表彰されました。
具体的な取組内容は、以下のとおりです。

TACパワーアップ大会 2020活動表彰

JA表彰

岐阜県 JAぎふ【全農会長賞】

水稲の直播栽培や小麦二毛作を組み合せた3年5作体系を提案、関係機関と連携してスマート農業実証プロジェクトに取り組み、国・県の助成金を活用し、最新スマート農機の新規導入支援を行った。また、実証先で多収性品種「にじのきらめき」の作付けを提案し、多収名人コンテストを通じた栽培技術の共有や他県主力産地JAとの連携による技術確立を図り、出荷量の増加や作付面積の拡大につなげた。
労働力が不足している地域において、TACのヒアリングに基づく求人情報の発信や就農マッチング等の支援を通じて、TACが農家と求職者の橋渡し役となり、労働力確保に寄与した。集落営農組織や農業法人に対して、的確な営農計画作成や作業分担、業務改善を行うことを目的とした「組織力向上プログラム」の導入を提案し、TACがファシリテーターとなり管内4法人で支援を行った結果、離職率の減少や事業承継促進につなげた。
担い手のニーズに対する多角的な取組みやコロナ禍の状況でのネットワーク等を駆使した対応により、担い手や地域の課題解決に貢献した。

岩手県 JAいわて中央

モデル経営体に対して、農家手取り最大化実践メニューの提案によるコスト低減や収量増大等に取り組み、所得向上につなげた。また、その取組内容をJA広報誌に掲載し管内の担い手経営体に周知、水平展開を図ったことで、多くの担い手の営農課題の解決にもつながった。Z-GIS導入による圃場管理の提案やZ-BFM個別指導による営農計画の「見える化」支援、人工衛星センシング「天晴れ」の提案による生育状態の「見える化」支援により、圃場管理の効率化や栽培課題の明確化を図った。また、労働力確保の課題解決に向けて、求職者へのJA無料職業紹介所の活用提案や農作業現場体験支援により、園芸品目の面積拡大等につなげた。コロナ禍の状況において、労働力を確保したい担い手と仕事を確保したい観光業界との労働力マッチングを支援した。
TACを起点とした事業間連携により、担い手の経営課題や地域農業の課題の解決に貢献した。

岐阜県 JAにしみの

実需者のニーズに沿った米づくりに向けて、安定的な需要が見込める業務用米「ほしじるし」の作付と複数年買取方式を提案した。また、全農岐阜県本部等と連携して生育に合わせた基肥専用一発肥料を開発し、JA低・未利用農家に対して、作付とあわせて施用を提案した。これらの取り組みにより、低・未利用農家との関係が構築され、同品種の作付面積拡大や販売先への安定供給に結びついた。
米・麦・大豆中心の経営体に対して農閑期での加工業務用野菜の作付提案を行い、農機レンタル事業活用による生産コスト低減に努めた。近年不作が続いている大豆生産者に対しては機械の新規投資が不要な大納言小豆の作付けを提案し、出荷・販売の支援により、収益の確保につなげた。水田経営における生産コスト削減を目指し、高密度播種苗移植栽培や低コスト資材への切替の提案を行い、生産コストの低減につなげた。
担い手との関係構築と課題改善に向けた総合的な提案により、管内作付面積拡大、収量向上、所得向上に貢献した。

特産である里芋の生産振興に向けて、生産者の負担が特に大きい収穫~分離作業の労力軽減を図るため、栽培規模に応じた機械化一貫体系の提案や広域選果施設の活用促進、人材派遣会社との労働者派遣契約と農福連携による労働力確保支援を実施し、面積拡大、労力削減、所得向上に結び付けた。
JA管内の遊休農地・耕作放棄地対策として、新規就農サポート事業を開始し、就農に向けた経営や栽培技術を研修する場の提供や、就農時には農地斡旋等の支援を行うことで、新規就農者の確保と産地維持と活性化につなげた。
西日本豪雨災害からの復興に向けて、農地再編後の農地利用計画の整備や新規就農希望者に対する園地確保支援に取り組み、担い手の営農継続や新たな担い手の育成につなげた。
産地の維持・拡大に向けて、関係機関と一体となった取り組みを着実に実践し、担い手の課題解決や地域生産振興に貢献した。

TACトップランナーズJA表彰

岩手県 JA新いわて

TACの本店設置やTAC月次会議の定例化、行政・県域との連携などTACの体制づくりに早期に取り組み、継続して実践していることや、関係者間での情報共有の徹底により、時勢に応じて迅速かつ的確な担い手対応を実施し、担い手の経営改善や地域農業の活性化に大きく貢献している。
特産品であるほうれん草の夏場の生産量減少への対策として、関係機関と連携して対応策を提案し、出荷量の向上につなげた。また担い手に対して多様な営農支援を実施し、野菜の生産拡大に貢献した(2011大会)。JAとの関係が希薄な若手農業者に対して農業経営力の強化につながる仕組みを提案し、関係構築に取り組んだ。また、農作業受託支援や栽培技術研究支援に関係機関と連携して取り組み、生産拡大とJA実績伸長につなげた(2014大会)。担い手の手取り最大化に向けて、省力・低コストメニューなどを提案してモデル経営体の所得向上につなげた。また、ブロッコリー産地振興として品質保持対策やGLOBAL G.A.Pの認証取得支援に取り組み、作付面積と販売額の拡大に貢献した(2019大会)。

「法人の10年運営プラン」など関係機関と連携した経営改善支援方策の構築に取り組み、現状の課題や5年、10年先のビジョンを明確にしながら、TACを中心とした事業間連携により、担い手の所得増大、産地拡大、新規就農支援など産地の活性化や経営改善に幅広く貢献している。
農業法人の今後10年の事業収支を、人・物・資金でシミュレーションする「法人の10年運営プラン」の策定に取り組み、経営課題に対して迅速に対応できる仕組みを構築した。土地利用型法人の経営安定化に向けて栽培管理のマニュアル化や新技術の提案を行い、所得向上につなげた(2015年)。担い手への経営意向調査や「法人の10年運営プラン」をはじめ、営農支援、労災保険加入、融資の提案など総合的支援により経営課題の解決に取り組み、またTACが中心となって「農業生産基盤強化支援事業」を立ち上げ、担い手の支援体制強化を図った(2017大会)。同事業を活用し、市場と連携しながら野菜導入提案を行い、新規作物面積拡大や所得向上につなげた。後継者確保と周年雇用の対策として施設園芸導入提案や事業承継支援を行い、経営安定と組織活性を図った(2019大会)。 

TAC表彰

岩手県 JA花巻 
葛巻 剛 氏

圃場情報・作業記録管理の効率化を目的として、Z-GIS、ドローン、水田センサーの導入提案により、情報の整理・更新、適期作業や作業時間の短縮、今後の事業承継に向けたデータ蓄積を支援した。ピーマン栽培の規模拡大に向けて、JAの無料職業紹介所を活用した人員確保支援や金融部と連携した融資提案によってハウスの新規導入に取り組み、作付面積拡大や反収向上に貢献した。また、雑穀生産の販売チャネル拡大を目的として、全農の「純農プロジェクト」と連携し、通信販売カタログ販売の支援を行ったことにより、JAの新たな販売チャネルの確立と消費拡大につなげた。全国の消費者から好評を得たことで、担い手のモチベーションが向上し、栽培面積拡大にもつながった。

岩手県 JAおおふなと 
中村 明子 氏

地力が不足している復旧田での水稲反収向上を目的に、関係機関と連携した土壌診断とその結果に基づく品種ごとの施肥設計を行い、収量向上と労力軽減につなげた。圃場の管理・記録を徹底したい法人の要望に対して、Z-GISの導入提案とあわせて操作研修等のサポートを行った。また、加工品生産を行う同法人に対して、食品表示法に対応した食品表示ラベルの作成と講習会の企画、経費精査による適正な販売価格の設定、6次化プランナーとの意見交換による商談力向上等に取り組み、担い手農家の課題解決と商品販売ノウハウの習得につなげた。

岩手県 JAいわて平泉 
菊地 俊郎 氏

TACの訪問対象を、新規就農者・研修者として重点的に訪問活動を行っている。
親元就農で親とは違う経営を希望する新規就農者に対しては、品目選定をはじめとして県事業の活用や部会への参加を提案し、就農をサポートした。
ブドウ栽培からワインづくりまでを志望するIターン新規就農者に対し、市事業の活用提案による移住から研修、ブドウ栽培圃場の準備の支援を行った。また飲食イベントに生産者とともに参加し、県内でなじみの薄いワインのPRに取り組んだ。
首都圏からの新規就農者に対しては、研修や部会への参加を提案し、早期に産地になじみ、スムーズに就農できるよう支援した。

石川県 JA小松市 
橋本 克巳 氏

新型コロナウイルス感染拡大に伴い、農業経営に影響が出ている法人に対し、各種補助事業のメニューを経営体ごとに選定・提案したほか、JA無料職業紹介所と県域で開設した求人情報サイト「石川の農業で働こう!」を活用して労働者の募集を行い、担い手の希望に即したマッチングを支援した。農業機械の新規導入において、担い手の経営計画を作成し、農機部門や金融部門と連携して経営に見合った投資になるよう資金調達や補助事業の提案による経営支援を行った。その他、Z-GISの活用提案による営農情報管理の効率化、親子間の話し合いに入り事業承継ブックを活用した事業承継支援など、幅広い担い手対応によりそれぞれの課題解決を果たした。

石川県 JA石川かほく 
櫻井 和幸 氏

新型コロナウイルス感染の風評被害によるぶどうの単価下落およびそれに起因する生産意欲の減少といった担い手の不安に対し、行政や「道の駅」と連携して地元消費者を対象とした出荷前予約販売支援を実施し、消費者へのPRと新たな販売活動につなげた。また、高級果実の需要が減少するなかで、新たな販売チャネルの開拓を目的として、行政と連携し、ふるさと納税返礼品への採用を図り、担い手の所得向上だけでなく、全国の消費者に対するブランドPRにつなげた。新規就農者間のコミュニケーションの場の創出や、農地の貸し手と新規に参入する農業法人とのマッチングによる遊休農地の解消、若手農家のマルシェ参加支援等により、新規就農者の増加や担い手の生産意欲の向上につなげた。

愛知県 JA豊橋 
古志野 瑞樹 氏

近年、ミニトマトの全国的な生産量増加に起因する単価の下落や最低賃金の上昇により収支が悪化する生産者が増えている。そこで経営診断を実施して経営上の課題を明確化するとともに、重点経営改善農家として3経営体を選定し、販売額の増加に向けた端境期への出荷提案、パック詰め作業の効率化を目的とした機械導入および融資の提案を行い、所得向上および労働力の削減につなげた。また、法人化を検討している経営体を対象としたセミナーを開催し、法人化のメリット・デメリットの整理など、経営面での知識を深める機会を創出した。
JAの総合力を生かした経営支援を行うことで、生産者の経営だけでなくJA事業実績の向上に貢献した。

滋賀県 JAおうみ富士 
内藤 彰紀 氏

水稲経営体での複合経営による所得向上を目指して、利益係数の算出や価格の安定性から白ネギの栽培を提案、労働力やコスト等を考慮した栽培計画の作成も行った。また、「守山ほたる葱」としてブランド化し、市場のほか近隣スーパーやJA直売所での販売支援を行い収益確保につなげた。さらに、学校給食への供給により地域を食から支えることにも寄与した。高需要で倒伏耐性のある水稲多収性品種について、特性の違う3品種を選定し、経営に適した品種の作付を提案した。加えて、全農県本部と協力した価格安定の取り組みや、フレコン集荷の導入によって農家の倉庫圧迫といった課題を解決し、担い手所得の向上やJA低利用者の利用率向上につなげた。

島根県 JAしまね 
渡部 直樹 氏

法人の代表者の世代交代に向け、TACが親子の間に入り、親に向けた「10年後の法人のビジョン」を息子とともに作成し、提案した。地域農業の存続のため、法人の世代交代の必要性を相互で理解し、代表交代に結び付けた。
 TACシステムを活用して、担い手の長所や課題を蓄積し、SWOT分析により情報を分類・整理することで、担い手の課題に対して的確にアプローチし、課題解決につなげた。また、蓄積・整理した情報をJA内部で共有することで、担い手との信頼関係を後任TACに引き継ぐ「TACの事業承継」にも取り組んだ。
 新型コロナウイルスの影響で減収が見込まれる酒米について、リスク分散した作付計画を提案した他、TACを中心にJAの各部署および専門家で経営コンサルティングチームを立ち上げ、法人の経営全般における支援を行った。

島根県 JAしまね 
片寄 俊一 氏

法人設立に向けて、作業従事の意向や機械所有の有無など情報の整理を行い、税理士等の専門家の斡旋や管内法人との連携による定款・内規の作成等の支援により、円滑な法人設立に寄与した。設立後も、圃場整備工期の延長により、営農計画を見直す必要に迫られたが、収支計画を作成し経営の「見える化」を支援したことで、法人の不安解消と収支に対する意識付けにつなげた。また、隣接する地区本部と連携してタマネギ栽培の体制づくりに取り組み、高収益作物の取り組みを軌道に乗せるため、関係機関と連携しプロジェクトチームの立ち上げも行った。あわせて販売部門と連携し、取り組み開始前に販売先を確保し、安定的に生産できる体制を構築した。

担い手向けTAC通信表彰

石川県 JA金沢市

広報担当者がTACとともに現場へ出向き、TACの取り組みを第三者目線で捉えながら「チックタック通信」を月1回発行している。
 「チックタック通信」では、農福連携や事業承継など毎回1つのテーマを掲げ、実例を具体的に紹介している。また、共有フォルダに資料を保管し、TACが担い手の要望に合った取り組みをいつでも説明できるように活用を図っている。さらに、若い担い手にも関心をもってもらうため、通信内容をSNSやJA金沢市提供番組でも紹介している。
 広報担当者が加わる新たなスタイルでの運用により、担い手を支援するTACの活動を社会的に積極的にPRし、地域におけるJAの存在を社会に周知することにもつながっている。

兵庫県 JAたじま

従来は独自の配布物を作成していなかったが、担い手訪問時に但馬の農業に関する情報やタイムリーな話題を提供することができないか検討した結果、毎月1回「TACたより」を作成し、TACが訪問時に伝えたいことを記事にして目に見える形にする取り組みを始めた。
TACをはじめ営農生産部各課の情報を提供し、JAの活動内容や組合員におすすめしたい資材、旬の作物の栽培情報等が一目でわかりやすい構成になっている。「TACたより」により、担い手への訪問目的が明確化し、会話がより充実することで情報提供・収集が円滑になった。
また、TACと支店長が同行訪問をしており、TACからは「TACたより」、支店長からは「支店だより」や金融・共済などのチラシを提示することで、総合的にJAの利用につながる活動に取り組んでいる。

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