TACパワーアップ大会2022開催レポート

全農は、全国各地で日々、地域農業の担い手に出向く活動を実践している「TAC」のレベルアップを目的に、TACの活動を全国統一名称で開始した2008年より全国のTACを対象として「TACパワーアップ大会」を開催しています。
2022年度、第15回となる「TACパワーアップ大会2022」のテーマは次の3点です。

  • (1)地域の抱える課題の解決による持続可能な農業の実現
  • (2)創意工夫ある出向く活動による担い手の所得増大と生産基盤の強化
  • (3)TAC活動基盤の強化による担い手満足度向上と事業利用の拡大

今大会は、昨年度に引き続き新横浜プリンスホテルでの実開催とWebでのリモート開催を並行し、合わせて約400名が参加しました。また、大会中には「県域サテライト企画」と題して、Webで視聴している参加者と本会場を中継し、各県域に設置したサテライト会場から日ごろのTAC活動や全国のTACに向けたメッセージを発信していただきました。

また開催報告は、日本農業新聞(2022年12月7日付)にも掲載しています。

TACパワーアップ大会2022の活動表彰では、TACトップランナーズJA表彰・1JA、JA表彰(全農会長賞)・1JA、JA表彰(優良賞)・3JA、TAC表彰(優秀賞)・3名、TAC表彰(優良賞)・7名が表彰されました。
具体的な取組内容は、以下のとおりです。

TACパワーアップ大会 2022活動表彰

JA表彰

石川県 JA金沢市【全農会長賞】

個人農業者の減少、担い手への農地集積が急速にすすんだ結果、担い手がさらに大規模化し、より質の高い活動が要求されることが予想されている。
これに対し事業承継やトータルコスト削減、補助事業や融資の提案といったこれまで専任TACが担ってきた「3本の矢」の施策を兼任TACも受け持つこととし、担い手からの高度なニーズに対応できるようTAC体制を強化した。
この体制見直しにより課題にいち早く対応することができ、担い手からの信頼獲得、事業伸長にもつながった。

北海道 JAあさひかわ【優良賞】

JAとして労働力不足や人件費・生産コストの高騰など、今後の営農に対する不安が課題となっている。
それに対し新たな5つの項目を掲げて取り組みを強化した。JA職員による農業ヘルパーの仕組みの構築やTACによる資材散布サービスの構築、ドローンによる適期防除やJAオリジナル肥料の開発など、TACを中心とした様々な仕組みを構築するとともにTACの年間表彰制度を設定し、訪問活動の強化をはかった。
これによりTACの活動が強化され、担い手満足度の向上につながっている。

福岡県 JAにじ【優良賞】

JAにおいて、TACの業務内容に一貫性がなく、JA内外における存在感も薄い状況が課題となっていた。また担当者の年齢層が高く対応力は高い一方訪問先が固定化されるなど、新規訪問やニーズの掘り起こしに課題があった。
これに対し、人員を刷新し、担い手農家からのニーズの聴き取りの徹底、JA内での事業部門連携の強化、TAC体制を専任部署としての再構築に取り組んだ。
「担い手の声にJAがどう応えるか」をテーマに、役員も含めた部門横断的な体制の構築、TAC活動の可視化にもつながった。

熊本県 JA阿蘇【優良賞】

特別栽培で生産する阿蘇コシヒカリはJAの重点品目となっているだけでなく環境調和型農業という側面からも重要な農産物だが、近年、不十分な情報発信により適切な病害虫防除ができず、品質・収量低下につながっている他、系統外出荷によるJAの取扱量減少が課題となっている。
これに対しTAC体制を増員し、これまであまり訪問できていなかった水稲生産もおこなう園芸農家にも一元的に対応することで、情報発信力の強化をはかった。併せて害虫被害低減に向けた新たな農薬の推進を展開した。
これにより適期防除が実現し、品質・収量の増加、農家の所得向上にもつながっている。

TACトップランナーズJA表彰

兵庫県 JAたじま

これまでJAたじまでは、加工用タマネギや多収米の生産振興、販売対策による農家所得の増大(2016 年、2019 年、2021 年)、集落営農組織に対する支援(2019 年)、Z-GISや資材セット販売による省力・低コストの提案(2019 年、2021 年)、SNSを活用した情報提供の迅速化(2021 年)などに取り組んできた。
近年では担い手農家の経営規模の拡大により、営農指導に高レベル化に加えて経営指導も求められるなど「総合性」と「専門性」の両立がJAにおける喫緊の課題となっており、JAの総合力発揮に向けた営農経済部門、金融共済部門の連携が求められている。
それに対し、農業者の所得増大と農業生産拡大にJAの全部署が取り組む体制をつくるため、金融共済事業の支店長を担い手担当と位置づけ、TACとの同行訪問を実施した。
お互いの訪問先を共有して同行訪問を実施することで、新規取引や利用拡大につながることとなった。
今後もJAたじまはJAの総合力を発揮し担い手農家の所得増大と農業生産拡大に取り組んでいく。

TAC表彰

岩手県 JAいわて中央 
米田 菜摘 氏 【優秀賞】
『生産基盤の見える化を核とした法人対応』

農地集積による耕作面積の増加に伴う営農計画や栽培管理に関する相談に対して、Z-BFMによる令和3年度の経営分析、令和4年度計画の策定をおこなった。
経営分析の結果、経営面積と労働力のバランスが悪いことが判明したため、経営の効率化に向けた栽培品目の集約や、低コスト資材の提案をおこなった。さらに、農福連携も含めた雇用形態の最適化などを通じて、労働時間の削減と人件費の抑制により法人経営の安定化につなげた。
また、前任TACとの同行訪問など周囲のサポートにより、担い手とJAとの関係性もより強固なものとすることができた。

石川県 JA松任 
中田 昌孝 氏 【優秀賞】
『事業承継に向けた担い手コンサルティングによる経営改善提案』

後継者への事業承継に向け経営の見直しを要望している法人に対し、JAバンクがすすめる担い手コンサルの取り組みを提案した。
経営ビジョンを整理した他、財務諸表や販売動向から総合的に改善方針を策定してそれを親子で共有したことで、経営移譲を円滑におこなう下地を作ることができた。
今後は、関係機関と連携して課題解決に取り組み、法人の経営改善とJAの利用率向上に繋げていく。

島根県 JAしまね 
片寄 俊一 氏【優秀賞】
『集落営農法人の一つの未来~地域の問題解決に向けて~』

管内の集落営農2法人は高齢化や内部統制の弱体化からくる経営不安を抱えており、その解決策として管内随一の経営規模を誇る農業法人と合併をする方向で検討がすすみ、TACに支援を求められた。
3法人それぞれと協議を重ね、資産整理、譲渡費用、従業員の雇用など、関係機関とも連携しながら課題を一つ一つ解決し、合併に対する支援をおこなった。
結果として円滑な合併作業がおこなわれ、地域農業の維持、将来に対する不安の解消につながった。

埼玉県 JA埼玉中央 
内野 悟 氏 【優良賞】
『特産品「いちご」のハダニ防除の労力軽減から産地の維持・発展へ』

ハダニの被害によりいちご栽培を辞めたいと考えていた担い手に対し、高濃度炭酸ガスと天敵農薬バンカーシートを組み合わせた防除法を提案した。
ハダニは化学農薬に対して抵抗性を持ちやすい性質が非常に強い害虫だが、この2つの技術は抵抗性に関わらず安定した防除が可能となる。
この取り組みを通じてハダニ被害の大幅な削減、農業者の所得向上、労働力の軽減を実現し、TACと担い手の信頼関係が構築され今後の取引継続につながったほか、いちご産地の維持・発展に貢献することができた。

埼玉県 JAほくさい 
井ノ山 俊輔 氏 【優良賞】
『里芋からJAと信頼関係を築く』

今後の地域農業の維持発展のために規模拡大をめざす農業法人に対し、近年需要が高く販売がしやすい里芋の栽培と効率化に向けた機械化を提案した。
またさらなる省力化に向けた一発肥料、生分解性マルチの提案を通じて生産効率向上を実現し、規模拡大は順調にすすんだ。
生産から販売まで一貫してサポートしたことで、資材の利用額が増え、農機や燃料など他部門の新たな取引まで広がりJA実績に大きく貢献したほか、市場からは行田産の里芋として信頼と高評価を得ることにつながった。

石川県 JA石川かほく 
山本 裕介 氏 【優良賞】
『肉用子牛を活用した酪農家の手取り向上と、新たな市場への挑戦!』

生乳需要の極端な減少から肉用子牛の販売を伸ばしたいという牧場に対し、和牛子牛の販売力強化に向けて、「血統の選定」、「飼育環境の見直し」を通じた増頭対策を提案した。
さらに、有利販売を目指して県外市場への出品を関係機関と連携して新規開拓し、それに向けた品質向上対策も併せて提案した。
これにより肉用子牛の販売頭数、販売額の増加を実現し、県内生産者の意欲向上にも寄与した。

滋賀県 JAレーク滋賀 
西村 聡司 氏 【優良賞】
『小麦の品種転換に向けた生産者支援』

近年の暖冬傾向により、従来の小麦品種の倒伏や品質・収量の低下に悩む農家に対し、新品種への転換を提案した。
品種転換にあたっては研修会を開催し、品種転換に対する不安解消をはかった他、生育後期重点施肥栽培の導入により、施肥コストを低減した。また、生育調査や今後の品種転換に向けた現地研修会を開催し、品種転換の促進をはかった。
スムーズな品種転換が実現し、収量の増加、生産者手取りの増加につながった。

兵庫県 JA兵庫みらい 
井上 貴男 氏 【優良賞】
『育てよう、届けよう「ひかり姫」!』

コロナウイルスの影響により酒米の出荷契約数が大幅に減少した営農組合に対し、従来品種以上の品質と同程度の収量・食味を有する新品種黒枝豆「ひかり姫」の導入を提案した。
販売に際して出荷規格の統一に向けた講習会の開催や、専用パッケージを作成した他、県本部とも連携して新たな販路を開拓中である。
この取り組みにより酒米減産分の減収を補填でき、さらに作業分散をはかることができた。

島根県 JAしまね 
永井 裕二 氏 【優良賞】
『JAの総合力を発揮した支援!!~次世代へ繋ぐ取り組み、コスト低減の取り組み~』

新規就農者の独立支援など、地域貢献、人づくりに重点をおいた営農組合に対し、若手従業員の育成を目的とした水稲の生育ステージにあわせた現地指導をはじめ、コスト低減を目的とした土壌診断、自給飼料増産、Z-GISの導入、さらに農業リスクチェックシートの活用による潜在リスクの見える化など、JAの強みである総合力を発揮した支援を実施した。
これらの取り組みを通じて、従業員の栽培技術の向上やコスト低減につながり、JAとしても商系業者との差別化により利用率向上にもつなげることができた。

熊本県 JA本渡五和 
山下 清弥 氏 【優良賞】
『農業労働力支援で持続可能な農業の構築を!』

労働力不足により営農を断念することを検討している果樹農家や露地野菜農家に対し、JA職員による農作業支援の実施に向けたJAの内規改定、実施可能な要項の整理、体制の整備をおこなった他、無人ヘリやドローンによる農薬共同防除をJA管内全域に拡大することによる農薬散布作業の労力軽減に取り組んだ。
これにより適期作業による収量増、品質向上がはかれた他、農薬コストの削減にもつながった。また、参加したJA職員からの評価も高く、農家とJA職員との関係向上につながった。

Get Adobe Acrobat Reader

PDFファイルをPDFファイルをご覧になるにはアドビシステムズ社より無償で配布されているAdobe Readerが必要です。お持ちでない場合は、の"Get Adobe Reader"アイコンをクリックしてください。