土壌肥料用語集

あ行

青刈り作物

緑肥」を参照。

赤枯れ

水稲の葉先が赤褐色また下位葉に褐色の小斑点が発生し、生育が不良になる生理障害。原因・症状によりⅠ型、Ⅱ型、Ⅲ型があり、Ⅰ型はカリ欠乏、Ⅱ型は亜鉛欠乏、Ⅲ型はヨウ素過剰によるといわれている。欠乏要素の施用のほか、客土や含鉄資材の施用、堆肥など有機物施用、暗きょ排水などの総合的な対策が必要である。

秋落ち

水稲の生育が前期の栄養生長期には旺盛であるにもかかわらず、生育後期の生殖生長期になって徐々に不振になり、初期の草できにくらべて登熟不良で玄米収量がいちじるしく少なくなる現象をいう。下葉の黄化、枯れ上がり、ゴマ葉枯れ病斑の発生などが特徴である。
水田土壌が高温で、たん水状態で還元が進むときに硫酸イオンが還元されて硫化水素が発生する。通常は発生した硫化水素は土壌中の鉄、マンガンなどと結合して不溶化し無害となるが、これらが溶脱して不足している老朽化水田では硫化水素は遊離状態で存在し、根の呼吸を阻害し、養分吸収を減退させ、いちじるしい場合には根腐れをおこし、生育後期に栄養凋落を引きおこす。これが秋落ちである。
秋落ち水田(老朽化水田)では、硫黄が過剰にならないように無硫酸根肥料の施用が勧められる(ただし、硫黄は必須元素であり、まったく補給しないとやがて硫黄欠乏が引きおこされる可能性があるのに注意)。また鉄・マンガンのほか、カリ・カルシウム・マグネシウム・ケイ酸などの養分がいずれも溶脱して不足しており、これらの不足する養分の補給(ケイカル、含鉄資材など)のほか、客土、排水改良などの総合的対策が必要である。

亜硝酸ガス障害

施肥量が極端に多い場合に、施肥窒素成分の硝酸化成が順調に行かず、中間産物の亜硝酸が土壌中で集積することがある。硝酸化成の進行にともない土壌pHは低下するが、酸性条件下では亜硝酸は不安定であり分解して亜硝酸ガス(NO、NO2など)が発生する(化学的脱窒)。ハウスでは閉鎖系であるため、発生した亜硝酸ガスが充満しやすい。温度が上がるとガス発生が激しくなり、作物に被害が発生する。土壌の酸性(硝酸化成が抑制される)、過乾などの条件で発生しやすい。診断には、ハウス内の露滴のpHを調べ、pH5.4以下では発生の危険があるので、まず換気を図るとともに、石灰質肥料の施用、硝酸化成抑制剤の使用などを考える。

アミロース

アミロペクチンとともにデンプン粒を構成する主要成分である。通常、デンプン粒の20~25%を占める。グルコースがα-1、4結合のみで長鎖状に連結 しており、分子量は5万程度である。ヨウ素に反応して冷時青らん色を呈する。うるち米に多いが食味では、アミロースが少ないほうが粘りがでるために美味であるとされる。その量は品種、成熟期間などによって変わるが、肥培管理では制御が困難である。

アミロペクチン

デンプン粒から可溶性のアミロースを除いた難溶性画分をいう。デンプン粒の75~80%を占める。アミロースでは長鎖状にグルコースが連結しているのに対して、アミロペクチンでは鎖の一部がα-1、6結合により分岐し、巨大分子(分子量5万~100万)となっている。ヨウ素に対して冷時赤褐色を呈する。水で膨潤し、熱水で糊となる。もち米のデンプンは大部分がアミロペクチンであり、米の粘りと関係が深い。

アルカリ分(アルカリ度)

土壌酸性矯正に有効な成分である。肥料では可溶性石灰〔0.5M塩酸に溶けるカルシウム(CaO)〕の量、または可溶性石灰と可溶性苦土〔0.5M塩酸に溶けるマグネシウム(MgO)〕×1.3914の値の合量で表す(苦土に掛ける係数はCaO/MgOの比)。石灰質肥料のほか、石灰窒素、ようりん、ケイカルなどでその保証が認められている。

アロフェン

主としてケイ酸、アルミニウム、水からなる非晶質の粘土鉱物。アロフェン中には陰性コロイドと結合していない遊離のアルミナが多量に存在し、その活性が強い。火山灰土壌の粘土の主体をなすもので、リン酸の固定力が強いが、アンモニウムやカリウムの保持力は比較的弱い。

アンモニア化成(作用)

土壌中で有機物、尿素、石灰窒素などは微生物によって分解され、アンモニウムが生成するが、この作用を有機態窒素の無機化という。有機態窒素の無機化には、その組成、土壌条件 (温度、Eh、微生物活性など)が関係する。

易耕性

狭義には耕うん作業を容易に行いうる土壌の性質をいうが、広義には作物生育の培地として良好な物理的環境も含む。アメリカ土壌学会では、「耕うん作業に対する応答および根の貫入に対する機械的抵抗に関係する土壌の物理的条件」と定義している。

異常還元(土壌の)

水田土壌は、栽培時期にはたん水されるため、ごく表層を除き還元状態 (酸素が欠乏した状態)になるのが通常である。有機物の多い湿田や、乾田でも易分解性有機物を多量に施用した場合には、夏にかけて温度が上昇する際に有機物が急激に分解し土壌がいちじるしい還元状態になることがあり、これを異常還元という。異常還元により硫化水素が発生したり、有機酸などの有害物質が生成して、水稲の生育を阻害し、秋落ちなどの原因となる。

易分解性有機物

土壌に施用された有機物は微生物により分解されるが、その速度は有機物の種類などによって異なり、デンプン、糖類、タンパク質などは一般に速く、リグニンなどは遅い。土壌中で分解が速い有機物を易分解性有機物という。青刈り作物などの、タンパク質が多くリグニンが少ない新鮮有機物は分解が速く、堆肥のようにいったん腐熟させた有機物は分解が遅い。易分解性有機物の多量施用は異常還元をおこして作物根に障害となることがあり、また窒素含量の低い有機物では窒素の取り込みがおこり窒素飢餓の原因となる。

A層(えいそう)

土壌の最表層で、B層の上にある土層をいう。有機物の供給が多く生物活動が活発に行われるため、腐植に富み暗褐色ないし黒色を呈する。粘土や塩類などは溶脱している。表土にほぼ相当する。

塩基飽和度

土壌中の交換性塩基(一般にはカルシウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオンをいう)が、土壌の陽イオン交換容量(CEC)の中に占める割合を%で示した値をいう。塩基飽和度が小さい土壌は酸性が強く、大きくなるほど中性に近づく。水田、普通畑では70~90%(黒ボク土などでは60~90%)が改良目標となっている。

黄化現象(作物の)

クロロシス」を参照。

オゾンホール

大気成層圏にはオゾンの濃度が高い層があるが、最近このオゾンが分解されて濃度が低下し穴があいたようになる現象が観測されるようになった。このオゾン層を破壊する物質としては、フロン類などのほか、亜酸化窒素(窒素肥料からも脱窒で生成)、臭化メチル(土壌くん蒸剤)なども関与するといわれている。オゾン層が破壊されると、太陽からの紫外線が大気中を透過する量が増大し、人体の健康障害 (皮膚がんなど)、植物の生育障害を引きおこすと考えられている。

温室効果ガス

大気中の二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素、フロンなどは、地球から宇宙空間への熱の放射を妨げている。ちょうど温室のガラスのような働きをすることから、温室効果ガスという。大気中に二酸化炭素がなければ、地球の温度は-20℃くらいにまで低下するので、ある程度の濃度は必要である(植物の光合成に必要なことを別にしても)。しかし、二酸化炭素濃度が化石燃料の消費増大にともなって上昇しておりまたその他の温室効果ガスについても濃度上昇が観測されており、これが地球の温度上昇になるということで国際的な問題になっている。これまでのところ、二酸化炭素の影響がもっとも大きいと考えられてきたが、メタン、亜酸化窒素は濃度としては低くても温度上昇効果が二酸化炭素よりも大きいことから、これらについても全地球的な発生抑制が必要になろうとしている。
地球温暖化」を参照。

その他の用語

か行 さ行 た行 な行 は行 ま行 や行 ら行 わ行