土壌肥料用語集

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pH(ピーエッチ)

水溶液中の水素イオン濃度を示す指標であり、水素イオン濃度の逆数の対数。pH7が中性、7未満が酸性で数字が小さいほど酸性が強い。pH7以上がアルカリ性であり、数字が大きいほどアルカリ性が強い。純粋な水はpH7であるが、通常は二酸化炭素を含んで弱酸性(pH5.3)となっている。pHは酸性の強さを示す(強度因子)が、土壌の酸性矯正の場合に必要なアルカリの量は土壌の緩衝能で変わるので交換酸度などの測定(容量因子)も必要である。
植物の生育には一般に弱酸性から中性付近がよいが、最適なpH範囲は植物の種類、品種などで変わる。

pF(ピーエフ)

土壌中の水は、土壌孔隙に保持されているが、この保持に必要な圧力を示す指標。水を保持する力は毛管力などによるもので、大きな孔隙に存在する水の保持力は小さいので植物が吸収したり外部に取り出すのは容易である。しかし微細な孔隙に保持された水は大きな圧力をかけなければ移動せず植物による吸収も困難である。土壌から水を取り出すときに必要な圧力を水柱の高さ(cm)に換算し、その対数をとったのがpFである。pF0は水で飽和した状態(容水量、正確には厚さ1cmの土層に飽和状態で保持されている水、pF1.5が圃場容水量に相当する。pF1.8までが重力で移動する水(重力水)、pF1.8~3.0の間が植物に利用される水(易有効水分、または正常生育有効水分)、pF3.0~4.2が植物は吸収するが生育が劣る範囲(難有効水分)、易有効水分と難有効水分の合計が全有効水分(pF1.8~4.2)であり、pF4.2が萎凋点である。
最近は圧力をSI単位で表現するためPa(パスカル)単位で表現することが勧められており、pFは国際的には用いられない。

B/F値(細菌/糸状菌比)

根圏土壌などで、細菌(bacteria)と糸状菌(fungus、カビ類)の生息数の比をいう。連作障害がみられる畑土壌では細菌数が少なく、糸状菌の数が多い場合がみられ、B/F値が小さくなっていることから、この値が1,000以上でなければ健全な土壌ではないといわれている。

肥効調節型肥料

肥料成分の溶出や可給化速度を調節することによって肥効の向上を図った肥料をいう。IB、CDUなどのように難溶性あるいは微生物による分解や加水分解を受けにくい化合物を利用した化学合成系緩効性窒素肥料のほか、速効性肥料を被覆(コーティング)した肥料(被覆肥料)またはほかの材料に混合して成型した成型肥料(マトリクス肥料)など物理的な方法により緩効性にした肥料がある。また硝酸化成抑制材を添加した肥料も肥効の発現が変わるのでこれらも広い意味で肥効調節型肥料といえる。ただ場合によっては、従来型の化学合成系の肥料に対して被覆肥料を肥効調節型と狭義に使う場合もある。

肥よく(沃)度

作物が生育するうえで必要な土壌の化学的、物理的、生物的な諸性質を総合的に評価するものであるが、一つの尺度では明確に定義されない。作物が必要とする養分を有効な形で、あるいは有効になりうる状態で十分にもっている土壌を肥よく度が高いといい、一般に腐植含量が高い土壌となっている。ただ養分があっても物理的な性質が劣ると作物は養分が吸えず生育が劣り、また生物的な条件が悪いと養分の有効化が遅れたり病害により生産があがらないことになる。肥よく度は土壌の母材、地形、気象、植生条件によって変わり、また長年の土壌管理の結果とみることもできる。広義には地力とほぼ同意で使われている。

微量要素

植物が正常に生育し結実していくうえで必要不可欠な元素は通常の植物では16種類あるが、このうち植物の要求量が少ない元素を微量要素という。マンガン、ホウ素、鉄、銅、亜鉛、モリブデン、塩素がある。このうち肥料の主成分として含有することを保証できるのはマンガンとホウ素である。鉄、銅、亜鉛、モリブデンについては欠乏する地域、作物が比較的限定されていることから肥料の主成分とはしないが、肥料の効果発現促進材として添加することが認められている。塩素は塩化物の形で肥料に存在することが多いので主成分、あるいは効果発現促進材として認めていない。なおコバルトは植物の必須要素ではないが、マメ科植物の窒素固定の際に必要であり、また家畜に欠乏する場合があることから効果発現促進材として認められるようになった。
微量要素は欠乏すると特有の症状が現れ、生育・収量に大きく影響する。しかし必要量が少ないので天然供給、堆肥の施用などで間に合うことが多く、また土壌pHの改良で欠乏がでなくなることもある。過剰になると障害が発生する(ホウ素でいちじるしい)ので土壌診断などを活用するのがよい。

フェーン現象

風が山を越えて吹いた場合、気温が急に上昇し湿度が低下することをいう。台風が山脈を越えて日本海側の平地に吹いたときなどにみられ、出穂期に当たると水稲体内の水分バランスがくずれ白穂となって被害が発生する。水稲体内のケイ酸濃度を高くすると葉の気孔の開度が小さくなり水分の発散が少なくなることから、ケイカルを施用するとフェーン現象による被害を軽減することができるという報告がある。

複合肥料

肥料三要素(窒素、リン酸、カリ)のうち2成分以上を保証する肥料。化成肥料、配合肥料、成型複合肥料、被覆複合肥料、液状複合肥料などがある。有機質肥料のなかにも三要素のうち2成分(窒素とリン酸など)を保証するものがあるが、動植物質のものは有機質肥料となり複合肥料とはいわない。

腐植

土壌中に存在する暗(褐)色の有機物をいう。有機物が微生物の作用で分解・再合成されてできると考えられるが、微生物ばかりでなく化学的過程も関与している。堆肥を施用したときにはその中の炭素の11%が、またダイズ油かすでは約3%が腐植になったといわれている。腐植の組成は複雑な高分子で構造は明確となっていないが、炭素含量は平均して58%なので、土壌中の有機炭素を定量し係数1.724をかけて腐植含量とする。腐植は土壌構造を維持するなど物理的条件の改善に効果があり、またその分解で放出される窒素の緩効的効果、成分の保持、有効化(キレート作用)など広範な効果をもち、地力のかなりの部分が腐植の量と質によっている。

ホウ素質肥料

ホウ素(B)を保証した肥料であり、ホウ酸とホウ酸塩〔ホウ砂(ホウ酸ナトリウム)とホウ酸カルシウム(コールマナイト)〕がある。アブラナ科(ナタネ、ダイコン、ハクサイ)、ブドウ、リンゴ、ミカン、テンサイ(シュガービート)などで欠乏する事例が多い。欠乏した場合の施用効果は大きいものがあるが、施用量はごく少なく、反面過剰障害も大きいので注意する。ホウ素質肥料を単独で施用することは少なく、多くは複合肥料に混合して使っている。また微量要素複合肥料(FTEなど)は溶解性が遅いので過剰害がでにくく使いやすい。

圃場試験

圃場をくぎって試験区をつくり、施肥などの条件を変えて作物を栽培し、処理の効果をみる試験をいう。実際の作物栽培と同じ条件で行うため、もっとも確実に肥料などの効果を知ることができるが、経費、労力を多く必要とする。通常の肥料試験では、1区10~30m2とし、反復して同じ処理区を2ないし3か所設ける(2連または3連という)

ポット試験(植木鉢試験)

適当な大きさのポット(鉢)に土壌を詰め、肥料などの処理を変えて作物を生育させ、作物の反応をみる試験。土壌の種類、環境条件などをコントロールしやすく、多くの要因を組み合わせて試験することができる。しかしポットの大きさによって根の生育可能スペース、日射、温度などの条件が、圃場とは違うため面積当たり収量などの比較には限界があることに注意が必要である。

その他の用語

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