土壌肥料用語集

さ行

最小(養分)律

植物が生育するとき、多くの養分や環境因子が関係する。ある必須要素が欠除した場合、ほかの養分・生育環境が十分であっても、欠除した要素が制限になって植物は生育することはできない。リービヒ(1840)は「作物の生産量はもっとも不足する無機養分によって支配される」といい、これを最小養分律といった。この考えは、光、温度、水などの条件を含めても成立することから、このような環境因子をも含めた場合には最小律という。

作土

田や畑の土壌のうち、耕される部分をいう。作土は作物根の大部分があり、養水分の主要な供給の場となっている。土壌は一般に水分の総量が多く、膨軟で通気性・透水性がよく、微生物活動も盛んである。また肥培管理の影響がもっとも現れやすい層位でもある。作土は深いほど養分の供給総量が多く、作物の生育も良好となる。機械力によって深耕し作土層を深くすることは地力増強の大きなポイントである。しかし、急激な深耕は肥よく度の低い下層土を混入することになって収量が低下したり、機械の走行性に影響することがあり、また侵食が激化することもあるので注意する。

酸化還元電位(土壌の)

Ehともいう。物質の酸化と還元に際して電子の移動をおこそうとする力をその物質系の電位として表し、酸化還元がおこりやすいか、その程度を示す尺度としている。土壌のEhがプラスで大きいほど酸化的であり、土壌中の物質は酸化状態で安定な形態となり、逆にマイナスとなると還元的となり物質も還元状態で安定な形態に変化する。普通土壌のEhは0.1~0.3V程度であるが、水田土壌で有機物の分解が盛んなときには-0.2~-0.3V程度にまで低下する。Ehは土壌pHによっても異なりpHが高くなるほどEhは低下する(pH1につい て0.05~0.06V程度)ので、通常はpH6の時のEhで表すことが多い(Eh6と表示)。

酸化層

たん水下の水田では田面水中の藻類など水生植物の炭素同化作用による酸素の放出や大気からの酸素の補給を受けて、土壌のごく表層は酸化的状態にあり、その下の還元的状態の土層とは性質が異なることからこれを酸化層という。この酸化層では鉄は酸化状態の三価鉄として存在し褐色を呈するが、還元層では二価鉄となり青系統の色となることから肉眼的にも区別することができる。酸化層では好気的微生物が生息し、窒素は硝酸成作用を受ける。

三相分布

土壌は固相、液相、気相の三相からなっており、これらのそれぞれの容積を土壌全容積に対する百分率で表したもの、あるいはそれぞれの割合を三相分布といい、土壌の物理的性質を示す基本的な指標となっている。この割合は土壌の種類、層位によって異なり、また土壌管理によっても変化し、耕起、有機物施用などによって土壌を膨軟にすると気相、液層が増加する。

C/N比(炭素-窒素比)

有機物資材あるいは土壌に含まれる全炭素と全窒素の重量比をいう。炭素率ともいう。C/N比が低い油かすなどの有機質肥料を施用した場合には、土壌中での無機化は比較的速く肥料としての効果が現れやすいが、C/N比が高くなると一般に無機化は遅くなる。さらに炭素(エネルギー源)が多いと土壌微生物が急激に増殖し、その際に無機態窒素が菌体に取り込まれ植物に利用できなくなるため窒素飢餓がおこり生育障害となることがある。わらなどを堆肥化するのはC/N比を低下させるのも一つの目的である。わらのC/N比は50~120程度であるが、堆肥化してC/N比を20以下にするのが望ましい。ただしC/N比は低ければよいわけではなく、汚泥ではC/N比は7前後と低いが、このままでは不安定であり、副資材の使用や堆肥化過程でのアンモニア揮散によりC/N比を調整することが必要である。

湿害

畑作物では土壌水分が多すぎると根の呼吸が低下して生育不良となることがあり、これを湿害という。また通気性が低下して酸素不足になり、この際に地温が上がると有機物の分解が急激におこり還元的になり二価鉄による害もおこる。湿害に対する感受性は作物によって異なり、転換畑での作物の選択にも関係する。湿害を受けやすいところでは、排水対策を改善し、また高うねにするなどの配慮が必要である。湿害を受けないためには気相が30%以上であれば問題はない。

湿田

水稲を収穫したあとの冬期(裏作に麦をまくときはその時期)において、普通程度の降雨後3~4日に、歩けばくるぶし以上に足が入り、夏期には田面水の浸透がまったくないか、非常に少ない水田をいう。排水不良田ともいう。

収量低減の法則

植物養分の補給量(施肥量)を増やしてゆくと、養分が少ない場合には収量の増加は大きいが、養分の量が増加するにつれて収量増加分がしだいに低下し、養分が最適範囲以上存在するときには収量は頭打ちになり増加することはない。このように養分量の増加につれて収量が増加しなくなることをいう。ただしこの収量の頭打ちは絶対的なものでなく、品種、施肥法、土壌改良などで水準を上げることが可能であり、そこに土壌肥料の技術研究の目標がある。

重粘土

土壌の微細粒子、特に粘土を多量に含有し、耕起時にけん引抵抗力の大きな土をいう。水分の吸収力が強く、透水性が小さいうえに保水性も小さいので、湿害、干害のいずれをも受けやすい。湿潤時には粘性が強くスリップしやすい反面、乾燥すれば固く固結する。北海道の東北部からオホーツク沿岸地帯に広く分布する。改良対策としては、排水の改善、有機物施用がある。

硝酸化成作用(硝化作用)

土壌中でアンモニウムが酸化されて硝酸イオンを生成する反応をいう。アンモニウム塩は硫酸アンモニウム(硫アン)などとして施用され、また有機物(尿素なども含む)が無機化して生成するが、酸化状態の土壌では不安定であり、微生物の作用により硝酸化成作用を受ける。この反応は少なくとも2段階で進行し、まずニトロソモナスなどのアンモニウム酸化菌(亜硝酸菌ともいう)の働きで亜硝酸イオンが生成し、ついでニトロバクターなどの亜硝酸酸化菌(硝酸菌ともいう)の働きで硝酸イオンが生成する。この反応は好気的条件を必要とし、またその過程で水素イオンを放出するので土壌は酸性化する。

硝酸化成抑制材

土壌中での硝酸化成作用の進行を抑制する資材。アンモニウム態窒素は畑土壌では硝酸化成作用を受け硝酸に変化する。硝酸イオンはマイナスに荷電しているから土壌に吸着されず土壌溶液に存在するので、溶脱し損失となりやすい。溶脱した硝酸は地下水の汚染の原因ともなる。そこで窒素をアンモニウムの形態で止めるため硝酸化成菌の作用を抑えるため開発されたのが硝酸化成抑制材である。硝酸化成はアンモニウム酸化と亜硝酸酸化の2段階で進行するが、このうち後者の亜硝酸酸化作用を抑制すると有害な亜硝酸が集積するので不都合である。したがって硝酸化成抑制材としてはアンモニウム酸化菌の活性を抑制し、動植物などに有害でなく、肥料に混合したときに安定な資材が選抜される。アメリカのN-サーブに刺激され、わが国でも各社が競争で開発し、ジシアンジアミド、チオ尿素、AM、STなど数種のものが認められている。

硝酸還元作用

硝酸は還元状態の土壌では不安定であり、還元される作用をいう。嫌気的条件で生息する硝酸還元菌は硝酸中の酸素を奪って利用しており、硝酸はその結果、亜硝酸または遊離窒素(N2)に還元される。亜硝酸は不安定で分解し、窒素酸化物(NOなど)になるが、生成ガスは植物が利用できず大気中に損失となる(脱窒)。水田で硝酸塩の肥効が低いのはこの作用により窒素が失われるからである。

植物ホルモン

高等植物の体内で生成し、植物の生長、開花、結実などの生理的機能を調節する有機化合物をいう。微量で活性があり、アウキシン、ジベレリン、シトキニン、アブシジン酸、エチレンなどが知られている。これらと構造が類似した人工的に合成した化合物でも同様なホルモン作用をもつものがある。植物の発芽、発根、伸長、催花を促進する効果などが知られており、実利用としてはジベレリン処理による種なしブドウの生産が顕著な成功例である。ただ場合によっては逆効果となったり、環境影響が明確でないものもあることに留意する必要がある。

受光態勢

作物が光合成をするとき、太陽の光エネルギーを受ける植物の態勢(葉の並びかた)をいう。光合成は葉の中の窒素が多いほど盛んになるが、窒素を多く吸いすぎた場合には過繁茂となり、葉が相互に重なり合って十分に日光が当たらなくなる。稲では草丈は小さすぎず、葉は細めに直立し、分げつは密生せずに横に広がった形が受光態勢がよいとされている。

深耕

作物根が養分や水分をよりよく吸収利用できるように土壌を深く耕すことをいう。水田の作土から鉄が下層に溶脱している場合や、畑あるいは施設土壌で塩類などが集積している場合には、下層土との混合が有効である。しかし一般には下層土の肥よく度は低いから、一度に深耕すると生育不良になることが多いので耕土深は計画的に時間をかけて深くするとともに、リン酸・塩基などを補給するために土づくり肥料を適正に施用することが必要である。

人工培土

苗の生産のために、土壌にピートモス・バーミキュライトなどの土壌改良資材などを用い混合・造粒するなど一定の製造管理のもとで工場生産された培養土(配合土)をいう。必要に応じて窒素、リン酸、カリなどの肥料成分が添加され、水分、pH、物理性などが適正であり、作物の出芽・生育に支障がないことが必要である。水稲田植機に適合した育苗箱の床土(覆土を含む)専用の水稲用育苗培土、野菜などの鉢育苗用などの園芸用育苗培土、セル成型苗用の育苗培土などがある。

心土(しんど)

作土の下にある層で、普通の耕起によってはかく拌されない層をいう。心土は通常有機物含量などが低く養分が不足している場合が多いが、作物根はこの層まで伸びるのでその物理性、特に透水性や通気性などの良否は作物生育に大きく影響する。

生態系活用型農業

農耕地は人為の加わった生態系であるが、そこでは物質生産とともに有機物などを分解する機能、あるいは安定な系に復元しようとする機能がある。これらの機能を利用し、さらに強化することによって、食料生産を確保しながら生態系を維持することを目指す農業形態をいう。概念的・包括的なものであり、具体的な内容については幅をもっている。

生態系調和型農業

地球は人間以外の多くの動植物が生存する場でもあり一定の生態系をつくっている。これらの系を破壊した場合、長期的には人間の生存すら困難になる事態が考えられる。農耕地は、人為が加わってはいるがやはり生態系をなしており、このバランスがくずれた場合にはたとえば連作障害が顕在化するなどの支障がおこると考えられる。農耕地生態系を正しく理解し、これと調和し維持することができる農業形態をいう。化学肥料への過度の依存は、有機物の適正な循環を絶つとして批判の対象となっている。

ぜいたく吸収

植物はその生育に必要なだけの養分を吸収するばかりでなく、培地の養分が多い場合には生理的に必要な量以上に吸収することがあり、これをぜいたく吸収という。ぜいたく吸収は幼植物段階で目立ち、養分のなかではカリウムと窒素でいちじるしい傾向がある。

生理的酸性肥料

肥料を水に溶かしたときに中性であっても、土壌に施用したあとでは酸性になる肥料をいう。硫酸アンモニウム(硫アン)や塩化アンモニウム(塩アン)ではアンモニウムイオンに比較して対イオンとなる硫酸イオンや塩化物イオンの吸収は少ないから土壌に残りこれが土壌中のカルシウムやマグネシウムとともに土壌から溶脱されるので土壌が酸性化する。またアンモニウム(尿素でも同じ)は硝酸化成作用を受ける段階で水素イオンを生成するので酸性化の程度はさらに大きい。

石灰植物

好カルシウム植物」を参照。

石灰飽和度

土壌の陽イオン交換容量(CEC)のうち、交換性カルシウム(石灰)により占められる割合を%で示したもの。
塩基飽和度」を参照。

接触施肥

通常の化学肥料では濃度障害がおこるので施肥位置は種子あるいは根から一定の距離をおく必要があるが、被覆肥料で初期溶出を完全に抑制した肥料では種子または根に接触させて施肥することができる。これを接触施肥といい、水稲の育苗箱全量基肥などの例がある。根に近接して適切な濃度で養分を常時供給できるので肥料効率を格段に高くすることが可能である。

側条施肥

水稲側条施肥移植機を使って、田植えと同時に基肥を苗の株元から2~5cm横、地表面から3~5cm下に筋状に施肥することをいう。側条施肥移植機には、ペースト肥料を使うタイプが先行して開発されたが、その後粒状肥料を使うタイプが加わり普及してきた。田植えと基肥施肥を同時に行える省力と、施肥位置を最適化し、田面水への成分の溶出を最小限にして肥料効率を高め、環境への汚染負荷を少なくする技術である。

速効性肥料

早効きの肥料。土壌に施用したとき、速やかに植物により吸収・利用されて肥効を現す肥料をいう。有効成分の大部分が水溶性の無機質化学肥料のほとんどが速効性肥料である。

速成堆肥

稲わら、麦稈などの粗大有機物に窒素源を加えて、微生物の繁殖を促進し腐熟を早めて製造した堆肥のこと。窒素源として石灰窒素を使うと、アルカリによる分解促進もあるので効果的である。

粗大有機物

未熟の堆肥、稲わら、麦稈、緑肥、青刈り作物、落葉、圃場収穫残さ、山野草などの有機物をいう。これらは施用後分解されて一部の植物成分を開放するとともに残りは腐植化して効果を現す。分解の様式、程度は有機物によって異なるが、分解しにくい物が多く、その多量施用は窒素飢餓や有害有機化合物の生成などにより障害となることも多い。収穫残さについては植物病害の問題もある。これらの施用に当たっては、できるだけ堆肥化をするのがよく、また窒素飢餓にならないように、窒素質肥料を補給する。石灰窒素は窒素源となるほかに、アルカリによる分解促進、有害微生物の抑制などにも効果があり、併用が勧められている。

その他の用語

あ行 か行 た行 な行 は行 ま行 や行 ら行 わ行