土壌肥料用語集

な行

中干し

土用干しともいう。水稲の生育期間中1~3回程度水田の水を落とし田面にわずかに亀裂が入る程度まで乾燥させることをいう。最高分げつ期から分げつ減退期にかけて行う(土用のころに行うので土用干し)。有機物の多い水田や老朽化水田などで土壌が強還元状態になるのを防ぎ、根圏に酸素を補給して根の呼吸を助け健全にするので生育が改善される。ただし中干しをあまり長期間行うと、アンモニウム態窒素の硝酸化成が進行し、つぎに入水したとき窒素の損失がおきやすくなる。この中干しで意識的に窒素の供給を一時切り、稲を倒伏しにくい姿にしたうえ、その後登熟に必要な窒素を穂肥で補給する稲の栽培法はV字型栽培法などと呼ばれている。

二段施肥

専用の施肥移植機を使って、水稲側条施肥田植えに合わせて、地表面から8~15cm下の位置に深層施肥をする施肥法をいう。側条施肥の欠点である生育後半の肥切れを回避しようとするものである。ただ精度よく深層まで施肥するためには、機械が複雑になり高価になるのが弱点である。

乳苗移植

稚苗より葉齢の小さい乳苗を本田に機械移植することをいう。乳苗とは、育苗期間が7~10日(稚苗の1/2以下)で、2.0葉期以下の苗をいう。稚苗移植にくらべて苗の環境耐性が高く、育苗箱数が少なくてすむので機械移植に有利であり、さらに育苗期間が短いので施設の回転率が高まり、省力・低コスト化の利点がある。一方、苗マットの根張りが弱く、移植機でのトラブルがおきやすく、草丈が小さいので、埋没・水没しやすいなどの欠点がある。

根腐れ

健全な水稲根は白いつやのある根か、あるいは周囲に酸化鉄の被膜をつけて赤褐色であるが、老朽化水田などで生育した水稲根は黒変し弾力がなく腐った状態となっていることがあり、この症状を根腐れという。還元状態の水田土壌では硫化水素や有害な有機酸などが生成して根に障害を与え、また根の呼吸が阻害されるのが原因となる。老朽化水田での秋落ちの根の症状である。土壌の強還元を防ぐため、排水などを改良するとともに、鉄・マンガンなどを含む資材を施用して硫化水素の害を抑制するのがよい。

粘土鉱物

粘土は、母材に由来した一次鉱物が変成して新たな鉱物が生成してできるが、この二次鉱物を粘土鉱物という。結晶質のものと非結晶質のものがある。前者はアルミニウム、鉄、マグネシウム、アルカリ金属のケイ酸塩であり、モンモリロナイト、カオリナイト、ハロイサイトなどがあり、後者の代表は火山灰土壌に多いアロフェン(アルミニウムのケイ酸塩)である。粘土鉱物は、水と養分の吸着保持に密接に関係しており、土壌の肥よく度を大きく左右している。

濃度障害

土壌溶液、あるいは培地の塩類濃度が高いためにおこる作物の生育障害をいう。塩類濃度が上がると溶液の浸透圧が高くなり、根の吸水が阻害され、また養分吸収にも影響して、障害がおこる。野菜栽培では施肥量が多く、また1年間に多回栽培されるため肥料塩類が集積しやすい。さらにハウス栽培では、降雨の影響がなく、高温で蒸発散が多いため、水の動きが上向きとなり塩類が土壌の表層に集積しやすく、濃度障害がおきやすい。
このような障害の対策としては、まず施肥管理を見直して発生を未然に防ぐことが重要であり、土壌診断、作物栄養診断の活用が有効である。いったん、塩類が集積した場合には、多量のかん水により塩類を洗い流す(ハウスではビニールをはずして雨ざらしにする)、あるいは吸肥力の大きい飼料作物などを栽培して養分を吸収させる(クリーニングクロップ)などの対策をとる。また深耕・混層ロータリーなどを活用して養分の少ない下層土と混合する方法もある。なお、洗浄による除塩は、溶脱水などによる環境汚染の可能性があるので注意する。

その他の用語

あ行 か行 さ行 た行 は行 ま行 や行 ら行 わ行